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《解説》エアバス「U030フレックスローター」はコンパクトな垂直離着陸ドローン

  • 日本の防衛

2026-8-4 15:43

エアバスが開発中の各種ドローンのうち、比較的小型・軽量で艦艇からも運用可能な垂直離着陸機「FLEXROTOR」(フレックスローター)。そのアドバンテージと最新の開発状況を紹介します。竹内 修 TAKEUCHI Osamu

 2026年7月14日、エアバス・ヘリコプターズでアジア太平洋地域UAS(無人航空機システム)防衛・安全保障部門責任者を務めるローレンス・アレクサンダー氏が来日し、同社「U030 FLEXROTOR」(U030 フレックスローター)ついて、メディア向けブリーフィングを行った。

U030フレックスローター。陸上、海上での自律的な防衛・民間運用向けに設計された、高い展開能力を備えたVTOL(垂直離着陸)型無人UAS 写真:AIRBUS

組み立て、離陸まで30分未満 高度なセンサーを備えた「グループ2」ドローン

 もともとエアバスには、JALなどが運航するA350などの固定翼機には「A」、海上保安庁が運用しているH225などの回転翼機には「H」という接頭記号を付けるという一貫した命名法則があったが、これまでUASにはそうした接頭記号は無かった。しかし2026年6月に、エアバス・ヘリコプターズとエアバス・ディフェンス・アンド・スペースの両部門にまたがるUASについては、新たに「U」が付くようになり、単に「フレックスローター」と呼ばれていたシステムは、「U030フレックスローター」と正式な呼び名が変わった。
 U030フレックスローターは全長2メートル、翼長約3メートル、ローター直径約2.2メートルのVTOL(垂直離着陸)機だ。空虚重量は15㎏(最大離陸重量25㎏)で、アメリカ軍やEASA(ヨーロッパ航空安全機関)の分類では「グループ2」に該当するが、機首部に搭載可能なセンサーが収集する画像の質は、より高度な「グループ3」のUASにも引けを取らない。
 機首部には光学/赤外線センサーのほか、合成開口レーダーの装着も可能とされる。なお、今回配布された資料にはELINT(電子情報収集)やSIGINT(信号情報収集)も用途の一つと記載されており、機首部のモジュールを交換すれば、ELINTやSIGINTにも使えるようだ。
 このクラスのUASでは、機首部のモジュール交換によって多用途性を確保することが珍しくなくなっているが、U030フレックスローターは胴体中央部にも器材の搭載が可能となっている。この場合、器材の重量によって12時間から14時間の飛行可能時間は短くなると思われるが、画像情報の収集とELINT、SIGINTを同時に行う場合には便利だろう。
 このクラスのUASの代表格で、陸上自衛隊も運用している「スキャンイーグル 2」は発進にカタパルト、回収には「スカイフック」と呼ばれる回収装置を使用する。スキャンイーグルのメーカーであるインシツ(Insitu)社は、VTOL型UASと接続してスキャンイーグルにVTOL性能を与えようとしているが、この運用方法は開発中である。そのため現状のスキャンイーグルは、ヘリコプター発着甲板を持たない小型艦艇でも運用できるが、船体の構造や大きさの制約を受けている。
 U030フレックスローターは3.7×3.7メートルのスペースを確保することができれば、陸上または艦艇から自動で離着陸できる。このためスキャンイーグルの発進・回収装置を搭載できない小型の艦艇や、設備の整わない地上施設からも運用が可能だ。
 小型の艦艇は海面の状態の影響を受けやすいが、U030フレックスローターは「シー・ステート」(波高や周期、状態を10段階で表した国際的指標)が4から5の荒れた海面でも運用できる。また完全自律式であり、リモートスターターも装備していることから、悪天候時に発進・回収のために船舶の乗員が必要以上に悪天候に身を晒す必要もない。
 U030フレックスローターの基本構成は、ITAR(International Traffic in Arms Regulations/国際武器取引規則:アメリカ国務省が管理する、防衛・軍事関連の物品や技術データの輸出入を規制するアメリカ法)の対象外なので、汎用性が高く入手容易なガソリンでも飛行できるが、アメリカ海軍や海上自衛隊などが使用している、ガソリンより可燃性が低いJP5(重質燃料油)でも飛行できる。また運搬ケースから出して主翼を接続し、離陸(発艦)までに要する時間が30分であることや、自動ファンとベントによる自動温度調整機能によるエンジン冷却時間が同クラスのUASに比べて短いといった即応性の高さも、軍や沿岸警備隊などの法執行機関にとっては魅力だろう。
 こうした特性は自衛隊による離島・海洋監視、大規模災害発生時の情報収集にも有用であることは間違いないが、前述のようにU030フレックスローターの基本構成はITARの対象外なので、海上保安庁のような法執行機関や、インフラの点検などを行う民間企業でも導入が可能だ。今回のブリーフィングでは触れられなかったが、エアバス・ヘリコプターズは防衛省・自衛隊だけでなく、日本の法執行機関や民間企業への提案も行っていると筆者は耳にしている。

