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木原防衛大臣、7月5日の記者会見 人的基盤の抜本的強化、潜水艦修理契約に関する特別防衛監察などを発表

  • 防衛省関連

2024-7-8 09:09

 令和6(2024)年7月5日(金)10時54分~11時21分、木原稔(きはら・みのる)防衛大臣は、防衛省A棟11階第1省議室において閣議後会見を行った。

大臣からの発表事項

人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会の立ち上げ

 冒頭、今日は3件ございます。
 まず1件目ですが、人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会についてでございます。
 防衛省・自衛隊は、戦略3文書に定められた能力の構築を確実に実施し、我が国の防衛に万全を期すことが求められております。一方で近年、自衛官の採用状況は悪化しており、この傾向は今後も継続することが見込まれます。また、自衛官以外の事務官等についても、例えば、増大する防衛装備庁の業務所要に見合った研究職技官の人材確保などの課題が顕在化しています。
 これを踏まえ、鬼木副大臣を委員長とする人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会を立ち上げまして、来週月曜日7月8日に、第1回の委員会を開催いたします。
 本委員会では、以下の3点について検討することといたします。
 1点目、処遇面を含む職業としての魅力化。
 2点目、AI等を活用した省人化・無人化による部隊の高度化。
 3点目、OBや民間などの部外力の活用の3点となります。
 人的基盤の強化は防衛力の抜本的強化に不可欠であり、鬼木副大臣の下で、活発な議論が行われ、既存の考え方にとらわれない具体的な施策が提案されることを期待をしております。

防衛省職員ハラスメント防止月間

 次に2件目ですが、令和6年度防衛省職員ハラスメント防止月間についてでございます。
 防衛省におけるハラスメント対策につきましては、私が陣頭に立って各種施策を進めているところです。施策の効果を組織全体まで行き届かせるため、本年1月に実施しましたが、引き続き、来週7月8日から8月9日までを今年度の1回目の防衛省職員ハラスメント防止月間に設定することとしました。この防止月間は年度に2回実施することを予定しております。
 今回の防止月間ではハラスメント防止のための隊員の意識改革というテーマの下で、各級指揮官等のトップメッセージ、全職員に対するハラスメントアンケートを引き続き行うとともに、部外講師によるハラスメント防止講演会、職員向けハラスメントテストについては、開催場所や対象範囲を拡充して行いたいと考えております。
 本月間での取組を通じて、職員のハラスメントに対する意識を向上させるとともに、改めて職員一人一人がハラスメントを自分の問題として真剣に考えてもらう機会とし、ハラスメントを一切許容しない環境の構築に向け、引き続き取り組んでまいります。

潜水艦修理契約に関する特別防衛監察の実施

 3件目でありますが、潜水艦修理契約に関する特別防衛監察の実施についてであります。
 川崎重工業株式会社と海上自衛隊との間における潜水艦修理契約に関して、現在、海上幕僚監部の一般事故調査委員会において潜水艦修理契約における不適切な行為及び隊員の規律違反の疑いについて、防衛装備庁において架空取引などに伴う過払いの有無について、それぞれ調査を実施しております。
 私、防衛大臣として、このような疑いが現時点で生じていることを非常に深刻に受け止めております。防衛力の抜本的強化を進める中、これまで以上に厳格に予算執行を行っていくということは当然であり、万一にも国民の疑惑や不信を招くようなことがあってはならず、防衛省として更に調査の態勢を強化する必要があります。
 このため、本日、私から防衛監察官に対し、潜水艦修理における隊員と契約の相手方との関係及び契約の適正性に関する特別防衛監察を実施することを指示いたしました。今後、特別防衛監察を早急に進め、判明した事実関係に基づき厳正に対処してまいります。

記者との質疑応答

潜水艦修理契約における不正の疑いなどについて

記者 :今の3件目にちょっと重なるところがあるんですけれども、今日一部報道でも20年前から裏金かと川重が、という報道がありました。改めて自衛隊をあずかる防衛大臣として率直な受け止めをお願いいたします。また、今おっしゃられた特別防衛監察についてですが、調査結果の公表の時期のめどなど現在分かることがあれば教えてください。

