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《ニュース解説》飛行中の自衛隊機からの部品落下・紛失について

  • ニュース解説

2024-10-30 18:51

今年度に入ってから数件が報告されている、飛行中の自衛隊機からの部品落下(の可能性)について、自衛隊でヘリコプター整備に携わっていた影本賢治氏が解説します。影本賢治 KAGEMOTO Kenji

 2024年5月以来、Jディフェンスニュースには、自衛隊機の部品が紛失し飛行中に落下した可能性があるというニュースが4件掲載されました。

Jディフェンスニュースが報じた自衛隊機の部品紛失事案(2024年5月~10月)

 いずれも重さ数グラムの小さな部品ですが、続けざまに発生していることに不安を感じる人もいるかもしれません。

写真1 EC-225LP要人輸送ヘリの紛失した部品(5月26日)
出典:防衛省資料
写真2 AH-1S対戦車ヘリの紛失した部品(7月10日)
出典:防衛省資料
写真3 UH-60JA多用途ヘリの紛失した部品(7月22日)
出典:防衛省資料
写真4 UH-1J多用途ヘリの紛失した部品(10月27日)
出典:防衛省資料

 なお、これ以外にも、2024年2月8日にはCH-47輸送ヘリ、4月16日にはUH-60JA多用途ヘリでも同じように小さな部品の紛失が発生しています。

原因と対策

 部品が脱落した原因については何も発表されていませんが、人為的なミスによるものではないと思われます。これらの事案で紛失した部品は、ボルトやナットなどのように、締め忘れなどの可能性があるものではないからです。おそらく、部品が劣化していたところに機体の振動が加わることにより、亀裂などの損傷が徐々に進展して破断してしまい、飛行中に抜け落ちたものと考えられます。(ヘリコプターは振動が大きいため、このような不具合が発生しやすい傾向にあります。)

 陸上自衛隊で航空機の整備を担当していた筆者は、このような事案が発生するたびに、同一機種の同じ部品はもちろんのこと、別の機種や別の部品についても新たな点検が追加されることを経験してきました(そういった対策は「水平展開」と呼ばれていました)。脱落しないように部品そのものを改修する場合もありますが、費用対効果の面から、すべての部品を改修することは不可能です。このため、ほとんどの場合は、点検を強化することで同種事案の発生を防止することになります。ただし、すべての部品の劣化を事前に発見するのは、容易なことではありません。

民間機の状況

 ちなみに民間機については、国土交通省から「部品欠落報告について」という資料が定期的に公表されています。2023年度には、羽田空港を含む7空港で年間1,283個の部品の欠落が報告されています。こちらも約8割が10グラム以下の小さな部品ですが、中には1キログラム以上の部品が欠落していたケースもあるようです。

「2023年度の部品欠落報告について」(国土交通省)の一部

 民間機と自衛機では、対象となる航空機の種類、規模、機数などが全く異なるので単純に比較することはできませんが、部品の紛失(欠落)が民間機にも相当数発生していることは明らかです。

米軍機の状況

 米軍機についても、何か情報はないかネットを検索してみましたが、このような事案の発生を報じている記事を見つけることはできませんでした。同じようなことが起こっていないはずはないのですが、広大な国土によるものなのか、あるいはおおらかな国民性によるものなのか、日本のように問題となる(する)ことはないようです。

公表の必要性

 このような事案に対しては、「しっかりと再発防止対策をとってもらいたい」という意見が大多数を占めるに違いありませんが、中には「わずか数グラムの部品についてまで、わざわざ公表する必要があるのか?」という意見もあると思います。しかし、もし公表しなければ、再発防止に向けた隊員の意識が弱まるかもしれません。また、戦いに勝つためには、こういった細やかなことへの注意こそが重要なのかもしれません。部品紛失事案の公表は、自衛隊が安全の確保と部隊や隊員の強靭化に向けて真剣に努力を続けている証なのです。

影本賢治KAGEMOTO Kenji

昭和37(1962)年北海道旭川市生まれの元陸上自衛官。アメリカ陸軍や関連団体が発信する航空関連の様々な情報を翻訳掲載するウェブサイト『AVIATION ASSETS』の管理人。在職中は主に航空機の補給整備に関する業務に携わった。翻訳書に『ドリーム・マシーン』『イーグル・クロー作戦』。

https://aviation-assets.info/

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