2025年9月に台北で開催された「TATDE:台北国際航空宇宙・国防技術展」で展示されたフレックスローター。基本構成がITARの対象外なので、アメリカ以外の国の企業は防衛装備品の展示が難しいとされるTATDEでも、堂々と展示されていた 写真:竹内 修

有人機とUASが連携・協働する MUM-Tとしてのアドバンテージ

 アレクサンダー氏はU030フレックスローターが、「アメリカ海軍や沿岸警備隊でも運用され、捜索救難や違法薬物の密輸防止などに使用されている」と語った。前述のスキャンイーグルは海賊や違法薬物密輸の監視で一躍名を上げたが、U030フレックスローターもこの種の用途でメジャーになっていくのかもしれない。
 実のところ、U030フレックスローターとスキャンイーグル(ScanEagle)は同じ人物が開発を主導している。スキャンイーグルの原型である「シー・スキャン」はマグロなどの魚群を捜索するために開発されたUASだ。その後、アメリカ海軍や沿岸警備隊が海賊や違法薬物、テロ組織の取り締まりなどで有用性を実証したことで、スキャンイーグルはヒット商品となり、メーカーのインシツはボーイングの子会社「ボーイング・インシツ」となったわけだが、シー・スキャンとスキャンイーグルの開発を主導したテッド・マクギア博士はボーイング・インシツから離脱し、エアロベルという会社を設立。そこでスキャンイーグルと同クラスのISTAR(情報・監視・目標補足・偵察)用UASの開発に乗り出している。
 2022年7月6日付の「ドローン・ネットワーク・ニュース」の記事によれば、マクギア博士はスキャンイーグルの発進・回収装置の大きさが運用上の制約になると感じていたようで、発進・回収装置の不要なUASの開発を志向した結果、誕生したのがフレックスローターだと言うわけだ。

アメリカ沿岸警備隊の即応カッター「エムレン・タネル」(WPC 1145)から発艦する、当時はエアロベル社のフレックスローター。2022年12月アラビア海で撮影 写真:U.S. Navy

 その後、エアロベルは2024年にエアバスによって買収され、フレックスローターもエアバスの製品となったが、システムの生産とオペレーターの訓練はエアロベルの本社が置かれていたアメリカで行われている。オペレーターの訓練に要する期間は約6週間。訓練期間の短さも、導入を志向するポテンシャル・カスタマーにとっては魅力的だろう。
 U030フレックスローターにとって、強力な販売網を持つエアバス・ヘリコプターズの商品となったことが大きなアドバンテージであることは間違いないが、それ以上に有人機とUASが連携・協働する、いわゆる「MUM-T」(Manned and Unmanned Teaming)への道が開けたことのアドバンテージが大きい。
 エアバス・ヘリコプターズはスペイン海軍の協力を得て行われたMUM-Tの試験で、同海軍のH135ヘリコプターからU030フレックスローターを制御する実験に成功した。またシンガポール空軍と共同で実施した試験で、U030フレックスローターは要救助者の早期に発見し、その情報に基づいてH225ヘリコプターが要救助者を回収する試験にも成功している。ちなみにシンガポール空軍との共同試験は、H225に先行したU030フレックスローターが取得・送信した情報をH225の機内のラップトップへ送信する形で行われた。この試験で使用されたラップトップの表示は当然英語だが、アレクサンダー氏はこれを日本語表示とする際には、日本のソフトウェアメーカーと協業可能な旨の見通しも示し、さらなる産業協力に意欲を示した。
 さらにCSAR(戦闘捜索救難)では、担当するヘリコプターが攻撃を受け、さらなる損害が生じる事例が十分に考えられる。そうしたリスクを抑えるため、U030フレックスローターのようなMUM-T能力を持つUASは、CSARの新たな地平をひらく存在になるものと思われる。

FLEXROTOR 主要諸元

翼幅:9.8ft(約3m)
全長:6.6ft(約2m)
最大離陸重量:25kg(標準プロップブレード装着時)
巡航速度:46ノット(約85km/h)
最大速度:77ノット(約140km/h)
航続時間:最大14時間(海抜0m離陸時)、10時間以内(海抜1,500m離陸時)
燃料:ガソリン(C10)もしくはジェット燃料(JP5)
運用可能気温:−40℃~50℃
最大積載重量:4.0kg(Nose)、~4.0kg(Optional Backpack)、~2.5kg(Optional Belly Mount)、200g(Optional Wing)

エアバス・ヘリコプターズ アジア太平洋地域 UAS防衛・安全保障部門責任者のローセンス・アレクサンダー氏は、担当地域におけるエアバス・ヘリコプターズのUAS製品の市場シェア拡大に向けた取り組みを統括する。元オーストラリア空軍パイロット 写真:編集部
竹内 修TAKEUCHI Osamu

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書に『最先端未来兵器完全ファイル』、『軍用ドローン年鑑』、『全161か国 これが世界の陸軍力だ!』など。

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