九州防衛局、健軍駐屯地への12式地対艦能力向上型の配備についてQ&Aを公表(9月1日)
- 日本の防衛
2025-9-4 11:05
防衛省 九州防衛局は令和7(2025)年9月1日(月)、陸上自衛隊健軍駐屯地への12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の配備について、公式ウェブサイトの情報を更新した。
3本のPDF文書からなり、そのうち健軍駐屯地の事情を踏まえた内容のものは「健軍駐屯地におけるスタンド・オフ・ミサイル配備について Q&A」である。
一般的な説明用に8月に作成された「スタンド・オフ防衛能力について」、8月29日に防衛省から発表された「国産スタンド・オフ・ミサイルの早期整備等について」とともに、以下に転載する。
健軍駐屯地におけるスタンド・オフ・ミサイル配備についてQ&A(令和7年9月 九州防衛局)
スタンド・オフ・ミサイルとはどのような装備品ですか。
スタンド・オフ・ミサイルは、島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して、脅威圏の外から対処することが可能なミサイルです。
これにより、各国の早期警戒管制能力や、各種ミサイルの性能が著しく向上していく中、自衛隊員の安全を確保しつつ、我が国への攻撃を効果的に阻止することが可能になります。
防衛力整備計画においては、射程や速度、飛翔の態様、対艦・対地攻撃の性能、発射プラットフォームといった様々な点で特徴が異なる様々なスタンド・オフ・ミサイルを整備することで、我が方の重層的な対応を可能とし、相手に複雑な対応を強いることで、我が国への武力攻撃そのものの可能性を低下させることとしております。
さらに、こうしたスタンド・オフ・ミサイルについて、発射プラットフォームを多様化する計画であり、12式地対艦誘導弾能力向上型については、地上発射型に加え、艦艇発射型及び航空機発射型の開発を行っているところです。
なぜ、スタンド・オフ・ミサイルを自衛隊が保有する必要があるのでしょうか?
日本は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。ロシアによるウクライナ侵略のように、国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が、今後、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性が排除されません。
島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊などに対し、早期かつ遠方から対処するスタンド・オフ・ミサイルの配備により、我が国への侵攻が確実に阻止されることを認識させ、我が国の抑止力を向上させることが必要と考えています。
12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の配備先として、健軍駐屯地に決めたのはなぜですか?
健軍駐屯地には、すでに地対艦ミサイル連隊が配備されており、
●整備基盤が整っているため、メンテナンスに万全を期することが可能であること
●現在の安全保障環境を踏まえれば、南西地域の防衛体制の強化は引き続き喫緊の課題であり、我が国への侵攻を早期かつ遠方で阻止するという我が国の意思と能力を、効果的に示すことのできる地理的位置にあること
などを総合的に勘案し、健軍駐屯地に配備することとしました。
スタンド・オフ・ミサイルを配備することにより、攻撃目標となり、攻撃を受ける危険性が高まることにはなりませんか?
スタンド・オフ・ミサイルの配備は、島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊などに対し、早期かつ遠方から対処するものであり、こうした能力を保有することで、相手に攻撃を思いとどませる抑止力を得ることができ、我が国に対する武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えています。
健軍駐屯地に配備される12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)はどのように運用されるのでしょうか? 健軍駐屯地からミサイルを発射することになるのでしょうか?
一般論として、状況に応じて、平素の配備先から必要な場所に移動して任務にあたることになるため、特定の場所への配備をもって、その場所で運用することになるわけではありません。具体的な展開場所や運用要領は、事態の様相に応じて判断していくこととなります。
12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の弾薬は、どの程度、どこで保管されることになりますか? 配備とは、ミサイルを発射するための車両などが更新されるということか? これに伴い、住民生活への影響はありますか?
具体的な弾薬がどの程度、どこに保管されるかについては、自衛隊の継戦能力にかかわるものであり、お答えできないことを御理解ください。
健軍駐屯地には、現在も地対艦ミサイル連隊が所在し、12式地対艦誘導弾を発射するための車両を配備させて頂いております。今般配備させていただくものは、現在の12式地対艦誘導弾の能力を向上させた誘導弾を発射するための車両です。
こうしたことから、今回の配備による周辺地域への影響は大きくないものと考えています。
12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)における訓練の安全対策はどうなりますか?
