令和7年度 自衛隊指揮官幹部会同を実施 石破総理と中谷防衛大臣が訓示(6月30日)
- 日本の防衛
2025-7-4 10:25
防衛省は令和7(2025)年6月30日(月)午前中、防衛省市ヶ谷庁舎A棟2階講堂において「令和7年度 自衛隊指揮官幹部会同」を開催した。
自衛隊指揮官幹部会同は、防衛省の政策方針を自衛隊の指揮官等に周知徹底させるために行われるもの。内閣総理大臣、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、同補佐官、同政策参与、防衛事務次官、防衛審議官、大臣官房長、局長、政策立案総括審議官、衛生監及び施設監、防衛装備庁長官、統合・陸・海・空幕僚長、統合作戦司令官、各機関の長及び部隊の長らが出席して実施される。
「中谷防衛大臣の動静」として発表された内容と、会同における石破 茂(いしば・しげる)総理大臣の訓示、中谷元(なかたに・げん)防衛大臣の訓示(全文)を以下に掲載する。
令和7年度自衛隊指揮官幹部会同の開催
6月30日、中谷元防衛大臣は自衛隊の最高指揮官である石破内閣総理大臣を迎え、令和7年度自衛隊指揮官幹部会同を開催しました。
会同に参加した防衛省・自衛隊の幹部指揮官等、約160名に対し、石破総理とともに、訓示を行いました。
(以上)
令和7年度自衛隊指揮官幹部会同 内閣総理大臣訓示
我が国国防の中核を担う幹部諸官に対し、一言申し上げます。
本日、自衛隊指揮官幹部会同に出席する機会を得られました。地方に所在する主要部隊指揮官もオンラインで参加されていると承知をいたしております。このような場において、自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣として、私の考えを直接諸官に伝えることは、我が国の防衛政策を円滑に遂行していく上で、また、民主主義国家の根本を成す文民統制を実効あらしめる上で、極めて意義深いものであると考えております。
我が国の独立と平和を守り抜くため、防衛省・自衛隊がいかにあるべきか、今後何をなすべきかについて、以下、私の考えを申し述べます。
始めに文民統制について申し上げます。文民統制とは、軍事に対する政治の優先を意味するものとされておりますが、これは政治が一方的に意思を示すことを指すものではありません。我が国防衛のため、自衛官諸官が、法制度や装備、部隊の運用について、専門家としての立場から政治に意見を述べること、これは諸官の権利であるとともに義務でもあると私は平素から考えております。政治を補佐する立場でありながら何も言わないことはあるべき姿ではありません。文民統制を機能させるため、諸官が専門家の立場から積極的に意見具申されることを期待します。
18年前、防衛大臣として、ここ市ヶ谷で自衛隊高級幹部会同に出席し、訓示を行いました。
当時は、国際テロ組織を始めとする非国家主体が重大な脅威であり、国際社会はこれに一致して対応しておりました。その中で、インド洋における海上自衛隊の活動継続など、国際社会の取組に我が国としていかに貢献していくかが大きな課題となっておりました。
あれから18年、我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変化し、一層厳しく複雑なものとなりました。
中国による、東シナ海・南シナ海での力による一方的な現状変更の試み、北朝鮮による弾道ミサイルの発射と能力の増強、ロシアによるウクライナ侵略と北朝鮮兵士のロシアへの派遣、イランの核開発とそれへのイスラエルや米国による対応。現下のウクライナ情勢、中東情勢、東アジア情勢は相互に密接に関連する状況であります。
一たび武力侵攻が起これば、当たり前だった日常が失われる事実を我々はウクライナで目の当たりにしました。「今日のウクライナに起こっている状況は明日、東アジアで起こるかもしれない」との不安を、多くの国民が抱いております。
このような中、武力侵攻といった脅威が我が国に及ばないよう抑止力を強化すること。これが我々に求められていることであり、国家安全保障戦略等に基づく防衛力の抜本的強化は、今後も着実に進めていくことが必要であります。
そして、その取組の真価は日々問われ続けております。自衛隊の能力が信頼の置ける抑止力として維持・強化されているか、平素から発生する各種事案に有効に対処できているか、これらの取組によって国民に安全と安心をもたらすことができているか。その答えは諸官の取組いかんにかかっております。
抑止力としての自衛隊に国民から確固たる信頼を寄せていただけるよう、諸官にはたゆまぬ努力を求めるものであります。
先ほど、本年3月に新編された統合作戦司令部を視察し、現状について報告を受けました。