大臣 :3件目の私からの発言についてでございますが、まずは現時点ではですね、疑いという段階でありますが、しかし、その疑い自体が生じていることを非常に深刻に受け止めております。
 したがって、まず現在は、海幕の一般事故調査委員会というものの中で潜水艦修理契約における不適切な行為及び隊員の規律違反の疑いについて、あるいは架空取引などに伴う過払いがあったのか、なかったのかと、そういったことを調査しておりますが、この事態を重く受け止めまして、私から特別防衛監察を実施するということを指示をしたところであります。
 まだ疑いの段階とはいえ、もし、判明した事実関係というものがあった場合には厳正に対処せねばならんと、そういう深刻な事案だというふうに考えております。
 先ほど申し上げた、本日私から指示をいたしました。防衛監察本部において、そして早急にということも指示をしております。速やかに特別防衛監察を開始できるよう、所要の準備を進めていると承知をしております。しかしながら、監察結果については一定の時間を要するものと考えております。しかしながら迅速に対応してまいりたいと思っております。

記者 :今の川重の件についてなんですけれども、2つお話があります。
 1つは、そもそも防衛省の原価計算、これかなり緩いのではないかと。ですからその原価がきっちり計算されておらずにですね、色々とそれに乗っけているものがあるんじゃないかと。以前から川重の方の潜水艦に関して言うと、海自の人間に聞くとですね、修理の時に泊まりに行くと、そうすると三菱重工より川重の方が色々対応がいいよという話は昔からだったというお話がございます。それから、過去、重工労連という労働組合に20年以上前に聞いたんですけれども、各原価計算の段階で鉛筆舐めて水増してやるよと、それを何段階も重ねて細部にまた水増ししてるから、原価って実はかなりいい加減だよという話を聞いております。
 こういう防衛省全体の原価計算に関する上げ方がまず問題ないのか、これがまず一点ということと、あとはその潜水艦2社体制というのは、果たして健全なのかと、かつて16隻態勢の時は交互に作っておりまして、かなり諸外国に比べると艦齢が若い段階で退役させて、ある意味潜水艦、使い捨てしていた訳ですね。お金のある時はそれでいいんですけれども、こういう財政状況厳しい中で2社を維持するためだけにですね、潜水艦を交互に造っていく必要があるのかと、なおかつ、潜水艦のクルーは、非常に先ほどの人的基盤の問題も絡んでくると思うんでけれども、一番資格的に難しいところがあります。果たして今後も今の22隻態勢を維持できるサブマリーナ(潜水艦乗組員)を確保できるのかと。
 かつて、ジミー・カーター大統領、元サブマリーナでしたけれども、お前は不適格だと外されて大統領になったわけですけれども、ある意味大統領になるよりも潜水艦乗りの方が難しいわけです。そういう潜水艦クルーを果たして今後も維持できるのか、むしろ隻数を減らしてですね、クルー制を導入して交互に乗せていく。そうすると個々の艦の可動率は上がる。ただそうすると、2社態勢は維持できませんけれども、そういうことも含めて防衛省の方で検討すべきではないでしょうか。大臣どうお考えでしょうか。

大臣 :まず前段についてですが、潜水艦修理をはじめとして、装備品の調達、私ども行っておりますが、正に潜水艦というのは防衛省固有の特殊な仕様であります。ある意味、市場価格が存在しないという物が多い中で、製造等に必要な材料費であったり労務費など、積み上げる原価計算方式によって価格算定を行うということになっております。価格の算定に当たりましては、企業から提出された見積資料について、その積算に至る考え方というものをですね、これは個別に聞き取るということにしております。そして、その積算の根拠となるエビデンス資料というものを、これもしっかりと確認をしております。こういった取組によって公正かつ適正な価格での調達が行われるように努めなければなりません。引き続き、こういうことを念頭にやってまいります。
 後段の2社態勢の在り方についてということだと思いますが、一般論として申し上げると、事業のそういった事業会社の統合の問題、あるいは個々の企業の組織の在り方というものは、あくまで各社の経営判断によるものであり、防衛省としては各企業の判断を尊重することが必要というふうに考えております。
 いずれにしましても、防衛力の抜本的強化というのを、私どもは進めている中で、今回、疑いとはいえ、こういう深刻な事案と受け止めざるを得ない事案が出てきておりますので、これまで以上に厳格に予算執行を行っていくということに努める、それに尽きると思っています。万一にも国民の疑惑や不信を招くような行為というものがあってはなりませんので、今後の予算要求、編成、予算執行について、国民の疑惑を招くことがないように、適切に行ってまいります。

米軍三沢基地のF-16のF-35への置き替えについて

記者 :アメリカ軍三沢基地のですね、F-16がF-35に置き替わる件で、地元への連絡が発表当日または翌日で、機数も10機以上増えているんですが、基地強化かどうかの評価もないまま連絡があったと、現地では不快感を示しています。三沢市民は戦闘機の騒音で集団移転の話も出ていますけれども、知事は日米同盟、日米安保を理解するが、三沢の空は三沢の市民、日本のものではないかというコメントをしています。
 大臣として地元への対応についての御所感と、今後アメリカ軍に対して、防衛省として対応があるのかどうかお伺いしたいと思います。

