日米豪印の外相が会談 インド太平洋の安定へ連携強化を確認(7月1日)
- 日本の防衛
2025-7-4 10:45
外務省は令和7(2025)年7月1日(火)、ワシントンD.C.を訪問中の岩屋 毅(いわや・たけし)外務大臣が出席して、日米豪印外相会合を実施したことを発表した。この会合の前後には、日印外相会談、日豪外相会談、日米外相会談も行われている。
日米豪印外相会合の概要と、あわせて発表された同会合の共同声明(仮訳)を以下に掲載する。
日米豪印(Quad) 日米豪印外相会合
現地時間7月1日午前10時(日本時間同日午後11時)から約90分間、米国・ワシントンD.C.を訪問中の岩屋毅外務大臣は、ペニー・ウォン・オーストラリア連邦外務大臣(Senator the Hon. Penny Wong, Minister for Foreign Affairs of the Commonwealth of Australia)、スブラマニヤム・ジャイシャンカル・インド外務大臣(H.E. Dr. Subrahmanyam Jaishankar, Minister of External Affairs of India)及びマルコ・ルビオ米国国務長官(The Honorable Marco Rubio, Secretary of State of the United States of America)と日米豪印外相会合を行ったところ、概要は以下のとおりです。また、今次会合の機会に、日米豪印外相共同声明及びファクトシートが発出されました。
1
日米豪印の四大臣は、同盟国・同志国間の連携の重要性や「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けたコミットメントを再確認し、今後一層協力を強化していくことを確認しました。
2
四大臣は、インド太平洋地域の情勢について戦略的な議論を率直に行い、東シナ海・南シナ海を含め、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対することを確認しました。また、北朝鮮情勢についても議論し、四大臣は、国連安保理決議に沿った朝鮮半島の完全な非核化へのコミットメントを再確認しました。加えて、岩屋大臣から、拉致問題の即時解決に向けた各国の理解と協力を求め、各国から支持を得ました。四大臣は、ウクライナ情勢や中東情勢についても議論しました。
3
四大臣は、今後の日米豪印の優先的な協力事項として、海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術及び人道支援・緊急対応の4つの分野を推進することを確認し、地域に裨益する実践的な協力を引き続き継続していくことで一致しました。また、四大臣は、日米豪印の海上保安機関による相互乗船の実施や「インド太平洋ロジスティクス・ネットワーク」協力の進展を歓迎し、新たな取組として、重要鉱物資源に関する協力を進めていくことで一致しました。
4
四大臣は、今後、本年後半にインドが主催する首脳会合及び2026年に豪州が主催する外相会合に向けて連携を強化することで一致しました。
(以上)
日米豪印外相会合 共同声明 (仮訳)
米国の国務長官並びに豪州、インド及び日本の外務大臣は、7月1日、ワシントンD.C.で会合し、自由で開かれたインド太平洋への揺るぎないコミットメントを再確認した。我々は、法の支配、主権及び領土一体性を守ることへのコミットメントを強調する。インド太平洋における4つの主要な海洋国家として、我々は、海洋領域における平和と安定が地域の安全と繁栄を支えるという信念において結束している。我々は、全ての国が威圧から自由な地域にコミットしており、力又は威圧により現状変更を試みる一方的なあらゆる行動に強く反対する。
我々は、インド太平洋における機会と課題について議論するとともに、我々の地域のパートナーと協力して平和、安全及び繁栄を促進するため、日米豪印の強みと資源を更に活用する方法について議論した。日米豪印の持続的な影響を確保するため、我々は、本日、海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術及び人道支援・緊急対応という4つの重要分野に焦点を合わせた新しく野心的で強力なアジェンダを発表することを喜ばしく思う。この新たな焦点を通じて、我々は、地域の最も差し迫った課題に対処するため、日米豪印の資源を活用する能力を研ぎ澄ませていく。
我々が地域のための共通の目的を促進する中で、ASEAN並びにその中心性及び一体性、太平洋諸島フォーラム及び太平洋主導の地域の諸グループ並びに環インド洋連合(IORA)に対する我々の協力及び支持は引き続き揺るぎない。
我々は、東シナ海と南シナ海における状況を引き続き深刻に懸念している。我々は、力又は威圧により現状変更を試みるあらゆる一方的な行動に対する強い反対を改めて表明する。我々は、海洋資源開発への干渉、航行及び上空飛行の自由の度重なる妨害、並びに特に南シナ海における放水銃の危険な使用及び衝突・妨害行動といった軍用機や海上保安機関及び海上民兵の船舶による危険な操縦を含む危険で挑発的な行動に対する深刻な懸念を表明する。これらの行動は地域の平和と安定を脅かす。我々は、係争地形の軍事化を深刻に懸念している。我々は、航行及び上空飛行の自由、その他の適法な海洋の利用並びに国連海洋法条約(UNCLOS)に反映されている国際法と整合的な妨げられない商業活動を堅持することの重要性を強調する。我々は、海洋に関する紛争は国際法に従って平和的に解決されなければならないことを確認し、2016年7月12日の仲裁裁判所による判断は重要なマイルストーンであり、紛争当事者間の紛争を平和的に解決するための基礎であることを改めて表明する。
