中谷防衛大臣が記者会見 今後の観閲式中止、演習での核恫喝シナリオなどについて回答(8月1日)
- 日本の防衛
2025-8-5 12:05
令和7(2025)年8月1日(金)9時56分~10時17分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は防衛省A棟10階会見室において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項はなく、記者との質疑応答が行われた。内容は以下のとおり。
大臣からの発表事項
なし
記者との質疑応答
佐賀駐屯地へのオスプレイ配備について
記者 :
佐賀駐屯地へのオスプレイ配備について質問です。早ければ、本日8月1日にも陸自オスプレイの移駐が完了するとの報道がありますが、配備完了を見据えて大臣の所感をお願いします。また、8月中旬としていた移駐完了時期が前倒しとなった要因は何か、あわせてお願いします。
大臣 :
陸上自衛隊の佐賀駐屯地へのオスプレイの移駐に関しましては、これまでのところ、計15機が移駐を完了したというところであります。この佐賀駐屯地への受入れ体制が整いまして、非常に飛行に適した天候にも恵まれたことなどによりまして、移駐は順調に進んでおります。関係者の皆様方の御尽力、そして、協力に対しまして、防衛大臣として敬意を表し、感謝を申し上げます。残り2機となりましたけれども、この移駐のスケジュールにつきましては、現在、具体的な検討を行っております。来週以降、準備が整い次第、進めていく考えでございますが、これまで8月中旬としていた完了時期でございます。引き続き、飛行の安全を最優先に、移駐完了に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
今後の観閲式・観艦式・航空観閲式を中止する理由と狙いについて
記者 :
防衛省は30日、例年11月に実施してきていた観閲式を今後は中止する旨を発表しました。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する現在、隙のない我が国の防衛態勢を維持する上で、実施は困難というようなことですが、具体的にこれまで、どのような課題があったのでしょうか。またこのタイミングで中止を決められた理由や、狙いとあわせて教えてください。
大臣 :
防衛省としましては、毎年、陸・海・空自衛隊の持ち回りによりまして、全国から多数の部隊を集結をさせて、観閲式等の行事を実施をしてまいりました。これは、隊員の士気の高揚、そして、国民への自衛隊の御理解を深めていくために一定の意義があったというふうに認識をいたしております。他方で、これらの行事に当たっては、例年、準備を含めた一定の期間、各部隊から多数の人員・装備、これを集結させる必要があります。例えば、観閲式では、全国の部隊から、約5,000名以上の人員を1か月間程度、装備品を約2か月間程度、この観閲式のために差し出す必要がありまして、観艦式や航空観閲式においても、その時点で使用可能な全国の艦艇、航空機の一定数を相当期間、行事のために差し出す必要がございます。また式典の実施に際しましても、一般見学者のための案内係、駐車場への誘導、警備、場内整備など、非常に多くの隊員の労力が必要となってまいります。その結果、各部隊では、練成訓練の時間を削減をしなければなりません。練度の維持・向上に影響が出る恐れがあるほか、こうした行事のために人員・装備を割き続けたとしたら、今後、警戒監視任務を含む各種任務に影響が出るというおそれがございます。一方で、現在、国際情勢は、ロシアによるウクライナ侵略が示すように、深刻な挑戦を受け、新たな危機に突入しております。また、中国は、この周辺におきまして、力による一方的な現状変更の試みを継続・強化をしておりまして、今年に入りましても、空母が硫黄島より東側の海域で活動したということを初めて確認をしました。そして、空母2隻が同時期に太平洋上で活動していることも初めて確認をし、公表するなど、我が国周辺での軍事活動を活発化をしております。北朝鮮は、弾道ミサイルの発射を継続、核・ミサイル開発を進展。そして、ロシアは、ウクライナ侵略を継続するとともに、我が国周辺でも活発な軍事活動を継続をしております。