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石破新内閣が発足、最初の記者会見で安全保障に言及(10月1日)

  • 日本の防衛

2024-10-4 10:41

石破茂内閣の発足と外務大臣、防衛大臣の起用

石破新内閣発足の記念撮影。最前列中央が石破首相、その奥が中谷防衛大臣 写真:首相官邸

 令和6(2024)年9月30日(月)、岸田文雄(きしだ・ふみお)内閣総理大臣が自由民主党総裁としての任期満了を迎えた。これに先立って、9月27日(金)に自民党の総裁選挙がおこなわれ、石破茂(いしば・しげる)氏が第28代総裁に選ばれた。

 10月1日(火)午後、衆議院と参議院で首相指名投票が行われ、石破茂衆議院議員が第102代の内閣総理大臣に指名された。閣僚名簿が発表され、宮中での内閣総理大臣親任式と国務大臣認証式の後、石破内閣が発足した。
 組閣においては、外務大臣に岩屋毅(いわや・たけし)衆議院議員が、防衛大臣に中谷元(なかたに・げん)衆議院議員が起用されている。

 これにより、石破総理大臣が内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有し、中谷防衛大臣が内閣総理大臣の指揮監督を受けて自衛隊の隊務を統括することとなった。
 ちなみに石破氏、岩屋氏、中谷氏とも防衛庁長官/防衛大臣の経験者であり、中谷氏は防衛大学校卒で元陸上自衛官(2等陸尉、レンジャー)である。

新内閣発足にあたっての最初の記者会見

記者会見に臨む石破首相 写真:首相官邸

 総理大臣官邸でおこなわれた新内閣発足に当たっての記者会見では、石破首相は防衛に関する内容にも触れた。
 まず冒頭発言で「この内閣での基本方針は、“守る”ということであります。5つの「守る」ということを実行いたしてまいります。」と前置きし、このように述べている。

(前略)
石破首相
 第二は、「日本を守る」ということであります。
 我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しいものだと認識をいたしております。
 国家安全保障戦略に基づき、平和を守るための抑止力の強化、防衛力の抜本強化に取り組んでまいります。
 現実的な国益を踏まえました外交によりまして、日米同盟を基軸に、友好国・同志国の輪を広げ、外交力・防衛力の両輪で、我が国の平和、地域の安定を実現いたしてまいります。その際、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、法の支配を重視し、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導してまいります。
 防衛力の抜本的な強化は着実に進めてまいりますが、防衛力の抜本的強化と申しましたときに、それは装備だけを意味するものではございません。現在、定員割れとなっております自衛官、その処遇改善、勤務環境の改善、そして、新たな生涯設計の確立が喫緊の課題であると認識をいたしておるところでございます。このことにつきましては、私、内閣総理大臣を長といたします関係閣僚会議を設置し、早急に成案を得るものといたします。
 これらの抑止力・対処力の強化に加え、基地負担の軽減にも引き続いて取り組んでまいります。経済安全保障、サイバーセキュリティーの強化にも取り組んでまいります。
 拉致問題は、私どもの内閣の最重要課題であります。全ての拉致被害者の方々の一日も早い御帰国を実現すべく、強い決意を持って取り組んでまいります。
 在外邦人の皆様方の安全確保にも力を尽くしてまいります。
(後略)

 続く記者との質疑応答では、日米安全保障条約の基盤となっている日米地位協定について、以下のやり取りがあった。

(前略)
記者
 日米地位協定に関連してお伺いします。日米安保体制では、アメリカが日本を防衛する義務を負い、日本はアメリカに施設や区域を提供する関係となっています。石破総理は自衛隊の訓練基地をアメリカに置く必要性を先ほども訴えられておりましたが、それは逆に日本がアメリカを防衛する義務を負うということにはつながらないのでしょうか。御認識を伺います。

石破首相
 全くつながりません。それは全く別の問題でございます。日米安全保障体制というのは合衆国が日本を守る義務を負い、日本国は合衆国に基地を提供する義務を負うという、提供する義務の内容が全く違っておるという世界でたった一つの同盟関係であります。「非対称的双務関係」とも申しております。
 私どもとして、少なくとも私として、陸上自衛隊、航空自衛隊がフルスケールの訓練が行えないということがございますので、その適地を、合衆国にあるとすれば求めたいと思っております。それは合衆国が日本の自衛隊を受け入れる義務を必要とすると、そういうものでは全くございませんし、そうであるからといって日本が合衆国防衛の義務を負うものでも全くございません。
 これは集団的自衛権を念頭に置いた御質問かと思いますけれども、集団的自衛権の問題とは関係ございませんので、単に、単にと言うべきですかね、訓練をより効果的に行うために、日米同盟をより強固なものとするために、そして、そうでありとせば、当然地位協定の改定というものが伴いますので、日米が果たすべき義務というものに変化はございません。

