木原防衛大臣、6月25日の記者会見 各国との共同訓練、自衛隊創設70年やオスプレイについて
- 防衛省関連
2024-6-26 09:19
令和6(2024)年6月25日(火)10時53分~11時11分、木原稔(きはら・みのる)防衛大臣は、防衛省A棟11階第1省議室において閣議後の記者会見を行った。
大臣の発表事項
自衛隊と各国空・海軍の共同訓練について
大臣 :ドイツ空軍、フランス空軍、スペイン空軍との共同訓練について申し上げます。
航空自衛隊は、ドイツ、フランス、スペインの空軍がインド太平洋地域に来訪する機会を捉えて、来月19日から25日にかけて共同訓練を実施することとなりました。
具体的には、ドイツ、フランス、スペインの戦闘機等と航空自衛隊の戦闘機等により、百里基地周辺において日仏共同訓練、千歳基地周辺において、日独スペイン共同訓練及び日独共同訓練を実施する予定です。
今月は、トルコ海軍、オランダ海軍、インド海軍とも、我が国周辺海域において共同訓練を実施しました。これら各国軍隊によるインド太平洋地域への相次ぐ来訪は、各国のインド太平洋地域に対する関与の意思と能力を示す証左であります。また、我が国周辺における各国軍隊との共同訓練は、自衛隊の戦術技量を向上させるのみならず、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて各国との連携を深化するものであります。
我が国は、力による一方的な現状変更及びその試みを許容しないとの考えをはじめとし、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を多くの国と共有しています。防衛省・自衛隊は、安全保障上の課題が多く存在するインド太平洋地域において、これらの国と共同訓練をはじめとする防衛協力を今後も進めてまいります。
記者との質疑応答
日米韓防3か国の共同訓練「フリーダム・エッジ」について
記者 :米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」が22日、韓国の釜山(プサン)港に入港しました。第9空母打撃群の司令官が会見を開き、先日の日米韓防衛相会談で合意した3か国の共同訓練「フリーダム・エッジ」を近く実施し、「セオドア・ルーズベルト」も参加すると明らかにしました。
日本側の調整状況と、改めて今回の訓練を開く意義を伺います。また、北朝鮮の反発も予想されますが、大臣のお考えをお聞かせください。
大臣 :昨年8月の日米韓首脳共同声明におきまして、複数領域における名称を付した3か国共同訓練を、定期的に実施する意図を有することを発表いたしました。
当該訓練についてですが、日米韓3か国は、今月2日に実施した日米韓防衛相会談において「フリーダム・エッジ」という名称を付して、この夏に実施することで一致をしたところであります。「フリーダム・エッジ」の具体的な実施時期や内容等については、目下、3か国の間で緊密に調整を行っている最中であり、現時点ではまだお答えは差し控えます。
また、実施予定の本訓練に対する北朝鮮の反応ということですが、予断をもってお答えすることはいたしませんが、本訓練は特定の国や地域を想定したものではございません。先ほど述べた、その首脳会談、あるいは防衛相会談において発表しているとおりですが、安全保障環境が大変厳しい中において、安全保障上の課題に対応し平和と安定を維持・強化するためには、日米韓3か国の組織化された能力及び協力を強化する必要がございます。このため、「フリーダム・エッジ」等の3か国共同訓練の実施を含めて、引き続き3か国の安全保障協力を強化してまいります。
自衛隊創設70年を迎え、自衛隊の役割はどう変化したか
記者 :自衛隊創設70年に関してお伺いします。7月1日で自衛隊創設から70年の節目を迎えます。国際情勢の変化も踏まえた上で、この70年間の自衛隊の役割の変化について、どう振り返るでしょうか。
政府は2022年末に安全保障関連3文書を策定し、反撃能力の保有を決めましたが、70年の歴史を踏まえた上で、防衛省・自衛隊にとって反撃能力の保有にはどういう意義があったとお考えでしょうか。
大臣 :ではまず前段、自衛隊の役割の変化ということでございますが、振り返ると昭和29年、1954年7月1日に当時の防衛庁が設置をされ、陸・海・空、各自衛隊が発足をいたしました。
冷戦期の昭和51年に策定をされました防衛大綱では、我が国が防衛力を保持する意義は、我が国自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないことにあるとされてきましたが、冷戦終結後、自衛隊の役割と任務というものは、国内外での大規模災害等への対応や、また国際平和協力活動等に拡大をされ、様々な事態に対応するものとなりました。
