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第12回日豪外務・防衛閣僚協議の概要と共同声明を公表(9月5日)

  • 日本の防衛

2025-9-10 10:16

 防衛省は令和7(2025)年9月8日(月)22時50分、第12回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)の開催について以下のように公表した。協議とワーキング・ランチには、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣および岩屋毅(いわや・たけし)外務大臣と、リチャード・マールズ・オーストラリア連邦副首相兼国防大臣およびペニー・ウォン・オーストラリア連邦外務大臣が参加した。
 また、同協議開催後に発出された共同声明の仮訳を以下に転載する。

第12回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)の開催

 9月5日、午前10時40分から約3時間、東京において、中谷元防衛大臣及び岩屋毅外務大臣は、リチャード・マールズ・オーストラリア連邦副首相兼国防大臣(The Hon. Richard Marles MP, Deputy Prime Minister and Minister for Defence of the Commonwealth of Australia)及びペニー・ウォン・オーストラリア連邦外務大臣(Senator the Hon. Penny Wong, Minister for Foreign Affairs of the Commonwealth of Australia)との間で、第12回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を実施(協議約70分、ワーキング・ランチ65分)したところ、概要は以下のとおりです。なお、同協議開催後、共同声明が発出されました。

1 総論

 冒頭、岩屋大臣は、日豪が共に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現のために主導的役割を果たす意思と能力を有する国であり、同志国連携の中核である日豪間の安全保障協力は、かつてなく広範かつ強固なものとなっている旨述べました。また、来年の日豪友好協力基本条約署名50周年も見据え、「特別な戦略的パートナーシップ」を更なる高みに引き上げるべく、日豪間の安全保障協力を一層強化していきたい旨述べました。中谷大臣からは、日豪は同志国連携の中核であり、今般、「もがみ」型護衛艦の能力向上型が豪州の次期汎用フリゲートとして選定されたことは日豪防衛協力を更なる高みに引き上げる旨述べました。また、一層厳しい安全保障環境の中、日豪それぞれの自主的な取組の間で協力と連携を強化することで「シナジー」を生み出し、インド太平洋全体に新たな価値と利益をもたらしていくことが重要である旨述べました。

2 二国間安全保障協力

 日豪双方は、インド太平洋地域における一層厳しさを増す戦略環境への認識を深く共有し、2022年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に沿って、共同の抑止力の強化に向けた協力を更に発展させていくとともに、戦略的評価を共有しつつ、両国の主権及び地域の安全保障の利益に影響を及ぼし得る潜在的な緊急事態に関する外務・防衛当局間の議論を活性化していくことで一致しました。

(1)運用協力・防衛産業・先進技術等
 協力の範囲・目的及び形態(SOF)に関する議論の重要性を改めて強調し、戦略的かつ実践的に発展させていくことで一致しました。また、日豪部隊間協力円滑化協定(RAA)の下での部隊間協力の進展を歓迎するとともに、更なる運用協力・共同訓練を推進していくことを確認しました。
 自衛隊統合作戦司令部(JJOC)への豪軍連絡官の派遣の開始により、日豪作戦司令部の連絡官の相互派遣が確立したことを歓迎し、連絡官を通じて運用協力を一層強化していくことで一致しました。
 豪州の次期汎用フリゲートとして「もがみ」型護衛艦の能力向上型が選定されたことを歓迎し、契約締結を含む本件の着実な進展に向けて協力を進めていくことを確認しました。
 また、AUKUS「第2の柱」における先進能力プロジェクトについて、海洋無人機システムの実験演習の実施を含む協力の進展を歓迎し、引き続き連携を深めていくことで一致しました。
 その他、2024年のニューカレドニアからの自国民退避における協力実績等を踏まえ作成された、海外における自国民保護に関する協力覚書にこのたび署名することを歓迎しました。

(2)経済安全保障
 経済安全保障が両国の安全、繁栄及び強靱性にとって極めて重要であるとの認識を共有した上で、日豪経済安全保障対話の活用を含め、経済安全保障分野での連携を更に強化していくことで一致しました。
 また、サプライチェーンの強靱化、重要鉱物、エネルギー、海底ケーブル等の分野において、日豪間で具体的な連携を強化していくことを確認しました。