防衛省・自衛隊としては、こうした拡大・活発化する周辺国の軍事活動に対して、警戒監視を始めとする各種対応に一分の間隙も生じさせることはあってはならないと考えております。こうした安全保障環境に当たって、我が国及び地域の平和と安定を確保するためには、より厳しい訓練を重ね、部隊の練度を維持・向上させていかなければなりません。加えて、良好な安全保障環境を構築して、「自由で開かれたインド太平洋」を実現するために、同盟国や同志国等との連携・協力を深めております。その主要な取組の一つとして、近年、二国間・多国間の共同訓練を積極的に行っているところでありまして、その規模も大きくなってきております。防衛省・自衛隊は、こうした訓練にも全力で臨まなければなりません。このような現状を踏まえまして、各幕僚監部及び内部部局担当の部局間で、今後の観閲式等の在り方について検討を重ねてまいりました。最終的には、私のところで各関係者から意見を慎重に聞きとりまして、熟慮を重ねて、防衛省としましても、必要な訓練時間等の削減を行い、今後もこうした行事を毎年実施をしていくことは、将来にわたって隙間のない我が国の防衛態勢を維持する上では困難であるという結論に至りました。その結果、今般の政府としての判断、結論に至ったものでございます。
記者 :
観閲式には長年、一般客も入れており、国民に自衛隊への理解を深めてもらうための広報的な役割もあったかと思います。観閲式等を実施しないことは、国民への広報の機会がなくなるということにはならないのでしょうか。また、人手不足が進む一方、自衛隊の任務は拡大し続けていますが、任務と広報の両立について、大臣の考えを聞かせてください。
大臣 :
防衛省・自衛隊としましても、一般の国民の方々に自衛隊の活動を御理解いただくという機会は重要であると考えておりまして、観閲式などもその機会の一つとしてこれまで実施をしてまいりました。こういった中で、国民の皆様の自衛隊に対する御理解が相当深まってきていると認識をしております。例えば、令和4年度の内閣府の世論調査によりますと、国民の約9割が自衛隊に対して良い印象を持っていただいております。また、防衛省・自衛隊では、観閲式等の他にも各駐屯地において、現地に所在する部隊を主体として、創立記念行事、基地祭などを実施をしておりまして、様々な工夫を凝らした装備品の展示、体験搭乗等の広報行事を行いまして、国民の皆様に自衛隊に直接触れていただく機会を設けております。加えて、近年では、従来のメディアを通じた広報に加えて、自衛隊の取組・活動を積極的にSNSで情報発信するなど、様々な手段を用いて広報活動を実施をしてきております。このように、自衛隊に対する国民の皆様の御理解が相当深まってきておりまして、観閲式等以外にも多種多様な広報の手段が用いられてきております。その一方で、先ほど申し上げたとおり、現下の安全保障環境の下では、今まで以上に訓練や警戒監視等の各種任務に注力をしなければならないということを踏まえますと、今後の観閲式等を実施しないという判断は適当であると考えます。これによりまして、国民の皆様への広報の機会が奪われるということはないというふうに認識をいたしております。各部隊所在地におきまして実施する広報活動、これは全国から多数の人員・装備を集結する観閲式とは異なりまして、現地に所在する人員・装備、これを活用することで、訓練などへの影響がなく、実施をすることが可能でありまして、今後とも引き続き、この充実に努めてまいりたいと考えております。
2024年2月実施の「キーン・エッジ」日米共同統合演習(指揮所演習)について
記者 :
前回の会見で出た、去年の2月の「キーン・エッジ」について伺います。官僚が用意したペーパーを読まないでください。イエスか、ノーか、言えないかで簡潔にお答えください。まず、去年の2月の「キーン・エッジ」で、核恫喝というのはシナリオに含まれていましたか。仮想敵国が、日米に対して核恫喝、核の脅しをするというのはシナリオに含まれていましたか。
大臣 :
お尋ねの記事にありましたとおり、この演習におきまして、日米間の議論におきましては、そのようなことは議論しておりません。
記者 :
核恫喝がシナリオに含まれていなかったというんですか。
大臣 :
こういった議論がされたということは、事実無根でございます。
