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石破総理が米国訪問について内外記者会見 国連総会ハイレベル・ウィークについて所感(9月24日)

  • 日本の防衛

2025-9-29 11:15

 首相官邸は令和7(2025)年9月24日(水)、第80回国連総会出席のため米国・ニューヨークを訪問中の石破茂(いしば・しげる)内閣総理大臣が同日(現地時間)に行った内外記者会見について、以下のように公表した。

米国訪問についての内外記者会見

【石破総理冒頭発言】

国連総会ハイレベル・ウィークについての所感

 おはようございます。早朝から誠に恐縮でございます。
 国連総会ハイレベル・ウィークへの出席に際しまして、所感を申し述べたいと存じます。
 国連は本年、創設80周年という節目の年を迎えております。第二次世界大戦を経験された世代の多くが、これは各国において、社会の中心から去られたということでありますが、その中にあって、日々多くの命が失われているウクライナ、中東、そこにおいては日々多くの命が失われておるわけであります。そして、我が国が位置する東アジアもそうでありますが、これは東アジアで多くの命が失われているわけではないのですけれども、国際社会は再び分断と対立に向かいつつある、そういう認識を持っておるところであります。法の支配に基づきます、自由で開かれた国際秩序というものが、今正に、歴史的な挑戦を受けているとこのように認識をいたしております。
 昨晩行いました一般討論演説におきまして、国連の80年の歩み、これを回顧しながら、平和と安全の問題について、国連が当初期待された役割、これを果たしているのかと、そういう問題提起を行いました上で、我が国の考え方について申し述べたところであります。
 ユナイテッド・ネーションズ、これは我が国では国連、国際連合と訳しておるわけでありますが、このユナイテッド・ネーションズの主要な役割は、言うまでもなく、国際の平和と安全の維持であります。安保理(安全保障理事会)は当初想定された役割を十全に果たしてきたとは言えないのではないかと思います。拒否権の存在ゆえに必要な決定を下すことができない、こういう例が多々見られます。1950年、戦後5年目でございますが、1950年には「平和のための結集総会決議」こういうものが可決をされて、総会が行動を起こすことができる、そういうことになりました。3年前の2022年のことでありますが、拒否権を行使した常任理事国は国連総会での説明を求められると、このようなことになりました。このように様々な仕組みというものが考えられてきたところでありますが、しかしながらにもかかわらず、安全保障理事会は、なお、十分に機能を発揮できていると言い難いものでございます。
 国連加盟国というのは、ものすごく数が増えました。約4倍ぐらいに増えておるはずでございます。当初51か国であったと思いますが、これが193か国になったと記憶いたしておりますが、加盟国が4倍近くに増えておるわけであります。にもかかわりませず、安全保障理事会の改革(安保理改革)は、それぞれの国の利害が複雑に絡み合っておりますので、いまだ実現を見ておりません。議論ばかりしておっても仕方がないのでありまして、この改革を諦めてはなりません。安全保障理事会の実効性、これを損なわない形で常任理事国・非常任理事国、これを共に数を増やしていくということ、そしてまた、常任理事国が持っている拒否権、この扱いにも留意をしながら、国連が、より高い正統性、正しいに統べるという字を書きますが、より高い正統性を持って直面する課題に取り組めるようになるということが重要であります。この考え方の下に、私は昨晩、安全保障理事会改革の断固たる実行というものを強く呼びかけたところであります。これがベストだというものがある訳ではありませんが、昨日の演説の中でも申し上げましたが、少しでも良くなるということが大事なのであります。あえて今よりもましという表現を使ったのはそういうことでございます。

