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小泉防衛大臣が記者会見 「AI活用方針」「1円入札」「熊支援」など多岐にわたり言及(11月11日)

  • 日本の防衛

2025-11-13 11:03

 令和7年11月11日(火)9時36分~9時56分、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛大臣は防衛省A棟10階会見室において閣議後の会見を実施した。
 大臣からの発表事項はなく、以下のように記者との質疑応答が行われた。

記者との質疑応答

中国空母「福建」就役の影響は?

記者
 中国の3隻目の空母「福建」についてお伺いします。「福建」が7日に就役をしました。「福建」がですね、中国の海上戦力に与える影響について、大臣どのようにお考えかお聞かせください。

大臣
 中国側の発表によれば、中国軍の空母「福建」が5日、南シナ海に面する海南省において就役したと承知をしています。空母「福建」は、これまでの2隻よりも大型で、固定翼早期警戒機などを運用可能な電磁カタパルトを装備しているとみられ、艦載機運用能力の向上も指摘をされています。
 一般論として、空母が3隻体制になるということは、整備、訓練、任務のローテーション運用が可能となり、常に1隻が任務のために展開可能な態勢を今後構築され得るという指摘もあります。
 中国は遠方の海空域における作戦遂行能力の向上を企図しているものとみられ、空母をめぐっては、本年6月には、空母1隻が硫黄島より東側の海域で活動したこと、太平洋上で空母2隻が同時期に活動していることを、防衛省・自衛隊として初めて確認、公表いたしました。中国は国防費を継続的に高い水準で増加させ、十分な透明性を欠いたまま軍事力を広範かつ急速に増強させています。
 防衛省・自衛隊としては、引き続き3隻目の空母「福建」を含む中国軍の動向を注視しながら、冷静かつ毅然と対応していくとともに、我が国周辺海空域における警戒監視活動等に万全を期してまいります。

「1円入札」への見解と今後の対応

記者
 1円入札についてお伺いしたいんですけれども、以前から大手もやっているんですけれども、先日、生成AIによるCOG分析、作業支援に関する関連実証実験で、これでスカイゲートテクノロジズという会社が1円で落札しているんですね。1円というのは普通だったらあり得ない話なわけで、これをやって、しかもその会社はですね、そのすぐ後にもXで、「うちの会社は防衛省で採用されました」みたいな話をするわけですよ。
 普通に考えたら、コストをちゃんと計算して、そして提案する会社が損をするんじゃないですか。結局そういうことがまかり通ってしまうと、まともに提案しようという会社がなくなってしまうんじゃないかと。大臣、このような1円入札を今後も許すべきだと思われますか。それとも何らかの規制が必要だと思われますか。

大臣
 今おっしゃった具体的な詳細な細部については、今、私の方では資料などを持ち合わせていませんので、事務方に確認をさせてみたいというふうに思います。

米国の調達改革演説とFMS遅延への受け止め

記者
 ヘグセス米国防長官が7日、米国の防衛企業の幹部を集めて演説を実施し、同盟国に対する装備品の供与の迅速化を図る方針を明らかにし、企業に協力を求めました。FMS調達をめぐっては、かねてより未納入・未精算の問題が繰り返し指摘されており、最近でもトマホーク、AMRAAM、F-35などの米国装備品の納入遅れもありました。今回の米国の対応に対する受け止めと、今後、米国に対してどのような対応を求めていくか、改めて大臣の考えを聞かせてください。