(3)戦略的コミュニケーション・サイバー・情報セキュリティ
 情報空間が日豪協力の新たなフロントであるとの認識の下、戦略的コミュニケーションにおける二国間協力の進展を歓迎するとともに、引き続き、外国による情報操作やナラティブに対抗するための協力を強化することで一致しました。
 内閣官房に新たに設置された国家サイバー統括室と豪州当局との連携を深めるとともに、サイバー政策協議等の枠組みを活用しつつ二国間のサイバー協力の更なる強化を推し進めることで一致しました。また、情報セキュリティに関する外交当局間の協力を促進するとともに、日豪情報保護協定の改正に関する協議を加速させることで一致しました。

3 地域及び国際的課題への対応と協調

 日豪双方は、インド太平洋地域の安全保障環境について率直な意見交換を行い、引き続き、地域及び国際社会の平和と安定に共に貢献していくことを確認しました。

(1)東シナ海及び南シナ海における力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを再確認するとともに、日本周辺の海空域における中国による挑発的な活動の規模及び頻度の増加に対して深刻な懸念を表明しました。また、台湾海峡の平和と安定の重要性について一致しました。

(2)北朝鮮による核・ミサイル活動や露朝軍事協力の進展、拉致問題を含む北朝鮮への対応について、連携を改めて確認しました。

(3)ロシアによるウクライナ侵略を強く非難し、悪化を続けるミャンマー情勢への深い懸念、及びガザにおける悪化する人道状況を含む中東情勢に対して深い懸念を共有しました。

(4)ASEANの中心性・一体性、東南アジアの平和と繁栄に対する揺るぎない支持を確認するとともに、太平洋島嶼国の強靱性及び安定に資する取組を更に強化していくことで一致しました。

(5)また、日米豪3か国の相互運用性の更なる強化を図るとともに、日米豪印、日米豪比、EU、NATO、IP4を含む、同盟国・同志国間ネットワークを更に強化していくことで一致しました。

第12回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)共同声明 2025年9月5日

1. 岩屋毅日本国外務大臣、中谷元日本国防衛大臣、リチャード・マールズ・オーストラリア連邦副首相兼国防大臣及びペニー・ウォン・オーストラリア連邦外務大臣は、2025年9月5日、東京において、第12回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を実施するため会合した。

2. 我々は、平和で安定し、繁栄した地域を促進する上で、日豪関係の重要性の高まりを認識した。我々は、包摂的で強じんな自由で開かれたインド太平洋の実現に主導的な役割を果たすための、かつてない戦略的一致と、共通の意志及び能力を確認した。来年の日豪友好協力基本条約署名50周年を見据え、我々は、共通の戦略目標に基づき、「特別な戦略的パートナーシップ」を引き上げ、今後50年間の協力の方向性を再定義する意図を確認した。

3. 我々は、同志国連携の中核として、米国やその他の主要なパートナーと協力し、国際システムを維持するため、あらゆる国家の手段を用いて紛争を抑止・防止し、インド太平洋地域の平和と安定を堅持するという揺るぎないコミットメントを改めて表明した。

4. 我々は、2022年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に沿った運用面・制度面の二国間協力の拡大を歓迎し、共同の抑止力を強化することにコミットした。我々は、「安全保障協力に関する日豪共同宣言」の第5項に示された我々の共通の目標と整合し、第6項を推進するため、戦略的評価を共有し、かつ日豪の主権及び地域の安全保障上の利益に影響を及ぼし得る潜在的な緊急事態に関して検討し、あり得る対応策を特定するため、交流を強化することで一致した。我々は、2+2高級実務者会合(SOM)やその他の関連会合の更なる活性化を通して、これらを行うことで一致した。

地域及び国際情勢認識と対応

5. 我々は、不確実性が増す地政学的環境を認識し、全ての国が戦略的競争を責任もって管理する必要性を強調した。我々はまた、誤算、エスカレーション及び紛争のリスクを低減するための対話及び実際的な措置の重要性を改めて表明した。

