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《特集》アデン湾海賊対処に臨む海自P-3C哨戒機──航空部隊DAPEの現場

  • 特集

2024-9-20 11:33

ソマリア沖アデン湾における海賊対処行動は、水上部隊DSPE、航空隊DAPE、支援隊DGPEの3本柱で活動している。DAPEの主力として空から任務就くP-3C哨戒機に同乗、その任務の実態に迫った。菊池 雅之 KIKUCHI Masayuki

滑走路上のP-3C。自衛隊の活動拠点はジブチ国際空港に隣接している。同じくアメリカやフランスの拠点もこの場所にあり、ランウェイを共用する官民共用空港となっている 写真:菊池雅之

P-3C哨戒機パトロール飛行に同乗

 派遣海賊対処行動航空隊DAPEは、かつては第1航空群(鹿屋航空基地)、第2航空群(八戸航空基地)、第4航空群(厚木航空基地)、第5航空群(那覇航空基地)という、P- 3C哨戒機を配備する4つの航空群隷下の航空隊による、ローテーションでの派遣となっていた。
 しかしこの10年間でP-3Cは続々と引退していき、その代わりに後継の国産哨戒機であるP-1の配備が進んだ。この流れを受け、現在はP-3Cを配備する第2航空群と第5航空群の2つの部隊がDAPEを担当している
※編注:2024年9月時点も同様。2024年8月に、第55次派遣海賊対処行動航空隊として第2航空群が派遣され、第54次の第5航空群が帰国した。

アデン湾上空を飛行するP-3Cのコクピット。デジタル双眼鏡を使って監視するクルーも立つ。一眼レフカメラで写真を撮影し、その画像をPCのモニターで確認することもある 写真:菊池雅之

 2019年の取材時は第36次隊として、第5航空群第5航空隊が派遣されていた。ちなみに、本誌も含め文書上はDAPEという略語を用いているが、隊員たちは、派遣海賊対処行動航空隊を略した「派行空」(はこうくう)と呼んでいる。同じようにDGPEについても、派遣海賊対処行動支援隊を略した「派行支」(はこうし)と呼んでいる。
 このDAPEは、派遣海賊対処行動航空隊司令をトップとした司令部、航空隊、整備隊で構成されている。人員は約60名で、派遣されるP-3Cは2機。この陣容は第1次隊からほぼ変わっていない。
 ジブチ国際空港に隣接する地域には、日本だけでなくアメリカやフランスなどいくつかの国が拠点を設けている。派遣海賊対処行動航空隊司令によると「海賊対処という共通の目的を成し遂げるため、いろんな国がジブチに集まっています。このようなシチュエーションはほかにないと思います。各国と海賊に関する情報を共有するなど、連携することは非常に多いです」という。

離陸前の機体点検。気温50度に加え下からの照り返しで、ツナギの色が変わるほど、全身汗だくになりながらの作業。彼らが望むのは事故なく安全に機体が帰ってくることだ 写真:菊池雅之
フライトの準備風景。個人の手荷物、水や弁当などを運び込む。写真右側のクルーが抱える白い筒のようなものは、なんとトイレだ 写真:菊池雅之

 今回はパトロール飛行に同乗させてもらった。任務は安全回廊IRTCを並んで航行する船舶の安全を上空から確認すること。コクピットのすぐ後ろには臨時の作業台が置かれ、その上でノート型パソコンの画面を注視する。映し出されているのはAIS(船舶位置情報)だ。各船が発信する電波が画面上に映し出される。このAISに映し出されていない船を見つけると、急行して存在を確認する。海賊船として使用されているのは、スキフと呼ばれる小さな漁船だ。本物の漁船ならば漁具の類が積載されているが、海賊船は大きな梯子であったり、大きな荷物を積載している。梯子はタンカーなどの舷側にひっかけて登るためのものだ。そして大きな荷物は武器の可能性がある。ほかにも船外機をつけ、高速航行可能とした船もある。これらの兆候が見られると、海賊船、またはその可能性が高いため、その動向を監視し、他国と情報を共有する。
 レーダーのほか、デジタル双眼鏡や一眼レフカメラを用いて、肉眼での確認を行う。コクピットには常に監視任務にあたるクルーがおり、上空から目を光らせている。
 なおAISには、付近でゾーンディフェンスを担当している各国海軍艦艇も映し出されていた。取材時には中国海軍も、海賊を取り締まるため近辺を航行していた。ここソマリア沖においては、中国海軍も海賊撲滅を目指す“仲間”である。

P-3Cのレーダーなども使って海賊船を捜索する。近くを飛ぶ他国の哨戒機と連絡を取り、情報を共有することもあるという 写真:菊池雅之
食事をとりながらも窓外に目をやり、不審な船舶などがいないか確認する。機内での食事は拠点で作られた弁当を持っていく 写真:菊池雅之

初出:隔月刊『Jシップス』2019年 12月号 Vol.89

菊池 雅之KIKUCHI Masayuki

軍事フォトジャーナリスト。各国軍、自衛隊、警察、海保を取材。主な著書『陸自男子』『試練と感動の遠洋航海』『がんばれ女性自衛官』『特殊部隊の秘密』『なぜ自衛隊だけが人を救えるのか』など、共著含めると多数。『東京マグニチュード8.0』『ヱヴァンゲリヲン』などで軍事監修も行う。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員

Jシップス編集部J Ships magazine

“艦艇をおもしろくする海のバラエティー・マガジン” 隔月刊『Jシップス』の編集部。花井健朗氏・柿谷哲也氏・菊池雅之氏ら最前線のカメラマン、岡部いさく氏・井上孝司氏・竹内修氏ら第一線の執筆陣とともに、熱のこもった記事や特集をお届けしています!

https://books.ikaros.jp/search/g105696.html

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