中谷防衛大臣がジブチで臨時会見 拠点整備や隊員支援の強化を表明(現地時間8月18日)
- 日本の防衛
2025-8-21 10:54
令和7年8月18日(月)15時41分~16時03分(現地時間)、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣はジブチ自衛隊拠点で臨時会見を行った。本会見は、中谷防衛大臣のジブチ国防大臣代理会談、ディレタ国民議会議長会談、ゲレ大統領表敬、ジブチ自衛隊拠点視察の実施後に行われたもの。
大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。
大臣からの発表事項
ジブチ大統領・国防大臣代行との会談を振り返って
大臣 :
本日午前、ゲレ大統領への表敬や、ハッサン国防大臣代行との会談を行いました。私がジブチを訪れるのは、2009年の2月に自衛隊の海賊対処部隊が派遣される前に、国会で海賊対処法案の審議がありまして、私と公明党の佐藤茂樹議員が筆頭の理事をしておりまして、この法案が成立した後ですね、部隊が派遣される前にこのジブチを訪問をいたしたのが最初でございます。そのあと、大臣としても2016年にこのジブチを訪問をいたしましたけれども、今回は4回目になります。
ここジブチには唯一の自衛隊の海外拠点があります。ジブチの拠点は、海賊対処行動や中東地域における情報収集活動並びに在外邦人等の輸送の際の活動基盤として、ますます重要性を帯びておりまして、ゲレ大統領、そしてハッサン国防大臣代行に対しましては、拠点の土地提供を始めとしました、ジブチ政府からの長年にわたる支援に対して感謝の念を申し上げました。そして、ハッサン国防大臣代行との間では、地域情勢について意見交換をしまして、私の方から、ジブチは欧州とアジア、これを結ぶ極めて重要な海上交通路であるソマリア・アデン湾での海賊対処行動を始めまして、地域の平和と安定に寄与していくことを伝えました。また、二国間の防衛協力・交流につきましては、これまでジブチ軍に対して実施をしてきました災害対処能力の向上に係る能力構築支援事業に加えて、軍楽隊、これの育成事業を本年より開始するということで一致をしたところであります。
また、昨日、オマール外務大臣、そして本年6月に訪日をされ、防衛省でお会いをしましたディレイタ国民議会議長とも再会をしまして、会談をいたしました。昨日、オマール外務大臣は私の面会後ですね、飛行機で日本に向かわれまして、現在、TICADの会議に出席をされております。
自衛隊ジブチ拠点を視察 隊員を激励
また、今日の午後には、自衛隊の拠点を訪問をしまして、派遣海賊対処行動航空隊及び支援隊の視察を行いました。厳しい環境の下で、高い士気をもって任務を遂行している姿を直接拝見をいたしまして、非常に頼もしく、そして誇りに思うとともに、隊員の声に耳を傾ける非常に貴重な機会となりました。
大変暑い中、航空機の整備、また周辺の情報収集、そして隊員の安全活動などに全力で勤務をしている隊員の姿、大変貴重な経験になりました。この拠点というのは、国家防衛戦略において、海賊対処や在外邦人等の保護・輸送等、この地域の運用基盤の強化等のために、ジブチとの連携を強化をしまして、長期的・安定的に活用するということにいたしております。
2023年閣議決定がされましたが、海賊対処部隊に、在外邦人等の保護・輸送の可能性を見据えた臨時の態勢の整備のための任務、これが付与されることなどですね、この拠点で勤務をする海賊対処部隊の重要性、これが増しております。
隊員処遇改善と施設整備の重要性
そして、今日は派遣海賊対処行動支援隊の田中支援隊司令、そして航空隊の司令の松本2佐を始め隊員の方からも御意見を聞きましたが、現在、この拠点施設の改善・改良の向上をいたしている現場も見させていただきました。
非常にこの施設が、この老朽化をしておりまして、改修工事を進めているところでありますが、一部の施設では工事が完了をいたしまして、冷暖房を完備をした立派な隊舎ができておりましたけれども、日本から遠く離れたこのジブチの地におきまして、隊員が士気高く、そして任務に確実に従事できるように、そして生活環境の改善も含めまして、防衛大臣としましても隊員の処遇改善にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
「自由で開かれたインド太平洋」におけるジブチの戦略的重要性
最後に、我が国にとりまして、ジブチといいますと、これは「自由で開かれたインド太平洋」を実現するために極めて重要なパートナーでありまして、自衛隊の拠点の安定的な運用及び自衛隊の活動の効果的な実施のためにも二国間の信頼醸成、これは極めて重要であります。ジブチといいますと、欧州とアジア、日本を結ぶですね、ちょうど中間地点にある結節点でもありますし、また「自由で開かれたインド太平洋」構想、これにつきましては日本の外交安全保障戦略であります。この「自由で開かれたインド太平洋」構想の実施のためにですね、非常にこのジブチとの二国間の信頼醸成、極めて重要でありまして、私も含むハイレベルでの交流を含めまして、ジブチ・日本との防衛当局の関係強化に引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
