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潜水艦修理契約に関する特別防衛監察 調査状況を中間報告(12月27日)

  • 日本の防衛

2024-12-30 10:45

 防衛省は令和6(2024)年12月27日(金)17時00分、同年7月に防衛大臣の指示で行われた、川崎重工に発注した潜水艦修理における特別防衛監察について、調査状況を中間報告した。

 この特別観察は、2024年4月、川崎重工において海上自衛隊の潜水艦乗組員への不正な物品提供等が行われていたことを、大阪国税局が同社に対し指摘したことに端を発するもの。
 報告では、本案件の経緯、特別防衛監察の実施態勢、潜水艦修理契約の内容、架空取引の実態、潜水艦乗組員へのアンケートと物品の確認調査、三菱重工とジャパンマリンユナイテッドでの自社点検、不適切行為の背景・要因、再発防止策の方向性、今後の調査の方向性が示されている。

 こちらにはリリース文と「潜水艦修理契約に関する特別防衛監察の調査状況について(要旨) 」の全文を掲載する。

特別防衛監察の調査状況(中間報告)について

 令和6年12月27日(金)、潜水艦修理契約における国民の信頼の確保に関する防衛大臣指示に基づく、特別防衛監察の調査状況(中間報告)について公表しましたので、お知らせします。

(以上)

潜水艦修理契約に関する特別防衛監察の調査状況について(要旨)

令和6年12月27日 防衛省防衛監察本部

第1 潜水艦修理契約に関する特別防衛監察の経緯・対象等

1 特別防衛監察に係る防衛大臣指示が発出された経緯
 令和6年4月、防衛装備庁に対し、KHIから、潜水艦修理工事に関し、出入業者との架空取引の代金を原資として、同社内及び潜水艦乗組員への物品提供等が行われているとの指摘を大阪国税局から受けた旨報告。
 同年7月、防衛大臣は、「潜水艦修理について、隊員と契約の相手方との関係及び契約の適正性に関する特別防衛監察を実施」するよう指示。

2 特別防衛監察の実施態勢・調査の概要
 防衛監察本部が枢要な調査については直接実施するとともに全体を統括し、人事教育局、海幕及び防衛装備庁が所要の調査支援を実施。
(1)防衛監察本部による直接調査
 KHIの特別調査委員会(北浜法律事務所が受託)の協力によるKHI及び関係会社からの資料の入手・分析、関係者のヒアリング、現職の潜水艦乗組経験者全員を対象とした無記名アンケート調査、潜水艦乗組員等自衛隊側関係者のヒアリング等を実施。
 MHI・JMUについては、防衛装備庁と調整の上、防衛装備庁長官から自社点検を依頼。
(2)海幕による調査支援
 人事教育局と連携しつつ、潜水艦乗組員総員を対象とした記名式のアンケート調査、潜水艦の艦内、陸上倉庫並びに自艦の修理中乗組員が使用する陸上作業所及び宿舎を対象とする物品等の確認調査を実施。
 防衛監察本部によるアンケート調査に当たって、特別防衛監察への協力と率直な回答を求める海幕長のトップメッセージを発出。
(3)防衛装備庁による調査支援等
 企業側に対する過払いの有無について、KHIに対し、臨時調査を実施。また、MHI、JMU等の原価計算方式を採用する防衛関連企業に対し、架空取引が行われていないかなどについて自社点検を依頼し、報告内容の精査及び現地調査を実施。MHIについては、自社点検結果の追加報告を受け、臨時調査に移行。また、JMUについては、既定の定期の制度調査を実施中。

第2 潜水艦修理に関する前提事実

1  潜水艦の特性と検査・修理
 潜水艦は、約3年に1回、おおむね10か月程度を要する定期検査を行うとともに、定期検査を実施しない年度においても、1年に1回、おおむね2~3か月程度を要する年次検査を実施(以下「定年検」という。)。
 定年検は、海上自衛隊横須賀地方総監部又は呉地方総監部が、MHI又はKHIと契約を締結し、それぞれの神戸工場において実施(年次検査の一部は、JMU横浜事業所磯子工場において実施)。

