中谷防衛大臣が記者会見 防衛省におけるAIの活用などについて発表(6月6日)
- 日本の防衛
2025-6-10 09:55
令和7(2025)年6月6日(金)09時09分~09時22分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は国会議事堂本館閣議室前において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。
大臣からの発表事項
防衛省におけるAIの活用について
大臣 :
防衛省におけるAIの活用についてお知らせをいたします。本日、防衛省は、「装備品等の研究開発における責任あるAI適用ガイドライン」を策定をいたしました。科学技術が急速に進展をする中で、国際社会においてAIは、その有用性から、民生分野に加えて、安全保障分野においても活用が進んでおります。防衛省においても、新しい戦い方への対応や人口減少の急速な進展の中で、防衛力の維持・強化をしていくために、AIの活用を進めていくことといたしております。このような観点から防衛省では、昨年7月に、AIの活用に関する防衛省としての考え方を包括的に示しました「防衛省AI活用推進基本方針」を策定をいたしました。
今回策定したガイドラインは、当該の基本方針の下で、数多くあるAI活用の場面の中でも研究開発に焦点を当てて、責任あるAI装備品等の研究開発を進めていくための指針として策定をしたものであります。国際場裡の議論とも整合する形で、AI活用に伴うリスク軽減をしながら、その恩恵を最大化できるような内容となっております。
このような指針を示すということは、2つあります。1つは、防衛省の研究開発事業全体にわたる適切なリスク管理、これに資するということ。そして、2つ目は、装備品の研究開発に参画をしようという事業者の皆様にも予見の可能性を提供することにもつながりまして、その結果、装備品等のAIの活用が一層推進をされることが期待をされます。防衛省としましては、今回策定したガイドラインに沿って、責任あるAI装備品等の研究開発を進めてまいりたいと考えております。
記者との質疑応答
陸自オスプレイを佐賀に配備する重要性、必要性について
記者 :
陸上自衛隊オスプレイの佐賀への移駐開始まで、来週で約1か月となります。大臣は10年前にも、当時佐賀県知事と面会されるなど、移駐に向けた協議に携ってこられましたが、10年の時を経て移駐が実現することへの所感を教えてください。またもう1点、この10年間の安全保障環境の変化を踏まえ、陸自オスプレイを佐賀に配備する重要性、必要性はどのように変わってきたとお考えかもあわせて教えてください。
大臣 :
陸上自衛隊のV-22オスプレイの配備計画につきましては、平成26年の7月、当時の小野寺防衛大臣が佐賀県の古川知事に要請をさせていただいたものであります。その後、私も防衛大臣に就任をいたしまして、在任中、平成の27年10月、ちょうど10年前に山口知事と面会をしまして、自衛隊機のみの配備・移駐とする旨要請させていただくなど、深く携わってきたものであります。それから10年、関係者の皆様方の御理解と御協力の下に、本年7月の9日に佐賀駐屯地を開設をし、そしてオスプレイを運用する輸送航空隊が木更津駐屯地から移駐をする運びとなったことは、大変感慨深いものであります。防衛大臣としましては、改めて関係者、また地元の皆様方に感謝・御礼を申し上げたいと思います。
我が国を取り巻く安全保障環境は、近年、一層厳しさを増しておりまして、南西地域を含む島嶼防衛能力、これの強化は我が国の安全保障にとりまして喫緊の課題であります。オスプレイが佐賀駐屯地に配備をされるということは、お隣、長崎県の相浦にあります相浦駐屯地、また近傍に所在する水陸機動団の部隊と一体的に運用できる体制を構築をするものでありまして、南西地域を含む島嶼防衛能力の強化を実現する上では、極めて大きな意義をもつものでございます。また、災害救援や急患輸送の観点からも有益であります。引き続き、移駐完了に向けて全力を尽くしてまいりますので、是非、地元の皆様方、移駐に関しての御理解・御支援をよろしくお願いしたいと思います。
イ・ジェミョン大統領就任後の日韓関係について
記者 :