今後実施する訓練の具体的な要領については、現在検討中ですが、訓練の際には、これまでの12式地対艦誘導弾と同様、周囲の安全確保に努めた上で、地元住民の皆様に危険が及ばないよう適切に実施するなど、引き続き安全対策に万全を期して参ります。
12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)以外の主なスタンド・オフ・ミサイルの配備計画を教えてください。
12式地対艦誘導弾能力向上型の艦発型及び空発型の運用開始については、前倒しの検討を進め、令和10年度から令和9年度に前倒ししています。艦発型については改修後の護衛艦「てるづき」で、空発型については百里基地(茨城県)に配備予定のF-2能力向上型で運用を予定しています。
島嶼防衛用高速滑空弾については、これまで令和8年度から部隊に配備し、実践的な運用を開始する計画でしたが、令和7年度に富士駐屯地(静岡県)に所在する特科教導隊に配備した上で、同部隊を活用して、実践的な運用の開始を令和7年度に前倒しする予定です。
また、令和8年度には、上富良野駐屯地(北海道)及びえびの駐屯地(宮崎県)に、島嶼防衛用高速滑空弾を運用する部隊を新編し、配備する予定です。
スタンド・オフ・ミサイル配備に関する問い合わせ窓口を教えてください。
スタンド・オフ・ミサイル配備に関する、ご質問等はこちらまで連絡ください。
九州防衛局 総務部 報道官
(電話番号)092-483-8813 08:30~17:15(土日祝は除く)
(メール)info@kyushu.rdb.mod.go.jp
国産スタンド・オフ・ミサイルの早期整備等について(令和7年8月29日 防衛省)
1. 防衛省・自衛隊は、我が国への侵攻部隊を早期・遠方で阻止・排除可能なスタンド・オフ防衛能力を強化することとしており、我が国を取り巻く戦後最も厳しく複雑な安全保障環境を踏まえ、より迅速にスタンド・オフ防衛能力を構築できるよう不断に取り組んでおります。
2. 国産スタンド・オフ・ミサイルの開発は、現在、順調に進捗しています。12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)については、令和6年10月に第1次発射試験を実施し、令和7年10月から第2次発射試験を米国で実施予定です。また、島嶼防衛用高速滑空弾については、令和6年8月~令和7年1月に第1次発射試験を、令和7年6月~8月に最終の発射試験を米国にて実施し、完了しています。
3. こうした開発の進捗状況等も踏まえつつ、国産スタンド・オフ・ミサイルの配備場所等について検討を行い、地発型の12式地対艦誘導弾能力向上型については、令和7年度及び令和8年度に健軍駐屯地(熊本県)に所在する第5地対艦ミサイル連隊に、令和9年度には富士駐屯地(静岡県)に所在する特科教導隊に配備を行うことを予定しています。
4. また、令和10年度以降に計画していた12式地対艦誘導弾能力向上型の艦発型及び空発型の運用開始についても、前倒しの検討を進め、令和9年度に行うこととしました。令和9年度に、艦発型については改修後の護衛艦「てるづき」で、空発型については百里基地(茨城県)に配備予定のF-2能力向上型で運用を予定しています。
5. 島嶼防衛用高速滑空弾については、これまで令和8年度から部隊に配備し、実践的な運用を開始する計画でしたが、令和7年度に富士駐屯地(静岡県)に所在する特科教導隊に配備した上で、同部隊を活用して、実践的な運用の開始を令和7年度に前倒しする予定です。また、令和8年度には、上富良野駐屯地(北海道)及びえびの駐屯地(宮崎県)に、島嶼防衛用高速滑空弾を運用する部隊を新編し、配備する予定です。
6. 防衛省として、引き続き、スタンド・オフ防衛能力の強化に向けて取組を進めてまいります。
スタンド・オフ防衛能力について(令和7年8月 防衛省)


(以上)
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