中東情勢における我が国の考え方

 次に、中東情勢における我が国の考え方、こういうものを申し述べました。ガザにおけるこの悲惨な、凄惨な人道の侵害、こういう状況は到底看過できるものではございません。イスラエルは、現在のガザにおける地上作戦、これを即座に停止しなければなりません。そのことを強く我が国として求めるところであります。
 我が国にとりまして、パレスチナ国家承認につきましては、「国家承認するか否か」ということではなくて、「いつ承認するか」という問題でございます。先ほど申し述べましたとおり、イスラエル政府による一方的行為の継続、これを断じて認めることはできません。我々が目指す「二国家解決」実現への道を閉ざすことになる、更なる行動がイスラエルによってとられます場合には、我が国として新たな対応をとることになるということを明確に申し述べたところであります。
 最も重要なことは、国家承認の対象となりますパレスチナが持続可能な形で存在する、持続可能な形で存在をし、それがイスラエルと共存する、ということが最も重要であります。そのような考え方から、我が国といたしまして、二国家解決というゴールに一歩でも近づくような現実的かつ積極的な役割を果たす、こういう決意を申し述べたところでございます。
 同時に、パレスチナを国際社会の責任ある参画者として招き入れます以上、パレスチナ側も責任ある統治の体制を構築する必要がございます。承認すればそれでいいというものではございません。ハマスは人質を直ちに解放し、武器をパレスチナ自治政府に引き渡すべきであります。我が国として、パレスチナの経済的自立と有効な統治の確立、すなわち、国づくりを支えるために、これまで27年間にわたって、確か27年間だったと思いますが、7,000人以上に対しまして行ってまいりました公務員の能力強化を含め、必要な支援を具体的に進めていくということでございます。統治が有効に行われるということを確かなものとするために、我が国は引き続き努力をいたしてまいります。このような考え方の下で、現在パレスチナが直面しております財政危機、これに対処する新たな取組に、フランス、ノルウェー、サウジアラビア、スペインなど志ある国々と共に、有志国と共に参加することといたしました。
 トランプ政権が、第一期政権の時から行っておりますアブラハム合意についてでありますが、私としてこのアブラハム合意は、地域全体の平和と安定をもたらす構想として強く支持する旨を申し述べました。すなわち、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、この三つの宗教の父祖の名前、これがアブラハムでございますが、そのようなことから、アブラハム合意と呼ばれております。これを強く支持する旨を表明したところであります。

核軍縮・不拡散について

 核軍縮・不拡散についてでありますが、核をめぐります現下の安全保障環境は言うまでもなく、一層厳しさを増しておるところでございます。であればこそ、今「核戦争のない世界」、そして「核兵器のない世界」の実現に向けて、核保有国・非保有国、この双方が集いますNPT、核兵器不拡散条約、この体制の下で対話と協調の精神を発揮すべきである、このようなことを訴えました。
 8月、広島の原爆記念日でも申し上げたことでございますが、昨晩もニューヨークにおきまして、8月6日に御紹介をした正田篠枝(しのえ)さんの短歌、すなわち「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」、これを御紹介いたしました。原爆というと、きのこ雲というものが連想されるのでありますが、あれは航空機から撮影されたものであります。原爆というときのこ雲と、こういうふうに思うのでありますが、その雲の下で一体何が起こっておったのかということを、唯一の被爆国である我が国は国際社会に広く訴えていかねばなりません。したがって、正田篠枝さんの短歌をこのニューヨークでも御紹介をしながら、被爆の実相を世界の指導者の皆さん、そして次の世代を担う若い皆さん、そういう方々に是非知っていただきたい、このことを強調いたしたところでございます。
 国連の役割は、経済、社会面での活動も当然不可欠なものでございまして、先月、横浜で開催されましたTICAD9(第9回アフリカ開発会議)におきましても申し上げたところでありますが、我が国は、国際社会の全ての国と共に笑い、共に泣き、共に汗しながら、人間の安全保障の理念に基づき、国際社会の課題解決策を各国と共に作っていく、これが重要だと思っております。日本はこれからも持続可能な開発のために努力をいたしてまいります。
 いずれの国も歴史に真正面から向き合うことなくして、明るい未来は開けません。戦争の惨禍を決して繰り返さないと、私はこのことを今年の8月の終戦記念日に当たり、改めて心に刻んだところでございます。我々は、これまで法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序というものを希求してきたのでありますが、これは今や歴史的な挑戦を受けております。この挑戦に立ち向かうに当たりましては、改めて申し上げますが、健全で強靱(じん)な民主主義、これをこれからも守り抜いていくということが肝要であります。このことを昨晩強く訴えました。私は民主主義が広がりさえすれば世界が平和になる、このような楽観論には決して立っておりません。全体主義、無責任なポピュリズム、こういうものは排されなければなりません。そして偏狭なナショナリズムに陥ってはなりません。差別、排外主義、このようなものは許されません。我々はこのような健全で強靱な民主主義が、このような健全で強靱な民主主義こそが、自由で開かれた国際秩序の維持、強化、国際社会の平和と安全、これに大きく資するものと、このように固く信ずるものであります。その基礎となりますものは、過去を直視する勇気、過去を直視する誠実さ、人権意識の涵養(かんよう)、使命感を持ったジャーナリズム、これを含む健全な言論空間、そして他者の主張にも謙虚に耳を傾ける寛容さを持った本来のリベラリズムであります。このことを強調してまいりました。結語におきましては、戦後のアジアとの連帯についても申し述べました。今年はバンドン会議から70周年に当たります。日本が初めて敗戦後参加した国際会議がバンドン会議でございました。70周年になります。アジアの人々が戦後、我が国を受け入れるに当たりましては、寛容の精神が示されたということであります。アジアが寛容の精神を示すに当たっては、そこに計り知れないほどの葛藤があったに違いございません。このような寛容の精神に支えられて、我が国は不戦の誓いの下、世界の恒久平和の実現のために力を尽くしてまいりました。このことを強く申し述べたところであります。以上が、私が訴えたメッセージの概要であります。

