木原防衛大臣、会見で自衛隊のいじめ問題、各種ハラスメントへの対応策などに言及(9月20日)
- 防衛省関連
2024-9-25 09:59
令和6(2024)年9月20日(金)11時07分~11時35分、木原 稔(きはら・みのる)防衛大臣は、防衛省A棟11階第1省議室において閣議後会見を行った。
内容は、以下のとおり。
発表事項
大臣 :自衛官の定年の引き上げについてであります。本日の閣議におきまして、「自衛隊法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定をされまして、本年10月から1佐、2佐、3佐、2曹及び3曹の自衛官の定年年齢を1歳ずつ引き上げることとなりました。
これは、一昨年に策定された防衛力整備計画に基づきまして、知識・技能・経験等を豊富に備えた人材の一層の有効活用を図るため、自衛官の定年年齢を引き上げたものになります。このような人的基盤の強化に資する施策については、防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するために極めて重要であり、今後も一層の推進を図ってまいりたいと考えております。
記者との質疑応答
中国軍の領空侵犯や領海侵入について
記者 :18日、中国軍の艦艇3隻が接続水域に入りました。8月以降、中国軍の領空侵犯や領海侵入が続いておりますが、今回の事案で防衛省としてどのように対応されたかということと、中国軍側の意図をどのように分析しているかをお聞かせください。
大臣 :17日から18日にかけまして、空母「遼寧」を含む中国海軍艦艇3隻が、与那国島と西表島との間の海域を南進し、太平洋へ向けて航行したことを確認しました。空母「遼寧」を含め、中国海軍所属空母が我が国の接続水域を航行したことを確認したのは初めてであります。
防衛省・自衛隊は、これらの艦艇に対し、護衛艦及び哨戒機により、継続的に警戒監視・情報収集を行いました。その上で、政府としては、先般の中国軍機による領空侵犯事案や、我が国周辺における中国海軍の艦艇等のこれまでの動向を踏まえれば、我が国及びこの地域の安全保障環境の観点から、今般の事案は受け入れられないものであり、中国側に対し、外交ルートを通じて、我が国としての深刻な懸念を表明したところです。
また、今般の中国海軍艦艇の活動目的について、確定的にお答えするということは困難ですが、中国はこれまでも空母を太平洋上で活動させており、空母の運用能力向上や遠方の海空域における作戦遂行能力の向上を企図しているものとみられます。中国は近年、我が国周辺における軍事活動をますます拡大、活発化させており、防衛省・自衛隊としては、中国軍の我が国周辺海空域における動向について引き続き注視をしていくとともに、情報収集・警戒監視に万全を期していく考えであります。
北朝鮮のミサイルについて
記者 :北朝鮮のミサイルについて伺います。北朝鮮は一昨日朝、弾道ミサイルを発射しました。これについて北朝鮮は、新型の戦術弾道ミサイル火星11型と、改良型巡航ミサイルの発射実験だったとしています。飛翔距離や、2回に分けて発射されたミサイルのそれぞれの種類について、防衛省の最新の分析状況と今後の対応についてお聞かせください。
大臣 :まず、18日に北朝鮮が発射した複数発の弾道ミサイルにつきましては、これまでも政府から発表しているとおり、北朝鮮内陸部東岸付近に落下したものと推定をされ、我が国の領域や排他的経済水域への飛来は確認されておりません。当該弾道ミサイルにつきましては、これまでに得られている情報を総合的に勘案をすると、短距離弾道ミサイル(SRBM)であったと推定をしています。これ以上の発射の詳細については、お尋ねの飛翔距離なども含めて、引き続き日米韓3か国で緊密に連携して分析中であります。
また、北朝鮮の発表の中では、昨日弾道ミサイルの試験発射を行った旨の発表と併せまして、改良型戦略巡航ミサイルの試験発射を同日18日に行った旨発表しているということも我々承知しておりますが、こちらについても事柄の性質上、個々の具体的な情報の内容についてお答えすることは困難であるということを御理解ください。
いずれにしましても、ここ1週間の間にですね、短期間の中で立て続けに弾道ミサイルを発射しております。これまでも申し上げてきたとおりでありますが、北朝鮮による核、ミサイル開発は、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できるものではありません。防衛省としては、引き続き、米国や韓国等とも緊密に連携して、必要な情報の収集・分析を行うとともに、警戒監視に全力を挙げてまいります。
防衛大学校でのいじめの報道について
記者 :去年、防衛大学校でいじめを受け、退校を余儀なくされたと訴えている男性についてお聞きします。男性はですね、大学校側がですね、いじめの実態を適切に把握して対応してくれなかったというふうに訴えていますが、大臣の御所見をお聞かせください。
