中谷防衛大臣、日英防衛相会談後の臨時会見(1月15日)
- 日本の防衛
2025-1-21 09:04
令和7(2025)年1月15日(水)09時59分~10時15分(現地時間)、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は、コンラッドホテルにおいて日英防衛相会談後の臨時会見を行った。
内容は、以下のとおり。
大臣からの発表事項
大臣 :今回、防衛大臣就任後ですね、初めての英国訪問を行うことができました。前回の防衛大臣を務めた際には、2015年第1回日英「2+2」、これに出席のために英国を訪問いたしましたが、今回は10年ぶりに再び防衛大臣として訪問することができました。
今回の訪問につきましては、まず昨日、英国におけるGCAP、この開発の中心となっているBAE社のウォートンの工場、これを視察をしました。その道中、飛行機で行く予定でありましたが、これキャンセルになりまして約2時間近くですね、列車で移動しましたが、その道中、ウッドバーン社長とはまさに膝詰め談判、膝と膝を突き合わせたですね、非常に忌憚のない意見交換を行いました。
ウッドバーン社長とはですね、GCAPの設計作業、これを加速させていくために本年中に各国の契約をGIGOとジョイント・ベンチャーの契約に一本化をするということが何より重要であるという点で一致したところでございます。ウォートン工場のある地域は18世紀の産業革命の中心、あのマンチェスターとかですね、あるところでありますが、その地域に近いところでありまして、このGCAPについては、正に21世紀の産業革命に匹敵するような、変革を実現できるところではないかということで、それを実現できるように日本側もですね、実現するようにですね、努めてまいります。
またウォートンでは、日英伊3か国のエンジニアが共同で設計作業を進めている現場を視察をしまして、現場のエンジニアの皆さんとも直接意見交換をしてまいりました。日本から来られた方もいらっしゃいましたけれども、いずれの方も極めて士気が高く、熱意に溢れて、高く意識を持ってですね、職務に当たっておりまして、私自身非常に強く感じました。
そして本日は、ヒーリー国防大臣との間で、私の就任後初めてになります、日英2国間の防衛相会談、これを行いました。ヒーリー大臣との間では、防衛協力、そして地域情勢について議論を行いまして、2025年にイギリスの空母打撃群のインド太平洋地域への派遣、また日本寄港が計画をされていることを歓迎をしました。今回の派遣においても充実した共同訓練を実施することを追求しておりますが、その先には、航空自衛隊に導入されたF-35Bも参加するような共同訓練も考えられるところであります。また、将来的に航空自衛隊の戦闘機の英国への派遣を検討していることもヒーリー大臣にお伝えをいたしました。
加えて、GCAPをはじめとする防衛装備・技術協力の進展については、意見交換を行いましたが、これらの協力を今後一層、深化をしていくということで一致をしました。そして、日英両国は、アジアと欧州における最も緊密な安全保障上のパートナーであるということにおいて、着実に連携を深めてきておりまして、日英間の安全保障上の連携は、前回私が訪問した10年前とは比較にならないほど強化をされているということを実感をいたしました。
引き続き、情報協力の強化も含めまして、英国との連携の一層強化に取り組みまして、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、英国をはじめとする同志国との連携を強化をしていきたいと考えております。以上が今回の英国の訪問における所感でございました。
質疑応答
次期戦闘機の共同開発について
記者 :今回の会談では、次期戦闘機の共同開発を巡っては、ヒーリー国防相との間ではどのようなやり取りがございましたでしょうか。また、わずか10年後の2035年の配備という容易ではない開発スケジュールに対して、今後イギリスやイタリアとどのように連携してプロジェクトを進めていくお考えかよろしくお願いいたします。
大臣 :次期戦闘機につきましてはF-2、これの退役の開始が見込まれます2035年の初号機、これの配備を目指すことで日英伊との間で合意をいたしておりまして、それに向けて、共同開発決定以降、定期的に大臣間でですね、進捗を確認をしてきております。
今回の会談におきましては、昨年末のGIGOの立ち上げ、そしてJV設立合意書の署名といったGCAPに係る進捗を受けまして、本年中のGIGO・JV間の統合契約締結に向けた今後の方向性について議論をいたしました。この統合契約は、開発作業全体を効率化をするものでありまして、2035年の初号機配備を実現する上で極めて重要なマイルストーンとなるものであります。
引き続き、私のレベルを含めまして、3か国の官民ですね、これが緊密に連携をしまして、進捗をしっかりと確認しながら、日英伊、これの防衛協力の中核であるGCAP、これを力強く推進をしていきたいと考えております。
日本のウクライナ支援、イギリスのインド太平洋の安全保障への関与について
記者 :20日に就任するアメリカのトランプ大統領は、ヨーロッパの安全保障に対する関与に消極的な姿勢を示しておりまして、イギリスとしては日本がウクライナの支援継続してくれることを期待していると思います。そういう中で、今日ヒーリー大臣との間で日本のウクライナ支援、それとイギリスのインド太平洋の安全保障への関与について、どのようなお話されたのでしょうか。
大臣 :ヒーリー国防大臣とは1時間15分にわたりまして、安全保障を巡る様々な問題、課題について、闊達な意見交換を行いました。会談の中では私から、本年のイギリスの空母打撃群のインド太平洋地域への派遣、これを含めてインド太平洋地域に関する継続的なコミットメント、これについて英国が欧州諸国の中で、非常に主導的な役割を果たしていることを歓迎をいたしました。そして、ヒーリー大臣とはインド太平洋地域の安全保障環境が世界で最も厳しいという認識をしっかりと共有をしまして、アジア及び欧州における最も緊密な安全保障上のパートナーとしての連携強化の重要性を確認したところであります。
また会談では、ウクライナ情勢についても話題に上がりました。私からは、自衛隊装備品等の提供、またウクライナの負傷兵の自衛隊病院の受け入れといった、防衛省・自衛隊のウクライナ支援の取り組みについて紹介をし、ヒーリー大臣からは、英国のウクライナ支援にかかる取り組みの説明がありました。