2 潜水艦修理契約の内容
 検査・修理に先立って全ての工事内容を特定して契約を締結することは困難であるため、海上自衛隊は、実施基準に沿った検査及び契約締結時に工事内容が特定される検査工事等については一般確定契約とする一方、検査工事等により判明した要修理箇所の修理工事については、履行後確定契約としていたが、後者についても、平成25年4月以降は、追加的な修理工事を反映させた仕様書を基に一般確定契約である変更契約を締結。
 契約金額の適正性を担保するため、これらの一般確定契約には、資料の信頼性確保及び制度調査の実施に関する特約条項(以下「信頼性特約」という。)を付加。

3 潜水艦修理工事の実施体制等(KHIを例に)
(1)潜水艦の艦内編成
 潜水艦乗組員を4個分隊に編成。更に機能ごとに、魚雷、水測、通信、航海、電測、電子整備、ディーゼル、電機、経理、補給、給養及び衛生の12のパートに分かれ、それぞれの先任海曹をパート長に割当て。
(2)修繕部の部内編成
 KHI神戸造船工場修繕部では、潜水艦のパートに対応して、船体・機関・電気・武器機構・武器電子の5パートに担当を分け、修理艦ごとに、各パートから、主務者(KHIでは「工事担当」と呼称。以下「工担」という。)を指名。
(3)潜水艦修理工事の実施体制
 定年検の間は、関係するパート長等と工担とが、毎朝、担当パート別に分かれて、当日の工程の共有や細部調整を実施した後、潜水艦乗組員は、工事立会や機器の操作等を行うほか、企業による工事に支障を生じない範囲で、自艦の整備作業等を実施(以下「乗員整備」という。)。

第3 KHIにおける架空取引の事実関係及び評価等

1  潜水艦修理契約の履行として認められる物品調達の範囲
 潜水艦修理契約の履行として調達が是認される物品は、原則として、仕様書に明記された部材等及び仕様書に記載された検査工事等及び修理工事を実施するために合理的に必要と認められる範囲。
 潜水艦乗組員が乗員整備等のために使用する物品をKHI側が調達・提供することは、それが契約内容に含まれていない限り是認されない。

2 KHI神戸造船工場修繕部における必要物品の調達方法
 KHI神戸造船工場修繕部で修理予算から正規に調達することが認められている物品は、潜水艦修理工事用の主要材料及び副資材・補助材料。
 それ以外の修繕部内の設備及び諸物品や生産現場で用いる物品は、原則として、修理予算とは別に予算を確保した上で購入する必要あり。
 工担等が私的に利用する物品や潜水艦乗組員からの要望品を修繕部が調達することは、仕様書に根拠を見いだせない限り一切認められない。

3 不正スキームの概要等
(1)経緯等
 KHI神戸造船工場修繕部においては、遅くとも昭和60年頃には、工担及び工担経験者(以下「工担ら」という。)等と出入業者の一部とが結託し、修理契約の履行として調達が認められる物品を発注する名目で、それ以外の物品を調達する架空取引が存在。
 おおむね平成13年頃からは、KHIによる架空取引の直接の相手方となっていた不正加担業者は、KHIからの当初報告時点で判明していた1社を含む3社。
 平成30年度から令和5年度までの間におけるKHIからこれら3社に対する発注のうち、架空取引と思料されるものの総額は約17億円。
(2)架空取引の手法
 工担が出入業者に対し、大量に発注しても不自然ではない養生材等を架空発注し、要望物品の依頼に対応するほか、余剰資金をプール。
(3)架空取引による調達物品
 架空取引による物品の調達は、修理予算で調達可能であるが正規の手続で調達しようとすると修理期間に間に合わないおそれのある場合や、本来は修理予算とは別の予算で調達すべき物品であるが、手続が煩雑であるうえ、要求が認められないことも多いために便宜的に行われたほか、潜水艦乗組員や現場作業員からの要望に応えるため、さらには、工担らの私的物品を調達するためにも行われていたことが判明。
(4)乗組員要望品について
 調達物品が、潜水艦乗組員、現場作業員、工担らのいずれに渡ったかを完全に振り分けることは困難であるものの、関係者の聴取結果等を踏まえると、以下のような物品が潜水艦乗組員の手に渡った模様。
 ① 艦内業務に使うと思料される物品(モニター、ケーブル類、照明器具、雨衣・防寒具等)
 ② 艦の整備作業に使うと思料される物品(工具類、安全靴、作業着、雨衣、清掃用具等)
 ③ 艦内での生活に使うと思料される物品(ポータブル冷蔵庫、炊飯器、コーヒーメーカー等)
 ①の雨衣・防寒具等や、②の安全靴、作業着、雨衣等は、多くが有名メーカーのブランド品。
 さらに、一部の潜水艦乗組員に対し、艦名を表示したTシャツ、パーカー等の記念グッズや、④ゲーム機等の娯楽用品が提供された事実も確認。
(5)裏金について
 不正加担業者3社のうち2社は、事前の架空発注による残金を原資として、更に協力業者に架空発注を行い、支払代金の一部を現金で還流させる方法により裏金をプールし、工担等の要望に応じて、裏金から商品券やビール券の調達、飲食代金のツケ払いへの充当、現金の交付等に及んでいた。
 ただし、これまでの調査で、不正加担業者から潜水艦乗組員に対する直接の利益供与は確認されず。その一方、工担らによれば、潜水艦乗組員と個人的に飲酒飲食を共にする場合に、潜水艦乗組員が負担すべき飲食代金をKHI側で負担したことも多かった模様。

