多国間制裁監視チーム(MSMT)が第1回報告書を公表「北朝鮮とロシアとの間の不法な軍事協力」
- 日本の防衛
2025-6-2 11:05
外務省は令和7(2025)年5月29日(木)、多国間制裁監視チーム(MSMT)が、「武器移転を含む北朝鮮とロシアとの間の不法な軍事協力」をテーマとした第1回報告書を発表したことを公表した。
外務省リリースの全文と、多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書の概要を以下に転載する。
多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書の公表
5月29日、多国間制裁監視チーム(MSMT: Multilateral Sanctions Monitoring Team)は、「武器移転を含む北朝鮮とロシアとの間の不法な軍事協力」をテーマに、第1回目の報告書を公表しました。
また、この機会に、MSMT参加国による共同声明が発出されました。
1 MSMT第1回報告書では、2024年1月から2025年4月までの期間を中心に、北朝鮮とロシアの間における武器移転やロシアへの北朝鮮兵士の派遣、違法な取引ネットワークといった、北朝鮮に関連する国連安全保障理事会(安保理)決議に定められた制裁措置の違反及び回避に係る具体的な情報が記載されています。
2 また、共同声明では、関連する安保理決議の完全な履行に向けたMSMT参加国の共通の決意を改めて確認しています。
3 日本政府としては、今後とも、MSMT参加国を含む国際社会と緊密に連携しながら関連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていきます。
(参考 1)多国間制裁監視チーム(MSMT: Multilateral Sanctions Monitoring Team)
昨年10月、安保理北朝鮮制裁委員会(1718委員会)専門家パネルの活動が同年4月末に終了したことを受け、我が国を含む同志国は多国間制裁監視チーム(MSMT)を設立。MSMTは、北朝鮮による制裁違反・回避事例の指摘・公表等を通じて関連安保理決議の実効性を確保する取組。本年2月、MSMT運営委員会第1回会合が開催された。参加国(2025年5月23日時点)は、日本、豪州、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、韓国、英国及び米国。
(参考 2)関連リンク
(参考 3)別添
(1)多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書(北朝鮮とロシアの軍事協力)に関する共同声明(和文仮訳(PDF))
(2)多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書全文(英語)(PDF)
(3)多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書の概要(PDF)
(以上)
多国間制裁監視チーム(MSMT)第1回報告書(露朝間の不法な軍事協力)の概要
令和7(2025)年5月29日 外務省国連制裁室
5月29日、多国間制裁監視チーム(MSMT)による第1回報告書(武器移転を含む北朝鮮とロシアの間の不法な軍事協力)が公表
されたところ、報告書の概要は以下のとおり。
報告書の概要
1.露朝間の不法な武器移転及び関連する制裁違反
(1)北朝鮮からロシアへの武器移転
● 2023年9月以降、北朝鮮は、ウクライナに対する戦争の支援として、ロシアに対して2万を超える軍需品のコンテナを供給。2024年中には、北朝鮮は少なくとも100発の弾道ミサイル及び3個旅団分の重砲の構成品に加え、対戦車ミサイルも提供。
● 北朝鮮製弾道ミサイルには非北朝鮮製部品が使用。北朝鮮は制裁を回避し、外国製部品を第三国の中間業者から調達している。
(2)ロシアから北朝鮮への武器移転
● 2024年11月以降、ロシアは北朝鮮に短距離防空システム及び電波妨害機器を含む高度な電子戦システム並びにその運用知識を提供したとみられる。
● ロシアは北朝鮮に対し弾道ミサイルのデータフィードバックを提供することにより、北朝鮮の弾道ミサイル開発計画を支援。
(3)北朝鮮兵士のロシア派遣及びロシアによる訓練
● 北朝鮮は2024年終盤に1万1000人を超える兵士をロシアに派遣し、これらの兵士はロシアの部隊から砲術、無人航空機及び基本的歩兵作戦に関する訓練を受けた。北朝鮮兵士はロシアのウクライナに対する戦争を支援するため、ロシアの部隊とともに戦闘に従事した。
● 2025年1月から3月には北朝鮮が3000人を超える兵士を追加で派遣したと評価。4月には北朝鮮及びロシアの双方が北朝鮮による兵士の派遣を公に認めた。
2.関係者、ネットワーク及び輸送方法
● 2024年6月の露朝包括的戦略パートナーシップ条約の署名以降、複数の国連制裁対象者がロシアを訪問。
● 北朝鮮からロシアへの武器移転は当初鉄道を用いて行われたが、その後砲弾の大規模な供給にはロシア船籍の船舶が、弾道ミサイルや発射台付き車両(TEL)といった機微かつ重要な機器については鉄道又はロシア軍の貨物航空機が用いられた。
3.違法な取引及びその他の制裁違反
● 2024年3月から10月にかけて北朝鮮のタンカーがロシアから100万バレル以上の石油精製品を供給したとのシンクタンクによる分析がある一方、制裁委員会のウェブサイトでは安保理決議で定められた年間上限50万バレルの60%程度しか供給されていないとされていることから、ロシアが北朝鮮に供給した石油精製品の一部しか制裁委員会に報告されていないと評価。
● 2024年、北朝鮮は労働者8000人分のビザをロシアに申請。北朝鮮は2025年前半に数千人以上の労働者のロシアへの派遣を計画。
● ロシア及び北朝鮮は、南オセチアにおけるMRB銀行のルーブル建て口座を用いて、国連制裁対象団体であるフォーリン・トレード・バンク(Foreign Trade Bank)及びコリア・クワンソン・バンキング・コーポレーション(Korea Kwangson Banking Corporation)を通じた金融取引を積極的に行った。
(以上)
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