6. 我々は、地域及び国際的な安全と繁栄にとって不可欠な要素として、台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認した。我々は、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに対する強い反対を改めて表明した。我々は、両岸問題が対話を通じて平和的に解決されるべきであることを強調した。

7. 我々は、東シナ海及び南シナ海における、力又は威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを改めて表明した。我々は、日本周辺の海空域における中国による挑発的な活動の規模及び頻度の増大について、深刻な懸念を表明した。さらに我々は、特にフィリピンに対する中国の危険かつ挑発的な活動の強化を含む南シナ海における情勢に関する深刻な懸念を共有した。我々は、海洋資源開発への干渉、係争のある地形の軍事化、衝突を含む安全でない操縦及び、中国の軍事アセット、海上保安機関及び海上民兵の危険な使用といった、誤算やエスカレーションのリスクを生じ、緊張を高め、地域の平和と安定を損なう行動に対する反対を再確認した。我々は、国連海洋法条約(UNCLOS)に反映されている国際法に従った、航行及び上空飛行の自由、適法な海洋の利用、妨げられない商業活動並びに海洋に関する紛争の平和的解決を堅持することの重要性を強調した。我々は、2016年の南シナ海に関する比中仲裁判断が最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものであることを改めて表明した。

8. 我々は、誤解を防止するためには、海空域における透明性が不可欠であることを強調した。この観点から、我々は、中国軍機による安全でない行為や、異常な接近及び中国海軍艦艇がタスマン海で十分な通知なしに実弾射撃演習を行ったことは、安定及び透明性に資するものではないことに留意した。

9. 我々は、北朝鮮による核兵器及び弾道ミサイルの開発を強く非難し、国連安保理決議に従った朝鮮半島の完全な非核化へのコミットメントを再確認した。我々は、繰り返し行われる不法な弾道ミサイル実験を含む北朝鮮の継続的な挑発行為を強く非難し、関連する国連安保理決議の下での義務を完全に遵守するよう求めた。我々は、制裁を含む対北朝鮮政策に関する連携強化を歓迎し、このような連携の取組の継続を決意した。我々は、北朝鮮の不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となる暗号資産の窃取やIT労働者の利用を含む、北朝鮮の悪意あるサイバー活動について深刻な懸念を表明した。我々は北朝鮮拉致問題の即時解決の重要性を再確認し、この問題に関する日豪間の継続的な緊密な協力を確認した。

10. 我々は、ロシアによる違法で、不当で、いわれのないウクライナ侵略を強く非難し、包括的で、公正かつ永続的な平和の必要性を改めて確認した。我々はまた、ウクライナに対して戦場で使用される北朝鮮の部隊派遣を含む、北朝鮮のロシアとの軍事協力を強く非難した。我々は、地域諸国が自国企業によるロシア軍への軍民両用品の供給を防止すること、中国が戦争終結に向けて積極的な役割を果たすことを含め、国際社会による戦争の沈静化と終結に向けた支援を要請した。我々は、制裁の実効性の確保及び我々の地域における回避や迂回の防止に関する協力を強化することにコミットした。我々はまた、中国とロシアが共同等の軍事活動を通じて軍事協力を強化していることについて深刻な懸念をもって留意した。

11. 我々は、ミャンマーにおける人道状況の悪化に深刻な懸念を表明し、軍政による民間人に対する継続的な攻撃を非難した。我々は、暴力の即時停止、不当に拘束されている全ての人々の釈放、安全かつ阻害されない人道アクセスを求めた。さらに我々は、より平和で安定したミャンマーへの回帰を視野に、軍政が全ての関係者と真正かつ包摂的な政治対話を行うことを更に求めた。これらの不可欠な段階を踏まずに行われる選挙は、さらなる不安定を招くリスクがある。我々は、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)による人道支援等の5つのコンセンサスの履行を含むASEANによる平和的な解決を模索する継続的な取組を賞賛した。