我々は、特に重要鉱物のための重要なサプライチェーンの突然の抑制及び将来の信頼性を深刻に懸念している。これは重要鉱物、特定の派生品及び鉱物加工技術に関する非市場的な政策及び慣行の使用を含む。我々は、多様で信頼できるグローバル・サプライチェーンの重要性を強調する。重要鉱物の加工・精製及び派生品の製造のいかなる単一国への依存は、我々の産業を経済的威圧、価格操作及びサプライチェーンの途絶にさらし、我々の経済安全保障及び国家安全保障を更に損なう。
我々は、複数の国連安全保障理事会決議(以下「国連安保理決議」という。)に違反する、北朝鮮による安定を損なう弾道ミサイル技術を使用した発射及び核兵器の継続的な追求を非難する。我々は、関連する国連安保理決議に沿った朝鮮半島の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮に対し、国連安保理決議の下での全ての義務を遵守するよう強く求める。我々はまた、北朝鮮の不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画に資金を供給するための暗号資産窃取を含む北朝鮮による悪意あるサイバー活動及び海外労働者の利用に対し、重大な懸念を表明する。我々は、引き続き北朝鮮に関連する国連安保理決議の違反に対処する取組を支持する。我々は、全ての国連加盟国に対し、全ての武器及び関連物資の北朝鮮への移転又は北朝鮮からの調達の禁止を含め、制裁の履行という国連安保理決議の下での国際的な義務を遵守するよう強く求める。我々は、国際的な不拡散体制を直接的に損なう北朝鮮との軍事協力を深化させている国々に対し、深い懸念を表明する。我々は、拉致問題の即時解決の必要性を再確認する。
我々は、ミャンマーの悪化する危機及びそれが地域に与える影響を引き続き深く懸念している。我々は、軍政に対し、停戦へのコミットメントを遵守するよう求め、全ての当事者に対し、停戦措置を実施し、延長及び拡大するよう求める。我々は、危機に対する包摂的、永続的かつ平和的な解決策を追求する中での5つのコンセンサスの完全かつ効果的な履行の呼びかけを含むASEANの取組に対する強固な支持を再確認する。我々は、全ての当事者に対し、安全で阻害されない人道支援の提供を可能にするよう求める。我々はまた、この危機が地域の安全保障及び国際的な犯罪の拡大に与える影響についても懸念している。我々は、サイバー犯罪及びオンライン詐欺との闘いにコミットしている。
日米豪印は、国境を越えたテロを含むあらゆる形態及び主張による全てのテロ行為と暴力的過激主義を明確に非難し、テロ対策協力へのコミットメントを新たにする。我々は、25名のインド人と1名のネパール人の命を奪い、その他複数名が負傷した2025年4月22日のジャンム・カシミールのパハルガムにおけるテロ攻撃を、最も強い言葉で非難する。我々は、犠牲者の遺族に深い哀悼の意を表明するとともに、負傷した全ての人々の迅速かつ完全な回復を心から願っている。我々は、この非道な行為の実行者、首謀者及び資金提供者が遅滞なく裁かれることを求め、また、全ての国連加盟国に対し、国際法及び関連する国連安保理決議の下での義務に従って、本件に関係する全ての当局と積極的に協力するよう求める。
これらの課題に直面する中、我々は、本日、日米豪印が、海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術及びインド太平洋の各地における人道支援・緊急対応を強化するために促進している重要な取組を発表できることを誇りに思う。我々は、本日、日米豪印重要鉱物イニシアチブを立ち上げる。これは、重要鉱物のサプライチェーンの確保と多様化に向けて協働することにより、経済安全保障と集団的強靭性を強化するために我々のパートナーシップを野心的に拡大するものである。我々は引き続き、地域での訓練の取組、海洋法対話及び海上保安機関協力を通じて、海上法執行協力に関する我々の協力を深めていく。我々は、より迅速かつ効率的に自然災害に対応し、地域のパートナーに支援を提供するため、空輸能力の共有を強化し、我々の集合的な物流の強みを効果的に活用すべく、本年、最初の日米豪印インド太平洋ロジスティクス・ネットワークの実働訓練を実施する予定である。我々はまた、本年、ムンバイで、日米豪印港湾の未来パートナーシップを立ち上げる予定である。我々は、地域の災害への迅速な対応を引き続き調整しており、2025年3月にミャンマー中部を襲った地震で被災したコミュニティを支援するため、合わせて3,000万米ドル以上の人道支援を実施した。我々は、虚偽のナラティブを押しつけ、インド太平洋地域の日米豪印の利益に干渉する外国の取組に引き続き対抗する。
日米豪印が引き続き発展していく中で、我々4つの民主主義国は、自由で開かれたインド太平洋を支える協力を深化すること及び我々の協力が21世紀における地域の最大の課題と機会に持続的な影響を与えることを確保することに引き続きコミットしている。我々は、本年後半にインドが主催する次回の日米豪印首脳会合及び2026年に豪州が主催する次回の日米豪印外相会合を楽しみにしている。
(以上)
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