《ニュース解説》海自の令和7年度予算案──各種UAVの調達、新型イージスを検討開始
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2025-1-6 14:02
2025年最初の《ニュース解説》は、稲葉義泰氏による来年度(令和7年度)予算案のポイント解説です。海自ではUAV(無人機)の導入を進め、洋上監視の充実と人手不足を補っていく方針です。
2024年12月27日、防衛省は令和7年度防衛予算案を公表した。
海上自衛隊では無人装備品の導入がこれまで以上に進められるほか、既存イージス艦の後継艦艇の検討に着手することとしており、無人アセット防衛能力および新型艦艇という、新規能力の獲得に努める構えだ。
滞空型UAV「シーガーディアン」の導入(2機と関連設備 415億円)
海上自衛隊では、現在平時における日本周辺海域の警戒監視や有事の際の対潜作戦を実施するための対潜哨戒機として、P-3Cおよびその後継機であるP-1を運用している。令和7年度予算では、これらの有人航空機を補完・代替するための無人航空機(UAV)として、MQ-9Bシーガーディアンの導入が決定された。
シーガーディアンは、アメリカのジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)が開発したUAVで、全長12m、翼幅24mの中高度滞空型(MALE)無人機だ。機体に搭載する光学赤外線センサーや洋上監視用レーダーなどにより、洋上の艦艇を高高度から長時間監視できる。また、機体下面に搭載するポッドの種類を変更することにより、電波情報収集や対潜水艦戦など、幅広い任務に投入することが可能だ。
現在、シーガーディアンは海上保安庁において3機が運用されており、海上自衛隊も試験運用を行ってきた。令和7年度予算案では2機のシーガーディアンに加え、地上操縦装置などもあわせて取得される。海上自衛隊では、今後約10年間で23機のシーガーディアンの導入を見込んでおり、平時の警戒監視活動など、有人哨戒機の任務を一部代替することが想定されている。
艦載型UAV「V-BAT」の導入(6機 40億円)
海上自衛隊では現在、艦艇に搭載する航空機としてSH-60K哨戒ヘリを運用している。同機は有用な警戒監視能力・対潜哨戒能力を有しているが、運用に際して人手がかかることも事実だ。令和7年度予算では、より簡易に運用できる艦載航空機として、「艦載型UAV(小型)」を6機導入することが決定された。
防衛省によると、導入される機種はアメリカのShield AI社が開発した「V-BAT」だ。V-BATは機体下面にローターを有しており、垂直離陸・着陸ができ、空中では固定翼機のように機体を寝かせて巡航する、テイルシッター型の機体だ。全長は2.74m、全幅は2.96mとコンパクトで、最低2名で運用することができる。この機体規模にもかかわらず、光学赤外線センサーやAIS(自動船舶識別装置)レシーバー、さらに合成開口レーダーを搭載することが可能で、行動半径は130km(滞空時間は10時間)をほこる。
同機は、SH-60Kのように多様な任務をこなすことはできないが、水上艦艇における航空機運用の選択肢を増やすことができるというメリットがある。防衛省によると、艦載型UAVは今後運用が開始される海上自衛隊の哨戒艦において主に運用することとしており、同艦の航空機運用能力が限られている中でも洋上監視能力の向上が期待される。
こんごう型の後継イージス艦のための技術調査(20億円)
現在、海上自衛隊では8隻のイージス護衛艦を運用している。なかでも、最年長のこんごう型は、1番艦「こんごう」の就役が1993年と、すでに運用開始から30年以上が経過している。そこで、令和7年度予算ではこんごう型の後継艦に関する技術調査を行うための費用が盛り込まれた。
防衛省によると、この調査では主に搭載レーダーおよびイージス・システムに関する調査が行われる予定だという。さらに、2022年に決定された「安全保障3文書」では、今後海上自衛隊のイージス艦を10隻まで増勢することが記されており、純増となる2隻分についても、今回あわせて調査が実施されるとのことだ。
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