12. 我々は、中東情勢、とりわけガザにおける飢饉の発生について深刻な懸念を表明し、支援を必要とする民間人への大規模かつ妨げのない援助の急速な拡大を緊急に求める呼びかけを改めて強調した。我々はまた、即時停戦と人質の解放を強く要請した。我々は、ガザにおける軍事行動の拡大に強く反対し、E1入植計画の即時撤回を求めることを改めて強調した。我々は、中東における暴力の連鎖を断ち切るための国際社会の集団的な努力を認識しつつ、二国家解決が不可欠であることを改めて確認した。我々は、10月7日のハマスによる残虐行為を断固として非難するとの立場を堅持した。

13. 我々は、イランが核兵器を決して追求・取得・開発しないという根本的な目標を共有している。我々はイランに対し、保障措置義務を順守するよう求める。イランはIAEAの完全なアクセスを回復し、核物質の貯蔵と濃縮に関する懸念に対処し、交渉の席に戻る必要がある。

14. 我々は、政治的対立者を威嚇し社会的結束を乱すための越境的な弾圧行為を、主権に対する容認できない侵害として非難した。

多国間協力

15. 我々は、多国間主義に対する長年にわたる揺るぎないコミットメントを再確認し、世界の平和、繁栄及び安全保障の基盤となる国際的なルール、規範及び基準の重要性を改めて強調した。我々は、世界的な不確実性の時代において多国間協力を強化し、共通の課題に対し共同の解決策を見いだす必要性を強調した。我々は、特に多国間の平和構築やジェンダー平等に関連する協力の拡大を含め、多国間協力の重要な機能と任務を支援することに焦点を当てつつ、戦略的な多国間協力と対話を拡大することで一致した。

16. 我々は、本年10月の国連安保理決議第1325号の採択25周年を前に、紛争予防、平和及び安全保障のあらゆるレベルにおける女性の平等な参画及びリーダーシップの促進を含む、女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの完全な実施を支援するため、二国間の関与及び地域のパートナーとの連携を一層深めることの必要性を確認した。

17. 我々は、世界中の紛争地域で被害の危険が高まる状況に直面し続けている人道要員の安全と安心に対する深い懸念を改めて強調した。我々は、人道支援要員の保護に関する宣言を作成した閣僚級グループの一員としての我々の協力を確認した。我々は、この宣言の目的を推進し、人道要員を保護するための具体的な行動を促進するとのコミットメントを再確認した。我々は、全ての国に対し、宣言を支持し、人道原則を再確認し、国際人道法を遵守し尊重することを要請した。

18. 我々は、国際的な軍縮・不拡散体制を強化するための現実的かつ実践的な取組を推進していくために協力していくという我々のコミットメントを再確認した。我々は、12か国からなる軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)の共同設立国としても、核拡不散条約(NPT)という礎石を強化するため、緊密な協力を継続することで同意した。我々は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に向けた努力及び核実験モラトリアムの維持、並びに核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の即時交渉開始を促す環境創出に取り組むことを支持した。我々はまた、追加議定書を含むIAEA保障措置の普遍化について、国際的な協力の強化にコミットした。

経済安全保障、サイバー、宇宙、外国の干渉、情報協力

19. オーストラリアと日本にとって経済安全保障が国家安全保障、繁栄及び強じん性に重大な影響を及ぼす根本的な要素であることを認識し、我々は、日豪経済安全保障対話を通じて経済安全保障協力の深化と具体的な行動を策定することを確認した。

20. 我々は、ルールに基づく多国間システムを支持し、貿易及び投資の関係を強化し、共通の経済安全保障上の課題への対処において情報交換と経験を共有するために、引き続き協力して取り組むことで一致した。これには、重要鉱物、サプライチェーンの強じん性、重要新興技術、地域経済の強じん性の構築が含まれる。

21. 我々は、重要鉱物サプライチェーン強化における継続的な協力を歓迎した。これには、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による最近のオーストラリアの重要鉱物プロジェクトへの投資が含まれる。重要鉱物プロジェクトにおける二国間協力の拡大は、両国それぞれのサプライチェーン目標の達成に資するものである。

22. 我々は、日本に新設された国家サイバー統括室とオーストラリア政府カウンターパートとの間のコミュニケーションを深化させ、サイバー安全保障協力を拡大するとの我々の展望を共有した。我々は、日豪サイバー政策協議といった枠組みを活用しつつ、二国間のサイバー安全保障協力を更に強化することにコミットした。