大臣 :今の防衛大学校の学生の案件につきましては、個人情報の保護等の観点から個別の事案についてお答えすることというのは、この場では差し控えさせていただきますが、防衛大学校においては、今回も含めまして規律違反が認められた場合には、事実関係を確認した上で、厳正に対処をしてまいりました。私も就任以来ですね、このハラスメントというものに対して、これは人の組織である自衛隊においては、自衛隊員相互の信頼関係を失墜させるというもの、そして、組織の根幹を揺るがすものであり、これは決してあってはならないということを常々、色んな場で申し上げてまいりました。
防衛大学校においても、学生教育がより良いものとなるように、ハラスメントを一切許容しない環境というものをしっかりと構築をしてまいる所存です。
記者 :自衛隊のですね、五ノ井里奈さんとかの性被害の問題について、色々ハラスメントの対策等を講じていると思うんですけれども、それでもなお、こういうふうな事案が発生していることについて、そして防衛大学校でですね、4学年8人が1部屋で生活するなどですね、過度な上下関係がハラスメントや私的制裁の温床になっているのではないかという見方もあるんですけれども、大臣の御所見をお聞かせください。
大臣 :昨年9月に、約1年前に就任をしてから、もうその次の月、10月にはですね、私の方から、全てのハラスメント案件に対して厳正に対応するよう指示をしたところです。それに加えまして、全隊員及び指揮官・管理職に対してハラスメント防止に係るメッセージというのをそれぞれ別々に発出もいたしました。
また、部隊視察それぞれ全国各地で行いましたけれども、その際に直接一人一人に対して、隊員の前で訓示を行うわけですが、その際にもですね、ハラスメント一切許されるものではないということをですね、現場で話をしてまいりました。
そのようにあらゆる機会を通じて、私が陣頭指揮に立ってハラスメント対策を講じているという、そういう姿勢をですね、示してきたところであります。防衛大学校においても、学生間指導のそういった透明性の確保に向けた取組のほか、更なる対策として、学生が相談しやすい体制を構築するために、例えば全学年に対するハラスメント防止教育の徹底、ハラスメント防止を率先できる学生長等の選定、そして相談窓口として部外の弁護士等の活用などの取組を行っているというふうに承知してます。
引き続き、そういった防大生も含めて隊員の意識改革や、そして事案の迅速な解決体制の構築等の実行性あるハラスメント防止対策を通じまして、これからもですね、粘り強くハラスメント対策、そしてハラスメントを一切許容しない環境というものを構築したいと思っています。
それから、防大の部屋の関係ですけれども、正に防大生というのは、人格形成期にあり、防衛大学校の学生のハラスメント対策というのはそういう意味で非常に重要であるというふうに考えております。久保学校長ともですね、よく話をしておりまして、学生舎の生活の改善を含めて不断の改善を行うよう私も指示をしていますし、実際に学校長もですね、私の指示に基づいて改善をしているということであります。
御指摘の部屋の件につきましては、例えばですけれども、昨年度より1学年、1学年というのは1回生とか1年生とも言いますが、1学年のみの寝室というのを試行するなど、学生のストレスの緩和、特に1年生にとってはですね、環境が変わってストレスも感じるところ、そして上の学年、2年、3年、4年と上級生ばかりという環境の中で、正に1年生のストレス緩和を図る対策をするとともに、部外カウンセラーを活用した学生のメンタルヘルスケアの強化などにも取組み始めました。
また、昨年度の卒業式においても私は出席し、そこでも訓示をしたところですが、ハラスメントを一切許容しない環境の構築に向けて、ともに全力で取組む旨を学生に、特に在校生に向かってですね、呼びかけるとともにハラスメント防止について、我々政務も副大臣、政務官いますけれども、それぞれの立場でですね、様々な機会をとらえて学生に対して直接発信もしております。
繰り返しますが、自衛隊というのは人の組織でありますので、自衛隊員相互の信頼関係を失墜させる、そして組織の根幹を揺るがす、そういったハラスメント行為は決して許されるものではありませんから、防衛大学校においても、学生教育がより良いものとなるように、ハラスメントを一切許容しない環境というものをですね、正にこれから毎年毎年新しい生徒が入って来る防衛大学校に対して、そういった環境をですね、構築していくことが非常に大事だなというふうに思っています。
石破茂元防衛大臣の「核共有」に関する発言について
記者 :核共有についてお尋ねなんですけれども、先日、石破茂元防衛大臣が「核共有は所有権、管理権をもつわけでもない。意思決定過程の共有なので、非核三原則に触れるものでも基本的にはない」というような発言をされておりました。政府としてこれまで国会答弁でも繰り返し述べられているところではあるんですが、改めて核共有という言葉の定義について、どのような考えなのかをお聞かせ願えたらと思います。