統合運用の重要性は、かつて防衛庁長官を務めていたときから認識されておりましたが、その重要性は不可逆的に増大しております。
統合作戦司令部の発足により、自衛隊の統合運用強化の取組は大きな節目を迎えました。情勢の推移に応じたシームレスな対応、領域横断作戦も含めた統合運用態勢の確立。これらを目的に統合作戦司令部は新編されましたが、組織を新編すればその目的が達成できるものではありません。統合作戦司令部の下、統合運用の実効性が更に向上するよう、諸官の更なる取組を求めます。
同時に、運用が統合である以上、防衛力整備も統合でなければなりません。個別最適の総和が全体最適になるものでは決してありません。防衛大臣のときから申し上げているとおりでございます。
ウクライナの戦いに見られますように、技術は進歩し、戦い方は絶えず変化・進化しております。これまでの慣例や陸海空の垣根に捕らわれるものではなく、変化を敏感に感じ取る繊細さ、いかなる変化も恐れない大胆さが諸官には求められております。
こうしたことも踏まえながら、今後いかにして実効的な防衛力を構築するか、絶えず考えていただきたいと存じます。
そして何よりも、防衛力の中核を担うのは、自衛官諸官であります。全身全霊をかけて任務に当たる諸官の努力こそが、我が国の抑止力であり、国民の命と平和な暮らしを守る力そのものであります。
かくも崇高な任務を付与された自衛官であるからこそ、国民から尊敬され、誇りと名誉を持って任務に専念できる、この体制を整備することは、国家として、政府として当然の責務であります。
自衛隊には、最高の規律が求められると同時に、最高の栄誉が与えられなければなりません。このような信念の下、昨年末、私が議長となる関係閣僚会議を設置し、自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針を取りまとめたところであります。
これを踏まえ、中谷防衛大臣の下、30を超える手当等の新設・金額の引上げなど、過去に例のない取組が既に実現しています。
先日の関係閣僚会議では、現役自衛官の勤務意欲、自衛官の人材確保にも効果が表れ始めていることを確認をいたしました。
私自身も、先月舞鶴において、若い自衛官や中堅幹部の方々から処遇改善についての感想や今後の要望を承ったところであります。
諸官におかれても、各級の隊員が何を求めているかを把握をし、隊員の声を組織としての取組にいかしていただきたい。引き続き、隊員のニーズを踏まえながら、各施策の見直しや新たな方策についても検討し、実施をいたしてまいります。
前回、私が自衛隊高級幹部会同に出席した平成19年は、防衛庁が防衛省に移行した時期であり、大きな節目でありました。
今、安全保障環境が厳しさを増す中、防衛省・自衛隊が果たすべき役割は、先ほど来申し述べておりますように、かつてなく大きくなっておりますが、その役割を全うするためには、自衛隊に対する国民の理解が不可欠です。
これまで、諸官の先輩達はただひたすらに任務に邁進(まいしん)し、今や国民の9割は自衛隊に良い印象を持っています。
一方で、国民から信頼を受けていただくためには不断の努力が必要であります。
前回の高級幹部会同のときも、様々な事案があり、私は防衛大臣として、「真に国防に任ずる組織とはいかにあるべきか、真剣に、あらゆる角度から検討し、改革に全力を挙げて取り組んでいく」と申し上げました。
私は自衛官、自衛隊員であったことはありませんが、全ての自衛隊員が行う服務の宣誓の文言を、片時も忘れたことはありません。
「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務(注)の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる。」
この言葉を胸の中で反芻(はんすう)するとき、国防という任の重さ、そして、隊員諸官の覚悟の深さを痛感するものであります。
防衛庁長官であった平成15年。我が国はイラク復興支援のために自衛隊の部隊を派遣することとし、クリスマスイブの日、12月24日、当時の小泉純一郎内閣総理大臣臨席の下、愛知県の航空自衛隊小牧基地で航空自衛隊輸送機部隊の編成完結式が行われました。12月24日、多くの若者たちがクリスマスの楽しみに浸っている、そういう日でありました。その日行われた壮行会で、派遣される若い航空自衛官が私の手を握ってこう言いました。総理大臣から訓辞をもらい、防衛庁長官からも激励を受け、一緒に写真を撮り、握手して「頑張れよ」と言ってもらったと。なぜ自分が行かねばならないのか、イラクの人たちが、道路や学校、給水、そういうことをしてもらいたい、そういう強い願いを持っていたこと、当時のイギリスのある世論調査機関が行った調査で、一番今のイラクに来てほしいのはほかのどの国でもない、国連でもない、日本であったというような世論調査の結果、だからこそイラクの人々の願いに応えるのは我が日本国において自衛隊しかないこと、それを小泉内閣総理大臣から、そして防衛庁長官から聞くことができたと。自分にとって今日は最高のクリスマスだった、長官行ってきます、と。このように言ってくれました。C-130に乗って、若い隊員たちは飛び立っていきました。このことを私は終生忘れることは決してありません。