各国首脳との会談について

 この機会に、このニューヨークを訪問いたしました機会には、グテーレス事務総長、あるいはトランプ大統領を始めとする各国首脳の皆さん方と会話を交わす機会、あるいは会談する機会がございました。事務総長との会談におきましては、日本の多国間主義に対する強烈な支持、これを歓迎するという言葉を頂いたところであります。日本の平和と安全保障に対して果たしている貢献について、事務総長から謝意が示されたところであり、また、開発に対する日本の支援について協力対象国の視点に立ったものだというような、そういうコメントをいただいたところであります。
 在任中、グテーレス事務総長と何度か会談をする機会がありましたが、事務総長からは日本に対する強い支持というものが表明されたということを改めて申し述べておきたいと存じます。私から、また、先ほど申し述べましたように、安全保障理事会改革の緊急性につきまして、改めて提起をいたしました。グテーレス事務総長とその点は意見を一致しておるところでございまして、国連改革における連携、これを引き続き行ってまいりたいということを確認をいたしたところでありますし、日本人職員の雇用維持・増強、このことも依頼をしたところであります。
 トランプ大統領夫妻とも、会話を交わす機会がございました。いろいろなことが脳裏をよぎったところでございます。大統領と共に、日米双方の国益に資する着実かつ前向きな進展が見られているということを実感し、確認をいたしたところであります。日米同盟の重要性は今後も決して揺らぐことはございません。このような思いを大統領に伝えたところでありますし、昨日はクウェートの皇太子とも会談をいたしました。今日はこの後、出発前に、フィンランドあるいはオランダの首脳とも意見を交わすという予定にいたしております。どの首脳とも既に東京での会談をしておりましたので、そのようなものに基づきまして、ロシアによるウクライナ侵略、パレスチナ情勢、あるいは自由で開かれたインド太平洋など、現下の国際情勢について率直な意見交換を本日も行いたいと思っております。

