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中谷防衛大臣が記者会見 日・フィリピン部隊間協力円滑化協定(RAA)の初適用などについて(10月7日)

  • 日本の防衛

2025-10-9 10:31

 令和7(2025)年10月7日(火)11時00分~11時29分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は、防衛省A棟10階会見室で閣議後の記者会見を行った。
 大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。

1 大臣からの発表事項

 日比の円滑化協定の初適用になります、共同訓練及び自衛隊機による支援物資の輸送について発表いたします。本日から11日までの間、フィリピンにおいて日比人道支援・災害救援共同訓練「ドウシン・バヤニハン」、これを実施をいたします。本訓練は、人道支援・災害救援に係る航空自衛隊の能力向上及びフィリピン空軍との連携強化を図るものであります。本訓練におきましては、先月9月11日に発効した日比円滑化協定を初めて適用するということになります。この日比円滑化協定というのは、日比それぞれの部隊が他方の国を訪問をして活動を行う際の手続き、また、法的地位を定めることなどを通じて、共同訓練や災害救助等の両国部隊の協力活動の実施を円滑にするものであります。具体的には、訪問部隊の出入国手続の簡素化、また、訪問部隊の法的地位が明確化されるなど、協力活動の実施に関する調整が容易になるものであります。今般、日比円滑化協定の発効と初適用は、日本とフィリピンとの間の防衛協力が、かつてないほど進展をしているということの証でありまして、非常に喜ばしく思っているわけでございます。また、フィリピンのセブ島におきまして、先週9月30日に大規模な地震が発生をし、多くの犠牲者・被災者が発生をしているということでございます。犠牲になられた方々に対して、心からの哀悼の意を表するとともに、御遺族及び被災された方々にお見舞いを申し上げます。現在、フィリピン当局による被災者の支援活動が行われておりますけれども、今般、フィリピン側から我が国に対して、支援物資のフィリピン国内での輸送支援についての要請がありました。これを受けまして、共同訓練に参加する航空自衛隊のK/C-130H、これを活用しまして、明後日9日、レイテ島に所在するタクロバン空軍基地から、被災地に最も近い空港であるマクタン空軍基地まで、フィリピン側が用意した支援物資を輸送することといたしました。本活動についても、日比円滑化協定が適用をされます。なお、被災地において、人道支援・災害救援に従事しているフィリピン陸軍の第525工兵大隊は、以前、防衛省・自衛隊が人道支援・災害救援に関する能力構築支援を行った部隊でありまして、先だっても私がフィリピン訪問時に視察をいたしました。非常に立派に大規模の地震に対して、対応をしている訓練を視察をいたしましたけれども、日比両国におきましては、地震を含め災害が発生するという点においては共通をしておりまして、防衛省・自衛隊におきましては、能力構築支援等によって、フィリピンの災害対処能力の向上に貢献をしてまいりました。今回の災害対応でも、こうした能力構築支援等により培われた能力を、遺憾なく発揮をしていただきたいということを期待をいたしております。最後に、こうした我々の活動が、少しでもフィリピンの助けになれば幸いでございます。調整が整いましたら、本日、テオドロ国防大臣とのテレビ会談、これを実施をしまして、セブ島での地震についてのお見舞いを申し上げるとともに、防衛省・自衛隊からの支援活動についてのお話をします。今般、日比円滑化協定が初めて適用されることも踏まえまして、今後の日本とフィリピンの防衛協力についても意見交換を交わす予定であります。今後とも、防衛省・自衛隊として、円滑化協定を活用しつつ、人道支援・災害救援を含めまして、我が国にとって重要な戦略的パートナーであるフィリピンとの防衛協力を深化させていく考えであります。今般初めてですね、このRAA、これを適用となります。先だってもフィリピンを訪問時にですね、この件のお話をしましたけれども、現実にですね、こういう時に非常に役に立つということが証明をされました。我が国として、できる限りの支援をしていきたいと思っております。

2 記者との質疑応答

新政権下での防衛政策への期待について

記者
自民党総裁選で高市新総裁が選出されました。高市氏は期間中に防衛費について、3.5パーセントより高くなるかもしれないが、積み上げて対応するのが大事だと述べ、増額の必要性を訴えたほか、ドローンや電磁波攻撃への対応、自衛官の処遇改善などの課題についても言及していました。新政権の下で、どのような防衛政策が進められることに期待するか、中谷大臣の考えを聞かせてください。