また、2000年代には、国際テロなどの新たな脅威に対応するため、特別措置法を成立させるなどして、国際的な安全保障環境を改善するために、国際社会が協力して行う活動に主体的かつ積極的に取り組んでまいりました。
そして、2010年代に入ると、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とするため、2015年に成立した平和安全法制により、日米同盟はかつてないほど強固となりまして、抑止力・対処力が向上し、地域の平和と安定にも寄与するとともに、国際社会の平和と安定のため、より積極的に貢献できるようになりました。
そして近年ですが、力による一方的な現状変更の試みの深刻化や、北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射など、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく、そして複雑なものになっております。
後段の質問の反撃能力ということですが、我が国周辺の動向について申し上げると、ミサイル関連技術や運用能力が飛躍的に向上し、質・量ともにミサイル戦力が著しく増強をされており、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。
この現実というものを踏まえると、相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、国民の命や暮らしを守り抜くために今後不可欠となる能力であります。
厳しい安全保障環境に直面する中で、防衛省・自衛隊としては、引き続き、反撃能力の保有も含め、防衛力の抜本的強化にスピード感をもって取り組んでいくとともに、いかなる事態においても、国民の命と平和な暮らしを守るべく、緊張感をもって、引き続き我が国の防衛に全力を尽くしてまいります。
北大東島の移動式警戒管制レーダーの配備について
記者 :沖縄県の北大東島(きただいとうじま)に航空自衛隊の移動式警戒管制レーダーの配備を、現在検討していると思いますが、その点についてお伺いします。
現在の検討状況と、北大東に移動式のレーダーやその運用部隊を配備する必要性について大臣のお考えを教えてください。それから、もし配備方針が既に決まっているのであれば、今後、住民説明会等々を開く予定が現時点であるかどうかという点についてもお伺いさせていただきます。
大臣 :まず、北大東島における検討状況ということですが、我が国周辺の海空域においては、周辺国等が活動を拡大・活発化させている中で、太平洋側の警戒監視態勢の強化というのは喫緊の課題であります。北大東島ですが、我が国周辺の警戒監視を常続的に行っていく上で重要な位置にあり、配備に係る有力な候補地であると考え、令和5年度末まで現地調査等を行ってまいりました。
こうした調査結果などを踏まえて、防衛省において、現在配備先の検討を加速化させているところです。現時点においては、北大東村への配備を決定したものではなく、今後の説明会についても現時点では予定はありませんが、引き続き、北大東村とよく連携をしてまいります。
実動演習「レゾリュート・ドラゴン」とオスプレイについて
記者 :7月28日から始まる陸上自衛隊と海兵隊の実動演習「レゾリュート・ドラゴン」にオスプレイが参加することについて、何点かお伺いします。日米のオスプレイが参加する意義と、その安全対策を教えてください。
大臣 :一つ目ということで、意義と安全対策ということですが、今回の「レゾリュート・ドラゴン24」において、島嶼部へ隊員等を輸送するための重要な装備品である日米双方のオスプレイが参加をすることで、操縦士等の戦術技量の向上のみならず、島嶼防衛をはじめとする各種活動における、日米のオスプレイを含めた連携能力の向上が期待をできます。日米のオスプレイが参加するこのような共同訓練は、日米ともにオスプレイの飛行に係る安全確保に万全を期して実施をいたします。
昨年の米軍オスプレイ墜落事故について申し上げると、当該事故を受けた日米間の確認作業の中では、前例のないレベルで技術情報に関するやり取りがなされておりまして、既に事故原因が特定され、当該原因に対応した各種安全対策措置を講じることにより、同種の不具合による事故を予防・対処することができると考えています。