私が諸官の先頭に立ち、中谷大臣と共に、日本を、日本国民を守り抜いてまいる覚悟であります。その思いを改めてお伝えするとともに、諸官らの一層の努力、自衛隊の精強ならんことを、心から望み、訓示といたします。
(注)「職務」と発言しましたが、正しくは「責務」です。
令和7年6月30日
内閣総理大臣 石破 茂
(以上)
令和7年度自衛隊指揮官幹部会同 中谷防衛大臣訓示
おはようございます。全国の自衛隊幹部の諸官におかれましては、厳しい安全保障環境のもとに、日々の国防の務めに精励をいただき、誠にご苦労様でございます。昨年10月、大臣に就任以来、皆さんと共に、自衛隊の強靱化や隊員の処遇改善など、様々な取組を前に進めてきているわけでございますが、皆様の真摯で、そして真剣な取り組みに接しまして、この場を借りまして感謝を申し上げます。
現在、国際情勢は極めて不透明になっておりまして、インド太平洋や東アジアにおきましては、軍事力の拡大によって、力による一方的な現状変更の試みが推し進められ、我が国周辺でも緊張を高める事案が急増しております。こうした戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙をし、国民の命と暮らしを守り抜くために、防衛省・自衛隊が取り組むべき課題につきまして、本日は、4点について、申し上げます。
第一に、強い自衛隊を作る。そして、防衛力の抜本的強化、これを着実に推進するということであります。防衛力は、我が国の安全保障を最終的に担保するものであるとともに、「我が国を守り抜く」という意思と能力、これを内外に示すものでもあります。
10年前に私が防衛大臣を務めていた時、平和安全法制を成立させました。それを最大限活用して、実践するためにも、防衛力の抜本的強化、これは待ったなしの課題であります。現在、防衛力整備計画に基づく防衛力整備は3年目を迎え、令和7年度予算は、8兆円を超える金額を計上し、各種スタンド・オフ・ミサイルの整備や衛星コンステレーションの構築を始め、必要な施策を着実に進めているところであります。今後の防衛力を抜本的に強化することは言うまでもありませんが、それに加えて、今日発生する事態に際しては、現有の編成と装備と実員、これによる、現在の態勢で戦っていかなければならないということも、我々にとって極めて重要な使命です。今を未来の態勢で戦うということはできません。
昨年来、各地の部隊を視察いたしましたが、陸海空の各級指揮官が、防衛力の抜本的強化を目指して、しっかりと進めてくれていることを確認いたしました。厳しい第一線で勤務している一人ひとりの隊員を激励し、部隊の状況説明を受けましたが、率直に思うことは、防衛力の質と量を今後早急に強化をするということはもちろんでありますが、ここにいる幹部の皆さんには、今保有をしている人的・物的防衛力を最大限発揮できるよう、制約を口実に妥協することなく、厳しくとも地道な、そして世界のどの軍隊にも引けを取らない、高度な訓練を実施していただき、そして、私は、引き続き、皆さんとともに、先頭に立って、強い自衛隊、戦いに勝てる自衛隊の創造を進めてまいりたいと感じております。
第二は、人的基盤の強化であります。
防衛力の最大の基盤は人であり、自衛官です。大臣就任以来、私は「恕」という言葉を掲げて、自衛隊が、隊員の心を大切にして、高い士気と誇りを持って任務に推進できる環境を整備することを、旨といたしてきました。
昨年末、石破総理の強いリーダーシップの下に、自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議で取りまとめた「基本方針」に基づきまして、今年の通常国会では法案を提出し、成立させました。これによりまして、多くの手当の新設・引上げなどが実現をすることになりますが、このことが、隊員にしっかり伝わっているかどうか、私は、部隊を視察し、現場の隊員と接して、こうした施策の取組について尋ねてみました。多くの隊員が、処遇改善の効果を実感してくれている一方で、様々な要望もいただきました。先日、北海道の陸上、航空自衛隊の部隊を視察をいたしました。北海道の道東の地で、第一線で、絶えず警戒監視などの任務についている部隊であります。そこで感じたこと、心配なことは、新隊員の募集や入隊、これが依然として少ないということでありまして、現場部隊は大変苦労をいたしておりました。引き続き、必要な施策を不断に検討し、新隊員が入隊をし、生活しやすく、働きやすい環境を作り、優秀な隊員、人材の育成・確保に繋げてまいりたいと考えております。