記者
 総裁選中における発言や公約についてお伺いします。先ほど来、質問が出ていますが、日米地位協定に関して、総理は沖縄県での演説会で改定に着手すべきだと明言をされました。また、アジア版NATO(北大西洋条約機構)については、読売新聞のインタビューで創設を急ぐべきだと発言されています。いずれも本気で実現を目指すのであれば、早々に検討に着手すべき案件だと思いますが、本日、関係閣僚には特段の指示はなかったとのことです。これは、事実上棚上げするというお考えなのか、あるいはまだ機が熟していないという考えなのか、その理由をお聞かせください。(以下、防衛関係ではないため略)

石破首相
 地位協定、そして、アジア版の集団安全保障ということについては、長い間、私自身、この問題の提起をいたしてまいりました。恐らくもう二十数年にわたるものだと思います。自民党の安全保障調査会でも何度も問題は提起してまいりました。総理大臣になったからといって、いきなりそれが実現するとは思っておりません。
 しかしながら、政府において、あるいは党において、私の問題意識を認識しておる人はたくさんおられます。今、具体的にそういう指示は出しておるわけではございませんが、そういう認識を持っている人たち、そして、それがこの地域の平和と安定を守ることに必ず資するものだという信念を持っている人たち、それが条約上どうなのか、憲法解釈上どうなのかということについて正確な知識を持っている人たち、そういう人たちの動きを、これから先、加速してまいりたいと思っております。それは、これはもう30年、それどころではないですね、日米地位協定というものができて以来、ずっとこの議論はあったのです。一朝一夕でそういうのが変わると思っていません。しかし、だからといって諦めていいと私は全く思っておりませんので、そういうことには着実に取り組んでまいります。
(以下略)

※記者会見の全文をお読みになりたい方は、こちらのリンクから御覧ください。

内閣総理大臣談話と基本方針

 新内閣の発足後、内閣は閣議決定事項として内閣総理大臣談話を発表し、基本方針を示した。
 内容は以下の通り。

内閣総理大臣談話

 本日、私は内閣総理大臣を拝命し、自由民主党と公明党の連立による新たな内閣が、発足いたしました。職責を果たすべく、全身全霊を捧げてまいります。
 「ルールを守る」「日本を守る」「国民を守る」「地方を守る」「若者・女性の機会を守る」の5つの柱で、日本の未来を創り、日本の未来を守り抜きます。
 その前提として、勇気と真心をもって真実を語る、謙虚で、誠実で、温かく実行力のある政治、そして、国民の皆様の納得と共感を得られる政治を進めてまいります。
 国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

基本方針

 国民の納得と共感を得られる政治を実現し、日本を守り、国民を守り、地方を守り、若者・女性の機会を守る。すべての人に安心と安全をもたらす社会を実現する。その強い覚悟の下、内閣の総力を挙げて、以下の政策を推し進める。

1  日本を守る
 激変する安全保障環境から日本を守り抜くため、国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化に取り組むとともに、現実的な国益を踏まえた外交により、日米同盟を基軸に、友好国・同志国を多く獲得し、外交力と防衛力の両輪をバランス良く強化し、我が国の平和、地域の安定を実現する。自由で開かれたインド太平洋のビジョンの下、法の支配に基づく国際規範を形成し、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導する。北朝鮮による拉致被害者の帰国実現に取り組む。あわせて、自衛官の処遇改善等に取り組む。経済安全保障、サイバーセキュリティの強化に取り組む。
 子育て支援に全力を挙げるとともに、地方によって異なる少子化をめぐる状況にも目を向け、若者・女性に選ばれる地方、多様性のある地域分散型社会づくりを目指す。
 経済あっての財政との考え方に立ち、デフレ脱却最優先の経済・財政運営を行う。成長分野に官民挙げての思い切った投資を行い、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しつつ、財政状況の改善を進める。コストカット型経済から高付加価値創出経済への転換、持続可能なエネルギー政策、イノベーションとスタートアップ支援を推進し、力強く発展する、危機に強靱な経済財政を実現する。

2  国民を守る
 賃上げと人手不足緩和の好循環に向け、生産性と付加価値の向上、実質賃金の増加を実現する。多様な人生の在り方、多様な人生の選択肢を実現できる柔軟な社会保障制度を構築する。
 東日本大震災、能登半島地震をはじめとする大規模災害からの復興に全力で取り組むとともに、防災・減災、国土強靱化の取組を加速する。巨大自然災害や頻発化・激甚化する風水害に対処し、国民を守るための体制整備を進める。
 万一、大規模な自然災害、テロ、感染症など、国家的な危機が生じた場合、国民の生命、身体、財産を守ることを第一に、政府一体となって、機動的かつ柔軟に全力で対処する。

3  地方を守る
 「地方こそ成長の主役」との発想に基づき、少子高齢化や人口減少にも対応するため、地方創生2.0を起動するべく、集中的に取り組む基本構想を策定し、実行する。農業・漁業・林業を振興し、あわせて、観光産業の高付加価値化、文化芸術立国に向けて取り組む。

4  若者・女性の機会を守る
 あらゆる人が最適な教育を受けられる社会をつくるとともに、あらゆる組織の意思決定に女性が参画するための取組を推進し、若者・女性、それぞれの方々の幸せ、そして人権が守られる社会を実現する。

(以上)

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