大臣 :米側からはですね、機種更新に伴って、平素の運用に大きな変更は生じないものの、運用に際しては引き続き、パイロットに対してしっかりと教育を行い、そして地元に配慮して運用していくという説明を受けております。防衛省としても引き続き米側に対しては騒音に係る地元への配慮、また飛行運用に係る安全確保にはしっかりと努めて、そういったものを求めてまいります。
 また、F-35Aの騒音というものはF-16と比較して若干大きい傾向にあるというふうにも認識しておりますので、しかしながらそういった航空機の状況であるとか、測定機材とか、気象条件等の要因というのにも左右されるので、一般には比較することは困難でありますが、データ上はそういうことになっておりますから、その点についても地元に対する騒音への配慮、そして飛行の運用に係る安全の確保、これを求めてまいりたいと、そういう考えであります。

辺野古移設にかかわる杭打ち試験の作業について

記者 :普天間飛行場の名護市辺野古移設について、防衛省が大浦湾で続けています杭打ち試験の作業について伺います。玉城デニー知事が3日、鬼木副大臣に対して中止を求めたところですが、防衛省の対応を教えてください。中止するのかどうかというところ。

大臣 :普天間飛行場代替施設建設事業では、今後着手を予定しております、鋼管杭を用いる護岸工事を安全かつ円滑に実施をするため、当該護岸の整備予定地に鋼管杭を打ち込むことにより、鋼管杭打設の手順等を確認する杭打ち試験を行うこととしており、これに係る作業を7月1日に開始をいたしました。
 当該杭打ち試験につきましては、今後着手を予定している護岸工事に先立ち準備をしておくもので、試験において打ち込んだ鋼管杭は、試験終了後に撤去するということを予定しておりまして、護岸工事を行うものではないことから、実施設計協議等の対象ではないと考えております。
 いずれにしましても、実施設計協議等については、昨年9月から沖縄防衛局と沖縄県の間で行ってきているところでございまして、沖縄防衛局において、引き続き、適切に対応していくものと承知をしております。

記者 :中止をするのかどうかというところについて、いかがでしょうか。

大臣 :申し上げましたとおり、今後予定をしております、鋼管杭を用いる護岸工事を安全かつ円滑に実施するためのものでありますので、鋼管杭打設の手順等を確認するための杭打ち試験を行うことによって、これに係る作業を7月1日に開始しましたということでありますので、大きな流れに変更はないということになります。

日英伊で進める次期戦闘機事業について

記者 :日本がイギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機について伺います。4日にイギリスの下院総選挙が実施され、最大野党の労働党が単独過半数を獲得する勢いで、14年ぶりの政権交代の可能性が高まっています。政権が代わっても次期戦闘機の共同開発に影響はないのか、あと、GIGO(グローバル戦闘航空プログラム〔GCAP〕政府間機関)立ち上げのスケジュール、これは予定どおりで変わらないのか、現時点での大臣のお考えを教えてください。

大臣 :現地時間の4日に実施された英国における総選挙でございますが、労働党が過半数の議席を獲得をし、今後、議会が行われて政権交代が行われる見込みと報じられております。
 その上で、日英伊で進める次期戦闘機事業の重要性というものは、これは何ら変わることはないものと認識をしておりまして、次期戦闘機の共同開発はしっかりと進めてまいります。
 また、英国、イタリアとはこれまで、今年度中にGIGOを設立するとの目標を共有しておりまして、事業の重要性も踏まえれば、今年度中のGIGO設立という目標が変わることも想定はしておりません。防衛省としては、私の、大臣レベルも含めて引き続き、日英伊3か国で緊密に連携しながら、次期戦闘機の共同開発を着実に推進してまいります。

防衛省の採用状況悪化における施策

記者 :冒頭にありました人的基盤強化の関係で1点伺います。今後も採用状況の悪化が見込まれるという言及がございました。これまでも、防衛省では様々隊員確保施策を打ってきた中で、なお状況が悪化していることの受け止めと、これまでの施策の評価をお願いいたします。

