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《特集》世界の軍用機メーカー2024──その①アメリカ

  • 特集

2024-10-9 17:27

「戦車は1000社」という言葉があるが、軍用機を1機作り上げるには、その10倍にあたる1万社の企業が関わるとも言われている。本特集では、世界各国を代表する軍用機メーカーの一部をピックアップしてその横顔を紹介していく。「その①」ではアメリカの企業を取り上げよう。稲葉義泰 INABA Yoshihiro

*本記事は、月刊『Jウイング』2023年6月号初出の記事をアップデート、再編集したものです。

ロッキード マーティン(Lockheed Martin / アメリカ)

広範な領域をカバーする世界最大規模の防衛企業

 U-2高高度偵察機やSR-71超音速偵察機、F-117ステルス戦闘機など、航空機分野で名を馳せたロッキード社と、同じく航空機メーカーであるマーティン マリエッタ社とが合併して1995年に誕生したのがロッキード マーティンだ。アメリカのメリーランド州に本社を置き、軍用機の開発・製造に加え、各種ミサイル、ヘリコプター、艦艇、レーダー、戦闘システム、さらには衛星などの宇宙関連事業まで、幅広い分野を手掛け、かつ日本を含めた世界各国に広く顧客を抱えるグローバル企業である。

会社情報

本社所在地:アメリカ メリーランド州 ベセスダ
防衛関連売上高(2021年実績。SIPRI発表[以下同]):603億4000万ドル
設立:1995年
グループ社員数:11万6000人

主な製品やシステム

F-22ステルス戦闘機
F-35ステルス戦闘機
F-16戦闘機(ジェネラル ダイナミクス社からの事業買収)
C-130輸送機
UH-60汎用ヘリコプター
V-280ティルトローター汎用機
RQ-170偵察用無人機
THAAD迎撃ミサイルシステム
SPY-7フェイズド アレイ レーダー
イージス対空戦闘システム

ロッキード マーティンが開発・製造に参画した第5世代ステルス戦闘機のF-35。航空自衛隊でもF-35Aを運用中だが、さらに数年後には垂直離着陸が可能なF-35Bの配備も始まる予定 写真:US Navy
2023年3月に幕張メッセで催されたDSEI Japanでは、ロッキード マーティン社もブースを設け、陸海空に関する各種製品を展示した 写真:鈴崎利治

RTXコーポレーション(RTX Corporation / アメリカ)

レーダーもエンジンもつくる総合防衛企業

 RTXコーポレーションは、アメリカの航空宇宙分野および防衛関連分野の主要企業。かつてのレイセオン テクノロジーズが、2023年に改組に伴う社名変更をして誕生した。3つの大きな部門──誘導武器や航空宇宙のレイセオン、アビオニクス(航空電装)のコリンズ エアロスペース、航空エンジンのプラット&ホイットニーに分かれており、弾道ミサイルを迎撃するSM-3や、アメリカ海軍に順次配備が始まる新型レーダーSPY-6、地対空ミサイルシステムであるパトリオット用の新型レーダーLTAMDS、さらにF-35のエンジンであるF135など、さまざまな装備を開発・生産している。

会社情報

本社所在地:アメリカ マサチューセッツ州ウォルサム
防衛関連売上高(2021年実績):418億5000万ドル
設立:2020年
グループ社員数:18万2000人

主な製品

SM-3迎撃ミサイル
AIM-120空対空ミサイル
SPY-6フェイズド アレイ レーダー
LTAMDS防空レーダー
F135ターボファン エンジン

西側戦闘機の主要な空対空兵装であるAIM-120AMRAAMと、AIM-9サイドワインダーを開発・生産しており、各国に対して優れた空対空戦闘能力を提供している 写真:RTX Corporation
レイセオンの一部門であるコリンズ エアロスペースでは、航空自衛隊でも運用されているF-35用のヘッドマウンテッド ディスプレイシステム(HMDS)を開発している 写真:RTX Corporation

ボーイング(Boeing / アメリカ)

軍民ともに名機を生み出してきた歴史ある飛行機メーカー

 ボーイング社は、民間旅客機や各種軍用機、さらに衛星やロケットの開発・生産を担う世界的な航空宇宙産業メーカーとして知られる。同社は1916年にアメリカの実業家であるウィリアム・E・ボーイングが創立したエアロ プロダクト社にルーツがある。幾度かの社名変更などを経て、1934年には当時のユナイテッド エアクラフト&トランスポートからボーイング エアプレーン社が独立。その後、同社は1960年にヴァートル エアクラフト社を買収し、ヘリコプターの開発にも参入。さらに1997年にはマクドネル ダグラス社と合併し、さらに企業規模を拡大するに至った。

会社情報

本社所在地:アメリカ バージニア州アーリントン
防衛関連売上高(2021年実績):334億2000万ドル
設立:1916年
社員数:1万5000人(防衛・宇宙・セキュリティ部門)

主な製品

F-15戦闘機
F/A-18戦闘機
KC-46空中給油・輸送機
AH-64攻撃ヘリコプター
CH-47輸送ヘリコプター
スキャンイーグル無人機
オスプレイ ティルトローター機(ベル社との共同開発)
737、747ジャンボ、767、777、787旅客機

F/A-18E/F戦闘機は、最新バージョンでブロック3のアメリカ海軍への納入を開始。F-35Cの配備も始まっているが、まだまだ空母航空団の中核である 写真:Boeing
航空自衛隊が運用するKC-767空中給油・輸送機。戦闘機への空中給油だけではなく、災害時の物資輸送などでも活躍する 写真:Boeing