それから安全対策でございますが、例えば、安全な飛行のため予防的措置や緊急時の対応要領を定めたマニュアルがありますが、同種の不具合による事故を防ぐための手順を整理し、これらをマニュアルに追加しています。また、日々の飛行の際に事前に作成する運用計画についても、同種の不具合による事故を防ぐための手順を整理し、この計画に反映させることとしております。
こうした安全対策の詳細については、運用保全上の理由から、対外的に明らかにすることはできませんが、飛行の安全確保が最優先であるということは、私とオースティン米国の国防長官を含む、日米間のあらゆるレベルで確認をされており、引き続き日米で協力し、安全確保に万全を期してまいります。
記者 :関連しまして、オスプレイにつきましては、先の米議会公聴会で、米海軍航空システムコマンドのチェビ司令官は、再設計されたクラッチを取得するまでは、リスクは排除できないと証言しています。防衛省の受け止めを教えてください。
大臣 :ハード・クラッチ・エンゲージメントの件だというふうに承知しますが、御指摘のチェビ司令官の発言については、現在、その詳細について米側にまだ確認しているところです。具体的なやり取りについては、米側との関係もあるため、お答えは差し控えますが、いずれにせよ、情報はですね、得られましたら御説明いたします。
その上で申し上げれば、従来から説明しているとおり、カリフォルニアでのMV-22(米海兵隊オスプレイ)の墜落事故の事故調査報告書においては、オスプレイのプログラムオフィスに対して、ハード・クラッチ・エンゲージメント事象の発生を緩和する、新たな部品の設計及び製造が推奨策として勧告されておりまして、これについては、将来的な措置として、米側において引き続き取り組まれていることを確認しております。
また、ハード・クラッチ・エンゲージメントはギアボックスの構成要素である、クラッチに関連する部品、いわゆるIQA(インプット・クイル・アセンブリ)@@size|65※@@を原因として発生するものであり、使用時間が800時間を超えるIQAの交換によって当該事象の発生を99%以上低減していることや、その他のHCE(ハード・クラッチ・エンゲージメント)による事故を防止するための対策が実施されていることから、オスプレイの安全性に問題はないという、そういうふうに考えております。
記者 :オスプレイの設計や技術に係る安全性について、責任を有する米軍の専門部局であるNAVAIRのチェビ司令官がリスクは排除されていないと証言している以上、日米で同じ認識を持つのが妥当かと存じますが、大臣の見解を教えてください。
大臣 :先ほど少し申し上げましたが、オスプレイの安全性についてはカリフォルニアでの墜落事故後も含めて、日米間では緊密に技術情報に関するやり取りがなされております。
またオスプレイ運用に当たっては、飛行の安全確保が最優先であるということは、私とオースティン長官の間でも度々、そして日米間のあらゆるレベルでも確認をされていることから、オスプレイの安全性に関する事柄は日米共通の理解であるという認識をしています。その上で、御指摘の今回のチェビ司令官の発言につきましては、現在、その彼の、意味するところの詳細について米側に確認をしておりまして、この情報についてはですね、得られたら説明したいというふうに考えています。
「ヴァリアント・シールド」初参加の意義は
記者 :「ヴァリアント・シールド」についてお伺いします。今月中旬に自衛隊は米軍主催の「ヴァリアント・シールド」に参加して、一部基地では初めての訓練もあったかと思います。日米同盟にとって、今回の訓練はどのような意義があったとお考えでしょうか。
大臣 :「ヴァリアント・シールド」についての御質問ですが、今月の7日から18日までの間、米軍が主催する多国間演習「ヴァリアント・シールド」に初めて参加をし、各種の戦術訓練を実施しました。
米軍の戦闘機が初めて展開した海上自衛隊の八戸(はちのへ)航空基地及び航空自衛隊の松島(まつしま)基地においては、米軍の運用態勢を確立した上で、航空自衛隊の戦闘機等と共同訓練を実施するなどして、相互運用性を向上することができました。
我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、米軍がインド太平洋地域で主催する多国間演習に参加をし、その一部を、自衛隊施設を含む日本周辺海域において実施できたことは、自衛隊の統合運用能力を向上させるのみならず、日米同盟の抑止力・対処力を強化できたものと考えております。また、インド太平洋地域において、米軍が主催する多国間演習に参加する同志国との連携を強化できたということも、大きな意義を有するというふうに考えております。
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