付言

 付言いたしますと、今回、我が国の農林水産物・食品輸出の最大の市場であります、ここアメリカにおきまして、日本産食品の輸出促進イベントにも出席をいたしたところであります。我が国は農政の大転換を迎えておるところでありまして、米の増産というものがその中心となります。単に増産だけするということを申し述べても意味がございませんで、これをどのようにして、日本の人口減少、高齢化が進みます中にあって、増産した米をどうするかということであります。これは世界に、ハンバーガー屋さんというのが約7万ぐらいあるんだそうです。では、おにぎり屋さんは世界に何軒あるかというと、1,400軒ということでございまして、これはハンバーガーさんとおにぎり屋さんを比べることがどうだという議論もございましょうが、たとえハンバーガー屋さんの10分の1でもいいおにぎり屋さんが展開されるということを、世界の皆さん方にこの日本のおいしいお米を味わっていただくということ。増産をするだけではだめだ、その増産をどうするんだ、ということについて、昨日の催し物は大変に意義があったというふうに考えておるところでございます。成長する海外の食品市場に向けまして、日本の輸出の一層の促進、これが重要であります。そのことを強く発信をいたしたところであります。
 昨晩、トランプ大統領夫妻のレセプションにおきましては、多くの方々と久闊(きゅうかつ)を叙する機会がございました。中には、ベッセント財務長官、あるいは、ラトニック商務長官ともお話をする機会がございました。多くの首脳の皆さん方とお話をさせていただく機会を得られたことを、大変に幸いに存じているところであります。私は多くの方と昨晩もお話をし、この1年間TICADもございました。関西万博もございました。延べにして90になんなんとする首脳あるいは国際機関の長の皆様方とお話をするということがございましたが、その機会にこの日本が世界から必要とされているということを実感いたしましたし、それに向けて我が国は更に努力をしていかなければなりません。我が国が世界の期待にどう応えるかということは、いつにかかって我が国の努力にかかっております。
 安保理改革は1日も早く実行されなければなりません。核戦争のない世界、そして核兵器のない世界を実現をしていかなければなりません。地球規模の課題を共に克服できる、そういう世界をつくっていかなければなりません。分断よりも連帯、対立よりも寛容、そのことを最後に強く申し述べたところであります。我が国は国際社会と共に、これからもそのような姿勢を持ち、取組の先頭に立ち続けていく、このような決意であります。長くなりました。私からの冒頭の発言は終わります。ありがとうございました。

【質疑応答】

安保理改革、パレスチナの国家承認、戦後80年のメッセージ、次の総理への首脳外交の引き継ぎについて

(記者)
 よろしくお願いします。総理は国連総会の一般討論演説で安保理改革の必要性を強く訴えられました。今後、改革を断行していくためにですね、日本として、また世界としてですね、どういったことが必要になるとお考えでしょうか。また、中東情勢についてもお尋ねします。G7の中からはですね、パレスチナを国家として承認する動きが相次いでいます。
 日本は今回のタイミングでは承認はしていませんけれども、その判断の理由をお尋ねします。また、演説の中ではですね、アジアの国々との関係についても言及がありました。戦後80年に当たり検討してきたメッセージは今後どのような形で出したいとお考えでしょうか。一方、総理はですね、この一年、日米協力の強化ですとか、アジアとの連携、それに万博外交などに積極的な首脳外交に取り組んでこられました。次の総理には、何をですね、どのように引き継いでいこうというお考えでしょうか。以上です。