記者との質疑応答
ジブチ拠点の意義と活用方針
記者 :
海上交通の要衝となるアデン湾に面するジブチには海賊対処のための自衛隊拠点が置かれ、中東情勢が不安定化した際の邦人保護にも活用されています。大臣は自衛隊の拠点でどのような点を視察しましたでしょうか。また、この拠点の意義や、今後どのように活用していきたいとお考えでしょうか。
大臣 :
ジブチといいますと、地理的にいいますとですね、アジア・中東・アフリカ及び欧州をつなぐ海上交通路に位置をしておりまして、先ほど申し上げましたけれども、我が国が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想、これを実現する上での重要なパートナーであります。また、海賊対処のための、海外で唯一の自衛隊の拠点が存在をする非常に重要な国でもあります。
この今回のジブチ拠点の視察におきましては、航空隊がソマリア沖・アデン湾において、P-3C哨戒機による警戒監視任務を長期にわたって継続をしておりまして、海賊行為の抑止というものに大変大きな成果を挙げていることを改めて確認ができました。今日、話を聞きますと、2年前にですね、1件確認されたということで非常に海賊行為が抑止をされてきているということであります。また、支援隊は、この航空隊を効率的、効果的に運用するために、拠点の警備、また維持管理等の任務を着実に遂行してくれております。
今日は限られた時間でありましたけれども、日本から遠く離れた厳しい環境の下にですね、大変高い意識、そして士気、そして団結をもって任務を遂行する隊員諸君への激励を行うとともに、現場の声に耳を傾けるというですね、貴重な機会になったわけでございます。
また、ジブチの拠点といいますと、在外邦人等の輸送の実施等に活用されております。本年6月、中東情勢に鑑みまして、在外邦人等の輸送が必要となった場合に備えまして、C-2輸送機2機を派遣をすることなど、自衛隊の海外拠点としての重要な役割を果たしております。引き続き、本地域で自衛隊の活動の効果的な実施、そして国際社会の平和と安定への貢献といった観点から、ジブチの拠点の活用に取り組んでまいりたいと考えております。
過酷な環境下での隊員処遇改善について
記者 :
自衛官の処遇改善が課題となっていますけれども、過酷な環境で活動する拠点を大臣視察されて、労働環境の改善など、どう進めていくお考えか教えてください。
大臣 :
何といっても、防衛力の中核は自衛隊員でありまして、全ての隊員がその能力を十分に発揮をし、士気高く任務を全うするためには、隊員の生活や勤務環境の改善に取り組むことが重要であります。
今日同行している記者さんも感じておりますけれども、このジブチの気温の高さ、これは日本の比ではなくて、40度、50度近くまでになるというこの灼熱のですね、大地の中で辛抱強くですね、この拠点においてこの厳しい環境の中で、それでも士気高く、そしてこの任務の重要性に鑑みましてですね、懸命に仕事をしておりました。
しかし、当初は米軍基地を間借りをしてきたわけでありますが、その後、自衛隊独自のですね、隊舎を建築するためにですね、ジブチ政府から土地の提供を受けまして、ジブチ拠点の整備を続けてきておりましたけれども、この一定の期間を経過をしまして、施設の老朽化、これが進行しています。
この宿舎の拠点、また隊舎のインフラ整備等を整備するための拠点改修工事が2021年から実施をされておりまして、隊員の生活・勤務環境の改善の取組を進めてきているところであります。今回の視察におきましては、冷暖房を備えて、清潔感も大きく向上した新しい隊舎も含めまして、拠点全体としてしっかりと整備を進めていることをこの目で確認をいたしました。
今後も、この拠点の整備が続いていくわけでございますが、何といっても厳しい環境の下で派遣をする、この勤務をしている隊員のですね、精神的な負担というのは、相当大きなものであると考えられるために、海賊対処行動の任務のために派遣された隊員に対しては、メンタルヘルスケア、また家族への連絡をするための通信環境の整備などを始めですね、様々な支援を行っていきたいと考えております。
さらに、老朽化した備品の更新、被服の所要数の確実な確保などの取組も進めております。今日は、実際隊員さんの服装も見させていただきましたけれども、通気性のあるですね、暑さを和らげるようなですね、工夫もされておりますし、また実際、行動に支障がないようにですね、非常に近代的な装備、そして被服などの改良も見せていただきました。
防衛省・自衛隊としましては、安んじてこの厳しい環境の中で業務に従事する隊員が任務に精励できますように、処遇改善、そして生活・勤務環境の改善にですね、引き続き、スピード感をもちまして取り組んでまいりたいというふうに考えております。
10年で変化したジブチ拠点の役割
記者 :
拠点の視察は、先ほどあったとおり10年ぶりだと思うんですけれども、10年前の国際情勢とは異なり、ジブチの拠点は海賊対処だけでなく、日本にとっては、インド太平洋地域の西側の拠点としても意義が増していると思います。この点どのようにお考えでいらっしゃいますか。また、現下の国際情勢の認識と、ジブチの拠点の役割は10年でどう変化したか大臣はどうお考えでしょうか。
