日本の防衛と安全保障の今を伝える
[Jディフェンスニュース]

site search

menu

Jディフェンスニュース

《「こんごう」乗艦レポート》リムパック2026
#6 多国間で対処する緊迫の対潜戦訓練

  • 特集

2026-9-14 20:45

アメリカ海軍が主催して環太平洋諸国の軍が集う、ハワイ周辺海域での多国間海上演習「リムパック」。今回は対潜戦訓練。カナダ、イタリアのフリゲートともに、護衛艦「こんごう」は互いの不足を補い合い、敵潜水艦を追い詰めていく。「こんごう」艦上から柿谷哲也がお届けします。柿谷哲也 KAKITANI Tetsuya

加・伊と臨む対潜戦

 環太平洋合同演習「リムパック」は、冷戦期の1971年に “ASW RIMPAC”(対潜戦リムパック)の名称で始まった。当初のリムパックは、ソビエト海軍潜水艦を想定し、米英豪加ニュージーランドの5か国で行う高度な対潜戦の演習だったのである。
 30回目となった「リムパック2026」では、13か国から艦艇35隻が参加。フリゲートや駆逐艦など水上戦闘艦を持ち込んだ国は数隻のグループ(タスクユニット)を編成し、2週間にわたる段階的戦力統合訓練フェーズ(FITフェーズ)で対潜戦訓練を行った。
 敵役となる潜水艦も、アメリカ、チリ、カナダ、韓国から計5隻参加し、演習海域を区分した“ボックス”内に1隻の敵役潜水艦が潜んだ。数隻の水上艦グループもこの“ボックス”の中で対潜戦を行う。
 統合対潜戦訓練(CASEX)では訓練開始前に敵役の潜水艦が「顔見世」に近傍に潜望鏡を見せることがある。水測員の坂本(さかもと)士長は「敵潜水艦が潜望鏡を露頂しているとの情報があったので、艦橋に見に行きましたが、思ったより小さく見えて、この広い海域から見つけるのがいかに大変かと実感しました」と話す。

対潜戦訓練では敵潜水艦が一瞬だけ上げる潜望鏡を目視や対水上レーダーで探知する。しかし簡単なことではない 写真:柿谷哲也

 対潜訓練開始後に潜望鏡が見えたときは、敵が潜望鏡で目標を確認しているタイミングである。つまり狙われているという状況だ。
 坂本士長は入隊して初めての配置が「こんごう」。経験は2年目。「最近は、コンソールの操作やデータの見方が分かってきました。海外派遣は初めてで、日本ではやらない訓練があるので楽しいです」と仕事が波に乗ってきている。ただ、リムパックではまだ潜水艦を探知できていないので、早く自分の力で見つけ出したいと話す。
 対潜戦に不可欠な哨戒ヘリコプターを搭載しない「こんごう」はどう戦うのか。「こんごう」水雷長の池田(いけだ)1尉は「ヘリコプターによる潜水艦の捜索は非常に有効です。こちらにはそれがないので、ヘリを搭載する汎用護衛艦に比べれば対潜能力は劣ります。とはいえ、一緒に行動するグループの艦と連携できるので心配はありません」と平然とした様子だ。
 リムパック2026で「こんごう」は、カナダ海軍フリゲート「オタワ」(FFH 341)とイタリア海軍哨戒艦「ジョバンニ・デレ・パンデネッレ」(P 434)と同じグループになり、敵潜水艦に共同で対処する。
 「こんごう」は哨戒ヘリコプターを搭載しないが、「オタワ」と「ジョバンニ」は共に搭載している。逆に「こんごう」はアスロック対潜ロケットを持つが、「オタワ」と「ジョバンニ」は装備していない。

飛行甲板でEH101哨戒ヘリコプターを準備中のイタリア海軍哨戒艦「ジョバンニ・デレ・パンデネッレ」(P 434)(手前)とカナダ海軍フリゲート 「オタワ」(FFH 341)写真:柿谷哲也