大臣 :我が国の深刻な人手不足社会を迎えている中で、令和5年7月末には高校新卒者の有効求人倍率はバブル期を超えて、過去最高の3.52倍となりました。自衛官の募集をめぐる状況もやはり厳しく、令和5年度の採用率が大変厳しいものになるという見込みであります。この状況について、私としては強い危機感を持って受け止めなければなりません。また、これまで人的基盤の強化に係る様々な取組、施策ございましたが、それがまだ結果として表れていないということは、これまで行ってきた施策が必ずしも十分ではなかったものと考えております。
 このため、冒頭申し上げた委員会においては、厳しい募集環境にある士の採用強化につながる取組や、困難な任務や特殊な勤務環境等を踏まえた給与・手当等により、自衛官の職業としての魅力化を速やかに図ること、そして、これまでの人的基盤の議論では必ずしも中核的な扱いとされていなかった部隊の省人化・無人化、また、部外力の活用、そういったテーマについて幅広く議論に取り組んでいくこと。これらの点を重視し、スピード感と従来の延長線に留まらない発想をもって検討を行ってまいります。鬼木副大臣の下で活発な議論がなされるものと期待をしております。

潜水艦乗組員へのアンケート、特別防衛監察などについて

記者 :冒頭、御説明がありました川崎重工業の件でお尋ねしますけれども、潜水艦の乗組員の方で川崎重工業の方にリクエストする内容をまとめていたという報道がございますが、こちら今までの調査の中で判明していることがあれば教えてください。
 また、潜水艦の乗組員、全体で約1,400名ですかね、こちらについて、アンケート調査を実施始めたという報道もございますが、こちらの事実関係いかがでしょうか。
 最後に、特別防衛監察を今回実施すると表明されたわけですが、身内で行う一般事故調査委員会は取り組み切れないという認識の下で、今回、第三者の委員会を立ち上げ調査に乗り出すことになされたんでしょうか。その辺りもう少し教えてください。

大臣 :まずは、本件についてはしっかりと事実関係を確認することが重要であると、それが前提になってくると思います。これらの調査により判明した事実関係を踏まえて、その後の対応ということになります。
 先ほど申し上げました、現在海幕のですね、中の一般事故調査委員会において調査を実施しているところであり、まだ現時点において、その調査結果というのは出ておりません。そして、今回私、極めて深刻に受け止めておりますので、事案の全容解明もあります。また、今後の再発防止というか、今後の在り方もあると思いますから、その前提となる事実関係をしっかりと確認するためにもですね、防衛監察本部による特別防衛監察というものを、私が指示を、今日いたしました。しかも、早急に進めるように指示をしたところであります。それは本日であります。もう今日から所要の準備を進めるということになります。
 これにはやはり一定の時間を要するということになります。海幕の一般事故調査委員会をどうするかということになりますが、並行してそれは行うということにさせます。並行してやると。

米軍嘉手納基地のF-15がF-15EXに更新されることについて

記者 :先ほどの在日米軍の戦闘機の態勢の更新の関係なんですけれども、沖縄県の嘉手納基地で順次退役が始まっているF-15戦闘機なんですけれども、これがF-15EXという後継機に替わる方針を米側が固めています。配備機数としては現在48機からですね、36機に減少するそうなんですけれども、一方で、F-15EX、後継機の方がですね、騒音レベルがわずかに高いということで、今後の将来的な切り替わりとか更新に伴う地元への影響について、大臣、どのようにお考えかという点を、まず1点御確認します。それからですね、この切り替えに関して、今後数年かかるという認識を米側が示しているんですけれども、具体的に何年のいつに完了するかなど時期のめどについて、何か具体的な説明を受けていれば教えてください。

大臣 :公表されている情報でございますが、F-15EXはF-15C、F-15Dと比べると、最大騒音レベルがわずかに大きいというデータがあります。F-15のCとDは約104デシベル、F-15EXは109デシベルと、同じ条件の上空300メートルということでありましたが、しかし、実際の航空機の騒音については、航空機の飛行状況とか、測定器材であったりとか、あるいは気象条件等の要因が左右するものでありますので、一概に比較することは困難だろうと思います。その上で、米側からは、引き続きパイロットに対してしっかりと教育を行い、航空機騒音規制措置を遵守するなど、騒音の影響をはじめ地元に配慮して運用していくとの説明を受けておりまして、防衛省としても、引き続き、米側に対して騒音をはじめ周辺地域への影響を最小限にするよう求めてまいります。
 後段の機種の更新にかかる具体的なスケジュールということでありましたが、米側からはですね、機体の生産速度、また人員配置、訓練要件等の様々な要因というものに、そのスケジュールも左右をされるということで、現時点で明確なスケジュールを示すことは困難との説明を受けております。

以上

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