大臣
 ヘグセスアメリカ戦争長官が、アメリカ時間7日、防衛企業の幹部を集めて、装備品の調達改革に関して演説を実施したことは承知しています。
 また、先日の私とヘグセス長官の会談においても、防衛産業基盤の強化が共通の課題であるとの認識を共有し、ヘグセス長官との間で日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、これDICASというふうに言いますが、DICASの下、ミサイル共同生産や米軍艦船、航空機の共同維持整備に係る取組の追求を含む進展を歓迎し、一層推進することを確認しております。
 その上で、今回のヘグセス長官によるスピーチにおいては、調達システムの変革など、アメリカの防衛産業基盤を強化するための各種取組が発表されたと承知しており、このようなアメリカ政府の取組を歓迎します。また、先月行われた私とヘグセス長官の会談の中でも、我が国防衛力に不可欠な高性能のアメリカ製の装備品の早期納入が重要であり、アメリカ政府において改善に向けて取組を加速することを確認をしたところ、引き続き、私としてもあらゆる機会を通じて、未納入・未精算の課題をはじめとしたFMSの調達の改善に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 なお、先ほど具体的にいくつかの装備品について触れられましたので、簡単に触れると、AMRAAMについても御指摘がありました。これは、特にAMRAAMの納入加速をアメリカ政府が発表しました。これは日米首脳会談及び防衛相会談の一つの大きな成果であり、今般の納入加速は、我が国の抑止力向上に資するものと考えています。
 そして言及のあったトマホーク。これについては、当初、令和8年度に納入を開始する予定でしたが、アメリカとの調整により1年前倒しをして、令和7年度から納入を開始する予定というふうになっています。
 そしてF-35Bの話もありましたが、このF-35Bの納入については、昨年度に6機が納入される予定でしたが、納入時期がソフトウェアの開発遅延によって、今年度というふうになりました。今年度は当初から今年度に納入予定であった2機と合わせて計8機が新田原基地に配備され、納入遅延が解消される見込みです。
 なお、本日時点で5機が新田原基地に配備をされています。こういったことに含めてですね、今回ヘグセス長官はスピーチの中で、海外に行ったときに、各国の首脳や国防大臣との会談で、どんな問題を抱えているのかと毎回聞かれるというふうに長官は言ってるんですね。
 正に今回私も長官とは、このアメリカの納入の遅れ、こういったことなども含めてですね、やはりこの日米の中で大臣同士、コミュニケーションを含めて、個人的な信頼関係を積み重ねていく。そして率直にお互いの課題や、また連携の可能性を強化をする意思を確認をしていくという作業は、このように具体的な政策の変更だったり強化に繋がる。この思いを改めてしているので、今回はヘグセス長官のスピーチ、その取組というのは、私としても、日米同盟の強化に資するという思いで心強く感じています。

防衛分野でAIを使うメリット・デメリットと注目領域

記者
 話題変わりまして、安全保障分野におけるAIの活用についてお伺いしたいと思います。安全保障ではですね、例えばドローンだったりとか、あと情報解析とか、いろんな分野でAI使われてきています。防衛省が昨年の7月に出した基本方針ですね、活用基本方針では、7つの分野挙げられてまして、無人機とか指揮統制とか後方支援とか、いろいろ挙げられています。大臣、改めてですけれども、防衛分野において、AIを使うメリット・デメリットと、それからこの7分野で特に小泉さんが個人的に注目している分野があれば、まず教えてください。

大臣
 今、もう御質問の中で防衛省が昨年策定をした「防衛省AI活用推進基本方針」の7分野、いくつか挙げていただいたので繰り返すことはしませんが、私としても、AIは今や戦闘の帰趨を左右するものだというふうに考えており、指揮統制や無人アセットをはじめとする、これらの分野においてAIの活用を重点的に進めて、意思決定の迅速化、自衛隊員の負担軽減や省人化・省力化を図り、防衛力の一層の強化を進めていきたいというふうに考えています。

記者
 それからですね、AIに関連して防衛産業の点からもお伺いしたいのですけれども、国内の防衛産業を考えた時に、何かしらAIを組み込んだ装備品の開発というのを活性させていくために、何が必要かっていうことをお伺いしたいのですけれども、政府の支援の面と企業努力の観点、この2つからお答えいただけますでしょうか。