4 潜水艦乗組員アンケート及び物品等確認調査
(1)潜水艦乗組員アンケート
 潜水艦乗組員経験者2,500名弱に対して無記名アンケートを実施。
 潜水艦の修理・点検の際、業務に必要な物品の提供を「ある」「見聞きしたことがある」とした者は376名(約15%)。私的に使用する物品の提供を「ある」「見聞きしたことがある」とした者は84名(約3%)。業務に必要な物品の提供を「ある」とした者197名のうち「契約範囲内であり問題ない」とした者が122名(約65%)、「わからない」とした者が51名(約27%)。問題点に思い至っていない隊員が多数。
 潜水艦の修理・点検の際、企業側と飲食や娯楽を共にした経験が「ある」とした者は333名(約13%)。このうち費用負担について「わからない」とした者が50名(約15%)。少なくない隊員が費用負担を明確に確認せず。
(2)物品等確認調査
 艦内及び陸上倉庫等における物品等確認調査の結果、企業側から提供を受けた物品73点を確認。このほか、企業側から提供を受けたのか、潜水艦乗組員が私的に調達したのか判別できなかった物品658点を確認

第4 KHIとの契約金額及び支払代金等に関する事実関係及び評価

1  原価計算方式による契約における資料の信頼性確保の状況
(1)防衛装備品等については、市場価格が存在せず、特に受注者が1者に限られる等事実上競争性がない場合には、契約金額が売手の「言い値」となってしまうリスクがあることから、契約の履行に必要な原価を積み上げ、あるべき適正価格を計算し、予定価格とする原価計算方式を採用。
(2)原価計算方式において、契約に基づく支払代金の適正性を担保するため、防衛省は、会社見積の提出や原価監査等の、支払代金に影響し得る各場面について真正な資料の提出等を義務付ける信頼性特約を付帯。

2 潜水艦修理契約の原価と信頼性特約への違反
(1)各地方総監部は、履行が完了したKHIとの潜水艦修理契約から抽出した契約について、将来の契約に際して適正な予定価格を算定するため、実際に発生していた原価の調査(以下「原価調査」という。)を実施。
(2)遅くとも平成30年8月に実施した原価調査において、KHIは、架空取引の費用を計上した資料を真正な原価の実績として防衛省に提示・提出。KHIの経営陣や経理部門は、遅くとも約40年前から続けられていた架空取引を令和6年2月まで把握しておらず、かつ、架空取引に係る原始帳票等は工担らによって正規取引を装って粉飾されており、会社として架空取引を特定することは不可能。
(3)防衛省は、平成30年8月の原価調査以前を含む架空取引が停止される以前の原価調査全てにおいて、信頼性特約に違反して、架空取引に由来する不真正な原価が真正な実績原価として提示・提出されていたと推認。もし仮に、KHIの担当者が真実を説明できていたならば、防衛省は、原価調査の結果を踏まえて、以降の契約の際に相応の減額査定を行うか、又は超過利益返納条項を付すなどにより原価の監査を契約締結の条件とできていたはず。
 このため、防衛省は、KHIとの潜水艦修理契約について、本来なら付されていたはずの超過利益返納条項に基づく返納額が潜在的に存在し、現在、これが未算定・未返納の状態のままになっていると認定。KHIと、当該潜在的な返納額の返納に向け、協力してその算定を進めることで合意。
 また、契約担当官等が、架空取引が行われるおそれがある額を精査、推算して減額査定を行ったと仮定した場合における減額分相当額を違約金の基礎となる額として算定。

