中谷防衛大臣が記者会見 沖縄における自衛隊への抗議活動や平和安全法制などについて(9月19日)
- 日本の防衛
2025-9-24 08:50
令和7(2025)年9月19日(金)09時48分~10時12分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は防衛省A棟10階会見室において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。
大臣からの発表事項
最近、沖縄における自衛隊の活動に対する過度な抗議活動、また、妨害行為が続いていることに対しまして、私から一言申し上げます。まず、直近において、9月13日に宮古島で物資輸送訓練に対する妨害行為があり、訓練の内容を一部変更いたしました。このような妨害行為によりまして、訓練の内容の変更を余儀なくされたということは大変遺憾であります。
また、8月5日の夕方から6日の早朝にかけて宮古島で陸上自衛隊の徒歩防災訓練が行われましたけれども、この中で、とある団体から拡声器を用いた抗議活動を受けました。この訓練は、実際に災害が発生した時に、部隊による迅速かつ円滑な災害活動を可能とすることを目的とした訓練でありまして、地元の皆様方の命を守る上で必要不可欠なものであると認識をいたしております。
さらに、9月12日に開催されました沖縄市でのエイサーまつりに陸上自衛隊の第15旅団の隊員が参加するに当たりまして、一部の団体から自衛隊員の参加を自粛するような要請がありました。祭り当日の隊員の演舞に対しましては、観客の多くの方々から大変温かく盛大な拍手が送られたと承知をいたしております。このように自衛隊・防衛省は、沖縄県民の方々を含めて、国民の命と平和な暮らしを守るべく、日頃から訓練など様々な活動を実施をしておりまして、現場の隊員一人一人がそれぞれの持ち場において、日々懸命に取り組んでおります。
私も防衛大臣として就任をしましたが、この1年間、全国の様々な部隊を視察をしてまいりました。沖縄においては、那覇駐屯地、そして与那国駐屯地、石垣駐屯地といった沖縄の部隊も数々視察をさせていただきました。どの部隊も地元との関係を大切にしており、地元の皆様に受け入れられる、親しまれるように日々訓練や任務に取り組みつつ、地域のイベントの参加も含めまして、交流を深める努力をしておりました。
私は、こういった部隊の隊員の諸君のひたむきな姿を見てきたからこそですね、今回のような事案につきましては大変残念に思います。私としましては、自衛隊への信頼をより一層深めてもらいたい。また、隊員が誇りと名誉をもって日々活動に当たってほしいと心から願っておりまして、国民の皆様におかれましても、このような防衛省・自衛隊の活動を御理解いただき、御協力をいただきたいと考えております。
記者との質疑応答
2015年に成立した平和安全法制について
記者 :
今日でいわゆる安保法制の可決、成立から10年となりました。当時、大臣も担当大臣としてですね、色々携われた御経験をお持ちだと思いますけれども、改めてこの法制の意義についてどう捉えているかという点を教えてください。法制については当時から様々な議論がありましたけれども、国民の理解を今後どう進めていくお考えか、あわせてですね、この10年間日米同盟にどんな影響を与えてきたと考えているかという点についてもお伺いします。
大臣 :
10年前になりますけれども、2015年に成立をしました平和安全法制には、私も2度目の防衛大臣を務めておった時期でありまして、安保法制担当大臣としても関わらせていただきました。非常に長い時間国会で質疑を行い、答弁をして成立した法案でありますが、この平和安全法制というのは、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とするものでありまして、国民の命と暮らしを守るためには必要不可欠なものであります。この法制によりまして、日米同盟はかつてないほど強固となりまして、抑止力・対処力が向上し、また地域の平和と安定にも寄与するとともに、国際社会の平和と安定により積極的に貢献できるものとなりました。