大臣
防衛省としましては、これまで我が国の防衛力を整備するに当たりまして、大切なのは金額ありきではなくて、防衛力の中身であると考えている点について、累次申し上げてまいりました。現在進めている防衛力の抜本的強化の取組も、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえまして、必要な防衛力の内容を積み上げた上で行っているものであります。その中では、無人アセットの防衛能力、電磁波領域などの領域横断作戦能力を含む防衛能力の内容を積み上げて、そして引き続き、これを着実に進めていくということが重要な考えであります。その上で、戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、我が国としては主体的に抑止力・対処力を強化をするための取組を不断に検討をし、進めていくことも当然であると認識をしております。今後とも政府として、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守っていくための取組を、我が国自身の主体的判断に基づいて行っていくということが重要であると考えております。また、防衛力の抜本的強化の担い手となります自衛官の確保、これにおいても重要な課題であります。昨年、関係閣僚会議を開催をしまして、基本方針をとりまとめました。手当の新設・金額の引上げなどに現在取り組んでまいっております。引き続き、処遇改善、生活・勤務環境の改善、新たな生涯設計の確立等の具体的な方策の実施に取り組んでいくこともまた、重要であると考えております。

戦後80年の首相メッセージについて

記者
戦後80年談話に関連して伺います。石破首相は10日にも談話を発表する予定ですが、その中で戦前の文民統制について触れるとみられています。防衛省では今年、JJOCが発足し、平時・有事を問わず統合作戦司令官がオペレーションの調整を担うようになりましたが、既に一部、統幕との間で情報共有がうまくいかなかった例なども明らかになっています。軍部が暴走した旧軍時代への反省を踏まえ、自衛隊のシビリアン・コントロールを守り続けるために、中谷大臣は何が必要だと今考えていらっしゃいますか。

大臣
戦後80年のメッセージにつきましては、報道は承知しておりまして、現在、総理がこの内容について検討中であると承知をしております。防衛大臣としましては、現時点でお答えすることは差し控えたいと思っております。ただし、この文民統制、これをいかに確保するかというのは、大変重要なことでありまして、我が国におきましては、自衛隊が国民の意思によって整備・運用されるということを確保されるために、例えば、国民を代表する国会が、自衛官の定数、主要組織など、法律・予算の形で議決をして、防衛出動などの承認を行うということになっています。また、国の防衛に関する事務、これは一般行政事務として内閣の行政権に完全に属しておりまして、その最高責任者である内閣総理大臣、その他の国務大臣、これは憲法上文民でなければならないということ。そして、防衛省においては、文民統制の主体である防衛大臣が自衛隊を管理・運営をし、その際、政治任用者である防衛副大臣、防衛大臣政務官等が防衛大臣を補佐をするということとなっておりまして、各レベルでですね、厳格な文民統制制度、これを採用いたしております。防衛省におきましても、しっかりと文民統制を守ってですね、自衛隊を運用しております。そこで、統幕とJJOC、今回色々な演習・調整等を行っているわけでございますが、この情報共有に関する報道につきまして、先だっての記者会見でもお話があったようでございます。私の立場から言いますと、演習というのは実際起こったことに対する事前のですね、訓練・演習でありまして、これは各司令部、また、部隊間等で共有をする内容についてはですね、きちんと情報が共有できるということが必要でございまして、これについて教訓・反省事項があったということは事実でございます。しかし、このことをもってシビリアン・コントロール上の問題があったとは考えておりません。むしろ、問題を洗い出すことは、演習の重要な目的の一つでありまして、先般の演習を通じて具体的な教訓・反省事項を確認できたということは、我が国のシビリアン・コントロールや統合運用を、今後更に実効的なものとしていく上でですね、重要な成果であったと考えております。私もこの組織内のですね、意思疎通・意見交換、これが円滑に行うということを非常に重視をしてですね、要望しておりますけれども、戦後、最も厳しく複雑な安全保障に直面する中におきまして、引き続き、こうした自衛隊に対する文民統制の制度を厳格に運用していく方針でございます。

新田原基地配備のF-35Bについて

記者
新田原基地配備のF-35Bについて伺います。九州防衛局の伊藤局長は、昨日6日、宮崎県庁を訪れて河野知事と面会して、航空自衛隊新田原基地に配備されたF-35Bをめぐって、夜間の垂直着陸訓練の回数を減らすなど負担軽減策を示しました。負担軽減策を策定するに至った経緯と狙いを教えてください。また、防衛省として地元の騒音などに対する反発や安全に対する懸念の声に今後どのように向き合って取り組んでいくか、改めて教えてください。

