中谷防衛大臣が記者会見 防衛力強化、トマホーク試験、総裁選での応援候補(9月16日)
- 日本の防衛
2025-9-19 09:15
令和7年9月16日(火)11時03分~11時23分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は防衛省A棟10階会見室において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項はなく、以下のように記者との質疑応答が行われた。
記者との質疑応答
与那国への対空電子戦部隊配備について
記者 :
陸上自衛隊の対空電子戦部隊の配備に関係してお伺いいたします。沖縄の与那国駐屯地に来年度にも部隊を配備する計画があると思いますが、この新しい部隊をですね、与那国に配備する理由や狙いという点を教えてください。それから、与那国町の上地町長はですね、自衛隊の機能強化に慎重な姿勢を示していますけれども、今後町側へどのようにその必要性を説明するのかという点と、町民を対象にした住民説明会などを開催する予定はあるかどうかも、あわせて教えてください。
大臣 :
我が国が戦後最も厳しい安全保障環境に直面をする中で、南西防衛体制の強化は喫緊の課題でございます。この取組の一環として、令和8年度に、熊本県の健軍駐屯地及び沖縄県の与那国駐屯地にそれぞれ、対空電子戦部隊を配備をする予定であります。
これらの部隊は、有事に際して我が国に侵攻する敵の航空部隊のレーダー等を妨害をするということを任務としておりまして、今般の配備は我が国の抑止力の強化に資するものであります。
南西地域に侵攻する相手方の航空機等のレーダーを無力化をすることを可能とするためには、まずは南西地域で最も西端に位置をしております与那国駐屯地に配備をし、そして、この駐屯地に所在する電子戦部隊と相まって各種作戦を有利に進めることができるようになるということが期待をされております。
既にこの与那国町には8月29日に説明をいたしておりますが、現時点におきましては、住民説明会を実施する予定はありませんが、与那国町と密接に連携をしながら、引き続き丁寧な説明、また、適切な情報交換、提供に努めてまいりたいと考えております。
平和安全法制の成立10年を振り返って
記者 :
2015年の9月に成立した平和安全法制について2点お伺いしたいと思います。今週の金曜日、19日で成立から10年となりまして、当時も中谷大臣が防衛大臣を務めていらっしゃいました。この10年間で平和安全法制が自衛隊の活動にもたらした影響について、大臣はどのように評価しているか、まずお聞かせください。
大臣 :
2015年に成立しました平和安全法制、私も2度目の防衛大臣、そして安保法制担当大臣として関わらせていただきました。
これはあらゆる事態に切れ目なく対応し、国民の命や平和な暮らしを守り抜くということは政府の最も重い責任であり、この法制によりまして、日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力・対処力が向上し、地域の平和と安定にも寄与するとともに、国際社会の平和と安定により積極的に貢献できるようになりました。
先月には米軍、オーストラリア軍に続きまして、イギリス軍に対しても初めて自衛隊法第95条の2の米軍等武器等防護に関する規定に基づく警護を実施するなど、平和安全法制の下で、同盟国のみならず同志国との連携も進んでおります。
他方、この10年間には、我が国を取り巻く情勢は変化をし、今や戦後最も厳しく複雑な安全保障環境になっております。
この中で、中国は国防費を急速に増加をさせ、軍事力の質・量を広範かつ急速に強化をし、尖閣諸島周辺を含む東シナ海、太平洋などで活動を活発化をいたしております。北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの増強に集中的に取り組んでおり、弾道ミサイルなどの発射を強行いたしております。
そして、ロシアはウクライナ侵略などを継続をするとともに、北方領土を含む地域での活発な軍事活動を継続しており、さらに中国と共同で航空機や艦艇の活動をしていることも確認をされております。
こうした安全保障環境にありまして、平和安全法制の重要性、これはますます高まっておると感じております。
引き続き、いかなる事態においても、切れ目のない対応をし得る、そして国民の命と平和な暮らしを守るべく、緊張感をもって、対応に万全を期してまいりたいと考えております。
防衛力強化に向けた国内基盤と国際連携の課題
記者 :
先ほど戦後最も厳しく複雑な安全保障環境という言及ありましたけれども、現在の環境の下でですね、防衛力の更なる強化を考えたときに、特に、国内の人的基盤の強化と、それから他国との連携、先ほど言及ありましたけれども、連携の観点で更に克服すべき課題は何だというふうにお考えでしょうか。
大臣 :