「キーン・エッジ」での核恫喝シナリオの有無と「事実無根」の定義を巡る質疑応答
記者 :
議論の部分じゃありません。仮想敵国が、日米に対して、核の脅し、核恫喝をしたということがシナリオに含まれていたかどうかということを聞いているんです。
大臣 :
詳細につきましては、事態の事柄上ですね、お答えを差し控えさせていただきます。
記者 :
最終的に、アメリカが仮想敵国に対して、核の恫喝で対抗したということは、去年の2月の「キーン・エッジ」にありましたか。
大臣 :
これは、そもそも拡大抑止に関しましては、閣僚間で協議をするし、日米間でも協議をするということになっておりました。今回、この演習が行われましたけれども、そういった演習等の内容、また発言等につきましては、事柄の性質上ですね、お答えを差し控えさせていただきます。
記者 :
去年の2月の「キーン・エッジ」で、今までは架空の地図を使っていたのを去年の2月の「キーン・エッジ」で初めて、台湾、中国、フィリピン、日本を中心とする実物の地図を使って、演習行ったということは把握してますか。
大臣 :
このような二国間の演習の内容や発言等につきましては、事柄の性質上ですね、お答えは差し控えさせていただきます。
記者 :
そうしますと、前回の会見で私の記事に対して、事実誤認という発言がありましたが、それはどういったところを指してるんでしょうか。事実無根ですね。
大臣 :
この事実無根と説明をした部分はですね、具体的な演習内容に関わるものではなくて、記事にあるようなやり取り、これを指しております。そのようなやり取りはなかったことから、事実無根であると説明したものであります。
記者 :
それは、吉田当時統合幕僚長とアクイリノインド太平洋軍司令官の間の細かい括弧内のやり取りが違っていた、微妙に違っていたということで事実無根というふうに言ってるんでしょうか。
大臣 :
そのようなやり取りのことを指しておりまして、そのようなやり取りがなかったことから、事実無根と申したわけです。
「キーン・エッジ」に関する報道に関し、大臣が「事実無根」と発言したことについて
記者 :
記事に対して、事実無根という非常に重い言葉で、あなたたち防衛省の人たちが発表するもの、あるいは意図的にリークするもの以外に批判的な記事に対して、事実無根という言葉を使うのは、報道を萎縮させる、そういう効果があると思いますが、それを念頭に置いて発言されたんでしょうか。
大臣 :
まず、前提としましてですね、演習の内容の詳細につきましては、事柄の性質上ですね、お答えは差し控えるというのが前提でありまして、事実無根に関しましても、記事にあるようなやり取り、そのようなやり取りがなかったということでありますので、事実無根と申し上げたところでございます。
記者 :
では、仮想敵国が核恫喝をして、それに対して日米が核恫喝で対抗したという事実はあったんでしょうか。
大臣 :
内容につきましては、性質上、お答えを差し控えさせていただきます。
記者 :
極めて不親切ですよね。そういうことが通るんですかね。言えないことは言えない。言いたいことは言うというのはおかしいんじゃないでしょうか。報道のコントロール、報道をコントロールしようというような、あるいは批判的な報道だけを排除しようというような意図があるんでしょうか。
大臣 :
そのような内容も含めましてですね、我が方にとりましても、手の内を明らかにすることに繋がりますので、そういった問題等につきましては、お答えを差し控えさせていただいております。
記者 :
事実無根という言葉を取り消すおつもりはありますでしょうか。
大臣 :
記事にあるようなやり取りのことをいうなら、そのようなことは、やり取りはなかったと。
記者 :
それは吉田圭秀さんとアクイリノさんの間の鍵括弧は微妙に違うということですね。大まかには合ってるけど、発言の内容が違うということですね。
大臣 :
先ほども申し上げましたけれども、自衛隊がですね、米軍に核の脅しで対抗するように再三求めたという報道がございましたが、これは事実無根でありまして、そのようなやり取りは行われておりません。
記者 :
再三求めてないけど、求めたことはありましたよね。
大臣 :
内容等については、そのようなことを発表したり、言ったことはございません。
記者 :