23. 我々は、重要技術を採用するに当たり、強じんで信頼できる技術システムを実装することの重要性を強調した。我々は、広島AIプロセスを通じたものを含め、インド太平洋において安全、安心で信頼できる人工知能(AI)の採用を共同で推進することにコミットした。

24. 我々は、対話及び部隊レベルの交流を通じて、宇宙領域における日豪協力を強化するための継続的な努力を改めて確認した。

25. 我々は、外国による情報操作や干渉に対抗するための戦略的コミュニケーションにおける二国間協力の進展を歓迎した。我々は、インド太平洋における情報の脅威に対抗するため、各国政府、市民社会及びメディアが強じんで開かれた、事実に基づく情報環境を構築することを支援することを含め、二国間及び地域のパートナーとの関与を一層深めることにコミットした。

26. 我々は、日豪間における安全保障を含む情報分野での協力を推進する基盤を強化することを目的として、日豪情報保護協定の改正に向けた取組を加速させることを確認した。我々はまた、インド太平洋における外国からの干渉に対する脆弱性及び脅威、並びにインド太平洋諸国における強じん性の強化と意識向上について、適切な場合には定期的な情報共有、調整及び協力を行うことにコミットした。

開発及びインフラ協力

27. 我々は、両国それぞれの国際開発プログラムを通じて、強じんで安全なインド太平洋地域を支援することにコミットした。混乱の時代にあって、我々はプログラムの方向性と優先順位の見直しを行い、最も深刻なニーズに対応し、地域のより公平な未来に貢献することを保証する。我々は、この地域において信頼され頼りになる開発パートナーであるという強いコミットメントと責任を再確認し、説明責任を果たし、透明性を確保し、パートナーの主権を尊重する形で取り組むことを改めて確認した。我々はまた、共通の価値を堅持し、持続可能な開発、ジェンダー平等、障がい者平等及び社会的包摂といった、世界の繁栄を支える分野への投資を継続することへのコミットメントを改めて強調した。持続可能な開発を支援するため、我々は、新興の開発援助ドナーとの協力を深化させ、資金調達の多様化、開発の実効性の向上、教訓の共有、そしてパートナーとの信頼と透明性の構築で一致した。我々は、小島嶼開発途上国のために持続可能な解決策を提供するため、パートナーと協力することにコミットした。我々は、小島嶼開発途上国特有の脆弱性を認識し、ODA卒業を含む国際的なプロセスにおける実質的な関与を確保する。

28. 我々は、インド太平洋地域で共有された戦略的インフラの優先課題を引き続き推進し、変革的なデジタル・インフラを通じたものを含め、地域インフラの質と強じん性を向上させ、また地域のエネルギー転換への貢献を深化させることを決意する。これは、太平洋と東南アジアにおける既存の深い協力関係に基づくものである。

29. 我々は、平和で、繁栄し、安全な地域を確保するため、インド太平洋地域における安全な海底ケーブル事業を引き続き促進することにコミットした。我々はまた、この課題に共に対処するため、海底ケーブルの損傷についてより緊密に意思疎通することで一致した。

安全保障協力の深化

30. 我々は、前例のない戦略的整合性と共同活動及び演習の増加を反映する形で日豪間の恒久的な防衛パートナーシップを格上げする可能性を探ることにコミットした。

31. 我々は、日豪間の運用協力を加速し、相互運用性を深め、共通の戦略目標を一致させるために、「範囲・目的・形態(SOF)」協議の重要性を認識した。

32. 力又は威圧による一方的な現状変更の試みを抑止する取組において、我々は、情報共有の強化や、活動の更なる整合、柔軟に選択される抑止措置などの現在及び将来の抑止活動に関する議論の深化を通じたものを含め、共同の取り組みを歓迎した。