大臣
先だって地元の市長さんや議長さんが防衛省に来られまして、このF-35Bの垂直着陸訓練につきましては、地元の皆様から厳しい指摘をいただいたところでございます。防衛省としましては、こうした声をしっかりと受け止めて、どのような負担軽減策が可能であるのか、真剣に検討を行ってまいりました。この度、検討の結果、所要の準備が整ったことで、昨日6日、新富町や宮崎県をはじめとする関係自治体の皆様に対して、負担軽減策を説明をいたしました。2つあります。1つ目は、技量維持のために行う夜間の垂直着陸訓練につきましては、馬毛島施設が完成した以降は、原則として新田原基地で行わないということであります。2つ目は、練度向上のために行う夜間の垂直着陸訓練につきましては、新田原基地で行わないということについて説明をさせていただきました。以上2つであります。また、あわせまして、騒音の実態に即して、第一種区域等を見直すために、騒音度調査を行うことにつきまして、説明をさせていただきました。自衛隊施設の安定的な運用、また、円滑な部隊活動の実施に当たりましては、地元の皆様方の御協力が不可欠でありまして、運用の必要性と住民生活のバランス、これを図っていくことも大変重要であります。今回、説明をいたしました負担軽減策は、こうした観点を十分に踏まえたものと認識をしておりまして、昨日の説明におきましては、新富町長、また、宮崎県知事から一定の評価をいただいたという報告を受けております。その上で、早ければ来週から、基地周辺の住民の皆様方に対する説明会を実施したいと考えております。関係自治体との調整を進めているところございますが、説明会を通じまして、引き続き、丁寧な説明にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

先島諸島南方海域での各種戦術訓練と抑止措置(FDO)の定義・意義について

記者
防衛省は、10月3日に先島諸島南方海域において、機雷戦訓練を含む各種戦術訓練を実施したと発表しています。発表によれば、力による一方的な現状変更を起こさせない我が国の強い意思を示す狙いがあるということですが、今回の訓練は、柔軟に選択される抑止措置の一貫という理解で良かったでしょうか。FDOの定義と意義、またその重要性とあわせて教えてください。

大臣
海上自衛隊は、今月3日、金曜日にですね、先島諸島の南方の海域において、機雷戦訓練を含む各種戦術訓練を実施をいたしました。この訓練は、まず、力による一方的な現状変更、これを起こさせないとの我が国の強い意思を示すということ。同時に、地域における抑止力の強化及び任務遂行能力の維持・向上を図ることを目的としたものでありますが、これ以上の具体的な内容、また、個別的な内容につきましては、事柄の性質上ですね、お答えすることができないということを御理解いただきたいと思います。その上で、一般論として申し上げますが、柔軟に選択される抑止措置(FDO)、これは力による一方的な現状変更やその試みを抑止をするとの意思と能力を示すものでありまして、事態の発生・拡大、これを未然に防止をするために重要であると認識をしております。こうした取組を政府一体となって、また、同盟国・同志国等とともに充実・強化をしていく必要がありまして、その旨、国家防衛戦略にも明記をいたしておりますが、政府といたしましては、この力による一方的な現状変更の試みを抑止をするために、引き続き、しっかりと取り組んでいく考えでございます。

大臣発表のフィリピンでの災害支援について

記者
冒頭で発表いただいた、フィリピンでの災害支援についてお伺いしたいのですけれども、K/Cでフィリピン側が用意した物資を輸送するということですが、どういった物資をどの程度運ぶなど、具体的な内容をお伺いできますでしょうか。

大臣
先ほどお話をいたしましたけれども、フィリピン側の要請によりましてですね、飲料水、これを搬送する予定でございます。場所につきましては、先ほどお話をいたしましたけれども、明後日9日にレイテ島に所在するタクロバン空軍基地から被災地に最も近い空港であります、マクタン空軍基地までフィリピン側が用意をしました支援物資、水のことでありますが、それを輸送するということでございます。

自民党の役員人事について

記者
自民党の役員人事について伺います。参議院選挙の敗北を受けてまとめられた自民党の総括委員会の報告書では、解党的出直しに取り組むとされていますが、高市新総裁にはどのような党運営を期待するか、お考えを教えてください。また、幹事長に鈴木総務会長、総務会長に有村元女性活躍担当大臣、政務調査会長に小林元経済安保担当大臣、選対委員長に古屋元国家公安委員長を起用することになりましたけれども、新執行部への期待についてもあわせて教えてください。