大臣
 今、科学技術の急速な発展に伴う新しい戦い方への対応や人口減少の急速な進展の中で、防衛力を維持・強化していくためにはAIの活用が重要であり、研究事業の中でAIを活用するための検討を行っているところです。
 その上で、AIをはじめとする先端技術については、民生分野の技術が防衛分野において活用されることで高度に発展し、民生分野における更なる技術力の向上につながる好循環を実現をするエコシステムの構築が必要だと考えています。
 このようなエコシステムを実現するための取組の一環として、防衛省・自衛隊や防衛関連企業とスタートアップ企業との間で、マッチングを図るための機会を設けているほか、防衛イノベーション科学技術研究所においては、AI分野を含む外部の専門家を採用し、自由な発想の下、研究を進めています。
 今後もAIを含む先端技術の研究開発や優れた民生技術を積極的に取り込むための取組を進めて、望ましいエコシステムを構築しつつ、防衛力の一層の強化を実現してまいります。
 なお、これはAIだけに限った話ではありませんが、今、高市内閣の下で、昨日は成長戦略会議ですか、行われまして、この17の危機管理投資分野の一つが防衛産業になっています。この所管は私と赤澤経産大臣、両省で責任を持って進めていくということになりますので、やはりこのAI含めて、装備品を更に高度化に進めていく。
 そしてまた民間企業や産学官の連携を深めていく上では、防衛省だけではない協力も不可欠だというふうに捉えていますし、今、日本維新の会と自民党の間で防衛装備品の5類型の撤廃、この話もありますが、やはりこういった今までの制約が、本当に今の時代に日本の国益を守るという観点から、本当にこのままでいいのかということについて、具体的に政策の見直しにつなげていく努力を、しっかり政治として、実行力を持って進めていくことが、結果としてAIを含めた民間企業の参入意欲だったり、自分たちもこの分野に関わろうと、こういったところにつながっていくのではないかと思っていますので、しっかりとスピード感をもって政策実現に努めたいと思います。

秋田の熊捕獲支援:所感・課題・武器携行の是非

記者
 自衛隊がですね、秋田県における熊の捕獲支援を開始してからまもなく1週間を迎えます。これまでの自衛隊の活動を振り返っての大臣の御所感、そしてまた月末に向けて何か課題が見えてきていれば教えてください。またですね、あわせて先日自民党の部会の方でですね、やはりこの隊員の安全確保のためには、武器の携行を検討する意見が上がっていることは大臣も御承知かと思います。この件に関して、大臣どのように今お考えなのか、あわせてお聞かせください。

