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「統合作戦司令部」(JJOC)が発足 陸・海・空自衛隊の一元運用を担う(3月24日)

  • 特集

2025-3-25 06:00

 令和7年(2025年)3月24日(月)、防衛省・自衛隊において新たな部隊「統合作戦司令部」が新編された。

「統合作戦司令部」は、陸上・海上・航空や自衛隊サイバー防衛隊などに分かれている自衛隊の部隊を連携させ、一元運用するための司令部である。初代司令官は南雲憲一郎(なぐも・けんいちろう)空将、陸・海・空自の隊員と事務官からなる約240名体制で発足した。英略称は「JJOC」(ジェイジョック)だ。

 これまで自衛隊では、大規模災害や海外任務など陸・海・空自の連携が必要な事態に臨むたびに「統合任務部隊」という臨時の統合部隊を編成して対処してきた。しかし今後は、「統合作戦司令部」の新設によって、平素から一元運用への備えを推し進めることになり、平時から有事まであらゆる事態に迅速、柔軟、かつ効果的に対処できるようになってゆく。

 また、統合作戦司令部がアメリカなどのカウンターパートとの連絡調整を担うことで、他国との共同対処能力が向上することも期待されている。

 この日、正午から東京・市ヶ谷の防衛省において中谷元(なかたに・げん)防衛大臣臨席のもと、歴代防衛大臣やアメリカ軍およびオーストラリア軍からの来賓、在京各国の武官、そして隊員の家族を招いて、編成完結式と記念行事が行われた。記念行事では、米インド太平洋軍司令官サミュエル・パパロ海軍大将の代理で出席した在日米軍司令官スティーブ・ジョスト空軍中将、日帰りで来日したオーストラリア軍統合作戦本部長ジャスティン・ジョーンズ海軍中将がお祝いと期待の言葉を寄せた。

編成完結式の執行前に儀仗広場で栄誉礼と儀仗を受けた、初代統合作戦司令官の南雲憲一郎 空将 写真:菊池雅之
編成完結式の模様。今後のカウンターパートとなる米軍のインド太平洋軍司令官(代理で在日米軍司令官が出席)やオーストラリア軍の統合作戦本部長も招かれた。写真:編集部
編成完結式における、中谷防衛大臣から南雲統合作戦司令官への隊旗授与。 写真:菊池雅之
統合作戦司令部のロゴマーク。統合運用により陸・海・空自衛隊の一元的な指揮を行う司令部のシンボルとなる。防衛省職員から寄せられた151作品の中から選ばれた。写真:菊池雅之
記念式典終了後の集合写真。手前は約240名の司令部隊員、その後ろが各国の駐在武官たち。舞台上は防衛大臣経験者と自衛隊の要人、中央が南雲司令官。写真:菊池雅之

 以下に、編成完結式における中谷防衛大臣による訓示の全文と、記念行事における南雲司令官による挨拶の全文を掲載する。

中谷元 防衛大臣 訓示(編成完結式)

 本日、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行う統合作戦司令部が、ここ市ヶ谷に新設をし、多くのご来賓、防衛大臣経験者、また衆参国会議員、そして歴代の防衛省のOBの方、またご父兄の皆様がた、ご来賓のもとに、この場におきまして、南雲司令官以下JJOC職員に、直接、部隊の司令官の旗を授与できたということを大変嬉しく思います。

 統合幕僚監部の前身であります「統合幕僚会議」、これは1954年、昭和29年、防衛省が設置をされた際に、防衛庁におきまして、防衛庁長官を補佐する機関として、越中島(えっちゅうじま)に設置をされました。

 防衛省・自衛隊は創設以来、目まぐるしく変化を続けておりまして、その時々の時代の要請に応える活動をして参りましたが、2001年、平素から陸・海・空自衛隊の有機的かつ一体的に運用できる体制が必要であるという認識から、私が防衛庁長官の時でありますが、「統合運用に関する検討を行うように」という指示を出しまして、2006年、「統合幕僚監部」が新設され、統合運用に必要な再生の整備が行われました。

 多くの先輩方から受け継いだ伝統を着実に培い、国民に対して自衛隊の存在を定着させてきました。その後、3.11東日本大震災、熊本地震、能登半島・北陸地震など、大規模な災害が発生をし、オペレーションも従来の力による現状変更を逸脱するような国際情勢が多く行われる中で、今、新しい地政学的な変化によって、わが国は戦後最も厳しく、複雑な時代の安全保障環境に直面をして、この分、防衛省自衛隊に期待される部分がより一層、重くなってきております。

 このような環境の中で、このたびの統合作戦司令部の新設は、わが国の安全保障上、極めて大きな意義を持つものでございます。

 第一に、自衛隊の即応性の向上です。統合作戦司令部が自衛隊の運用について、各部隊に一元的に指揮をし、あらゆる事態に対して24時間365日、柔軟かつ迅速に対応できる体制を実行していただきたいと思います。

 ふたつ目は同盟国、同志国の司令部との連携です。統合作戦司令部にはわが国の国民のみならず、同盟国、同志国からも高い期待が寄せられており、大臣レベルでもしばしば話題にのぼります。各国のカウンターパートと情報共有や運用面での協力を一元化をし、統合運用の実効性を向上させていただきたい、そう思います。