現在の安全保障環境に対応し得るためにはですね、まず断固として国民の命、そして平和な暮らし、領土・領海・領空、これを断固として守ることが必要であります。そのためには、戦略3文書に基づく防衛力の抜本的強化を進めるということが必要であります。その中で、3つ挙げられます。
1つは、人的基盤の強化。これに関しては、自衛官の処遇・勤務環境の改善、そして新たな生涯設計の確立が喫緊の課題であります。昨年末に関係閣僚会議において取りまとめられました基本方針、これを踏まえながら、自衛官の勤務の特殊性を踏まえた各種手当の拡充、隊舎・庁舎等の整備、そして隊員の居住環境、個室化など人的基盤に係る施策を引き続き推進をしていくということが重要であります。
第2に、他国との連携に関して申し上げますと、まず米国との間では、平和安全法制の下で、平素から緊急事態まであらゆる事態において切れ目のない対応が可能となっておりまして、引き続き、日米それぞれの指揮・統制枠組の向上や実践的な訓練・演習等の各種取組を進めるということ、日米同盟の実効性を強化してまいるということでございます。
第3に同志国との間では、まず、同盟国・同志国のネットワーク、これを有機的・重層的に構築するということ、そしてそれを拡大をし、抑止力を強化をしていくということが重要であります。
そして、同時に、防衛省・自衛隊として限られた資源を活用して防衛協力・交流に取り組むためには、個別の取組を行うに際して、地域の特性、また相手国の実情等を踏まえつつ、防衛省・自衛隊としていかなる取組を行っていくか、何が最適なのか、これを不断に精査をして、行うべき取組を戦略的に決定をしていくということが大切であります。
また、こうした我が国自身の取組だけではなくて、同盟国・同志国等がそれぞれ進める防衛協力・交流の取組を有機的に連携をさせ、シナジー、これを生み出すことが効果的であります。
こうした観点から、私が提案をいたしました、OCEANの精神をより多くの国に共有していただけるように、働きかけていくことに努力をしてまいりたいと思います。防衛省としましては、これらの取組を通じまして、引き続き、防衛力の抜本的強化、これを推進してまいりたいと考えております。
米軍岩国基地でのFCLP実施をめぐる対応
記者 :
米軍岩国基地でのですね、FCLPをめぐりまして、地元自治体から反対の声が上がっております。米軍に対してですね、直近ではありますけれども、この岩国でのFCLPについてですね、再考するよう防衛省として求めるお考えはございますでしょうか。お聞かせください。
大臣 :
米空母艦載機による着陸訓練、これを岩国飛行場で実施をすることにつきましては、地元の皆様から厳しい御意見をいただいているということは承知をいたしております。本日、地元の福田岩国市長並びに片岡岩国市議会議長を始めとする岩国市、また山口県の皆様が防衛省を訪問をされる予定でありまして、私も御意見を聞かせていただいて、お会いさせていただきたいと考えております。
その上で、今般実施の米空母艦載機着陸訓練(FCLP)につきましては、在日米軍司令部より防衛省に対して、硫黄島での実施を予定をしたところですね、9月1日に硫黄島で噴火が発生をし、そして現在も継続をしている。この噴火によって人員、物資、航空機への影響があり、そしてリスクも大きいということから、土日祭日を除く、9月17日から9月26日までの間に、岩国飛行場で実施をするという旨の通知がありました。
これを受けまして、先週12日に、その旨を中国四国防衛局から関係自治体に御説明をさせていただいたところでございます。この米空母艦載機による着陸訓練というのは、空母艦載機のパイロットが着艦資格を取得をするための、陸上の飛行場の滑走路を空母の甲板に見立てて着陸する必要不可欠な訓練でありまして、防衛省としては、この訓練の実施はやむを得ないと認識をいたしております。
しかしながら、地元の皆様への影響は最小限にとどめるべきでありまして、防衛省としましては、米側に対して、この訓練による民間航空機への影響並びに岩国飛行場周辺の住民の皆様への騒音の影響が最小限になりますように申し入れを行ったところでございます。
岩国市長を始めとする皆様が、米軍機の運用に際して、安全の確保が大前提であり、引き続き、米側に対して、地域の方々に不安を与えることがないように求めてまいる旨を、私から改めて御説明をさせていただきたいと考えております。
トマホーク導入と反撃能力の法的位置づけ
記者 :
反撃能力に関して何点かお伺いします。イージス艦「ちょうかい」が来年夏までにトマホークの発射試験を行うとのことですが、その概要と目的、トマホークを保有する意義について教えてください。
大臣 :
スタンド・オフ防衛能力、これは我が国のいかなる地域に向けたものであれですね、我が国に侵略しようとする相手に対して、艦艇や上陸部隊等による侵略・侵攻が確実に阻止をされるということを認識をさせるというものであります。
その上で、我が国は、早期に所要量のスタンド・オフ・ミサイルを整備をするために、既に量産が行われているトマホークを取得をするということとしておりまして、この保有によりまして、我が国への武力攻撃そのものの可能性、これを低下をさせることが可能となると考えております。
