次世代レーダーSPY-6(V)を学ぶ──第3回 生産参画と日本防衛産業の広がり
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2024-11-22 17:00
第3回は、SPY-6(V)の製造参画とそれに関連した日本防衛産業の未来について掘り下げてみよう。今回はレイセオン日本社長の永井氏に加え、国際SPYレーダー担当アソシエイト・ディレクターであるジョン・トビン氏にもお話を伺った。
*本記事は、『Jシップス』2024年12月号(Vol.119)初出の記事を再編集したものです。
2つのAN/SPY-6(V)関連ニュース
2024年9月7日に、RTX社レイセオン部門製の新型艦載レーダー、AN/SPY-6(V)2を搭載する揚陸艦「リチャード M. マックールJr.」(LPD29)の就役式典が行われた。これで、AN/SPY-6(V)1を搭載する駆逐艦「ジャック H.ルーカス」(DDG125)に続いて、2隻目のAN/SPY-6(V)搭載艦がデビューしたことになる。
一方、日本では三菱電機がAN/SPY-6(V)で使用するコンポーネントの生産に参画する話が決まり、7月24日に発表があった。続いて8月21日にRTXが、三波(さんぱ)工業がAN/SPY-6(V)で使用するコンポーネントの生産に参画する話を明らかにした。三波工業は、艦艇や航空機で使用する防衛電子機器を対象として、製造・整備を主な事業としている会社だ。
そして9月17日に、三菱電機と三波工業によるAN/SPY-6(V)の製造参画について、合意文書への調印が実現した。具体的にどのコンポーネントを手掛けるかは明らかにされていないが、「重要な(クリティカルな)部位の部品である」と説明されている。
産業基盤の維持を図るアプローチ
さて、今回の中心テーマは、日本における防衛産業基盤の維持と、AN/SPY-6(V)の関係である。
「産業基盤の維持」というとついつい、「完成品輸入」vs「すべて国内開発・製造」の二択で考えてしまう。しかし、それは正しい考え方なのだろうか。その中間の選択肢はないのか。
「うちの社員はみんな、日本の産業基盤維持も考えなければならないということを理解していますよ」と永井氏は語る。なにもRTXに限らず、他の米国メーカーの日本拠点スタッフも同様だ。彼ら、彼女らは単に、アメリカの製品を売り込むことだけを考えているわけではない。
そして、最近になって浮上した「第3の選択肢」として、日本のメーカーがアメリカのメーカーのサプライチェーンに加わる話がある。三菱電機と三波工業がAN/SPY-6(V)の生産に参画することになったのが、その最新事例だ。もっとも、日本では目新しい話だが、海外では以前から存在する考え方である。
じつのところ、日本におけるレイセオン製品導入の歴史は長い。そして、その過程において、日本のメーカーがライセンス生産を実施している製品はいくつもある。
その発端となったのが、陸上自衛隊向けのMIM-23ホーク(HAWK:Homing All-the-Way Killer)地対空ミサイルだ。その後、航空自衛隊向けのMIM-104パトリオット地対空ミサイル、海上自衛隊向けのRIM-162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)といった製品も加わった。ESSMについては、すでに配備済みのブロック1のみならず、アクティブ・レーダー誘導機能を追加したブロック2を導入する話も進んでいる。
しかし、ライセンス生産とは極端な言い方をすれば「図面とノウハウを買ってきて同じものを作る」仕事である。それが簡単な仕事だというつもりは毛頭ないが、「うちではこういう製品を作れます」と手を挙げてサプライチェーンへの参入を図るのは、もっとハードルが高い。それを実現できたのは快挙である。
画期的なアメリカ向け製品の製造
日本ではすでに、日米共同開発の弾道弾迎撃ミサイル、RIM-161D SM-3ブロックⅡAにおいて、日本の企業が製造に参画している。日本側の窓口は三菱重工だが、その下に複数のサプライヤーが加わっており、これらのメーカーが手掛けた部品が日米双方のSM-3で使われる。
だから、「日本企業の製品がアメリカ向けのウエポン・システムに組み込まれる」事例は、AN/SPY-6(V)が初めてではない。しかし、共同開発という前段なしで、新規にアメリカ向け製品のサプライチェーンに参入したのは、おそらくは初めてのことであり、画期的な出来事といえる。
じつは、海上自衛隊の護衛艦が搭載するAN/SQS-53バウソナーで使用するTR-343トランスデューサーについて、米海軍で使用しているものと同等の製品をNECが開発・製造して、米海軍の認証を取得した実績がある。このときには海上自衛隊向けのソナーに装備する分だけを製造したが、今回のAN/SPY-6(V)の件ではアメリカ向けに納入するレーダーが対象になるのが大きな違いだ。
こうした取り組みが上手くいき、さらに他社にも広まっていくことになれば、生産参画の実績を作り、ノウハウを積み上げることができる。それとともに米側からの信頼を獲得できれば、将来、さらに大きな話に広がっていく可能性も期待できよう。
ちなみに日本以外の国を見ると、RTXではミサイルで使用する固体燃料ロケット・モーターの製造・供給について、イタリアのアビオ社と組む話を2024年7月に決めている。
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