33. 我々は、日豪部隊間協力円滑化協定(RAA)による相互の派遣プロセスの迅速化における進展を強調するとともに、給油、衛生業務などを含むロジスティクス支援を標準化する物品役務相互提供協定(ACSA)が、ロジスティクスにおける相互支援を促進していることを強調した。我々は、RAAによる手続の簡素化及び標準化を歓迎し、これらの取組を更に前進させる決意を再確認した。我々は、RAAの下で40件以上の活動が実施されている中、日豪間の運用協力が高い頻度で行われていることを振り返り、以下の顕著な成果を評価した:
 a.「タリスマン・セイバー25」における過去最大規模の日本の参加(自衛隊員1,500名以上)
 b.「オリエント・シールド」へのオーストラリアの初参加
 c.地域プレゼンス派遣の一環として、豪海軍艦艇「ブリスベン」が日本の港湾において初めてのメンテナンス支援を受ける可能性を模索する計画

34. 我々は、前回の2+2以降、豪州で実施された8件の活動と日本艦艇による4回の寄港を含む、自衛隊による豪州で実施される活動への参加の増加を歓迎した。航空分野での協力も加速しており、以下の進展が見られた:
 a.日本の航空機(P-1:2024年9月、U-4:2025年3月、C-2:2025年7月)の豪州への飛来
 b.2026年7月に豪州で予定されている日豪米3か国によるF-35訓練の過去2年間で3回目の実施(2025年2月のグアムでの「コープ・ノース」及び2025年9月の日本での「武士道・ガーディアン」に続くもの)

35. 我々は、「日豪トライデント」を含む共同活動における協力強化及び「サザン・ジャッカルー2026」における陸上自衛隊の貢献拡大への取組を再確認した。また、「タリスマン・セイバー27」において、初の地域の防空・ミサイル防衛に関する実弾射撃を実施する意向を再確認した。

36. 我々は、9月1日に自衛隊統合作戦司令部(JJOC)に豪州初の連絡官が着任したことを歓迎した。これはJJOCにおける外国軍連絡官の初の配置であり、2024年11月に豪州統合作戦本部(HQJOC)日本初の連絡官が着任したことに続くものである。

37. 我々は、日米豪海軍種ロジスティクス作業部会に係る文書(Terms of Reference)の署名を歓迎した。また、昨年の2+2で発表した航空分野での協力の深化に基づき、2か国及び3か間の空軍種の後方分野における協力の強化に向けた意図を模索する。

38. 我々は、サイバー活動や高官間の交流を通じたものを含む二国間のサイバー防衛協力の強化及び本年のサイバー防衛演習「ロックド・シールズ2025」演習への日豪共同参加に基づく進展を強調した。

39. 我々は、安全な通信と運用調整を向上させるためのICTインフラの強化の重要性を確認した。ネットワーク整備を含む支援の取組により、サイバー分野での相互運用性を深化する。

40. 我々は、自衛隊と豪国防軍(ADF)による「女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの完全実施支援に向けた防衛協力の拡大を歓迎した。これには、豪州主導の「サザン・ジャッカルー」及び「タリスマン・セイバー25」に加え、日本主導の「自衛隊統合防災演習」が含まれる。

防衛産業、先進技術及びAUKUS「第2の柱」における協力

41. 我々は、三菱重工業の「もがみ」型護衛艦の能力向上型が、豪州の次期汎用フリゲートの優先プラットフォームとして選定されたことを強調した。これは、日豪間で過去最大規模となる防衛産業協力の重要な結節であると確認した。

42. 我々は、両国の防衛産業基盤間での防衛装備・技術協力を更に進展させる機会を期待する。5月に署名された「防衛物品及び役務の提供に関する覚書」により、防衛能力イニシアティブに関する二国間協力が拡大することを歓迎した。

43. 我々は、最先端のレーザー技術に基づく、日本企業と豪国防省による初の共同開発プロジェクト「Boobook プロジェクト」において、継続的かつ実質的な進展を目指す共通の意欲を表明した。このプロジェクトが両国間の産業協力を推進する上で重要であることを強調した。

44. 我々は、「船舶の流体性能及び流体音響性能」及び「複数無人車両の自律化技術」の2件の日豪共同研究の完了を歓迎した。また、2国間の研究、開発、試験、評価(RDT&E)プロジェクトに関する日豪取決めの下で進行中の共同研究、特に「水中自律型無人機に関する日豪共同研究」(RASUW)の進展を確認した。