また、昨今の社会的風潮から、団結、規律、士気など、服務指導の現場に遠慮が生じていないかという懸念も感じています。
「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務める」ということを宣言して入隊している隊員に大切なことは、各級指揮官を核心とする一体感ではないかと思います。そして、いかなる困難があろうとも、共に力を合わせて任務を完遂しようとする、隊員相互の信頼感と強い絆だと思います。上下一貫、左右一体となって、お互いに尊敬し、強い愛情をもって、遠慮することなく、隊員一丸となって切磋琢磨することが必要でございます。
私はその精神に、「恕」、この「恕」の心が必要だと考えております。
これは、中国の思想家である「孔子」が、ある時に、「生涯をとおして行うべきことを一語で表すと何ですか。」と弟子に尋ねられたときに、それは「恕」であると答えています。その意味は、他人を思いやり、自分がされて嫌なことは他人にしてはならないこと。己の欲せざるところ、人に施すことなかれ。人を思いやり、命を尊ぶ心をもつということこそが一番大事なことであると言っております。
指揮官には、部隊への思いやりの気持ちが大切です。今後とも、この「恕」の精神をもって、勤務できますようお願いしたいと思います。
第三の課題は、日米同盟の更なる強化です。
先日、米国のヘグセス長官と会談をいたしました。お互いに陸のインファントリー、普通科小隊の小隊長、そしてレンジャーや特殊部隊の共通の経験がありまして、現場での訓練や、過去の行動について、お互いに率直に話をし、そしてこれからの訓練のあり方なども話し合いをしました。今後、自衛隊とアメリカ軍の指揮・統制の向上などを通じまして、日米同盟の抑止力と対処力を一層強化していくということ。そして「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために、日米が緊密に今後とも連携をしていくこと。そのうえで、自衛隊とアメリカ軍の指揮・統制を向上させていくために、自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」の発足にあわせて、在日アメリカ軍でも「統合軍司令部」の設立に向けたプロセスが始まったということを確認し、そして、日米両国が、共同訓練などを通じて、日本の南西地域での存在感を高めていていこうということで、一致しました。
さらに、装備面におきましては、中距離空対空ミサイルの共同生産に向けた取り組みを加速させる。また、日米両国が中核となって、オーストラリアやフィリピン、韓国といった国々との間で情報の共有や運用面での協力を進めていくことも一致をしまして、「日米同盟は、インド太平洋地域における平和と安全保障の礎であり、われわれは共に、日米の安全保障と繁栄を拡大していく」という認識を共有いたしました。
ヘグセス米国防長官からは、会談の後、「今日の会談は日米同盟の並外れた強さを確固たるものにしました。われわれの同盟がインド太平洋地域の平和と安定の礎であることは明らかだ」という認識を示し、そのうえでヘグセス長官は、作戦指揮の権限を持つ在日アメリカ軍の「統合軍司令部」の設立をめぐり、第1段を開始したということを発表し、これによって日本側との作戦調整能力が向上することになるわけでございます。
米国国防省は現在、新たな国防戦略の策定に向けた検討を進めているところでありまして、日米両国の戦略の最優先が整合するよう、緊密にすり合わせをしていく必要があり、こうした点も含め、今後、閣僚レベルで率直な意見交換を行ってまいりますが、ここにいる部隊、第一線の幹部、指揮官の皆さんにおかれても、それぞれのレベルで日米間の連携と調整を深めていくことを期待いたしております。
4つ目は、同志国との連携強化でありまして、これは、「結」、結ぶ、という字であります。
これは、「糸」と、「吉」で成り立つ漢字です。「吉」という縁起の良い言葉に、「糸」をつけることで、「むすんで維持する」という意味になっております。
各国との防衛協力、2国間の会合、G7、NATOにおけるIP4の連携、拡大ASEAN国防相会議・ADMMプラス、シャングリラ会合などで、各国とは防衛協力やパートナーシップが広がっております。