 明日のわが国の平和は、諸君らの双肩にかかっております。本日、ご家族の皆様もお越しになられました。そして各国の防衛駐在官、武官、大使館からもご来賓でお越しをいただいております。隊員は皆様方の応援があるからこそ、全力を出し切ることができます。今後、しっかりと任務が遂行できるように、万全を期してまいりますので、今後ともご指導をよろしくお願いいたします。

 本日ご臨席いただきました、来賓の皆様方に対して厚く御礼申し上げるとともに、今後も引き続き、統合作戦司令部をはじめ、防衛省・自衛隊へのご支援をお願い申し上げます。

 最後に、南雲司令官以下、隊員諸君。諸君は、我が国の防衛における重要な一歩を踏み出したものであります。歴史的な意義を持つものであります。その自信と誇りを胸に、自らの使命の重要性に思いをいたし、高い規律と緊張感を保ちながら、任務に精励されることを、切に願います。

 これから日本の歴史上はじめての、統合作戦司令部の活動が始まります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

統合作戦司令部の看板と、任務に臨む覚悟を表した同司令部のモットー「一源三流」。いずれも中谷防衛大臣の揮毫による。 写真:編集部

南雲憲一郎 統合作戦司令官 挨拶(記念行事)

 統合作戦司令部の創設に際し、統合作戦司令官として一言ご挨拶を申し上げます。

 本日は、統合作戦司令部 新編行事を開催するにあたり、中谷防衛大臣、駐日米臨時代理大使ジョセフ・ヤング閣下をはじめ、歴代の防衛大臣、国会議員の先生方、各国よりお越しの軍関係者、その他多くの方々にご来臨を賜り、誠にありがとうございます。

 今年は先の大戦を終えてから80年を迎えます。この間、今日に至るまで、防衛省・自衛隊は、その責務と役割を果たし、多くの国民の信頼を得る存在として発展してきました。これは、これまでの激動の時代にあって、守るべきは守り、変革すべきは変革し、我々の先達が幾多の困難を乗り越えてきたからにほかなりません。そして、この防衛省・自衛隊の発展の歴史において、任務に殉じられた英霊があったことを忘れることはできません。

 改めて、先達の労苦や国民からの信頼に思いをいたし、統合作戦司令部は、防衛省・自衛隊の一翼を担う、責任ある部隊として、先達が築き上げてきた礎の上に立ち、新たな歴史を一歩一歩、着実に歩んでいく所存です。

 現在の国際社会は、厳しい試練の時を迎えており、先行きも不透明なものとなっています。そのような中で令和4年12月、制定された「国家防衛戦略」では、防衛力の抜本的強化が謳われ、そのうちのひとつの施策として、統合運用の実効性を強化するため、陸・海・空自衛隊の一元的指揮を行う常設司令部が創設されることとなりました。その目指すところは、国民の命と平和な暮らし、そして我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜く、そのために、平素から有事になるまで、シームレスに、事態に的確に対応することになります。

 我々は、この重要な任務、責務、役割を防衛大臣の指揮のもと、的確に果たすべく、より精強で健全な部隊を不断に追求してまいります。
 その黎明期にあって、

 ひとつ、政策、戦略、作戦、戦術の一体性を確保すること。
 ひとつ、米軍やオーストラリア軍をはじめとする同志国との連携を一層強化すること。
 ひとつ、作戦の遂行にあたって自治体や関係部署との緊密な連携が図れること。

 この3つを特に重視し、統合作戦司令部の能力向上を図ってまいります。

 また、我々は「誠の心」を源として、

 ひとつ、自信の利害を超えて公に尽くすことを誇りとし、ことに臨んでは危険を顧みず、身をもって国民の負託に応える。
 ひとつ、戦わずして勝つ。戦わば勝つ。そのため切磋琢磨し、組織力を鍛え、厳正な規律と精強さを追求する。
 ひとつ、仁愛を以て人を大切にし、明るい気風と相互信頼の中に健全なる組織をともに育む。

 この「一源三流」を心のよりどころとして、国防の任務に当たってまいります。

 本日は、本新編行事に、隊員ご家族にもお越しいただいております。隊員が任務に邁進するためには、ご家族の深いご理解が必要です。各種事態に対応する際は、ご家族にご心配をおかけすることもあろうかと思いますが、ご支援、ご協力を賜れますようお願い申し上げます。

 ここ東京では桜が開花を始めました。統合作戦司令部は、この桜の開花とともに出発し、覚悟も新たに、司令部、隊員が一丸となって任務に精励してまいりますことをここにお誓い申し上げます。

 結びに、統合作戦司令部の新編にあたり、これまでご尽力を賜りましたご臨席の皆様をはじめ、すべての関係者に改めて深甚なる感謝を申し上げますとともに、我が国の皆さまと、本日ご来臨の皆さま方のご健勝を祈念申し上げ、ご挨拶といたします。

記念行事で挨拶した南雲司令官。肩章の桜は幕僚長と同格の4つが並ぶ 写真:菊池雅之

(以上)

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