法律の成立後も、様々な機会を捉えて各国を訪問し説明をしてまいりましたし、また国内においても、いろんな機会に透明性ある丁寧な説明に努めてきておりまして、実際、平成4年に内閣府が実施しました世論調査によりますと、6割以上の方が平和安全法制が日本の安全保障に「役に立っている」又は「どちらかといえば役に立っている」と回答しておりまして、国民の間でも理解が進んでいるというふうに思います。今後とも、平和安全法制の運用に万全を期すとともに、丁寧な説明に努めて、国民の理解が一層広がるよう取り組んでまいりたいと考えております。
沖縄における自衛隊への抗議活動に関する大臣の冒頭発言について
記者 :
大臣の冒頭発言に関連しての質問なんですが、防衛省・自衛隊の活動に御理解いただきたいというお気持ちでのことですが、そもそも自衛隊への抗議活動というのは、沖縄の過重な基地負担があって、それが実感として負担軽減が進まない、逆に南西シフトで強まっているような現状への抗議というような県民感情だと思うんですが、その辺りについてはどのように感じますか。
大臣 :
我が国を取り巻く安全保障環境ですね、これ今戦後最も厳しくて、複雑な安全保障環境に直面をしている中でですね、自衛隊・防衛省が果たすべき役割というのは重要なものになってきておりまして、様々な訓練においても、また業務においてもですね、非常に高度なものが要求されるわけでございます。
そのような一方でですね、防衛省・自衛隊の様々な活動につきましては、国民の皆様の中にも様々な御意見があるということは承知をしておりますが、反対の立場も含めましてですね、こうした御意見をもってそれを表明すること自体を否定するものではございません。
その上でですね、我が国の防衛を預かる防衛大臣としましては、やはり国民の命と平和な暮らしを守るために、また地域社会、国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めていくために、隊員一人一人が日夜様々な活動によって、一生懸命取り組んでおります。こうした防衛省・自衛隊の活動につきましては、国民の皆様にも御理解と御協力をいただきたいと思っております。
先立っては実際にですね、そういうことで妨害や阻止活動があって訓練ができなくなってしまいました。引き続きですね、こういった点につきましては、御理解と御協力をいただきたいと努力をいたしますが、私自身がそういうようなことをですね、先頭に立って発言をし、そして信頼を増していくということが必要ではないかということで、本日このような発言をさせていただいた次第です。
記者 :
もう1点、理解を得るために普段から丁寧な説明を尽くすということでおっしゃっていますが、例えば先ほど出ていた宮古の訓練の件は「レゾリュート・ドラゴン」の訓練の一環だったと思うんですけれども、「レゾリュート・ドラゴン」はそもそも他県と比べて地元への説明が遅かったのではないかという感じもありますが、その辺りについてはどのように考えていますか。
大臣 :
これの実施に当たりましては、地元の自治体の方には説明してきておるわけでありますし、また実施することにつきましては、このような場でもですね、事前に私も説明しておりますので、実施することについて周知はできていたつもりであります。
記者 :
同じく冒頭発言について伺います。訓練の妨害であったり、エイサーまつりへの参加の抗議について言及されたと思いますが、旧日本軍と自衛隊の連続性が意識されているからこそ生じている現象、事案なのかなと思います。大臣は、旧日本軍と自衛隊の連続あるいは断絶性についてどのようにお考えでしょうか。
大臣 :
その点につきましては、先立ってお答えしたとおりでございます。当時の沖縄において多数の方々の沖縄県民の命が失われて、そして末期には大変凄惨なですね、活動が起こったことにつきましてですね、非常にその現象についてはですね、深く認識しているつもりであります。先ほども申し上げましたけれども、防衛省としましては、沖縄の人々の筆舌に尽くしがたい困難と癒えることのない悲しみ、これらを胸に刻みながらですね、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないと考えております。
自民党総裁選について
記者 :
自民党総裁選についてお伺いします。候補者5人の構図が固まりました。前回、16日の記者会見でも言及がありましたが、改めて林さんを支持するお考えに変わりはないでしょうか。また支持する場合は、林さんの推薦人になる予定があるか、改めて教えてください。
大臣 :