(石破総理)
 はい、ありがとうございました。安保理改革についてでございます。これは先ほど申し述べましたように、設立当初から比べまして加盟国が4倍近くに増えておるわけでございますが、この常任理事国の数というものが変わっていないということでございます。私といたしまして、というよりも、我が国といたしまして、常任理事国、非常任理事国ともにこの数を増やしていかねばならないということであります。設立当初と数が変わらないということは、多くの国々、多くの地域、多くの人々、これを代表するということにはなりませんので、これを拡大することは必要だと思っております。ただ、この拒否権をどうするかということにつきましては、しばらくの間、拒否権を留保するという考え方、これがG4から提案をされておるところであります。それは、これがベストだというものがあるわけではございません。しかしながら、今よりも多くの国々、多くの地域、多くの人々を代表するということは非常に重要なことだと思っております。ベストを求めるあまり、何も決まらないということであってはならないのでありまして、私どもとして、この案というもの、すなわち常任理事国、非常任理事国、双方のカテゴリーにおきまして、メンバーを拡大するということは、アフリカ諸国を含めました国際社会の大多数に支持される、このように考えておるところでございます。これは急ぐというふうに思っております。
 また、パレスチナの国家承認についてでございます。なぜ今回行わなかったかということであります。私といたしまして、イスラエルのガザにおける行為ということは断じて容認ができないということは申し述べたとおりであります。この「二国家解決」ということを阻む、そういうような行い、このような残虐な行為ということが、これから先も続くということでありますれば、すなわち、「二国家解決」決実現への道を閉ざすことになる、更なる行動がとられます場合には、新たな対応をとるということになります。私どもとしまして、パレスチナが持続可能な形で存在するということ、これが極めて重要でありまして、したがいまして、単に承認をすればいいということではなくて、いかにして経済的な自立ということが、実現に向けて少しでも近づくかということ、そしてまた、公務員の教育等々を通じまして、統治の実効性というものが確保されなければなりません。私どもとして、長きにわたって7,000人という膨大な数でありますが、公務員の教育育成というものに努めてまいりました。承認すればそれでいいというものではありません。経済的な自立、そしてまた国家統治の実効性、それを図りますために、我が国として努力をするということを申し述べたものでございます。承認するかしないかではありません。いつするかということでございますが、それはイスラエルの今のような行為が止まらなければということ、そしてパレスチナの国家としての国際社会において、責任ある存在としてやっていけるための、そういうようなものについての努力をするということを申し述べたものでございます。
 また、戦後80年のメッセージでございます。この内容が現時点において固まっているものではございません。ございませんが、私といたしまして、70年談話を始めとして多くの談話が出てまいりました。今回は閣議決定を経る談話という形はとりません。メッセージという言い方になりますが、戦争の記憶を決して風化させてはならぬということ、二度と戦争を起こさせないということ、そういう観点が重要であると思っております。また、70年談話におきまして提起をされた、なぜあの戦争というものを止めることができなかったかと、政治はいかなる役割を果たし、いかなる役割を果たさなかったかという問題提起が70年談話においてなされておるところでございまして、このことについて、私なりの考え方を申し述べたい、かように考えておる次第でございます。
 首脳外交は、この1年間、関西万博もございました。TICADもございました。多くの首脳と意見交換をする、こういう機会に恵まれたことは大変にありがたいことであったと思っております。私は次の政権におきましても、この信頼関係というもの、あるいは、問題意識の共有というもの、そういうものを引き継いでもらいたいというふうに考えておるところでございます。今、世界は分断と対立が進んでいるわけでございますが、我が国が平和と協調、世界を平和と協調に導くために、それにふさわしい役割を果たすということを期待をするところでございます。日米同盟を基軸として、同志国との連携を図るということでありますし、防衛力を抜本的に強化するということでもあります。防衛力のみならず、外交力を強化するということを行い、我が国のふさわしい、我が国にふさわしい役割を国際社会において果たしてまいりたいと考えておるところでございまして、次の政権におきましても、そのような外交が展開されるということを期待するところでございます。以上です。

日本を含む世界のポピュリズムが高まりについて

(記者)
 私の質問は、世界において、もちろん日本においてもそうですが、ポピュリズムが高まりを見せています。そうした中、多国間主義への信頼が薄れつつあるのも確かです。こうした中、石破総理としては、国連の日常生活における関連性について懐疑的な市民に対してどんなメッセージがあるのでしょうか。また、国際貿易について国連や多国間のフォーラムを通して、日本は公正な国際貿易システムを守るためにどんな取組を見せられるのか、お聞かせください。

(石破総理)
 ありがとうございました。先ほどの冒頭の発言の中で、無責任なポピュリズムという言い方をいたしました。私はポピュリズムの本質は無責任ということだと思っております。多くの人たちに支持されればそれでいいと、その場さえよければそれでいいと、そういう無責任さがポピュリズムの本質であり、私はそういうものが国際社会において、あるいは国内政治においてもそうですが、そういうことがあってよいとは全く思っておりません。
 その中にあって、多国間主義こういうものの信頼が薄れつつあるという御指摘でございますが、そうであればこそ、二国間同士の信頼関係を高めていくということが重要だというふうに考えております。それは、ユナイテッド・ネーションズは決してインターナショナル・ガバメントではございません。それはユナイテッド・ネーションズという、言うなればフォーラムの場において、お互いの信頼関係がいかに保たれるか、いかにしてポピュリズムに陥ることがないか、あるいは差別であるとか、偏見であるとか、分断であるとか、そういうものをいかにして排除していくか、ということがユナイテッド・ネーションズのフォーラムの場においては、非常に重要であるというふうに考えております。それを形作っていきますのは、やはり二国間の信頼だと思っております。
 各国において、ポピュリズムであるとか、偏狭なナショナリズムでありますとか、そういうものが起こらないようにすること、そして外交を内政の道具に使ってはならぬということだと思っております。内政の道具として外交を使うということがあってはならないのでありまして、国連というものが多くの市民に受け入れられるということ、それは国連というところにおいていかなる決定がなされるか、国際社会の平和のために、国連がいかなる役割を果たすことができるかということについて、それぞれの政府、そしてまたそれぞれの市民がどれだけ高い意識を持つかということが、そのベースになるものだというふうに考えておるところでございます。
 なかなかこの分断が続きます社会において、それを実行するのは困難なことであるとは承知をしておりますが、こういうような分断と対立が続く時代であればこそ、ユナイテッド・ネーションズの果たす役割というものは極めて大きいというふうに考えております。そこにおいて、健全な、そして強靱な民主主義というもの、それは人権が尊重されるということでございましょう。そして民主主義におけるプロセスがきちんと尊重されるということでございましょう。民主主義は形だけあればいいというものではございませんし、それを形作るのは、私は健全なジャーナリズムだと思っております。無責任ではない、部数が伸びればそれでいいというものではない、視聴率が上がればそれでいいというものではない。やはりジャーナリズムの見識、そしてまたそれを支える市民社会というものが重要であるというふうに考えておるところでございます。
 私は、そのためにも寛容というものが非常に重要であって、私はリベラリズムの本質は、リベラリズムは自由主義というふうに簡単に訳されますが、それはリベラリズムの本質というものは寛容である、他者の意見にきちんと耳を傾ける、そして、歴史に誠実に向き合う、そういう姿勢であるというふうに考えておるところでございます。
 私の考えというものは、多くの方に共有されるということを、考えが共有されていることを心から願うものでございます。以上です。