大臣
 今日もですね、秋田県内で自衛隊の活動をされていますけれども、現地に派遣をされる陸上自衛隊第21普通科連隊の隊員の皆さんは、県から示された地域において、これまで200kg程度の重さのある箱わなの輸送、駆除後の熊の輸送、そしてドローン等による情報収集を行ってきたところ、活動を実施している鹿角市をはじめ、地元の皆さんから支援に対する感謝の声が上がっているというふうに聞いています。
 やはり相当、現場の猟友会の皆さん、自治体の関係者の皆さんが、いつ出るか分からない熊への対応で相当な疲弊をされていた。だからこそ、秋田県知事からこの皆さんの疲弊を鑑みて、熊の駆除ではなく、この皆さんの支援をするという意味でも自衛隊の派遣をお願いをしたいという話があったわけでありますから、その皆さんから隊員の活動に対する感謝の声が上がっているのは、私としても嬉しく思います。
 一方で、やはり防衛省・自衛隊の本来任務は国防ですから、無制限な支援を実施するわけにはいきませんし、そういったことも御理解をいただく中で、今、政府全体としてこの熊対策に取り組む中で警察なども対応を強化して、ライフルで対応可能にするとかありますので、やはりそこは、まだ他の行政機関が出て来れない状況の中で、現場からの要請に基づいて、自衛隊が対応するまで対応して、他の政府全体としての取組が出てきた場合に、自衛隊はやはり本来の国防の任務に当たる。これは当然のことだと私は思います。
 そして、武器のことについてお話がありましたが、今回、まず秋田県から熊の駆除についての要請が上がってきていない、これがまず基本的なことです。これに加えて、とはいえですね、現場に行けばいつ熊が出てくるか分からないという中で、隊員の身の安全を確保するために、あらゆる選択肢を排除しない。これも当然のことであります。
 そういった中で、実際に制服の自衛官の幹部ともお話をして、一番何が良いだろうかと。こういった意見交換をやりました。
 そして、やはり現場で一番熊と対峙をしている猟友会の皆さんの御意見も聞くべきだろうということでお話をしたところ、猟友会の皆さんから様々な専門的な知見をもっていますので、アドバイスを受けて、その結果ですね、やはり自衛隊員は熊を撃つ訓練をしていないということ。そして、熊を貫通をして、自衛隊の撃つものがですね、跳弾するリスクがあること。そして、仕留められれば別ですけれども、仮にそうではない場合、手負いの熊になってしまった場合は、それは本当に危険だということ。
 こういった様々な猟友会の皆さんの助言なども含めて考慮した結果、自衛隊は今回、身を守る上でも距離をとって、そして熊スプレーで対応すると、こういったことが一番であると。それはおそらく、一般の方々のイメージからすれば、隊員の皆さんが1人1人個別に移動したり、活動したりするわけではなくて、チームで編成をして、箱わなの運搬や駆除された熊の輸送、こういったことなどもやっていて、その中に猟友会の皆さんもそのチームの中に入っています。なので、この役割分担の中で、猟友会の方が銃を持って対応する。
 そして、箱わなの重い200kgありますから、こういったものを自衛隊が運ぶと。こういったことも含めた編成の中でやっている中で、今回の最適なことは、そういった対応で武器携行ではないだろうと。こういったものが議論の過程でありました。
 自民党からの御指摘があるという話ですけれども、こういったことをしっかり御説明をさせていただくということが必要だと思いますし、隊員の安全確保には現時点で課題はないというふうに認識をしています。その上で、武器の携行を排除しているものではなくて、現時点でその必要がないと判断しているためでありますので、今後の活動の実態によっては、それは柔軟に検討していきたいと思います。

自衛隊の医官・メディック体制の課題と改善の見立て

記者
 自衛隊のメディックの状態についてお尋ねしたいんですけど、衛生ですね。実際問題として今の衛生の人たち、医官が不足しておりまして、本来定数に入っている護衛艦とか潜水艦に医官が乗っていない。そして部隊の医官の充足率が2割程度しかない。しかも航空医学であるとか、潜水医学、それから戦傷医学のメディックの専門家って自衛隊いないんですよね、一人も。
 先日も実は予備役の医官の人たちの訓練の時に東部方面隊でやったそのケースがですね、戦傷医療ではなくて交通事故だったと。参加してきた予備役の医官の人たちからすごく不満があった。いやいや、交通事故は普段俺たちやっているからと。そういうことをやっているとですね、今度は予備役の医官の方もだんだん減ってしまうのではないかと危惧しているんですけれども。これ、ここ10年ぐらい歴代大臣に伺ってるんですけど、全然向上してないんですよ。改善してないんですけれども、大臣こういうことはどの程度問題であるというふうにお考えでしょうか。

大臣
 やはり、今おっしゃったようなケースも含めてですね、今、自衛隊の予備自衛官だけではなくて、自衛官自体も採用に苦労している。そして人材確保に苦労しているのは当然の、私が何度も繰り返して、予算委員会の中でも、繰り返し述べているところであります。
 そして、今、確認を事務方からしましたけれども、医師等の予備自衛官の訓練において、交通事故への対応を目的とした訓練は実施していないということであります。医師等の予備自衛官の訓練は負傷者の治療や後送の手順の確認など、様々な場面を想定して行われています。もしこれ以上の訓練に関する詳細な具体的なところについて御関心がありましたら、事務方にも尋ねていただきたいと思います。

(以上)

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