《レポート》スペイン海軍のイージス艦「メンデス・ヌーニェス」が横須賀入港
- 日本の防衛
2025-7-26 06:00
スペイン海軍のイージス・フリゲート「メンデス・ヌーニェス」が横須賀に寄港した。報道陣にその艦内の様子を公開し、艦長が今回のインド太平洋地域展開の意義を語った。

2025年7月24日、神奈川県にある海上自衛隊横須賀基地に1隻の軍艦が入港しきてた。スペイン海軍のアルバロ・デ・バサン級フリゲート「メンデス・ヌーニェス」だ。満載排水量約5800トン、全長146mとコンパクトなサイズながら、探知距離約500kmを誇るとされるAN/SPY-1Dレーダーや、各種ミサイルを装備可能な48セルのMk41 VLS(垂直発射装置)、そして高度な防空戦闘システムであるイージス・システムを搭載する同艦は、世界最強のフリゲートのうちの1隻と言っても過言ではないだろう。
そんな「メンデス・ヌーニェス」が本国スペインを出発したのは今年4月のこと。じつは、同艦はイギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」を中心とした打撃群の一員として、地中海からスエズ運河を抜け、インド太平洋地域へと進出してきたのだ。そして、オーストラリアに寄港後に一時的に打撃群から離れ、単独行動の一環として今回日本に寄港したという。
報道陣向けの艦内ツアー
横須賀基地の岸壁において、ホストシップである海上自衛隊の護衛艦「くまの」乗員らによる入港歓迎式典ののち、「メンデス・ヌーニェス」の艦内が報道陣に公開された。まず案内されたのは医務室で、治療を行うための診察台をはじめとする医療設備一式が備え付けられている。「メンデス・ヌーニェス」には看護師1名、医師1名が乗艦しており、必要に応じてスペイン本国にある海軍中央病院と医務室内のモニターで連絡を取り、治療に関するアドバイスを受けることができるという。

続いて向かった先は艦橋だ。筆者は海上自衛隊の護衛艦や他国海軍艦艇の艦橋を何度か取材する機会を得たが、それらと比べて「メンデス・ヌーニェス」の艦橋は少々狭い印象を受けた。しかし、取材陣をアテンドしてくれた広報担当のアントニオ・ピネイロ大尉によると、操艦時には5~6名しか艦橋にはいないとのことで、それならば納得のサイズ感だ。

そこから艦橋横のウィングに出ると、波をかぶった際に水が足元にとどまらないようにするため、スノコ状の板が床に敷かれていた。これは、欧州艦艇に多く見られる特徴だ。
艦中央部の艦対艦ミサイル「ハープーン」発射装置のすぐ横には、低軌道衛星による高速通信が可能なスターリンク用のアンテナが3つ設置されていた。先述したピネイロ大尉によれば、1つは乗員が私的なメールなどのやり取りなどに使うため、1つはスペイン海軍のイントラネット(部内ネットワーク)との通信用(艦内で通信を暗号化することによりアクセス可能となるそう)、そしてもう1つは「UKネット」と呼称されているもので、これは今回の「プリンス・オブ・ウェールズ」打撃群参加に際して、艦隊内の情報共有のためにイギリス軍が持ち込んだものだという。そのため、「UKネット」用の端末については帰国後に取り外されるそうだ。

今回の日本寄港は来年以降への布石
艦内ツアーの後、取材陣は再び艦橋に上がり、そこでハイメ・ムノス・デルガド艦長にインタビューする機会を得た。デルガド艦長によると、今回の展開において最も挑戦的な要素は「ロジスティクス」だという。

「我々は本国から非常に離れた地域で、すでに3か月以上活動しています。しかも、スペイン海軍の艦艇がインド太平洋地域に進出してくることは非常にまれですし、活動拠点も有していません。従って、我々はスペイン本国からロジスティクス面での支援が必要不可欠となりますが、これは現在のところ上手く機能しています。今回の展開の目的は、スペインから遠く離れた地域においても長期間の活動が可能であることを証明することでしたが、これは達成できていると考えています」
さらに、2022年のロシアによるウクライナ侵略以来、ヨーロッパと日本を含むインド太平洋地域は安全保障面で連携を強めてきている。そこで、スペインによる今後のインド太平洋地域における軍事活動は今後も強化されていくことになると、デルガド艦長は説明する。
「今回の展開は、あくまでも我々のインド太平洋地域における活動強化の第一歩にすぎません。今回はイギリスの空母打撃群の一員として展開しましたが、来年もしくは再来年には、スペイン海軍のみの艦艇による艦隊を編成して、再びインド太平洋地域へと展開することになります。そのために我々は今回、日本を含めた各国に寄港しており、今後もスペインはインド太平洋地域の安全保障に関与し続けます」
「メンデス・ヌーニェス」横須賀入港 写真ギャラリー
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