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[国会答弁]FMS調達の急増と未納入・未精算問題の現状等に関する質問と答弁

  • 日本の防衛

2024-12-12 09:01

 令和6(2024)年12月10日(火)、衆議院議員原口一博(はらぐち・かずひろ)氏が第216回国会に提出した質問「FMS調達の急増と未納入・未精算問題の現状等に関する質問主意書」とそれに対する答弁書が報道に公開された。

※FMS:Foreign Military Salesの略語で、「海外軍事販売」や「海外有償軍事援助」と訳される。アメリカが軍用装備品などを海外に輸出する際に用意している枠組みで、輸出先の国はメーカーと直接取り引きせず、米軍がメーカーに発注したものを米軍から購入する。メーカーとの契約手続きを米軍が代行するため、相応の手数料は取られるものの、米軍で調達中の装備であれば米軍の契約に混ぜて発注されるので、後回しにされないというメリットがある。

 内容はこちらの通り。

FMS調達の急増と未納入・未精算問題の現状等に関する質問主意書

 令和6年11月28日提出 質問第19号
 提出者 原口一博

 FMSによる装備品等の取得に係る経費は、第二次安倍政権時には最大でも令和元年度予算の7013億円であったが、岸田内閣発足後の令和5年度予算では1兆4768億円にまで達している。
 これを踏まえ、次のとおり質問する。

一 第二次安倍内閣から岸田前内閣までのFMSによる装備品等の取得に係る経費の推移を示した上で、岸田前政権下でFMS調達が急増した理由について政府の見解を伺いたい。また、石破新内閣としても、FMSによる装備品等の取得を積極的に続けていく方針か伺いたい。

二 FMS調達をめぐっては、未納入・未精算の問題が繰り返し指摘されており、政府は、その改善のために様々な取組を行っていると説明している。過去10年間のFMS調達の未納入・未精算の件数及び金額の推移を示した上で、実際にそれらの改善策が功を奏してきているのか、政府の見解を伺いたい。

三 FMS調達の未納入・未精算が改善していないとすれば、そのような状態が長期間にわたって続いている原因は何であると考えるか、政府の見解を伺いたい。

四 政府がFMS調達で取得したグローバルホークは旧型のブロック30であり、FMS調達で取得予定のトマホークの一部も旧型のブロックⅣであるとされる。この点に関し、米国から型落ちの兵器を言い値で押し付けられているといった趣旨の批判も見受けられるが、政府の見解を伺いたい。

五 ウクライナやイスラエルに対する近年の膨大な軍事支援の結果、米軍の兵器の備蓄は減少しているといわれており、これを補うために令和6年7月には航空自衛隊が保有するペトリオット・ミサイルの一部を米国に売却する契約まで締結されている。こうした状況を踏まえると、FMS調達における米国からの納入の遅延や納入される装備品等のグレードダウンも懸念されるが、政府の認識を伺いたい。

 右質問する。

衆議院議員原口一博君提出FMS調達の急増と未納入・未精算問題の現状等に関する質問に対する答弁書

一について

 第二次安倍内閣発足以降の、米国の有償援助による調達(以下「FMS調達」という。)に係る各年度ごとの当初予算額(契約ベース)は、次のとおりである。

 平成25年度 約1179億円
 平成26年度 約1906億円
 平成27年度 約4705億円
 平成28年度 約4858億円
 平成29年度 約3596億円
 平成30年度 約4102億円
 令和元年度 約7013億円
 令和2年度 約4713億円
 令和3年度 約2543億円
 令和4年度 約3797億円
 令和5年度 約1兆4768億円
 令和6年度 約9316億円

 お尋ねの「岸田前政権下でFMS調達が急増した理由」については、一般に、装備品の調達には複数年度を要するところ、「防衛力整備計画」(令和4年12月16日閣議決定)に基づき、令和9年度までの防衛力の抜本的強化の実現に向け、可能な限り早い段階で契約を行ったことから、令和5年度以降、FMS調達に係る当初予算額が増加しているものである。
「石破新内閣としても、FMSによる装備品等の取得を積極的に続けていく方針か伺いたい」とのお尋ねについては、FMS調達は、米国からのみ調達が可能な高性能な装備品に係るものであることから、今後も必要に応じて活用していく考えである。

二及び三について

 お尋ねについて、過去10年間の各年度における①お尋ねの「未納入」の件数及び金額並びに②お尋ねの「未精算」の件数及び金額をお示しすると、次のとおりである。

 平成26年度 ①92件、約227億円 ②197件、約321億円
 平成27年度 ①73件、約167億円 ②257件、約522億円
 平成28年度 ①89件、約189億円 ②277件、約623億円
 平成29年度 ①86件、約351億円 ②280件、約520億円
 平成30年度 ①132件、約326億円 ②263件、約493億円
 令和元年度 ①84件、約166億円 ②229件、約332億円
 令和2年度 ①55件、約144億円 ②250件、約337億円
 令和3年度 ①62件、約123億円 ②313件、約400億円
 令和4年度 ①50件、約117億円 ②318件、約366億円
 令和5年度 ①50件、約113億円 ②296件、約365億円

「未納入」及び「未精算」の金額は、全体として減少の傾向にあるが、防衛省としては、令和6年5月20日の参議院決算委員会において、森防衛装備庁調達管理部長(当時)が「まず、防衛装備庁において、履行管理体制強化のために、令和2年度に、米国現地に米国政府との調整を行う有償援助調達調整班を新設いたしました。これ、在米のスタッフがおるんですけれども、それを4名から10名に増強しているところでございます。一方で、国内でも令和3年度に、防衛装備庁本庁の調達実施部署にFMS調達の履行状況を管理する4名から成る履行管理・促進班を新設して業務に当たっているところでございます。それと、毎年度、FMS調達の諸課題について米側と協議をするSCCM本会議という会議がございます。そこにおきまして、全ての未納入、未精算のケースの個々の品目ごとの履行状況の管理を継続、強化することとしておりまして、米側に個別具体的に働きかけを行っている状況でございます。」と答弁しているとおり、各種取組を進めてきた結果、一定の改善が得られたものと考えている。

四について

 お尋ねの「批判」について、その背景や根拠等を必ずしも承知しているわけではないが、御指摘の「グローバルホーク」及び「トマホークの一部」は、いずれも、我が国防衛を全うする観点からその必要性を勘案し、取得した装備品である。

五について

 御指摘の「FMS調達における米国からの納入の遅延や納入される装備品等のグレードダウン」を含め、FMS調達について課題が生じた場合には、米国政府との交渉・協議等を通じて適切に対応しつつ、我が国として必要となる装備品等を調達していくこととしている。

(以上)

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