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《ニュース解説》GPIとは?──日米共同開発する新たな迎撃ミサイル

  • ニュース解説

2024-9-26 09:18

防衛省と米ミサイル防衛局は2024年9月26日、今年度から日米共同開発を開始した「GPI」について、アメリカのノースロップ・グラマン社が提案するコンセプトを採用することを決定した。ここではGPIの概要と、日本の開発担当箇所について手短に解説する。稲葉義泰 INABA Yoshihiro

GPIのコンセプト図 画像:ノースロップ・グラマン

  GPI(滑空段階迎撃用誘導弾) は、近年その脅威が高まりつつある 極超音速兵器 (マッハ5以上で飛翔する兵器)に対処するための迎撃ミサイルだ。

 極超音速兵器は、大きく2種類に分けられる。
 1つは 極超音速滑空兵器(HGV) だ。発射後しばらくは弾道ミサイルと同様に上昇していくものの、切り離された弾頭が大気圏外と大気上層部の間をグライダーのように滑空して飛翔し、目標を攻撃する。
 もう1つは 極超音速巡航ミサイル だ。こちらはラムジェットもしくはスクラムジェットという特殊な構造のエンジンにより、マッハ5以上の速度(極超音速)で巡航する、長射程のミサイルだ。
 GPIは、おもにHGVへの対処を念頭に起きつつ、極超音速巡航ミサイルの迎撃も視野に入れた迎撃ミサイルである。

 GPIは、米ミサイル防衛局(MDA)が2021年に開発を開始し、2022年からRTX社とノースロップ・グラマン社の2社と契約を結んできた。2023年8月、日米両国はGPIの共同開発を決定し2024年5月にはプロジェクト取り決めに署名したうえで、日米間で上記2社のコンセプトのうちいずれを採用するか、検討を進めてきたところであった。
 そして、検討に必要なデータが出そろい、それぞれのコンセプトの性能、コスト、スケジュールおよびリスクを総合的に評価した結果、ノースロップ・グラマン社の提案を採用することで日米両国が合意したという。

 防衛省によると、ノースロップ・グラマン社が提案したGPIは3段式のミサイルで、イージス艦からの運用を予定している。
 まず、Mk. 72(第1段ブースター)により、甲板上の垂直発射装置(VLS)から射出。第2段、第3段のブースターで加速・上昇した後、キルビークル(破壊飛翔体)が切り離され、これにより目標を破壊する。
 従来、弾道ミサイルの迎撃を担ってきたSM-3シリーズでは、キルビークルにより弾道ミサイルの弾頭部分を直撃破壊(ヒット・トゥ・キル)してきたが、今回のGPIではどのような手法で目標を迎撃するのか、防衛省は明らかにしていない。

 防衛省によると、3段式のミサイルとなるGPIのうち、日本は
第2段ロケットモーター
第2段の操舵装置
キルビークルの推進装置および操舵装置
 の開発を担当する。最終的に、日米で開発・製造した構成品はアメリカにおいて統合される。

 防衛省としては、今後年内に開発を担当する国内企業との契約締結するとしており、2030年代の開発完了を予定している。

※GPI:Glide Phase Interceptor、グライド・フェイズ・インターセプター
※HGV:Hypersonic Glide Vehicle、ハイパーソニック・グライド・ビークル
※MDA:Missile Defense Agency、ミサイル・ディフェンス・エイジェンシー

稲葉義泰INABA Yoshihiro

軍事ライターとして自衛隊をはじめとする各国軍や防衛産業に携わる国内外企業を取材する傍ら、大学院において国際法を中心に防衛法制を研究。著者に「『戦争』は許されるのか 国際法で読み解く武力行使のルール」(イカロス出版)などがある。

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