昨年、11月21日には、日米豪比韓の防衛大臣会合におきまして、国際法と主権が尊重され、自由で開かれ安全で繁栄したインド太平洋というビジョンを進めるための共通のコミットメントを確認しました。
また、本年5月31日には、日米豪防衛協議体Trilateral Defense Consultations「TDC」を開催しまして、米国のヘグセス国防長官、豪州のマールズ副首相兼国防大臣と日米豪防衛相会談を実施しまして、政策面・運用面での連携を強化させ、戦略的なメッセージを調整し、協力強化で一致をいたしました。
また、日本の統合作戦司令部を含めまして、日米豪の司令部間の運用調整の強化し、日豪が調達をする米国製巡航ミサイル「トマホーク」、これの実射訓練など、3か国による協力の合意をしました。防衛省としては、地域の抑止力・対処力の強化をするために、自衛隊・米軍・オーストラリア軍があらゆる状況で実効的に連携ができるように、引き続きTDCを活用して、日米豪防衛協力を強化していく考えであります。
そして、今後は、日米印豪共同訓練「マラバール」など、アジア太平洋を基軸とした多国間協力も推進させたいと思っております。
そして、先月のシャングリラ会合におきまして、私から各国に対し、「OCEAN」構想を提唱いたしました。これは、第一に、開放性、包摂性、透明性を確保しながら、インド太平洋諸国との防衛協力と連携を進めていくということで、ルールに基づく国際秩序を回復し、アカウンタビリティを強化し、国際公共益を強化していくということです。
その上で、第二に、各国がインド太平洋全体を俯瞰的に捉えて、それぞれの自主的な取組の間で協力と連携を強化し、シナジー、これを生み出していくということ、インド太平洋地域全体に新たな価値と利益をもたらしていくこと、この2つを、各国当局がよって立つべき精神として、改めて確認することを呼びかけたものでありますが、私は、この「OCEAN」が、各国の防衛当局間で広く共有され連携が進むこと、そしてインド太平洋地域の平和と安定にとって極めて有効であるということを考えておりまして、防衛省としても、率先して推進していきたいと思っております。
幹部諸君におかれましても、日頃から、各国と共同訓練や防衛協力・交流で諸外国軍隊と接する機会も多いと思いますが、この「OCEAN」の精神が多くの国に共有されますように、積極的に協議をして、情報発信していただきたいと思います。
そして最後になりますが、これから我々は、何を目指していくのか。それは、いかなる事態においても、国民の命と平和な暮らしを守り、日本の領土・領海・領空を断固として守り抜くことでありますが、これは、政府の最も大事な責務であるということを、もう一度自覚をすることであります。
我々が今取り組んでいることは、いまだかつてないチャレンジであり、歴史に残る仕事をしているということであると思っております。
陸海空の幕僚長とは、毎週末の金曜日、夕刻、大臣室で懇談の場を持っておりまして、その週においての現場からの報告と、「夢とロマン」ある知恵を語ってもらっております。どのようにすれば、戦いに勝てるのか、「強い自衛隊作り」ができるのか、「主体性と主導性」について、これからの自衛隊をどうしていきたいのか、どう作っていくのかという話を聞いております。
やはり、トップにとって必要なのは、企図の明示、これは自衛隊の幹部学校で学んだことでありますけれども、企図の明示をして、適時適切な命令を与えることです。そして受け身や「対応」では進歩しません。
そこで、申し上げたいことは、この「武」という言葉であります。
「武」とは、武人、武士と言われますが、これをよく見ますと、「戈」と「止」を組み合わせた漢字であります。
この「止」とは「止めること」を表し、「戈」は武器のことなので、したがいまして、「武」という漢字の本来の意味は、「止戈為武」、「停戦こそが真の武士の道である」ということ、止めることが、「武」であるという意味なんですね。
戦乱の絶えなかった中国の春秋戦国時代に生まれた「止戈為武」という言葉でありまして、「矛を止むる」即ち「敵の攻撃を防ぐ」という意味と言われております。抑止力と対処能力をもつこと。強く隙のない防衛力で侵略を抑止し我が国の平和と独立を守るために、訓練を重ね任務に全力を尽せるようにしておくということであります。
自衛隊が強くなければ、我が国を守ることはできません。各級の指揮官は、強く頼れる自衛隊の中核として頑張って欲しいと思います。
本日お集りの皆さんにおかれても、それぞれの持ち場におきまして、国民からの高い期待に応えるべく、全力で職務に精励されますことを切に望み、私の訓示といたします。
令和7年6月30日 防衛大臣 中谷 元
(以上)
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