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《「こんごう」乗艦レポート》
リムパック2026 #8 127mm砲が吼える対地射撃

  • 特集

2026-10-2 06:14

「こんごう」の前甲板でその存在を誇示する大口径の127mm砲は、対空、対艦、対地とマルチに使えるすぐれた速射砲だ。この日「こんごう」は実弾射撃訓練を行うため、射撃訓練海域に向かっていた──柿谷哲也 KAKITANI Tetsuya

主砲を担当する「射撃」の仕事

 環太平洋合同演習リムパック2026に参加中の海上自衛隊護衛艦「こんごう」(DDG173)が、カウアイ島の北にある射撃訓練海域(PMRF)に向かっている。この日の訓練は127mm砲の射撃だ。
 前甲板に鎮座する「こんごう」の主砲はイタリアのオート・メララ社が開発した127mm単装速射砲。高度な防空艦である「こんごう」の開発コンセプトに合わせて127mm砲は対空目標に対して有効な速射砲と呼ばれ、従来の動向系の砲と比較して非常に発射速度が速く、毎分約40~45発を発射できるという。

「こんごう」の127mm単装速射砲が⽕を噴く。本来は対空射撃に使うが、陸上⽬標を想定して砲⾝はほぼ⽔平に指向している 写真:柿谷哲也

「こんごう」は接近する対空目標に対してはまずSM-2対空ミサイルを使用するが、それを突破された際のバックアップとして、127mm砲を使用する。この砲は対艦攻撃、沿岸砲撃にも使用でき、この日の射撃は陸地に見立てた海面に対して射撃を行う。
「前甲板に鎮座」と書いたが、実際には127mm砲は甲板直下に揚弾機、弾薬運搬機、装填ドラム(給弾機)があり、甲板に露出している砲塔の倍以上の大きさの弾薬供給装置一式が第1甲板の下にある。別名「弾薬庫甲板」とも呼ばれる給弾機の部屋に入ってみると、射撃に備えて弾火薬倉から取り出された装薬包、いわゆる薬莢が床に並べられ、人力で給弾機に装填する作業中。メーカー公表は真鍮製の薬莢自体は約6.35㎏あるとするが、中身の装薬は機密事項なので重さはゆうに10㎏以上はありそうだ。さらに弾頭部も人力で装填し、これは艦内作業の中では重労働の一つかもしれない。ただ、一度給弾すると、砲尾に装填されるまですべて自動である。

弾丸を押し出すための発射薬が⼊った装薬包(薬莢)を給弾機に装填する。この上部は全⾃動無⼈化されている 写真:柿谷哲也

 ここで作業するのは「射撃」のマーク。「射撃」とはいえ、実際に撃つのはCICの中で射撃コンソールに就き、射撃指揮装置による目標の追尾、射撃諸元の計算、射撃指揮、着弾修正を担当するGFCS員のマーク。射撃員は砲の操作・監視、砲塔や給弾装置の状態確認、発射準備を担当し、射撃時は127mm砲の給弾機の横にある管制室で作業する。
 この管制室で管制盤を担当するのは、射撃員で砲台長の宮原(みやはら)3曹。「射撃一筋16年です。護衛艦『せんだい』の76mm砲を最初に担当し、それから長年76mm砲を担当して、『こんごう』で初めて127mm砲を担当しました」
 16年も担当していれば、緊張もないでしょう、筆者が問うと、
「いやいや、射撃は直前まで緊張します。もう胃がキリキリしてきますし、とりあえず効きそうなドリンクを飲んで、あとは普段はしませんが、神様にお祈りしたりとか。今回の射撃は10発あるので、全弾ちゃんと弾が出るかドキドキでした」
 見た目は屈強な宮原3曹だが、意外に繊細なようだ。しかし──。
「プレッシャーには弱いですが、管制盤に座ると覚悟が決まります。そして、全弾出たときはヨッシャ!ってなりましたね。みんなで射後点検の後の風呂は最高でした」
 仲間でお互いの腕を信じて、一緒に汗を流す。まさに最高の職場といえよう。

127mm砲を制御する管制盤を操作する砲台⻑の宮原3曹。「ここに座ると、緊張も、不安も吹っ⾶んで、集中モードに⼊りますね」 写真:柿谷哲也

個々の能力を発揮するための互いの信頼

 もともと艦隊を防空する高度な防空艦である「こんごう」は、今では弾道ミサイル防衛(BMD)が主任務の一つになっている。BMD任務は日本海や太平洋側の日本近海で常に警戒監視を続けるという、今まさにこの瞬間も海の向こうで現在進行中の任務である。
 この状況で今回のリムパックに派遣された「こんごう」は、対空戦訓練でSM-2を撃つだけではなく、P-1哨戒機と連携してハープーン対艦ミサイルを撃ったり、想定でアスロックを撃ったり、対地攻撃を想定した127mm砲の射撃を行った。こうした訓練は、前回までのリムパックにはない、新しい動きにも見える。これはマルイチドメイン戦、もしくは多領域戦闘といわれるような接近拒否・領域阻止(A2/AD)戦略と関係する「こんごう」の新しい役割なのだろうか。「こんごう」艦長の野田(のだ)1佐に聞いてみた。
「新しい役割というよりは、もともと『こんごう』にある、備えているべき能力を発揮する機会が増えてきたのだと思っております。昨今はBMDの脅威に対処する面が強かったですが、一方で不安定な国際情勢や、統合運用の実用性というのがいわれている中で、やはりイージス艦としていろいろな対地支援、射撃能力、対空、対水上、対潜戦能力も含め、本艦が整えている能力を、この演習への参加で確かめて、それを向上させていく。リムパックはその貴重な機会だと思っております」
 なるほど、リムパックは「こんごう」をさらに強くする機会なのだ。では艦長にとって「強い艦」とはなんだろうか。
「もちろんこの艦の武器システム能力そのものですが、やはり私の考えは、『こんごう』の能力を発揮できるような、乗員一人一人の能力、資質、そういったものが重要だと思っております。艦長の役割として指揮はしますが、最終的にその武器を扱い、目標を探したり、攻撃したりといったことは、やはり乗員一人一人個々の能力だと思っておりますので、まずそこがしっかりとしていること。そしてお互いが信頼し合うことによって、艦としての一つの大きな能力が発揮できると思っております。私としてはそれが艦に一番重要なものだと思っています」
 筆者は艦長のこの言葉を聞いてすぐに、さっき話を聞いた砲台長の宮原3曹、そして一緒に汗を流す射撃員とGFCS員らを思い出したのであった。

「そーれっ」「あ、よいっしょ」「そーれっ」「あ、もっいっちょ」、宮原3曹の掛け声で射撃員もGFCS員も⼀緒になって筒中棒(とうちゅうぼう)で砲⾝をゴシゴシと清掃 写真:柿谷哲也
柿谷哲也KAKITANI Tetsuya

フリーランス・フォトジャーナリスト。1966年生まれ。航空機使用事業を経て、自衛隊や外国軍を取材し内外に記事と写真を発表する。外国軍の取材は公式・非公式合わせて74か国。著書多数。

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