45. 我々は、航空機複合材に関する日豪米3か国による初の共同プロジェクトの開始を期待するとともに、3か国RDT&E取決めの下、2026年半ばまでに計画を完成させ、当該プロジェクトを開始することを意図する。

46. 我々は、「防衛物品及び役務の提供に関する覚書」の下で、MQ-28Aに関する日豪協力の拡大を可能とする計画や、2026年度に実施されるMQ-28Aの飛行試験に研修として航空自衛隊が参加する計画を含め、連携無人機(Colaborative Combat Aircraft)に関する進展を認識した。

47. 我々は、「タリスマン・セイバー2025」において、自衛隊による03式中距離地対空誘導弾及び12式地対艦誘導弾の発射成功を称賛した。これは、豪国防軍の隊員が日本のターゲティングシステムに統合され、高度な実弾射撃活動を実施したことを示している。

48. 我々は、2025年8月に開催された初の「日豪装備当局間審議官級協議」を、日豪間の防衛産業協力における重要な節目として歓迎した。今後、幅広い防衛能力分野における二国間協力の機会を探るための「防衛産業協力に係る覚書」の締結に向けた交渉を期待する。

49. 我々は、ネットワーク化された防空ミサイル防衛アーキテクチャや、2025年5月の日豪米防衛相会談(TDMM)で発表されたトマホーク対地攻撃ミサイル(TLAM)に関する取組を含む日豪米3か国による共同能力に関する継続的な協力を強調した。

50. 我々は、「タリスマン・セイバー25」において、日本がAUKUS「第2の柱」の取組である「マリタイム・ビッグ・プレイ」に初参加したことを歓迎した。AUKUSパートナーと日本は、先進的な水中音響通信を用いて、水中の無人機システムとの連携能力の試験を成功させた。我々は、AUKUS「第2の柱」の下での先進能力プロジェクトに関する、AUKUSパートナーと日本との更なる協力の機会について、議論の継続にコミットすることを再確認した。

緊急事態における海外からの自国民退避

51. 我々は、日本国外務省及びオーストラリア外務貿易省による海外における自国民保護に関する協力覚書の署名を歓迎した。我々は、情報やベストプラクティスの共有を通じたものを含め、危機発生時の相互の海外における自国民保護に関する協力を強化することを期待する。

インド太平洋における安全と繁栄促進のための協力

52. 我々は、米国との協力及びパートナーシップ・ネットワークの強化が、両国の共通の目標を実現する上で極めて重要であることを認識した。包摂的かつ透明性のある関与を通じて、我々は、ミニラテラルグループを含む主要なパートナーとのより緊密な協力に取り組むことにコミットし、地域機関に対する我々の揺るぎない支持を再確認した。

53. 日豪両国は、米国と共に、日米豪防衛協議を通じて地域の安全保障問題に関する実質的な協力を進展させ、日米豪戦略対話を通じて安全保障問題について相互に協議を続けている。日米豪の協力が地域の抑止力及び対応能力の強化において重要な役割を果たしていることを認識し、我々は、3か国の部隊間の相互運用性の向上を認識するとともに、前回の2+2以降に開催された2回の日米豪防衛相会談(2024年11月及び2025年5月)が成功裏に開催されたことに留意した。

54. 我々は、包摂的で強じんな自由で開かれたインド太平洋への日米豪印の揺るぎないコミットメントを再確認した。我々はまた、海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術及び人道支援・緊急対応に関して、インド太平洋地域における実践的な協力を主導する、日米豪印のリーダーシップを歓迎した。最初の日米豪印インド太平洋ロジスティクス・ネットワークの実働訓練を期待する。

55. 我々は、初の日豪韓防衛相会談及び外交当局間の日豪韓実務者級インド太平洋対話の成功を踏まえつつ、地域における共通の利益を促進するために、日豪韓の協力を強化することの重要性を強調した。