石破総裁の後任を選ぶ自民党の総裁選挙について

(記者)
 よろしくお願いいたします。内政に関してお伺いいたします。
 石破総裁の後任を選ぶ自民党の総裁選挙は5人が立候補し、選挙戦が行われています。総理はどのような論戦を期待したいでしょうか。また、次の総理・総裁には政策面・党改革面の面でそれぞれ何に重点を置いて取り組んでほしいと考えるでしょうか。
 御自身はどのような判断基準で一票を投じたいとお考えでしょうか。また、少数与党となる中、これまでの政権運営にも困難があったかと思いますが、政治の安定のためには何が求められるとお考えでしょうか。以上、よろしくお願いいたします。

(石破総理)
 非常に難しい御質問を頂戴いたしました。
 今正しく自由民主党の総裁選挙、昨年から1年を経てまたこれが行われているわけでございますが、これは国民の皆様方に、私どもが責任政党、国民政党としていかなる役割を果たすかということについての認識が、この総裁選挙において戦わされるということが重要であると考えております。
 それは政策面もそうでございますし、党の在り方というものも重要であると考えております。この1年間、私どもの政権として多くのことを目指してまいりました。関税交渉、これの行く末というものも極めて重要であります。対米貿易をどのようにするか、赤字をどうやって削減するか、関税よりも投資ということを申し上げてまいりましたが、これをいかにして実現するか。そして自動車、鉄鋼のみならず、多くの貿易品目が対米にはございます。4,318であったと記憶をいたしておりますが、そういうような対米輸出を取り扱っておる方々に困難が生ずることがないようにどうするかということ、これも非常に大きな論点になると考えております。
 そして、国内的には47都道府県において、最低賃金の引上げということが今、実施されようといたしております。また、実質賃金も7か月ぶりの上昇ということになりました。いかにして賃上げを図っていくか、そして、中央のみならず地方においても賃上げというものはきちんと実行されるということが重要だと思っております。この流れを止めないためにどうするか。そして防災庁の設立でございます。あるいは、地方創生であります。農政改革でございます。いくつもの改革がこの1年間、断行に向けて取り組まれてきたところでありますが、この不可逆性をいかにして担保するかということ、あの1年間に取り組んだけれども、それは結局実現を見なかったということであっては決してならないことでございます。
 今取り上げましたような課題をどのように実現をするかということが、総裁選挙においてそれぞれの候補者間において論ぜられ、方向性が見出されるということが重要であるというふうに私自身は考えておるところでございます。
 また、党の体質というもの、やはり国民政党でございますので、自由民主党が一人一人の国民の皆様方に、最も近い政党であるというふうに認識をしていただく、党はそのように思っても、国民の皆様方がそう認識をしていただかなければどうにもなりません。国民の皆様方が、自分たちにとって本当に身近な政党が自民党である、悲しみや苦しみ、そういうものをきちんと理解をしている政党であるということ、そしてまた、言うなれば政治とカネの問題についてきちんとした解決策というものが見出されるということも、総裁選挙においては大きな論点となり、国民の皆様方の支持を得るために必要なことだというふうに考えております。
 これは出発前にも申し上げたことでございますが、この1年間政権が掲げましたいろいろな課題、多くの課題に取り組んでまいりました。その思いを共有してくださる方、そしてまた政策を継承してくださる方、それぞれが20人の推薦人を集めてこの総裁選挙に臨んでおられます。実際に自分でやってみて、20人の推薦人の方々に署名をいただくということがどれほど大変なことであるかということは身にしみて知っております。20人の推薦を集めた各候補は、それぞれが立派な方であるというふうに敬意を持っておるところでございますが、あえて申し上げれば、政策を更に発展させてくださる方、思いを共有し発展させてくださる方、この1年間本当に共に汗し、共に涙してきた方、そういう方々が多くの御支持を得られるということを、個人的には望むところでございます。以上です。