 一方で「こんごう」はOQS-102艦首ソナー、「オタワ」もSQS-510ハル・ソナーを装備するが、「ジョバンニ」にはない。また、艦の機動は制限されるが遠距離探知と深度変化に対応できる可変深度ソナー(VDS)は「ジョバンニ」がATAS(アクティブ曳航アレイソナー)、「オタワ」もTLFAS(曳航式低周波アクティブソナー)を装備するが「こんごう」にはないなど、それぞれ異なる仕様の艦が同じグループとなっている。
 3隻の中で「こんごう」のみはイージス艦であり、最も高価なハイバリュー・ユニット(HVU)である。敵潜水艦は「オタワ」と「ジョバンニ」より、まず「こんごう」を優先目標として狙ってくる。つまり「こんごう」にとっては「オタワ」、「ジョバンニ」と連携して、敵潜水艦の接近を阻止する訓練ということになる。

役割を分担して敵潜水艦を叩く

 CASEXは水上艦、搭載ヘリ、哨戒機が参加するレベルの高い訓練である。この日のCASEXはスタート時点で他の2隻が水平線に近いところを航行しているのが艦橋ウイングからも見てとれた。「オタワ」は搭載するCH-148哨戒ヘリコプターを発艦させているのが分かる。しばらくして着艦したようなので、今度はイタリアの「ジョバンニ」からEH101哨戒ヘリコプターを発艦させているのかもしれないが、その姿は確認できなかった。
 すると突然、アスロックを発射するとの艦内放送が入り、想定でVLSからアスロックが連続して発射された。水雷長池田1尉によると、訓練では他のヘリがソナーを降ろして探知した目標はリンクによって共有でき、連携して攻撃できるという。
 アスロックを撃った「こんごう」は舵を切って潜水艦の方向から離れる。他の2隻も同様に回頭しているようだ。どうやら「こんごう」のアスロックによって敵潜水艦は沈められたようだ。

対潜戦訓練CASEXが行われているタイミングで、艦内では漏水個所の早期発見から対処までを行う応急訓練が行われていた 写真:柿谷哲也

 池田1尉は「おおなみ」の水雷長として実際にアスロックを撃ったことがある。「実際の発射なので気分は高揚していましたが、適切な判断が求められるため、努めて冷静にしていました」と振り返る。今回の想定アスロック発射では部下である水雷士に経験を積ませるために、水雷長はコンソールの後ろに立ち、水雷士が発射させたという。
 CASEX訓練の内容によっては、陸上基地から強力な助っ人である哨戒機が加わり、連携することもある。
 こうした連携訓練を続けて、段階的FITフェーズの後に数日間連続のアドバンスドFITフェーズが行われ、この期間中に高度な対潜戦である戦域対潜戦(TASW)と、高度な対潜・対水上・対空戦演習であるWASEX(War at Sea Exercise)を通じて、各グループが空母打撃群を守る訓練を行う。リムパック最後の4~5日間は、敵潜水艦や敵航空機がどこから来るかシナリオがないフリープレイ・フェーズとなる。

対潜戦訓練中、アメリカ海軍VP-40のP-8A(QE348)が現れ、「こんごう」の付近でソノブイを投下しながら、何時間も潜水艦を捜索していた 写真:柿谷哲也

「たくさんの対潜戦訓練を経験して知識のある海曹の先輩を、自分の目標にしています」と話す水測員の坂本士長。訓練の強度は日に日に上がってくる。坂本士長は敵潜水艦を探知できるか──。
(つづく)

「こんごう」乗艦レポート リムパック2026 〜 タイトル一覧 〜

 #1 パールハーバー出港
 #2 迎撃ミサイルSM-2発射
 #3 撃沈訓練SINKEX
 #4 艦上体育と医療搬送体制
 #5 実弾のハープーン対艦ミサイルを発射
 #6 多国間で対処する緊迫の対潜戦訓練

柿谷哲也KAKITANI Tetsuya

フリーランス・フォトジャーナリスト。1966年生まれ。航空機使用事業を経て、自衛隊や外国軍を取材し内外に記事と写真を発表する。外国軍の取材は公式・非公式合わせて74か国。著書多数。

Ranking読まれている記事
  • 24時間
  • 1週間
  • 1ヶ月
bnrname
bnrname

pagetop