56. 我々は、国際法に整合的な形での地域の海洋安全保障を支持するための定期的な海洋協力活動や演習を通じたものを含む、南シナ海で進行中の日米豪比による防衛協力と運用面での協力の重要性を強調した。我々はまた、日米豪比の間で運用上の協力が進展していること認識し、バリカタン演習などの多国間演習を拡大する機会を検討した。また、我々は将来のアロン演習への自衛隊の参加を議論した。

57. 我々は、本年のマラバール演習を含む、インド太平洋における日米豪印の海洋状況把握協力を強化するための取組に留意した。

58. 我々は、ASEANの中心性・一体性、並びにASEAN主導の地域枠組みに対する揺るぎない支持を再確認した。我々は平和で安定し、繁栄した地域を守るため、ASEANと引き続き協力することにコミットしており、東アジア首脳会議、ASEAN地域フォーラム及び拡大ASEAN国防相会議を含む、戦略的対話の実施と紛争防止に関するASEANの主導的な役割を支援し、海洋協力、連結性、持続可能な開発目標、経済及び金融を含む、インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)の実践的な実施を支援する。

59. 我々は、東南アジアの平和、安定、繁栄を支援するという揺るぎない決意を強調し、地域の優先事項に耳を傾け、対応してきた。これには、以下の協力強化が含まれる。
 a.フィリピン沿岸警備隊への支援を含む、地域のパートナーとの民間の海洋協力の強化
 b.地域のエネルギー・トランジションへの貢献
  ⅰ.2045年までにASEANパワーグリッド構想を実現するためのASEANの取組への支援
  ⅱ.そして、シンガポールのアジアの脱炭素化への移行融資パートナーシップ(FAST-P)と、インドネシア西スマトラ州ムアラ・ラボ地熱発電所それぞれへの投資を含む
 c.メコン・サブリージョンの強靭性と繁栄の支持

60. 我々は、太平洋をより強じんで安定したものにするため、太平洋諸島フォーラムの「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略」に定められている地域の優先事項を推進するための協力を継続することで一致した。
 a.我々は、気候変動の影響と災害リスクに対処するための革新的な対策への支援を合致させ、太平洋諸国の政府、地域機関、太平洋主導のイニシアティブを通じて投資が組み込まれることを確実にすることで一致した。
 b.我々は、太平洋島嶼国にとって高い優先事項である太平洋強じん化ファシリティへの支援約束の増加を歓迎し、他のドナーに対し、緑の気候基金を含む多国間気候基金への貢献及びアクセス改善に向けた取組を促すことにコミットした。
 c.我々は、「太平洋の質の高いインフラ原則」と整合的な改革を促進するため、国際開発金融機関に対するそれぞれの取組について、引き続き調整していくことでコミットした。
 d.我々は、太平洋島嶼国と連携して地域の優先事項を支援するという我々の共通のコミットメントを示す、「オペレーション・レンダーセーフ」及び「プクプク」演習への日本の初参加を歓迎した。
 e.我々は、2022年の太平洋諸島フォーラム総会のコミュニケに沿って、太平洋の地域主義と太平洋の平和及び安全保障に向けた「パシフィック・ファースト」の取組を強化するため、緊密に連携することで一致した。

61. 我々は、太平洋におけるインフラ整備のための実用的な行動の重要性を認識し、フィジーのナンディ川洪水対策プロジェクトへの支援において、更なる協力の探求を継続することにコミットした。

62. 我々は、インド太平洋地域と欧州・大西洋地域の安全保障と繁栄がますます相互に関連していることを確認した。我々は、IP4参加国としての立場を通じたものを含むEU及びNATOとの協力を活用し、サイバー協力、海洋状況把握、共同演習、防衛技術及びサプライチェーンの強じん性を含む幅広い分野において、欧州のパートナーとの協力を深化させることにコミットした。我々はまた、新興技術、重要インフラの保護、経済安全保障並びに外国による情報操作及び干渉への対抗における協力の重要性について認識した。我々は、英国及びフランスの空母打撃群を含む、インド太平洋における欧州のプレゼンスを歓迎した。我々は、力又は威圧ではなく、規則や規範の遵守によって特徴づけられる世界を形作るため、地域を超えて協力する必要性で一致した。

(以上)

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