大臣
人事というのは、党の総裁としてですね、一任を受けておりまして、これにつきまして私の立場からですね、特に申し上げるということはございません。総裁のお考え通りですね、やっていけばいいと思いますけれども、新総裁に選任をされた際のですね、総裁の決意表明のとおりですね、まず、みんなが力を合わせて全力で働いていけるように、そして、党が一致結束をしてですね、党の力を発揮をして、そして、党がまとまってですね、この改革が行われるように、そのためにしっかりとしたリーダーシップ、これを発揮をされてですね、新総裁としての力の限りのですね、実力が発揮されれば良いんじゃないかなというふうに思っております。

日・フィリピン部隊間協力円滑化協定(RAA)の初適用について

記者
冒頭にありましたRAAの件でお尋ねしたいのですけれども、まず、初適用になるということですが、今回共同でやる訓練の参加する人数とか、どういうものがあって、アセットとかですね、参加するものとかそういう詳細について教えていただければと思います。また、適用は何か国目になるかというのも教えてください。

大臣
この内容等につきましてはですね、7日から11日にですね、今日からですが、このフィリピン共和国のセブ州、マクタン空軍基地、レイテ島のタクロバン空軍基地において、この訓練が実施をされる予定でございます。参加機材・装備につきましては、航空自衛隊のK/C-130H輸送機1機、そしてフィリピン空軍のK/C-130H輸送機、そして物料投下訓練、また共同搭載しゃ下訓練を行いまして、自衛隊の人道支援、災害救援に係る能力の向上、そして、フィリピン空軍との連携等を図ってまいります。航空自衛隊が実施をいたしますが、目的としましては、こういったこの訓練を実施することによってですね、防衛協力・交流の深化が非常に図られると、そして、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けてですね、2国間・多国間の防衛協力・交流が推進してくることができるとということでございます。あの規模とか人員の数等につきましては、後ほど担当部局にお問合せください。

新田原基地配備のF-35Bの負担軽減策について

記者
F-35Bの負担軽減策の関係でお尋ねいたします。早ければ来週以降、周辺の住民の方々への説明会を開催されるというところですが、今回示された負担軽減策について、もっとできるのではないか、とかですね、受け入れられないといった声が多数出た場合というのは、これはどのように対応されるのでしょうか。教えてください。

大臣
現時点におきましては、昨日ですね、新富町、宮崎県をはじめとする、この高鍋町もそうでありますが、関係自治体、宮崎市、西都市、高鍋町、木城町の皆様に対してはですね、御説明をいたしました。自治体の皆さんからは、夜間の垂直着陸訓練回数の低減を図ったことについては一定の評価をいただいた。回数を減らしておりますので、夜間は。そのことについては、一定の評価をいただいたという報告を受けておりまして、その上で今後、住民の説明会を実施してまいりますけれども、住民の皆様に対して御理解がいただけるようにですね、丁寧な説明を行う。そして、この実施に行います騒音対策についても、しっかり対応するようにですね、説明をいたしてまいります。

前出のRAAと国際緊急援助の使い分けについて

記者
冒頭でありましたRAAの関係なのですけれども、いわゆる災害救援の枠組みとしては、国際緊急援助の枠組みがあると思うのですけれども、これからはRAAと国際緊急援助というのは、どのようにその使い分けていくことになるのでしょうか。

大臣
これにつきましては、実施をすることに際しまして、現地のフィリピン側の当局並びに国内においては外務省や防衛省の中でもですね、検討をいたしました。基本的には支援活動につきましては、相手方の要請を受けてですね、そして、現実に支援物資の輸送支援の要請がありましたけれども、それを受けまして、外務省からですね、この支援は日フィリピン友好親善の増進に資する有意義であるということで、防衛省に対して支援の実施を要請されたところでありまして、これは国家行政組織法第2条第2項に基づいて、防衛省として支援を実施すると、いわゆる官庁間協力において実施をするわけでございますので、この内容等につきましても、現地の要請、そして、国内の関係省庁との協議、整備を行った上でですね、実施をすることになったということであります。

記者
そうしますと、例えば災害の規模がもっと大きくて、様々な、例えば医療従事者の派遣ですとか、様々な要望を受けた場合には、国際緊急援助の枠組みを使うこともあれば、自衛隊でできることであれば、RAAでできるのであれば、RAAで行うというふうな、そういう意味で理解したら良いでしょうか。

大臣
現時点において、調整の結果ですね、現在の計画ができたものでございます。今日は先方のテオドロ大臣と電話会談を通じまして、お見舞いを申し上げますと同時にですね、災害等につきましてですね、また、現状確認や、また改めて要望がないかどうかですね、協議をさせていただきますが、現状におきましては、調整した結果ですね、先ほど申し上げた内容において行われるということになっております。

※ 下線部:大臣発言中、K/C-130H(誤)をC-130H(正)に修正

(以上)

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