総裁選につきましては、林芳正氏を応援をいたします。その理由としては、第1に、政策に明るく、非常に今現在の国の懸案をですね、処理する、そしてその課題を前進させ遂行させるという能力のある人物であるからであります。特に総理大臣としましては、経済、外交、安全保障、その他社会保障においても、すぐにでも実行しなければならない課題や懸案が数多く、求められている案件がある中でですね、これまで林芳正氏の政治活動を見てみますと、官房長官、外務大臣、防衛大臣、農林水産大臣、文部科学大臣並びに経済財政担当大臣と幅広くですね、数多くの職責を兼任をし、そして幅広い経験、そして実績があります。そして、多くの方々から非常に信頼をされている。人脈もあればですね、非常に豊富な知識もあります。そういったことが、林芳正氏にはあるということです。
それから、第2に、彼の政治信条、また、政治姿勢においても「仁」、仁義の仁ですね、という言葉を挙げられ上げておりましたが、正にこの人間的な思いやり、そして人物を見ましても、いろんな人と接する場合にですね、非常に優しく丁寧にですね、人の心を吸収する考え方を持っております。総理大臣になったとしても、しっかりと内閣を束ねて、党内また野党含めた国会においてもですね、いろんな人の意見を聞く、そしてまとめていけれる、そういう度量と器を持ったあの人物ではないかなというふうに思いまして、林氏を応援をしているということであります。
記者 :
改めてですけれども、林さんの推薦になる予定はありますでしょうか。
大臣 :
求められれば、推薦人になるということも考えております。
旧日本軍と自衛隊との連続性について
記者 :
先ほどちょっと別の記者からの質問に回答がなかったので再度お尋ねしますが、大臣は旧日本軍と自衛隊との連続性っていうのはあるというふうにお考えなんでしょうか。それとも、そこは一旦切れてるというお考えなお答えください。明確にお答えください。
大臣 :
切れております。戦後、新しい憲法の下に自衛隊が発足をして、今そういう認識の下にですね、自衛隊というのは活動しておりまして、まず現行の憲法の下でですね、専守防衛に徹していると。そして、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという基本理念を持って、それに従っておりますので、特に先の大戦の反省、経緯などの分析もありましてですね。厳格な文民統制、これを確保しております。
こうした体制の下でですね、活動している自衛隊と旧憲法下で存在をしていた旧日本軍、これは全く異なるものであるということは言うまでもないということであります。
沖縄における自衛隊に対する抗議活動について
記者 :
冒頭発言の関連で、もう1問お尋ねします。先ほど大臣の方からは、その反対の意思、抗議の意思を表明を否定するものではないというふうにおっしゃられたわけですけれども、では、どのような今回反対の意思の示し方、あるいは抗議活動にしたら受け入れられるということになるんですか。回答次第によっては、憲法で保障された表現の自由の否定に繋がると私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
大臣 :
自衛隊もですね、法律に従って勤務をし、訓練しているわけでありまして、国を守るために必要な訓練というのは平素からしておかないと、実際に効果を発せませんので、そういった種類の訓練を実施をいたしております。
今回は、そのような訓練の最中にですね、非常に行き過ぎた抗議活動とか、妨害行動によってですね、想定された訓練ができなくなってしまったわけでありまして、そういった点においてですね、きちんとした形でですね、こういった活動においては、確かに自由はありますが、そういった良識をもってですね、やっていただきたいという思いです。
記者 :
冒頭の関係でちょっとまたお伺いしたいんですけれども、まずですね、琉球新報さんの質問で、なかなか県民が基地負担の軽減というものを実感できない中で、訓練だったりとかですね、自衛隊のいろんな部隊配備等々はどんどん進んでいくという中で、なかなか軍事負担がどっちかというと増えているような近年の状況があると。
そういう感情の最中にやっぱりそういう抗議だったりが起きてしまうという背景があると思うんですけれども、そこは大臣はそういうところが結びついてるというふうには考えてないというふうに先ほどの御回答だとちょっと感じたのですけれども、改めてちょっと御説明いただいてもよろしいでしょうか。