発表はもちろんないんですけれども、ちゃんと説明していただかないと、事実無根と言われても全く納得できないんですが。
大臣 :
先ほどもお話いたしましたが、基本的に我が国の能力とか、防衛の内容とかですね、やり方等を明らかにするということは、防衛上、支障があることでございますので、お答えは差し控えさせていただいております。
記者 :
大まかには認められたということでいいですね。
大臣 :
いや、その点については何も言及していない。
記者 :
言えないということですか。
大臣 :
性質上、申し上げられないということです。
九州電力 玄海原発敷地内上空へのドローン侵入について
記者 :
7月26日の夜間に、佐賀県玄海町の九州電力玄海原発敷地内にドローンのような飛行物体が侵入するという事案が発生したことに関して伺います。先ほどの各国の活動の活発化というようなことも別件でありましたけれども、安全保障上、この件、重大な懸念を生じさせるケースかなと思うんですが、大臣のこの件に対する所感と、防衛省・自衛隊としての対応状況や情報収集の状況など、御教授いただける点がありましたらお願いいたします。
大臣 :
26日ですね、九州電力の玄海原子力発電所構内で、ドローンと思われる3つの光、これが確認された旨ですね、原子力規制庁から公表されました。本件については、原子力規制庁等の関係機関において対応しているものと承知をいたしておりますが、防衛省としても関連の動向を注視をいたしております。また、現時点で3つの光、これが何であるのか、特定には至っていないと承知をいたしておりますが、防衛省・自衛隊におけるドローンへの対応について申し上げれば、まず、より能力の高いドローン対処器材の早期導入をすること、そして、対象の防衛関連施設周辺上空を飛行するドローンに関しましては、電波妨害による強制着陸を含めた厳正かつ速やかな対処を行うよう、各部隊に徹底をいたしております。さらに、事案発生時に迅速な対応が行われるよう、平素から警察機関とも緊密に連携をしているところであります。いずれにしましても、防衛省・自衛隊としましては、あらゆる事態に適切に対応できますように、本件の関連動向につきましては、引き続き、注視をしてまいりたいと考えております。
複合防衛拠点を計画する日鉄 瀬戸内製鉄所呉地区跡地、取得に向け基本合意
記者 :
呉市の日鉄瀬戸内製鉄所呉地区の複合防衛拠点について伺います。昨日ですね、日鉄との基本合意について発表されていますが、その合意の内容、またですね、今後の予算計上、施設整備の時期など、今後の進め方を伺います。あわせてですね、広島県は呉市を含めた協議の場を求めていますが、開催されるお考えはありますでしょうか。また、地元からはですね、経済波及効果への期待、またですね、有事の際の標的になるという懸念があります。こういった点にどのように向き合っていかれますでしょうか。
大臣 :
昨日、防衛省と日本製鉄株式会社は、同社の瀬戸内製鉄所呉地区跡地の土地売買契約締結に向けた基本合意に至りました。今後、売買契約の締結に向けた交渉を加速させてまいりたいと思っております。その上で、合意事項、具体的な内容につきましては、相手のあることでありまして、それぞれの立場もあることから、お答えは差し控えさせていただきますけれども、売買契約の締結に向けた一つの大きなステップであったと認識をいたしております。また、多機能な複合防衛拠点の整備に関しては、同日、事務次官を委員長とする「多機能な複合防衛拠点整備推進委員会」、これを設置をいたしました。この委員会を通じて、施設整備等の検討を含めて、令和8年度概算要求において、本件土地の早期取得に向けて必要な経費を要求すべく、精力的な検討を行っているところでございます。本件は、地元において様々な御意見があると承知をしておりますので、引き続き、広島県、呉市と情報共有、意見交換を行うことなど、丁寧に対応してまいりたいと考えております。
記者 :
広島県が求めているですね、協議の場は開催されるお考えはありますでしょうか。
大臣 :
引き続き、広島県、呉市と意見交換を行う考えはございます。
※下線部:大臣発言中、「基本合意」を「基本的事項の合意」に修正
(以上)
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