第5 MHI又はJMUとの潜水艦修理契約に関する事実関係及び評価

1  MHIにおける契約の一部不履行
 MHIは、自社点検を契機として、水上艦を含む艦船修理契約の一部において、同社及び一部子会社が、仕様書に明記された作業や納品を行わず、その余剰資金を原資として、造修補給所監督官の要望に対応していた事例を把握。同社によれば、監督官の指示により、又は、監督官との調整を経て実施されたとのことであるが、信頼性特約に反するとともに契約の一部不履行に該当。

2 JMUにおける契約上の位置付けの不明な納品
 JMUについては、今年度、防衛省が行った定期の制度調査において、一部の契約について、造修補給所監督官の指示又は同意を得たとして、仕様書との関係が明確ではない備品、部材等を提供していた事例を把握。JMUとの潜水艦修理契約は、基本的に工期の短い年次検査のみであり、現在のところ過大請求等の不正行為にまで及んでいた事実は確認されず。

第6 架空契約その他の不適切行為の背景・要因となる問題(指摘事項)

1  KHI神戸造船工場修繕部の業務プロセス・体制を巡る問題
 KHI側では、適正水準を超えた利益を上げ将来の契約金額が引き下げられないよう利益を圧縮しなければならないとの工担の強迫観念や、現場の検査や修理に必要な器具、機器等を正規の手続により調達することの困難性、検査・修理工事における緊密な協力関係を保つ必要がある潜水艦乗組員との関係の悪化に対する工担の懸念、架空取引を防止する体制の不備、コンプライアンス意識の欠如等を確認。

2 潜水艦に付属する備品等や潜水艦乗組員の個人装備の調達・整備を巡る問題
 海上自衛隊側では、潜水艦に付属する備品等についての統制の欠如、ずさんな物品管理、補給品や乗員整備に必要な工具、部材等の不足が認められたほか、備品等・個人装備の性能や正規の調達手続が潜水艦乗組員の要望に十分応えるものとなっていない可能性あり。

3 潜水艦乗組員及び監督官のコンプライアンス意識及び服務管理の問題
 潜水艦乗組員の側に、KHIからの物品提供が潜水艦修理契約の範囲内であるとの誤った認識があった可能性大。全潜水艦において自衛隊員倫理法等に関する教育は行われていたが、潜水艦修理契約の内容に関する教育は実施されておらず。

4 契約内容、契約金額及び支払代金の定め方を巡る問題
(1)検査・修理の実態を反映できない仕様書の記載要領
 必要な作業等が仕様書に記載できないとされ、企業側の対応がまちまちとなっている事例があり、仕様書に検査・修理の実態を反映できない場合があることも、不適正な調達の一因と考えられる。
(2)原価発生の実態と乖離した仕様書及び価格形成
 潜水艦修理契約に係る会社見積のうち、加工費はあらかじめ海上自衛隊補給本部が定めた標準工数に準拠しており、海上自衛隊側の予定価格もこれに基づいて積算。この標準工数は、一つ一つの検査部位単位で個別独立に規定されているが、現実の工事は、溶接班や配管班等の作業班単位で検査部位をまたいで作業が進められており、実態に基づく工数の平均は標準工数より4割以上減少。他方、直接材料費は実際に必要な項目・数量等が仕様書に適切に記載されていないこと等により、契約時の想定の3倍近くに増加。
 このように、契約金額における原価と検査・工事等の実態との乖離が大きいために、工事予算の大規模な振替が事実上工担に委ねられていることが、工担が何ら不当な増額操作を加えることなく、架空取引の原資を確保できる機会を形成。その一方、海上自衛隊が会社見積の信頼性を十分検証したとは評価できず。
(3)原価調査、制度調査等を巡る問題
 平成27年、海幕は、社団法人日本造船工業会との間で、原価調査について、詳細確認を年1艦に限り、対象艦を事前協議の上決定することなどについて合意。この結果、真の原価を確認し、不正行為を牽制・抑止する原価調査本来の機能が損なわれた状況。
 また、平成25年に現行の制度調査の枠組みが導入されて以降、本事案が発覚した令和6年4月まで、KHI神戸造船工場に対する制度調査は潜水艦新造契約に重点を置いて行われ、潜水艦修理契約に着目した調査は行われず。そもそも制度調査は架空取引を想定しておらず、また、現行の防衛省の制度は、実績に依拠しない標準工数等による価格形成を十分に考慮せず。

