中谷防衛大臣が記者会見 北朝鮮のミサイル開発や米軍戦闘機の長期間駐機などの質問に回答(5月9日)
- 日本の防衛
2025-5-13 09:29
令和7(2025)年5月9日(金)09時06分~09時20分、中谷元(なかたに・げん)防衛大臣は、国会議事堂本館閣議室前において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項はなく、以下のとおり記者との質疑応答が行われた。
記者との質疑応答
北朝鮮によるミサイル開発について
記者 :
防衛省は昨日、北朝鮮が変則軌道で飛行した可能性のあるものも含めて複数発の弾道ミサイルを発射したと公表しました。北朝鮮は近年、迎撃が難しいとされる同種ミサイルの開発を進めているものとみられますが、防衛省・自衛隊ではどのように対処していくのかを教えてください。
また、北朝鮮が同種ミサイルを開発・発射する意図について、どのように分析しているのかをあわせて教えてください。
大臣 :
北朝鮮は、他国のミサイル防衛網を突破するためのミサイル開発、これを追求してきておりまして、変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルについては、この一環で開発を進めているものとみられております。しかし、どのような狙いがあるにしろ、北朝鮮による核・ミサイル開発は、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものでありまして、断じて容認はできません。
近年、我が国周辺においては、質・量ともにミサイル戦力が増強されていることを踏まえまして、極超音速滑空兵器への対処能力向上のためにGPIの日米共同開発やイージス艦、PAC-3といった迎撃能力の更なる向上に努めているところであります。また、このようなミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手の領域において我が国が有効な反撃を加える能力、すなわち、反撃能力を保有することで、ミサイル攻撃そのものを抑止をしてまいります。
防衛省といたしましては、いかなる事態においても国民の生命・財産を守り抜くべく、万全を期してまいりたいと考えております。
記者 :
今のに関連してなんですけれども、北朝鮮が先ほどですね、600ミリ砲の多連装ロケットと火星11の訓練を行ったというふうに発信をしています。今回、向こうがそういうふうに言ってますけれども、今回のミサイルについてですね、防衛省としてどういった分析をしていらっしゃいますでしょうか。
また、この間、北朝鮮は艦艇やですね、戦車の新しいものを公表したりしていますけれども、北朝鮮の技術力、あるいはその脅威の見積りといったものをですね、どのようにみていらっしゃいますでしょうか。
大臣 :
昨日、北朝鮮による発射につきましては、これまで得られた情報を総合的に勘案しますと、発射された複数発の弾道ミサイルのうち、昨日9時20分頃発射されました、このミサイル、これは約800km程度飛翔した1発でありまして、令和5年9月13日に発射された短距離弾道ミサイル、KN23と呼ばれるものでありますが、これは短距離弾道ミサイルA、北朝鮮は新型戦術誘導兵器などと呼称しておりますけれども、これと同型のものであったと推定をいたしております。これ以上の詳細につきましては、引き続き、日米韓で緊密に連携して分析を行っているところであります。
北朝鮮は先月末、金正恩委員長が参観をするなか、新型多目的駆逐艦と称する艦艇の進水式を実施をしたほか、当該艦艇から各種ミサイル等を試験発射した旨を発表いたしました。また、今月には金委員長が戦車工場を現地視察、そして指導した旨の発表をいたしております。北朝鮮はこれらの発表のなかで、海軍や陸軍を現代化をしていくということを強調しておりまして、防衛省としましては、御指摘の技術力の向上という観点も含め、関連の動向を注視しているところであります。
いずれにせよ、核・ミサイル開発の進展など、北朝鮮の軍事動向については、これまでも申し上げているとおり、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっているものと認識をいたしております。我が国としましては、引き続き、米国・韓国等とも緊密に連携しまして、関連情報の収集・分析に努めていく考えであります。
中国による尖閣諸島の領空侵犯事案について
記者 :
3日の領空侵犯事案について伺います。海警局ヘリコプターが領空侵犯する直前に日本の民間小型機が尖閣諸島周辺を飛行しており、その対応のためヘリコプターが飛び立ったとの分析があります。単なる示威や撮影ではなく、中国が主張する領空の防衛という明確な意図をもった行動だとすれば初めての事態と言えるかと思いますが、大臣のお考えを伺います。
また、中国側に尖閣諸島で法執行の実績ができたことは、既成事実を積み重ねていくサラミ戦術への影響も懸念されますが、どのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
大臣 :
現在、中国は、独自の主張に基づき尖閣諸島周辺において力による一方的な現状変更の試みを執拗に継続をしています。尖閣諸島は、我が国の固有の領土であるということは、歴史的にも国際法上も疑いのないところでありまして、現に、我が国はこれを有効に支配をしております。したがいまして、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在をしておりません。