この会談の中で、アメリカの新政権に対する所感も聞きましたけれど、ロシアによるウクライナ、これの侵略についても話を意見交換しました。私からはですね、これは国連憲章を含む国際法の深刻な違反であると。そうしたことで、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがすような暴挙であるということ。ヒーリー大臣とは、やはり力による一方的な現状変更の試みに対しては、それを許さないという姿勢をですね、同志国で連携しながらしっかり示していくことが重要であるということで一致をしました。
要するに、目に見える形でですね、日英の防衛協力や、また各種の訓練とか協議、これを引き続き行っていくことが大事ですというような話をさせていただきました。
装備技術協力の議論について
記者 :大臣は10日の記者会見でAUKUSの第2の柱をはじめとした装備技術協力についての議論に意欲を示されました。今回のヒーリー国防相との会談で、関連する協議内容や具体的に進展したことがあれば教えてください。
大臣 :ちょっと先ほどの質問でですね、本年に空母「プリンス・オブ・ウェールズ」、これを中核とする空母打撃群を日本及びインド太平洋に派遣する旨、公表しておりますが、防衛省としましては、先ほどもお話したとおり、日英の防衛協力が目に見える形で行っていくことが大事であるということで、この派遣はインド太平洋地域の平和と安定に積極的に貢献するという英国のコミットメントを示す上で、非常に重要な意義を有するものであると。この寄港については、具体的な寄港時期、寄港地はまだ決定しておりませんが、英国とも調整の上ですね、決定次第、しかるべきタイミングで公表したいと考えております。
そこで、AUKUSについての御質問でありますが、これは安全保障分野における日英間の協力を進展させる上で、防衛装備、そして技術協力、これは重要なものであります。今回の会談ではGCAPをはじめとするこれまでの取り組みの進展について議論した上で、引き続き、日英防衛装備・技術協力、これを推進をしていくというべきとの認識で一致をしております。そして、このAUKUSの第2の柱、この協力は同志国、また同盟国間の協力を先進技術面から支えるもので重要であると、具体的な協力については引き続き議論をしていくというものであるという話で一致をいたしております。
英国空母打撃群のインド太平洋地域派遣における武器等防護の適用について
記者 :防衛相会談では、英国の年内の空母打撃群のインド太平洋地域への派遣についても意見が交わされたと大臣から紹介がございました。日本政府として、この機会に武器等防護を適用する考えはありますでしょうか。英国に対する適用があれば初めてなのか、適用する場合の意義についてもあわせて伺います。
大臣 :武器等防護に関しましては、もう既にですね、法律で制定されておりまして、そういう中でですね、英国の空母打撃群のインド太平洋地域の派遣の機会、これも含めて、現在早期に実現すべく英国と調整中であります。アメリカ、豪州に続きまして、3か国目になる英国との間で、同じような措置の適用、これは日英間の安全保障上の連携の深化、これを示すものであります。
欧州とアジアの安全保障が不可分となる中で、同地域における最も緊密な安全保障上のパートナーである日英間の安全保障上の連携強化は、我が国及び国際社会において重要でありまして、今回ヒーリー大臣との間で、改めてそういう意義について一致をしたわけでございます。
今回の会談におきましては、英国の空母打撃群のインド太平洋地域への派遣の機会における武器等防護に係る警護の可能性についても議論をいたしました。そして、英国軍に対する武器等の防護にかかる警護につきましては、これまで実施をしてきておりませんが、現在早期に実施すべきであるということで、実現すべくですね、英国と調整中であるということです。
サウジアラビア等のパートナー国参画について
記者 :次期戦闘機の関係で、サウジアラビアの参画が検討されているかと思います。今回の防衛相会談でも、サウジアラビアについて協議が行われましたでしょうか。サウジアラビア以外にもですね、パートナー国参画について意見を交わされたのであれば御紹介いただけますでしょうか。
大臣 :GCAPにつきましては、昨年末にですね、GIGOの立ち上げ、またJV設立の合意書、これが署名をされましたが、これを受けまして、本年中にGIGO・JV間の統合契約締結に向けた今後の方向性につきましては議論をいたしました。その上でGCAPは日英伊3か国の同盟国やパートナー国との協力を念頭に置いて設計をされてきたものでありますが、現時点において、お尋ねのサウジアラビア、またそれ以外の第三国の参加については申し上げる段階にはないということであります。
今回の議論の詳細につきましてはですね、会談の相手国の関係上ですね、お答えすることは困難でありますが、いずれにしましても、現時点で第三国の参加について申し上げる段階ではないということであります。
韓国ユン・ソンニョル大統領の拘束令状の執行について
記者 :韓国のユン・ソンニョル大統領が非常戒厳を宣言したことをめぐり、警察などでつくる合同捜査本部はユン大統領の拘束令状を執行したと発表しました。これについて、大臣の受け止めと、日韓安全保障協力への影響についてお考えをお願いいたします。
大臣 :御指摘の報道については承知をいたしております。他国の内政についてはコメントいたしませんが、特に韓国というのは安全保障上、日本にとりましては、非常に重要な国でありますし、また国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国であると認識をしております。この地域の安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中で、日韓・日米韓、これの連携が益々重要になっているということには変わりがないわけでありますので、防衛省としましては、この韓国内の一連の動きについては、特段かつ重大な関心を持って注視をしつつ、こうした日韓・日米韓の連携の重要性を踏まえながらですね、引き続き、韓国側と緊密に意思疎通を図っていくという考えであります。
(以上)
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