韓国の関係で伺います。韓国で一昨日、イ・ジェミョン大統領が就任しました。かつては、日本に対して厳しい姿勢を示していましたが、北朝鮮が戦力を急速に増強させ、地域の安全保障環境が厳しさを増している中、新政権とどのような関係を築いていきたいとお考えでしょうか。また、大臣はかねてより韓国への訪問に意欲を示していましたが、どのタイミングで訪れ、誰と、どのような意見を交わしたいとお考えでしょうか。
大臣 :
イ・ジェミョン氏が新大統領に就任をされたということにつきまして、心からお祝いを申し上げます。韓国は、国際社会の様々な課題にパートナーとして協力をすべき大変重要な隣国でありまして、地域の安全保障環境が厳しさを増している中で、日韓・日米韓、これの連携がますます重要になっているということには変わりはありません。私は、過去2度防衛大臣を在任している時、1回目は防衛庁長官でありましたけれども、韓国を訪問しまして、日韓防衛相会談、これを実施をいたしておりますが、今回防衛大臣に就任して以降、2度の日韓防衛相会談、また初の日米豪比韓5か国の防衛相会談を実施をしたほか、昨年11月には、6年ぶりの寄港となりました韓国海軍の練習艦隊の歓迎行事、これは横須賀に参りまして、揚陸艦「マラド」に視察をし、また乗艦をさせていただきました。さらに、日米韓では北朝鮮のミサイルの警戒データのリアルタイムの共有、また複数領域における3か国共同訓練「フリーダム・エッジ」を実施するなど、日韓・日米韓の連携強化に取り組んでまいりました。
防衛省としましては、こうした日韓・日米韓の連携の重要性を踏まえながら、韓国の新政権との間でも、引き続き安全保障協力を強化をしていきたいと考えております。先だってのシャングリラの会合におきましても、大臣は来られませんでしたけれども、その代理の方と挨拶をさせていただきました。現時点におきましては、私の訪韓については、まだ決まったものはありませんが、かねてからできるだけ早く韓国を訪問したいと希望しておりまして、引き続き、韓国側と密接にですね、意思疎通をしていきたいと考えております。
SACO見舞金の在り方について
記者 :
別件ですが、SACO見舞金の在り方について伺います。防衛省はSACO見舞金を支払う際に、遅延損害金を対象外としています。この慣行に対して、昨年12月の最高裁判判決で、裁判官から、不合理かつ被害者救済の理念に反するとの意見がつきました。改めてですが、防衛省は、どうして米軍の犯罪で傷ついた人に対して、遅延損害金を払わないのでしょうか。また、最高裁判決の指摘を踏まえて、こうしたルールを今後見直していくお考えはありますでしょうか。
大臣 :
防衛省といたしましては、米軍人の事件・事故の被害者について、御遺族への心情の配慮、これは必要であると考えております。その上で、米軍人等による公務外の行為等によって第三者に被害が生じた場合は、民法第709条に基づきまして、加害者にその損害を賠償する責任があり、国は、遅延損害金を含む損害を賠償するという法律上の責任は有していないというところでございます。
他方、国は昭和39年の閣議決定に基づきまして、米国政府による補償金等によって被害者が救済されない直接の被害について、国が救済を必要と認めた場合は、見舞金を支給することができるということになりました。この見舞金は、被害者が救済されない直接の被害を対象としているところ、賠償金が支払われないことに対する延滞料の性格を有する遅延損害金については、直接の被害には当たらず、支払いの対象としてはおりません。その上で、米国政府による支払いが裁判所の判決によって確定した損害額に満たない事例が生じた場合には、被害者の救済のための、SACO最終報告に基づきまして、直接の被害につき、国が救済を必要と認めた場合は、必要に応じてその差額を埋めるため、SACO見舞金として支給をしてきたところであります。そこで、今回裁判長の意見が付されたということは承知をいたしておりますが、昨年12月の最高裁判判決では、こういった国の主張が認められたものであると受け止めております。
なお、SACO見舞金に加えて、日米地位協定の運用改善として、米国政府による慰謝料の支払がなされるまでの期間、被害者が生活費や治療費の支払い等で困窮しないようにするため、まずは防衛省による無利子融資制度がありまして、この被害者を一定程度ケアできるようにしております。防衛省としましては、被害者救済のために最大限努力をしているところであります。
(以上)
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