《「こんごう」乗艦レポート》
リムパック2026 #10 「絆」で結ばれた洋上補給
- 特集
2026-10-2 06:16
リムパック参加中の「こんごう」は、カナダ海軍の補給艦とランデブーし、洋上補給を実施する。渡された給油プローブには、「絆」の文字があった
カナダ海軍との洋上補給
太平洋合同演習リムパック2026に参加する海上自衛隊護衛艦「こんごう」(DDG173)の前方に明るい水色の補給艦の姿が見えてきた。カナダ海軍が民間業者からリースしている補給艦「MVアステリクス」だ。「こんごう」はこの日「MVアステリクス」と洋上補給(RAS)を行うことになっていた。
カナダ海軍は新型補給艦プロテクター級1番艦が2027年中に就役するまで、繋ぎとして民間のコンテナ船を補給艦に改造した「MVアステリクス」を2018年からリースして艦隊支援を行っている。満載排水量は26,000トンなので、日本の「ましゅう」型補給艦と同格だ。同艦のリムパック参加は3回目になり、これまで多くの外国艦にも補給を行ってきただろう。
「こんごう」が「MVアステリクス」の右舷側に付いた。艦首側と艦尾側の甲板で距離索を繋ぎ、甲板後方の補給ステーションに最初の索となるメッセンジャーラインが繋がる。続いて給油プローブの導索となるスパン・ワイヤーが繋がると、補給艦側から給油プローブがついた給油ホースが降りてきて、「こんごう」側のプローブ・レシーバーと嵌合する。この先、しばらくはこの状態を保ち数十km進む。


文字で書くと簡単だが、前甲板から艦尾まで80名以上もの隊員が一つ一つ、安全に、慌てず、確実に、作業を担当する。ただ、その所作、一挙手一投足は何かマスゲームか、ブルーインパルスのフォーメーション展示か、ピタッ、カチッとしていて見ていて気持ちがいい。ずるずるした感じはまったくなく、暑いのにダラッとした感じはまったく見受けられない。
繊細にして力も要する運用の仕事
洋上補給の作業は運用員長の西川(にしかわ)曹長が現場の長となり、砲雷科1分隊の運用員を中心に、他のパートも手伝うことになる。洋上補給など甲板の作業を「運用」といい、運用員をはじめ作業を担当する1分隊の作業は出入港のロープワーク、投錨・揚錨、搭載艇作業など体力を要する作業が多い。また「力」だけなく、気象・海象によってロープワークや立ち位置、気配り・目配り、細かな判断など「繊細」さも必要になってくる。
例えば前甲板で補給艦との間に繋がった距離索を担当する隊員らは補給艦とのテンションを、人力で綱を引っ張って調整するのだが、両艦の動揺や波などで「力」と「繊細」な予測が必要になる。補給ステーションにプローブが繋がったあとも、油漏れは無いか、補給艦側の甲板で突発事態は起きてないか、自分は安全か、仲間は安全か「繊細」な気配りを欠かさない。艦尾に目をやると、ポツンと二人が立っているが、休憩しているのではない。転落事故発生に備えて、補給ステーションの各員の動作に目を向け、見やすいように細かく立ち位置を変えているのだ。

「MVアステリクス」と繋がった給油プローブをよく見ると、「絆」の文字が貼ってあった。これは海軍伝統の“Zapper”と呼ばれる習慣だ。アメリカ海軍を中心に始まったとされ、受給艦が自艦のステッカーを貼って送り返す。補給艦が次の艦に補給する際はその上から貼られ、しばらくすると整備の時などに剥がされるので、補給艦の乗員はステッカーが付いたプローブと記念写真を撮っていつまでも思い出として残しておくのだ。
この「絆」は運用員長西川曹長の手書きだという。パールハーバー基地で一般公開があった時は、西川曹長が来艦者の目の前で「夢」「絆」を書いて、来艦者が各自で「こんごう」スタンプを押す。アメリカ人にとって見たこともない大きなスタンプに、大人にも子供にもウケるらしい。補給艦のプローブは補給艦乗員の思い出の中に「こんごう」が残るが、一般公開では皆の手に「こんごう」が残るというわけだ。
「よく見ると『絆』の一画一画は、し、ん、じ、あ、い。の平仮名になっているんですよ。『夢』は、あ、り、が、と、う」
さすが運用員長、すべてにおいて「繊細」である。


「こんごう」乗艦レポート リムパック2026 〜 タイトル一覧 〜
#1 パールハーバー出港
#2 迎撃ミサイルSM-2発射
#3 撃沈訓練 SINKEX
#4 艦上体育と医療搬送体制
#5 ハープーン対艦ミサイル発射
#6 緊迫の対潜戦訓練
#7 毎日が実戦! 厨房の戦い
#8 127mm砲が吼える“対地射撃”
#9 対空戦訓練 ADEX
#10 「絆」で結ばれた洋上補給
#11 イージス艦から見る星々と人工衛星の恩恵
#12 「ミスターこんごう」
#13 第1水上戦群司令が語る HA/DRにおける日本への期待
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