このトマホークの取得につきましては、より厳しい安全保障環境を踏まえまして、当初の予定より取得開始時期を1年前倒しをしまして、本年度から取得をするということといたしております。
そして、トマホークの取得後、速やかな運用が可能となるように、イージス艦の「ちょうかい」について所要の改修を実施をし、令和7年度中に、トマホークの発射能力を取得をするということといたしております。
7年度予算としては18億円計上いたしております。また、この「ちょうかい」は、その後、発射試験等を通じて、乗員の練度を含めて、実際の任務に従事できることを確認をする予定であります。令和8年度予算要求につきましては、これに必要な経費を計上しておりますが、発射実験並びに事業開始の時期を含めましてですね、その細部につきましては現在調整中であります。
記者 :
関連してお伺いします。発射試験を行う場所は米国でよろしいでしょうか。
大臣 :
アメリカを考えておりますが、現在調整中であります。
記者 :
もう1点お伺いします。存立危機事態に認定され、武力行使の三要件を満たせば、トマホークを発射して他国の誘導弾等の基地をたたくことは、法的に可能かどうか教えてください。
大臣 :
この存立危機事態というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をしたことに加えまして、これにより我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという明白な危険がある場合に認定をされ、さらに、これを排除して、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないということ、そして第3に必要最小限度の実力行使にとどまることが、自衛の措置として武力を行使するための条件といたしております。
このように、存立危機事態における対応は、他国の防衛ではなくて、あくまでも我が国の防衛のために行うものでありまして、個別具体的な状況に照らして、我が国の国民の命と平和な暮らしを守り抜くための措置として判断をし、対応していくということといたしております。
こうした判断の下で、反撃能力の行使も法理上は可能となりますが、その運用につきましては、実際に発生した状況に即して、武力の行使の三要件に基づきまして、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために、他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、いかなる措置をとるべきであるのかという観点から、個別具体的に判断するということになります。
記者 :
関連しまして、確認ですが、トマホークを使うかどうかは別にして、法理的には可能という御判断でよろしいでしょうか。
大臣 :
そのとおり、私も国会で累次答弁をいたしておりますけれども、反撃能力の行使も法理上は可能であるということで、実際に状況に応じてですね、また三要件に当たるかどうかという観点で個別具体的にですね、判断することとなります。
自民党総裁選へのスタンス
記者 :
自民党総裁選について伺います。候補者として、現在、林、小泉、高市、茂木、小林、各氏の名前が挙がっていますが、中谷議員はどなたを支援するか決めておりますでしょうか。また、決まっている場合、その理由も教えてください。
大臣 :
私は、林芳正氏を応援したいと考えております。
その理由としては、非常に実力のある政治家でありまして、特に、政策を遂行をさせる能力があるという人がですね、今回、総理としてですね、求められているわけでありまして、特に外交、経済、安全保障について、これまで官房長官として、防衛大臣として、財政につきましては、経済・財政、農林大臣、そして文部科学大臣等を歴任をされております。
非常に今、対応が必要な事項がたくさんあってですね、きちっとした判断をして、それを実行できるという観点を考えますと、林さんが適任ではないかと。また、政治姿勢もですね、自ら「仁」ということを挙げてですね、特に、思いやりとか、人間関係などを重視をするということで総理としてはしっかりと内閣を束ねて、そして、各省、そして、閣僚等とバランスを取ってですね、そして党内においてもいろんな人の意見をしっかり聞いてですね、党内をまとめていける、そういう器のある人物ではないかなというふうに思っております。
記者 :
先ほどの総裁選のところで、林さんを応援したいということですけれども、これは推薦人になるということも視野に入っているのでしょうか。
大臣 :
それはもう各陣営がね、どのようにして戦うかということで相談されるわけでございますが、求められればですね、推薦人になってもいいと考えております。
(以上)
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