《ニュース解説》空自の令和7年度予算案──宇宙作戦団を創設、防空システムを更新へ
- ニュース解説
2025-1-6 14:03
2025年最初の《ニュース解説》は、稲葉義泰氏による来年度(令和7年度)予算案のポイント解説です。空自では年度末の「航空宇宙団」新編に向けて、宇宙関連の計画が動き出します。
2024年12月27日、防衛省は令和7年度防衛予算案を公表した。
航空自衛隊では、近年その重要性が高まってきている宇宙空間における安全保障に寄与するべく、組織改編を推進する。さらに、パイロット教育に不可欠な初等練習機の更新や、日英伊の共同プロジェクトであるGCAPに関してもさらなる前進が見られた。
宇宙作戦団を創設
航空自衛隊にとって、誕生以来の大変革となるのが宇宙専門部隊の創設である。各種衛星の安全な運用の実現を目指して、2020年には「宇宙作戦隊」が、2022年には「宇宙作戦群」がそれぞれ新編された。現在は、宇宙作戦群を上級部隊として、その隷下に衛星監視用レーダー(SSAレーダー)を運用する「第1宇宙作戦隊」と、衛星に対する電波妨害を監視する衛星妨害状況把握装置を運用する予定の「第2宇宙作戦隊」が置かれている(ちなみに、この装置に関しては令和7年度予算において取得費用28億円が盛り込まれている)。
そして、令和7年度予算では、2025年度に「宇宙作戦団」を新編することが明らかにされた。防衛省によると、これは2027年度に予定されている航空自衛隊の「航空宇宙自衛隊」への改称・改編を見据えた措置で、隷下に「第1宇宙作戦群」および「第2宇宙作戦群」を置く。各宇宙作戦群にはそれぞれ2個宇宙作戦隊が配置される予定で、新設の「第3宇宙作戦隊」および「第4宇宙作戦隊」では、それぞれ衛星監視用の静止衛星(SDA(宇宙領域把握)衛星:2026年度打上げ予定)の運用および宇宙空間監視用のレーザー測距装置(2026年度導入予定)の運用を担うとのことだ。
次世代JADGEの整備(119億円)
航空自衛隊では、日本全国に配置された早期警戒レーダーの情報を一元的に集約し、指揮統制を行う仕組みとして「JADGE(自動警戒管制システム)」を整備し、運用してきた。しかし、今後出現する新たな脅威や自衛隊の態勢強化のためには、既存のJADGEによる対応では不十分なところも出てくる。そこで、令和7年度予算では「次世代JADGE(仮称)の整備」として119億円が盛り込まれた。
これは、陸海空自衛隊による統合的な防空体制を実現する「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」における指揮統制の要としてJADGEを機能させるために、大規模換装をおこなうというもの。具体的には、これまでJADGEによる指揮統制は各防空指令所(DC)からのみ行われてきたが、端末をモバイル化することなどによりそれ以外の場所からでも指揮統制を実施することができるようにする。これにより、敵のミサイル攻撃などにより指令所が破壊されたとしても、別の場所から引き続き指揮をとり続けることができる。また、対処が困難な極超音速滑空兵器(HGV)といった新たな脅威への対処能力も向上させるとしている。これについては、おそらく情報処理能力の大幅な向上などにより実現するものと思われる。
防衛省によると、次世代JADGEの運用開始は令和12年(2030年)を予定しているとのこと。
次期初等練習機T-6を調達開始(66億円)
現在、航空自衛隊では初等練習機として富士重工業(現SUBARU)製のT-7を運用している。しかし、運用開始からすでに20年以上が経過したことを受けて、航空自衛隊ではその後継機である次期初等練習機の調達を決定した。(関連記事→空自の次期初等練習機が米テキストロン社T-6に決定)
機種選定作業の結果、防衛省はアメリカのテキストロン・アビエーション・ディフェンス社が製造するT-6CテキサンⅡの採用を決定。令和7年度予算では、機体2機および地上器材導入のため、66億円を計上している。
次期戦闘機、連携する支援無人機、新型空対空ミサイル(1,274億円)
2020年から開発が開始された「GCAP」は、日英伊の3か国で戦闘機を共同開発しようというもの。日本では航空自衛隊のF-2戦闘機を、イギリスおよびイタリア空軍ではユーロファイター戦闘機をそれぞれ置き換える予定だ。今後、GCAPは3か国の政府が共同で出資するGIGO(GCAP国際政府機関)を通じた開発に移行される計画である。2025年度以降は、日英伊がそれぞれで実施していた機体およびエンジンの設計などについて、これをGIGOの下で一元化し、3か国で緊密に連携して開発を進めていく予定とのこと。
令和7年度予算では、機体およびエンジンの共同設計などを実施し、また次期戦闘機の開発に必要な各種の性能確認試験を行うための必要な準備を実施するため、1087億円を盛り込んでおり、これをGIGOに拠出することになる。また、次期戦闘機と連携して効率的な戦闘を実施するための支援無人機の開発についても、有人機と無人機とのチーミングを実現するために必要な人工知能(AI)技術の研究などを実施するため、128億円が計上されている。
さらに、長射程化が進む空対空ミサイルの状況に対応し、より安全な距離から敵航空機等に対処するため、次期戦闘機に搭載するための次期中距離空対空ミサイルの開発費用として59億円も盛り込まれた。
(以上)
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