第7 再発防止策の方向性(提言等)

1  会社に対する措置
 KHIに対しては、潜水艦修理契約における潜在的な超過利益等の算定を進めその返納等を求める予定。また、信頼性特約違反については、自発的な申告を斟酌し厳重注意。あわせて今後、是正措置及び報告された再発防止策の実施を要求。
 MHIについては、契約の一部不履行部分の追加的な履行を求め、追加的な履行が不可能・不適切な部分について、防衛省が誤って支払った額を算定するための特別調査を実施予定。また、信頼性特約違反については、自発的な申告を斟酌し注意。あわせて是正措置及び再発防止策等の報告を要求。
 JMUについては、現在実施中の定期の制度調査を継続するとともに、他の事業所について追加の自社点検を求め、結果を確認する予定。

2 潜水艦に係る備品等、個人装備等の整備・調達の改善
 潜水艦内の備品等の確実な統制の必要性について潜水艦乗組員のみならず関係部隊等の隊員に認識させ、必要な物品が正規の手続により支給され十全な運用ができる体制を作るとともに、確実な物品管理を行うための態勢を見直す必要あり。
 また、備品等及び個人装備に係る潜水艦乗組員の声を容易に吸い上げ、その適否を迅速に判断する態勢や、現場の正当なニーズに適時適切に対応できる体制等、補給の在り方の見直しを含めた検討が必要。

3 潜水艦乗組員及び監督官のコンプライアンスの確保・強化
 潜水艦乗組員に対し潜水艦修理契約の仕組みや概要を理解させるとともに、監督官に対し自らの立場を自覚させ、コンプライアンスを再認識させる必要あり。
 私的物品を入手していた潜水艦乗組員がいたことの重大性にかんがみ、倫理教育についても引き続き繰り返し徹底して実施する必要あり。

4 仕様書、価格形成手法及び契約方法の見直し
 当面の措置として、仕様書等と現実の工事との間に齟齬がある現状においても最終的な支払代金を実際の原価に応じた適正な金額とするため、仕様書の規定方法等の見直しを検討するとともに、会社側から下見積を求める段階で、会社側が現実の工事において原価が発生する実態に即して別途作成している工事の予算計画を提出させる必要あり。
 なお、中長期的には、仕様書に規定する作業の単位を抜本的に見直すなど現実の作業実態に適応した仕様書等の見直しが必要。

5 原価調査及び制度調査の機能発揮の確保
 原価調査の機能を損なうおそれのある調査対象契約に係る情報の外部への伝達等の行為を確実に防止するとともに、信頼性特約、原価調査及び制度調査を、架空取引、契約の一部不履行等のリスクを考慮したものに改善する必要あり。

6 海上自衛隊の全ての関係部署における意識改革の必要性
 このような事態が国民の目にどのように映るか十分に認識して、全ての関係部署のそれぞれに問題があったことを真摯に受け止め、問題の背景を振り返り、本報告の指摘・提言を踏まえて具体的な再発防止策を策定し、着実に実行して国民からの信頼回復に努める必要あり。

第8 今後の調査の方向性

 引き続き、潜水艦乗組員、監督官、契約担当官等その他の海上自衛隊関係者に対するヒアリング等により、自衛隊員倫理法等に違反する事実の確認のほか、本報告に記載した事実の背景等についての調査を実施し、しかるべき時期に報告。

(以上)

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