《ニュース解説》飛行中の自衛隊機からの部品落下・紛失について
- ニュース解説
2024-10-30 18:51
今年度に入ってから数件が報告されている、飛行中の自衛隊機からの部品落下(の可能性)について、自衛隊でヘリコプター整備に携わっていた影本賢治氏が解説します。
2024年5月以来、Jディフェンスニュースには、自衛隊機の部品が紛失し飛行中に落下した可能性があるというニュースが4件掲載されました。

いずれも重さ数グラムの小さな部品ですが、続けざまに発生していることに不安を感じる人もいるかもしれません。
なお、これ以外にも、2024年2月8日にはCH-47輸送ヘリ、4月16日にはUH-60JA多用途ヘリでも同じように小さな部品の紛失が発生しています。
原因と対策
部品が脱落した原因については何も発表されていませんが、人為的なミスによるものではないと思われます。これらの事案で紛失した部品は、ボルトやナットなどのように、締め忘れなどの可能性があるものではないからです。おそらく、部品が劣化していたところに機体の振動が加わることにより、亀裂などの損傷が徐々に進展して破断してしまい、飛行中に抜け落ちたものと考えられます。(ヘリコプターは振動が大きいため、このような不具合が発生しやすい傾向にあります。)
陸上自衛隊で航空機の整備を担当していた筆者は、このような事案が発生するたびに、同一機種の同じ部品はもちろんのこと、別の機種や別の部品についても新たな点検が追加されることを経験してきました(そういった対策は「水平展開」と呼ばれていました)。脱落しないように部品そのものを改修する場合もありますが、費用対効果の面から、すべての部品を改修することは不可能です。このため、ほとんどの場合は、点検を強化することで同種事案の発生を防止することになります。ただし、すべての部品の劣化を事前に発見するのは、容易なことではありません。
民間機の状況
ちなみに民間機については、国土交通省から「部品欠落報告について」という資料が定期的に公表されています。2023年度には、羽田空港を含む7空港で年間1,283個の部品の欠落が報告されています。こちらも約8割が10グラム以下の小さな部品ですが、中には1キログラム以上の部品が欠落していたケースもあるようです。

民間機と自衛機では、対象となる航空機の種類、規模、機数などが全く異なるので単純に比較することはできませんが、部品の紛失(欠落)が民間機にも相当数発生していることは明らかです。
米軍機の状況
米軍機についても、何か情報はないかネットを検索してみましたが、このような事案の発生を報じている記事を見つけることはできませんでした。同じようなことが起こっていないはずはないのですが、広大な国土によるものなのか、あるいはおおらかな国民性によるものなのか、日本のように問題となる(する)ことはないようです。
公表の必要性
このような事案に対しては、「しっかりと再発防止対策をとってもらいたい」という意見が大多数を占めるに違いありませんが、中には「わずか数グラムの部品についてまで、わざわざ公表する必要があるのか?」という意見もあると思います。しかし、もし公表しなければ、再発防止に向けた隊員の意識が弱まるかもしれません。また、戦いに勝つためには、こういった細やかなことへの注意こそが重要なのかもしれません。部品紛失事案の公表は、自衛隊が安全の確保と部隊や隊員の強靭化に向けて真剣に努力を続けている証なのです。
Ranking読まれている記事
- 24時間
- 1週間
- 1ヶ月
- レールガンの進捗状況を発表 極超音速兵器の撃墜めざす:防衛装備庁シンポジウム レポート③
- 日本の防衛にも成層圏ガス気球を 北海道の企業が展示:防衛装備庁シンポジウム レポート④
- アデン湾海賊対処のP-3C哨戒機 令和7年10月の活動状況
- 戦闘機と一緒に作戦行動する無人機、日本も作ってみた:防衛装備庁シンポジウム レポート①
- 防衛装備庁が次期戦闘機に搭載する誘導武器に関する情報提供企業を募集(11月13日)
- 陸海空自衛隊、令和7年9月における逮捕・送致の実績を公開(11月17日)
- 島嶼防衛用新型対艦ミサイルの研究は1回目の試射が終了:防衛装備庁シンポジウム レポート②
- 人事発令 令和7年8月1日付け、将補人事(陸自36名、海自11名、空自20名)
- 人事発令 11月9日・10日付け、1佐職人事(空自9名、陸自2名)
- 第216回臨時国会に、自衛官の俸給月額やボーナス引き上げについての法律案が提出
- 人事発令 11月9日・10日付け、1佐職人事(空自9名、陸自2名)
- レールガンの進捗状況を発表 極超音速兵器の撃墜めざす:防衛装備庁シンポジウム レポート③
- 戦闘機と一緒に作戦行動する無人機、日本も作ってみた:防衛装備庁シンポジウム レポート①
- 島嶼防衛用新型対艦ミサイルの研究は1回目の試射が終了:防衛装備庁シンポジウム レポート②
- 国連の野外衛生救護補助員コースに11月24日から陸上自衛官1名を派遣予定(11月12日)
- 防衛装備庁が次期戦闘機に搭載する誘導武器に関する情報提供企業を募集(11月13日)
- 人事発令 11月5日付け、1佐人事(海自1名)
- 陸自UH-1J多用途ヘリにレーザー照射 徳島県住宅地上空で発生 乗員・航空機に被害なし・警察に通報(11月11日)
- 海自、フィジー 海軍と共同訓練を実施(11月3~7日)
- 人事発令 令和7年8月1日付け、将補人事(陸自36名、海自11名、空自20名)
- 人事発令 11月9日・10日付け、1佐職人事(空自9名、陸自2名)
- レールガンの進捗状況を発表 極超音速兵器の撃墜めざす:防衛装備庁シンポジウム レポート③
- 人事発令 10月30日付け、1佐職人事(空自4名)
- 戦闘機と一緒に作戦行動する無人機、日本も作ってみた:防衛装備庁シンポジウム レポート①
- 人事発令 11月5日付け、1佐人事(海自1名)
- 人事発令 10月21日付け、指定職・書記官人事
- 人事発令 令和7年8月1日付け、将補人事(陸自36名、海自11名、空自20名)
- 島嶼防衛用新型対艦ミサイルの研究は1回目の試射が終了:防衛装備庁シンポジウム レポート②
- 国連の野外衛生救護補助員コースに11月24日から陸上自衛官1名を派遣予定(11月12日)
- 人事発令 令和7年8月1日付け、1佐職人事(陸自196名、海自60名、空自62名)





