[国会答弁]護衛艦すずつきの意図しない中国領海侵入事案に関する質問答弁
- 日本の防衛
2025-11-5 11:56
防衛省は令和7(2025)年10月31日(金)09時20分、第219回国会における閣議資料のうち、「護衛艦すずつきの意図しない中国領海侵入事案に関する質問に対する答弁書」を報道に公開した。
その質問主意書と答弁書を以下に転載する。
質問主意書
令和7年10月21日提出
質問第6号
護衛艦すずつきの意図しない中国領海侵入事案に関する質問主意書
提出者 平岩征樹
海上における偶発的な軍事的衝突は意図しない事態の拡大を招きかねないことから、その防止を図るために様々な手段が講じられてきた。1972年に締結された米ソ海上事故防止協定(以下INCSEA)はその嚆矢であり、日本においても1993年に日ロ間でINCSEAが締結された。一方、米中間では1998年に軍事海洋協議協定(以下MMCA)が締結されたが、INCSEAと比較すると協定自体に事故防止の規定がなく、INCSEAほどの評価は得られていない。日中間においては2007年から協議が始まり、2018年には日中海空連絡メカニズム(以下メカニズム)の運用が開始、2023年にはメカニズムに沿って日中防衛当局間ホットライン(以下ホットライン)が開設されたが、内容としてはMMCAに近いものとの評価もされている。また、多国間の規範として海上衝突回避規範(以下CUES)があり、2014年に日中を含めた21か国で合意がなされた。これらを踏まえ、2024年7月に、護衛艦「すずつき」が事前通告なしに中国領海内を航行した件(以下本事案)について、以下のとおり質問する。
一 日本政府の見解として、他国領海の無害通航に当たり中国はじめ幾つかの国が求めているような「事前通告」は不要であるとしていると認識しているがそれでよいか。
二 本事案においてホットラインが使用されたか事実の有無を答えられたい。
三 中国側の発表によれば、「すずつき」による中国領海侵入前から進路変更を無線により呼びかけたとなっているが、事実か。また無線による呼びかけはCUES及びメカニズムによって確認された方法によるものか教えられたい。
四 本事案において「すずつき」が領海侵入後、領海を離脱すると決定した直接の理由は中国艦船による警告射撃だったか、もしくは日本の海上自衛隊基地等からの命令によるものか、その他の理由によるか教えられたい。
五 本事案において、結果的に「すずつき」が中国領海に侵入し、警告射撃を受けたことは、数多く用意されていたはずの衝突回避手段が機能していなかったことを意味していると思料する。本事案を受けてメカニズムの見直しや現場の運用方法について見直しが図られるべきと考えるが検討状況を教えられたい。
右質問する。
答弁書
衆議院議員平岩征樹君提出護衛艦すずつきの意図しない中国領海侵入事案に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「事前通告」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、外国の軍艦に対し、沿岸国が、当該国の領海に入域する場合に事前の通告を求めることについて、海洋法に関する国際連合条約(平成8年条約第6号)上明文の規定はないと考えている。
二について
お尋ねの「ホットライン」の個別具体的な使用状況については、相手国との関係もあり、お答えすることは差し控えたい。
三から五までについて
お尋ねの「中国側の発表」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについてお答えすることは、自衛隊の運用に影響を及ぼすおそれがあることから、差し控えたい。
なお、政府としては、引き続き、中国との間で、御指摘の「日中海空連絡メカニズム」の適切かつ確実な運用をしっかりと確保していく考えである。
(以上)
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