大臣 :会見でも度々申し上げますが、衆議院議員の石破先生がおっしゃった発言というのは、今、自民党の総裁選挙においてですね、討論の場、あるいは政策発表の場でですね、言われていることであります。これまでも、各候補者のそういった公約であるとか、政策発表についてのコメントというのはこの場で私言うことを控えておりましたので、公平の観点からもですね、その点について、石破候補が言われたと言わなければですね、そういった定義を申し上げることは出来るんですけれども、そう言われてしまった以上はですね、政府として、防衛大臣として会見の場でですね、コメントすることは差し控えたいなと思います。
記者 :聞き方を変えますけれども、核共有についてお尋ねしたいんですが、現在世界ではNATOとウクライナとベラルーシの例ですかね、実例が、こういうのはないと思うんですが、日本政府として現時点で核共有という言葉の定義についてですね、どのようなお考えなのか、現時点では核保有国が非核保有国に戦術核を配備するということを指していると思うんですけれども、それのみをもって核共有というふうに定義が固まっているのかどうかというのをお尋ねできたらと思います。
大臣 :また別の質問ということで、いわゆる核共有のことについて申し上げると、平素から自国の領土に米国の核兵器を置き、有事には自国の戦闘機等に核兵器を搭載、運用可能な態勢を保持することによって、自国等の防衛のために米国の核抑止を共有する、といった枠組みというふうに考えられます。その上で、現下の安全保障環境を踏まえれば、核抑止力を含む米国の拡大抑止の信頼性を維持・強化していくことは不可欠であろうと、そのように考えております。
自衛隊のハラスメント問題や内部通報への対応について
記者 :先ほどハラスメントの話題がありましたけれども、私も自衛隊の内部通報をめぐる対応について伺います。
北海道内の陸自隊員が上官のパワハラ行為を陸幕の通報窓口に匿名で訴えた結果、不当な扱いを受けたとして国を訴えた訴訟が先週札幌地裁で始まりました。この訴訟の第1回口頭弁論でですね、被告の国側は陸幕から隊員の所属部隊へと匿名の通報内容が伝えられた結果として、1点目として上官が隊員に自白を強要して通報者を特定したこと、2点目として謝罪を要求したこと、3点目として不当な人事異動を調整したことなどについて、国側は事実関係を争わずに賠償責任があるということを認めました。上官側が隊員に対して内部通報はテロ行為であるなどと発言したことも国側は事実だと認めています。
この件について伺うんですけれども、まず、先ほどもあったように防衛省・自衛隊では以前からハラスメント撲滅ということを掲げていると思うんですけれども、こうしたパワハラがあった上に、無理に通報者を特定して脅すという事案が発生したことの受け止めと、この件を受けて再発防止策を講じていることがあれば教えてください。
大臣 :まず、御質問にもあったように、この件は国賠訴訟が始まっております。今、係属中の訴訟ということもあって、政府の立場で発言をすることは、今後の裁判にも影響を与えかねないということですので、詳細についてはお答えをするということは控えさせていただきますが、その上で、先ほども申し上げましたとおり、ハラスメントというものは、人の組織である自衛隊においては決してあってはならないものであります。
また、昨年10月以降ですね、全てのハラスメント案件について、陸海空問わず、内局も問わずですね、これは厳正に対応するよう指示をいたしました。そしてメッセージも発信をしているところでありまして、そういった、引き続き隊員の意識改革や事案の迅速な解決体制の構築等の実効性あるハラスメント防止対策を通じて、ハラスメントを一切許容しない環境というのを構築していく所存です。
内部通報についての御質問もありましたが、内部通報というのは防衛省・自衛隊の法令順守の推進、また組織の自浄作用の向上に寄与するものと思います。通報者の保護というのは、そういった観点からすると、その実効性を担保する上で非常に重要であるという認識です。
しかも、この内部通報というのは法律にもちゃんと規定をされております。公益通報者保護法ですね、特に第5条においては公益通報をしたことを理由として、公益通報者に対して不利益な取り扱いを行うことは禁止をされております。当然、我々は法令を遵守していかなければいけません。このように、内部通報者に対して不利益な取り扱いを行うことは決してあってはならないというふうに、私はそのように考えております。
記者 :関連でお尋ねします。先ほど係争中なので詳細は言えないということではありましたけれども、既に質問させていただいた点はもう国は認めていまして、裁判所が今後、新しい事実関係を認定するということはないので、裁判中でも裁判後でも事実が変わることはないかと思います。その上で、もう1点お尋ねしたいんですけれども、一連の事案では、陸幕のパワハラ通報窓口から隊員が匿名で通報した内容の原文が北部方面総監部へ送られたということがきっかけとなっていますけれども、この陸幕の対応自体に問題はなかったのかどうか、お考えをお尋ねします。