日米豪印クアッド(QUAD)への影響と協力関係の強化について

(記者)
 アメリカとの二国間の課題が多くありますが、自由で開かれたインド太平洋というQUADの目標に対してどんな影響があるでしょうか。また、アメリカの関税措置や貿易の不確実性、また中国の挑発行為などは、インドと日本のこうした問題に対する対応にどう影響し、経済・安全保障の両分野においてどんな協力関係の強化に繋(つな)がるでしょうか。

(石破総理)
 我が国は、インドと長い友好関係を保ってまいりました。また、戦後打ちひしがれた日本人に勇気と希望を与えていただいたのも、インドであるというふうに強く認識をいたしております。戦後打ちひしがれた日本のこどもたちに、インドの首相が象を贈ってくださったということ、そのことは今も日本人の多くが決して忘れてはおりません。
 基本的価値、民主主義であり、人権の尊重であり、経済発展のみならず、民主主義が重要であると、そのようなインドと我々は基本的価値を共有しておるというふうに考えておりまして、世界最大の人口を有する民主主義国であるインドとの協力の重要性というものは、今後更に高まるものであるというふうに考えております。
 先月末、モディ首相が来日されまして、2日間にわたりましていろいろな意見交換をいたしました。また、共に工場視察をし、新幹線に乗り、いろいろな会話を交わしたところでございます。
優れた指導者であるモディ首相との間でいろいろな認識を共有できたことは、私の1年間の中で最もありがたい思い出の一つでございます。
 経済分野につきましては、「10兆円投資目標」これを設定をいたしました。「日印デジタルパートナーシップ2.0」、あるいは「日印AI協力イニシアティブ」、これらを立ち上げたところでございます。
 安全保障分野におきましては、「日印安全保障協力に関する共同宣言」、これを改定をいたしました。また、「経済安全保障イニシアティブ」も立ち上げたところでございます。
 日米、それに加えましてオーストラリア、インド、そのようなQUADの首脳会合に向けて連携を強化してまいりたいと考えておるところでございます。
 日本、アメリカ、オーストラリア、インド、これは基本的な価値を共有をいたしております。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化にコミットする4か国でもございます。これは広く報道されておりますように、二国間においては問題が全くないわけではありません。インドとアメリカにおいて、いろいろな意見の相違、立場の相違というものがあるのは皆様方は御存じのとおりでございますが、この日米豪印4か国においていろいろな議論がなされること、そういうようなことが二国間において生じており、いろいろな問題についての解決の方向を見出すということに資するのではないか、プラスになることがあるのではないかというふうに考えておるところでございます。
 私どもとして、このような取組を着実に実施をしてまいりたいと思いますし、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて協力していくことを、私はTICADのときにも思いました。そして、TICADに引き続きましてのインド・モディ首相との会談で特に印象深かったことは、これから先アフリカの発展、アフリカの開発、アフリカのいろいろな発展に向けて、日本とインドが協力していくということは非常に重要だということを強く認識をしたところでございます。確かに世界地図を開いてみますと、インドが置かれている位置、そして、アフリカが置かれている位置というものが極めて重要な意義を持つものだということを再認識したところでございまして、この21世紀の世の中にあって、日本とインドが信頼関係を強化し、共に世界の発展のためにそして平和のために努力をしていくということを、改めてその必要性を痛感をいたしておるところでございます。以上です。

(以上)

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