その上で、今般の領空侵犯事案につきましては、現場で対応に当たっていた海上保安庁巡視船により、当該ヘリコプターに対する退去警告等を実施するとともに、自衛隊は、航空自衛隊南西航空方面隊の戦闘機、これを緊急発進をさせ対応したところであります。また、今回の領海侵入及び領空侵犯、これは極めて遺憾であり、同日(3日)、中国政府に対して外交ルートで極めて厳重に抗議をするとともに、再発防止を求めたところであります。
政府としましては、国民の生命・財産及び我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの方針の下に、冷静かつ毅然として対応していくことには変わりはなく、引き続き緊張感をもちまして、関係省庁が連携をして、情報収集、警戒監視活動等に万全を期していく考えであります。
インドに対する次期戦闘機開発計画への参画打診について
記者 :
次期戦闘機について伺います。日本政府がインドに対して、次期戦闘機開発計画への参画を打診したと報じられています。大臣自身も先日訪問されたところですが、インドとの協議がどの程度進んでいるのかお聞かせください。
また、インドはNPTに属しない核保有国で、先日、テロ組織の拠点をたたくという名目でパキスタン領を攻撃しています。インドへの参画打診は適切だったとお考えでしょうか。
大臣 :
先日の日印の防衛相会談におきましては、次期戦闘機開発計画のやり取りは全くしておりません。この報道については承知しておりますけれども、開発中の次期戦闘機につきましては、様々な国に対して、その内容を説明することはありますけれども、現時点で、お尋ねのインドやそれ以外の第三国の参加につきましては、申し上げられる段階にはございません。ただし、先だっての会談におきましては、全くこのことは話もしないし、議題にも挙がっておりません。
米軍ステルス戦闘機の長期間駐機について
記者 :
高知龍馬空港に長期間駐機していた、米軍のF-35Bステルス戦闘機についてお伺いします。5日の午前に当該の米軍機は離陸をいたしましたが、高知空港での駐機が42日間に及んで過去5年で国内最長ではないかという話になっておりまして、県民もかなり不安に思っていたところです。まず、大臣の受け止めをお聞かせ願えればと思います。
大臣 :
まず、長期間にわたりまして駐機を受け入れてくれました高知空港並びに高知県民の皆様方、そして、高知県庁を始め、関係自治体の方々に御礼を申し上げたいと思っております。ありがとうございました。
そして、3月の25日、米海兵隊岩国基地所属のF-35B1機が、飛行中に警告灯が点灯したために、高知県の高知龍馬空港に予防着陸をいたしましたが、この予防着陸をした機体、これは、機体を安全に基地に帰投させるために、米軍が一部の部品を交換をして必要な整備を行った結果、機体の安全が確認をできたというところから、5月の5日午前11時10分頃、同空港を離陸をしまして、安全に岩国基地に帰投したということを承知をしております。
防衛省としましては、この報告を受けまして、当日から継続的に職員、これは中四国の防衛局の職員でありますけれども、現地に派遣をしまして、情報収集、連絡調整を実施するとともに、事案発生直後の状況の説明を含めて、関係自治体に対しても必要な情報提供を行ってきたところでございます。予防着陸というのは、安全性を確保する一つの手段として承知をしておりますけれども、米軍機の運用に関しましては、安全の確保が大前提と考えておりまして、引き続き、米側に対して安全管理に万全を期すように求めてまいりたいと考えております。
記者 :
今回、米軍からですね、十分な説明がなかったために県民から重大な不具合があったのではないかという懸念も県民の間には広がっています。先ほど大臣は予防着陸というお話もありましたし、警告灯という話もありましたけれども、より詳細な緊急着陸の原因とかですね、なぜ42日間も駐機が必要だったかという理由について、米軍側からどのような説明があったのか。
もし説明がなかった場合は、より詳細な先ほど以上の説明をですね、求めるお考えがあるのかということと、今回の離陸に関して米軍側から事前にですね、連絡があったのかということもあわせてお伺いをします。
大臣 :
米軍の運用に関する事項につきましては、お答えは差し控えます。これは日米関係の両当局間につきましては、オペレーションとかですね、運用に関しては通常言わないということになっておりまして、この間のやり取りにつきましても、離陸情報も含めてですね、必要なことは適切にやり取りが行われていたというふうに聞いております。
この予防着陸につきましては、米側から飛行中に警告灯が表示したための説明、そして、機体を安全に帰投させるために一部の部品を交換して必要な整備を行った旨の説明を受けているところでございます。なお、日米安保条約に基づく米軍のですね、駐留というのは日本の平和と安全にとりまして、極めて重要な役割を果たしていると認識をいたしております。
いずれにしましても、予防着陸というのは、安全確保の手段の一つと承知しておりまして、米軍機の運用に関しましては、安全の確保が大前提と考えておりまして、引き続き、米側に安全管理に万全を期するようにですね、求めてまいりたいと思います。
記者 :
確認なんですけれども、お答えを差し控えると、オペレーションに関して言わないと、防衛省自体、大臣自体は御存じだけれども我々に言わないということなのか、そもそも米軍側から防衛省に対して言っていないのかというのはどちらになりますか。
大臣 :
米軍の運用に関する事項につきましては、お答えを差し控えさせていただきます。それは、我が国の安全上必要なことでありますので。
(以上)
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