大臣 :とはいえ、まだ係属中でありますので、これからの裁判に影響を与える可能性もありますから、最終的に結審をした段階でですね、またこういった場でコメントすることはあろうかと思いますが、今この瞬間、正に係属中の訴訟、しかも国家賠償訴訟という国が訴えられている訴訟でありますので、当事者側の一人として、個別的なことについてのお尋ねについては控えたいと思います。ぜひ御理解をいただきたいと思います。
記者 :関連で、ちょっと訴訟とはずれたところで伺いたいんですけれども、この件自体ではですね、この隊員の申し立てで特別防衛監察の調査などが行われて、昨年の11月に陸幕は脅迫等の事実はなかったという結果を防衛大臣御自身にも御報告されているとのことです。一転して今年の6月に、防衛監察本部からの指示で再調査となっているようですけれども、これ隊員が提訴する2日前というタイミングになりますが、再調査となっているこの理由と、結果が出ていればあわせて教えてください。
大臣 :御指摘のあったようなことがですね、今、国家賠償請求訴訟の判断材料の一つとして、今訴訟で正に係属中ということになりますから、一方の当事者である私の方からですね、その点についてもコメントすることは今日は差し控えたいと思います。
記者 :この件に限らずですね、内部通報全般に対する大臣の考え方について伺いたいんですけれども、先ほど内部通報を守ることは重要だという御発言ありましたが、自衛隊ではこの潜水手当の不正受給が長年行われていた問題など多数の不祥事が発覚しています。この不正をなくすということのためには、内部から声を上げてもらうということも非常に重要だと思うんですけれども、この通報者を無理に特定したりですとか、報復するということはですね、当然、通報や相談を委縮させるものになると思います。
木原大臣は先ほどもハラスメントを許容しないということをおっしゃっておりますけれども、そもそも今ですね、自衛隊は組織として、通報者をきちんと守って内部から上がってきた声を受け止められる組織になっているのかどうか、大臣御自身のお考えを最後にお聞かせください。
大臣 :正にハラスメント根絶をする上でですね、その内部通報という制度というのは、正に自衛隊という組織の自浄作用を向上させるという観点で非常に重要だというふうに私は考えています。ですので、通報者を保護するということは非常に重要であるということになります。
先ほど申し上げたように、公益通報制度というのは法律にもちゃんと規定されていることでもありますので、繰り返しますが、内部通報者に対して不利益な取り扱いを行うということは決してあってはならないと私は考えております。ハラスメント根絶については、今、正に自衛隊が長い歴史の中でですね、そういったものが常態化しているということであればですね、それを断ち切らなければいけない、そういう中で今その過程にあるんだというふうに思っております。
このハラスメント根絶を一日も早く実現できるように、そういう組織にしていかなきゃいけないと、それはもう私が昨年から指示をした、あるいはそれ以前の浜田大臣からもですね、ずっと問題意識を持っていた。すぐにそれが改善される、根絶されるということではなくて、大きな組織でありますから、最終的に改善されるまで一定の時間を要するかもしれませんが、しかしそこはなるべくその時間を短くして迅速に対応し、ハラスメントのない組織に作り上げていかなきゃいけないと、そういう認識であります。
防衛産業のコンプライアンスについて
記者 :防衛産業のコンプライアンスについてお伺いします。川重による問題を受けてですね、取引のある企業に対して装備庁の方から社内のコンプライアンス体制がですね、これまでに違反とがなかったかどうかについてアンケートを求めていて、本日が回答期限というふうになっております。これまでの回答状況やですね、それを踏まえた今後の対応についてお聞かせ願えますでしょうか。
大臣 :8月8日にですね、特別防衛監察の調査対象となる潜水艦修理に関わる企業に加えて、その他の防衛関連企業に対しても、取引先企業との間で架空取引が行われていないか等の自社点検を依頼をしました。会見でもそういうふうに申し上げたと思います。正にその自社点検の依頼をした際のですね、締め切りというのが本日9月20日金曜日ということになります。正に今日が締め切りですので、回答の状況については、まだ取りまとめができていないということになります。現時点でお答えするということは困難であります。
また、締め切りが今日でありますが、今後、その事実関係等の確認を含めて、その上がってきた報告内容を精査する必要があります。必要に応じては、更に、逆にこっちから細部を問い合わせをするということにもなるかと思いますので、それには一定の時間を要すると考えてますが、しかし、迅速にそこは対応をしていきながらですね、速やかに取りまとめをしていきたいというふうに思っております。
(以上)
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