大臣 :
それ以上に国際情勢が変化をしておりまして、軍事技術や他国のですね、軍事的な能力の増大、これは行っております。そして、脅威もいろんな形を変えてですね、実際起こり得るものになっておりますので、自衛隊としては従来よりもですね、非常に高度な、そして多様な訓練を実施しておかなければならないということで、全国各地でこのような訓練、特に日米の共同対処なども今現在行っておりますので、そういう訓練を実施している。しかし、そういう訓練ができなくなりましたらですね、実際にいざという時に機能を果たすことができませんので、やはりこれは平素からですね、やっておかなければならないという認識でですね、訓練を計画をして実施をしてきております。
事前にですね、説明をし、また広報に努めているということは当然でございますが、是非この点のことをですね、御理解と納得をいただけるようにですね、これからも私の方から努めてまいっていきたいと思っております。
記者 :
訓練の大切さ重要性というのはよく分かるんですけれども、一方で、やっぱり沖縄の負担軽減という、大臣もいろいろ日米防衛相会談だったりでもちゃんと言及されているところだと思うので、それであればですね、例えばキンザーとか2024年度以降とかっていうふうに明示されてるのに、なかなか返還が進んでないようなところっていうのも一方であるわけで、そういうところを、例えば早く返還するというために具体的にアメリカに働きかけるだとか、そういった別のアクションというものもあると、こういった反対も起きない可能性はあると思うんですけれども、訓練が大切で欠かせないというのであれば、他の面でそういったその負担軽減に力を入れるというお考えはないんでしょうか。
大臣 :
沖縄の基地の負担軽減、これもうSACOが始まってですね、もう20年近く努力をいたしておりまして、岩国を始めですね、全国で何ヶ所か、そういう負担を受け入れてくれるところもございます。平素から防衛省としましては、沖縄の負担軽減のためにですね、努力を続けておりまして、こういう点で沖縄の基地負担の軽減、これが進んでいけるようにですね、各職員は今全力で取り組んでいる最中であります。
記者 :
関連なんですけど、大臣が自衛隊員の先頭に立ってですね、そういった抗議活動だったりに遺憾だというふうにおっしゃりたい気持ちというのはよく分かるんですけれども、一方でやっぱり実力組織のやっぱりトップがですね、そういうふうに一般の市民を萎縮させることにはならないかというふうにも思うんですけれども、そこはどのようにお考えでしょうか。
大臣 :
実際にですね、訓練の実施につきましては、一般の方々にも迷惑をかけないようにですね、行っているつもりでありますが、近傍に来てですね、スピーカーで大声で叫んだりですね、やはりこういった訓練を阻止させるですね、手段をしているということにつきましては、ちゃんとした良識、度量をもってですね、やっていただきたいと。
例えば、全く違うケースですよ、例えば教室でですね、子供たちに授業をしてると、これはしっかり先生もですね、必要性を感じてやってるわけでありますが、突然学校へ来てですね、大声で反対とかですね、授業を阻止するということについては、やはりこれは度を越しているなと、行き過ぎていると私は思います。
記者 :
関連してなんですけれども、当時、市民団体といろいろやり取りがあったとされている駐屯地司令の方ですね、大臣先日の会見ではですね、やっぱりちょっともう少し冷静に節度をもった形で行うべきではなかったかというようなこともおっしゃってたと思うんですけれども、その時のお考えというか、それは変わりなくというところでいいんでしょうか。
大臣 :
そのことについての考えは変わっておりません。市長さんがですね、仲を取り持ってですね、両者を交えて話をいただいたことでありますが、やはり声の大きさ、口調等については、もう少し冷静にですね、節度をもった形で行うべきではなかったかと認識しておりますが、この拡声器を用いた抗議活動を止めていただくためにですね、接したこと接触したこと自体は、私は何ら問題がなかったというふうに思っております。
※下線部:大臣発言中、平成4年(誤)を令和4年(正)に修正
(以上)
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