ノースロップ グラマン(Northrop Grumman / アメリカ)

最新鋭爆撃機B-21レイダーを開発中

 ノースロップ グラマン社は、軍用機の開発や宇宙関連分野に進出しているメーカーで、とくにB-2スピリットやB-21レイダーなど、ステルス全翼型爆撃機の開発で知られる。ノースロップ社とグラマン社という別々の企業からスタートしており、まず1929年にリロイ・R・グラマンがグラマン エアクラフト エンジニアリング社を創設し、主にアメリカ海軍の艦載戦闘機などを開発・生産したほか、アポロ計画に際しては月面着陸船の開発も担当した。一方、1939年にジャック・ノースロップによって創設されたのがノースロップ社で、同社が1994年にグラマン社を買収したことにより、現在のノースロップ グラマン社が誕生した。

会社情報

本社所在地:アメリカ バージニア州ウエストフォールズチャーチ
防衛関連売上高(2021年実績):298億8000万ドル
設立:1994年
グループ社員数:9万5000人

主な製品

B-2爆撃機
B-21爆撃機
E-2D早期警戒機
MQ-8無人ヘリコプター
RQ-4高高度偵察無人機
AARGM-ER対レーダーミサイル
IBCS統合戦闘システム

アメリカ空軍の次期主力爆撃機であるB-21レイダー。2024年4月に初飛行した。現用のB-2爆撃機よりもコンパクトに作られている 写真:Northrop Grumman
伝説的なアメリカ海軍の艦上戦闘機、F-14トムキャット。同機を開発・製造したのがノースロップ グラマン社の前身の一つであるグラマン社だった 写真:Northrop Grumman

ジェネラル ダイナミクス(General Dynamics / アメリカ)

主に艦艇および陸上兵器の開発・生産で知られる

 ジェネラル ダイナミクス社の歴史を遡ると、1899年に設立されたエレクトリック ボート社まで遡る。第2次世界大戦まではアメリカ海軍向けに潜水艦を建造していたが、終戦後、カナダの航空機メーカーであるカナディア社を買収して航空機産業に進出・社名をジェネラル ダイナミクスに改めた。さらに航空機メーカーのコンベア社を買収し、F-106戦闘機やB-58爆撃機、アメリカ初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)であるSM-65アトラスなどを相次いで開発。1970年代にはアメリカ空軍の軽量戦闘機計画LWFに参加し、傑作戦闘機となるF-16を開発した。その後は航空機関連の傘下企業を売却、代わりに防衛企業を次々に買収し、陸上兵器と艦艇の生産・建造に力を注いでいる。

会社情報

本社所在地:アメリカ バージニア州レストン
防衛関連売上高(2021年実績):263億9000万ドル
設立:1952年 グループ社員数:10万人

主な製品

オハイオ級攻撃型原子力潜水艦
ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦
コロンビア級攻撃型原子力潜水艦
アーレイバーク級駆逐艦
M1A2エイブラムス戦車
ストライカー装甲車

ジェネラル ダイナミクス社が手掛けた西側の傑作戦闘機のひとつ、F-16。事業整理によりロッキード社に売却された 写真:US Air Force
進水式を迎えたアメリカ海軍のアーレイバーク級駆逐艦「カール・M・レビン」(DDG-120)。同艦の建造はバス鉄工所で行われた 写真:General Dynamics

ジェネラル アトミクス(General Atomics / アメリカ)

海保導入の無人機「シーガーディアン」も製造

 ジェネラル アトミクスは、もともとジェネラル ダイナミクス社の原子力関連部門として設立された。現在は、系列企業であるジェネラル ダイナミクス エアロノーティカル システム(GA-ASI)などもあわせて幅広い事業を展開している。防衛関連では、アメリカ海軍の空母に搭載されている発艦装置である電磁カタパルト(EMALS)や先進着艦装置(AAG)などのほか、MQ-9「リーパー」シリーズやMQ-20「アヴェンジャー」などの無人機(UAV)の開発・製造している。

会社情報

本社所在地:アメリカ カリフォルニア州サンディエゴ
防衛関連売上高(2021年実績):28億1000万ドル
設立:1955年
社員数:1万2500人

主な製品

リーパー偵察・攻撃用無人機
ガーディアン監視用無人機
電磁カタパルトEMALS
着艦装置AAG

無人航空機であるMQ-9Bシーガーディアン。海上保安庁でも運用が開始され、海上自衛隊も試験運用が開始される予定 写真:General Atomics
稲葉義泰INABA Yoshihiro

軍事ライターとして自衛隊をはじめとする各国軍や防衛産業に携わる国内外企業を取材する傍ら、大学院において国際法を中心に防衛法制を研究。著者に『「戦争」は許されるのか 国際法で読み解く武力行使のルール』『“戦える”自衛隊へ 安全保障関連三文書で変化する自衛隊』(イカロス出版)などがある。

https://x.com/japanesepatrio6

月刊Jウイング編集部JWings magazine

1998年7月創刊、毎月21日頃発売のミリタリー航空専門月刊誌『Jウイング』の編集部。最新号(2024年11月号)の特集は、「島嶼防衛の最前線をゆく 築城基地とF-2戦闘機」。

https://books.ikaros.jp/search/g105694.html

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