大臣 :
ジブチといいますと、アジア・中東・アフリカ及び欧州、これをつなぐ海上交通路に位置をしておりまして、我が国が掲げるFOIPですね、「自由で開かれたインド太平洋」これを実現する上においての重要なパートナーであります。
10年前に、私がジブチ拠点を視察した際には、記者の皆様にはですね、周辺地域の海上交通の安全を確保する上で、ジブチの重要性について申し上げましたが、現在こちらに来ましても、やはり、海賊対処行動及び情報収集活動といった自衛隊の任務遂行の観点におきまして、ジブチ拠点の重要性というのは変わっておりません。
また、このほかにもジブチ拠点は、例えば2014年、西アフリカで発生しましたエボラ出血熱流行に対する国際緊急援助活動の中継場所として活用されるなど、人道的な側面を含めまして、地域の安定に寄与したものであると認識をいたしております。そしてまた、近年は、中東・アフリカ地域において不安定な情勢が継続をしている中で、こうした地域での在外邦人等の輸送に際しまして、迅速な対応が可能な拠点としての役割を果たしてきております。
例えば、この10年間を見てまいりましても、2016年、在南スーダン邦人等輸送、2021年、エチオピア情勢の悪化に伴う調査チームの派遣、そして2023年、在スーダン邦人等の輸送、並びに本年のイラン・イスラエル情勢悪化に伴う自衛隊機の待機の拠点などに、このジブチが活用されております。
こうした状況を踏まえまして、2023年12月の閣議決定によって、在外邦人等の輸送、そして保護のための態勢整備を、海賊対処部隊の任務として追加をしたところでございます。このように、ジブチ拠点の持つ、海賊対処部隊の拠点としての重要性は変わりはありませんが、地域の安定のための活動に加えて、近年では在外邦人等の輸送といった、その他の活動の拠点としても一層の活用、これもされるようになってきておりまして、全体としても、この重要性というのは増してきているわけでございます。
引き続き、ジブチ拠点を活用しまして、遠く離れた地域において自衛隊の活動を効果的に実施するとともに、国際社会の平和と安定に貢献をしてまいりたいと考えております。改めまして、今日、現地を訪問しまして、想像を超えるようなですね、この暑さの中で、非常にこの国際任務遂行のためにですね、一致協力をしながら、活動しているひたむきな隊員さんの姿を見まして、非常に頭の下がる想いがいたしますし、また、それに応えて我々もですね、更なる国際貢献活動に対してですね、また、何ができるのかというものを考えまして、日本の国際貢献、これを進めていかなければならないという想いを強くいたしました。
在外邦人保護・輸送体制の整備
記者 :
2問目なんですけれども、先ほど御指摘あったとおり、ジブチの拠点が2023年の閣議決定で、在外邦人等の輸送等拠点ということが加わっておりますけれども、具体的にどのような装備や体制を現在とっているのでしょうか。大臣として、部隊に期待することを教えてください。
大臣 :
やはり、緊急事態にですね、しっかりと対応できるようなですね、通信施設の整備とか、また、機材・部品、そして応急修理ができるようなですね、こういったこの二次整備能力などの整備も必要でございます。
従いまして、この自衛隊の邦人保護・輸送の取組を遂行するためにですね、不可欠な運用の基盤を整備をするということでありまして、これについては、戦略3文書の国家防衛戦略の中で、「自衛隊の活動拠点を長期的・安定的に活用する」とされておりまして、今後、国家安全保障戦略においても、「在外邦人等の保護に当たっても」とか、「ジブチにある自衛隊の活動拠点を活用していく」とされております。
そうした中で、2023年に閣議決定をされたわけでありますので、自衛隊の海賊対処部隊に対して、在外邦人等の保護・輸送のための態勢整備を任務として追加したわけでございますので、それに必要なですね、施設、そして拠点においての整備をするということで、具体的にいいますとですね、在外邦人等の保護・輸送の任務に従事する隊員が必要とする防弾チョッキ、車両等の装備品を集積・管理をするほか、在ジブチの日本大使館、そしてJICAとも協力をしまして、任務遂行時の連携要領を確認するための訓練なども実施をいたしております。
さらに、ジブチ軍や現地に所在する米軍・フランス軍等の各国の軍関係者との関係構築に積極的に取り組むということで、流動的な地域情勢の正確な把握、そして、緊急時における連携の確保に努めているわけでございます。そういう意味で今回の視察を通じまして、改めて、ジブチ拠点、これの重要性を確認するとともに、この拠点を長期的・安定的に活用していくという必要性を認識をいたしておりました。
このジブチを拠点として活動する部隊が引き続きですね、海賊対処行動や中東地域における情報収集活動を通じて周辺地域の安定に貢献しつつ、必要が生じた場合には、在外邦人等の保護・輸送を的確に実施をできますように、所要の態勢整備を確実に進めるということを期待をいたしております。
(以上)
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