内倉統合幕僚長が定例会見 「バリカタン26」参加と2025年度の緊急発進状況など(4月17日)
- 日本の防衛
2026-4-22 10:16
令和8(2026)年4月17日(金)14時00分~14時22分、内倉浩昭(うちくら・ひろあき)統合幕僚長は防衛省A棟10階会見室で定例会見を行った。
統合幕僚長からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。
1.発表事項
本日は、私から2点、米比主催多国間共同訓練「バリカタン26」への参加及び2025年度の緊急発進状況についてお知らせします。
はじめに、自衛隊は、4月20日から5月8日までの間、米比主催多国間共同訓練「バリカタン26」に参加し、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力の維持・向上を図るとともに、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出に寄与するため、米比をはじめとする参加各国との連携強化を図ります。
次に、2025年度の緊急発進実施状況についてであります。
2025年度は、5月に尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入した中国海警船から発艦したヘリコプターによる領空侵犯が発生しました。また、12月には、中国軍とロシア軍の爆撃機が太平洋上を四国沖まで長距離にわたり共同飛行いたしました。
こうした中、2025年度の航空自衛隊による緊急発進の回数は、合計595回に上り、引き続き高い水準で推移しております。今後とも、自衛隊は、同盟国・同志国との連携を強化し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与するとともに、引き続き警戒監視に万全を期し、厳正に対領空侵犯措置を行ってまいります。
2.質疑応答
米比主催多国間訓練「バリカタン26」の目的・意義と昨年度との相違点について
記者 :
米比主催多国間訓練「バリカタン」についてお伺いします。改めて、今回の訓練の目的や意義をどのようにお考えか教えてください。また、昨年度との相違点についても教えてください。
統幕長 :
まず一点目の目的・意義についてお答えいたします。本訓練に参加する目的は、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力の維持・向上を図るとともに、力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出に寄与することであります。
本訓練では、日比円滑化協定(RAA)を適用し、フィリピン領域内において行う統合訓練としては、初めて装備品を使用した実動訓練を実施する等、米比をはじめとする3か国との協力関係を一層深化させる意義があります。また、本年3月に新編されました水陸両用戦機雷戦群及び所属艦艇が、水陸機動団と共に参加することは、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力を一層強化する点においても大きな意義があると考えております。
次に、昨年度との相違点についてお答えいたします。自衛隊はこれまで、主にオブザーバーとして参加しておりました。昨年度は護衛艦「やはぎ」を参加させましたが、主として幕僚訓練や人道・民生支援への参加であり、実動訓練への参加は限定的なものにとどまっておりました。また、昨年度の参加規模は人員約150名でしたが、本年度は参加人員が一気に約10倍の約1,400名に加えまして、護衛艦「いせ」、そして「いかづち」、輸送艦「しもきた」、輸送機「C-130H」、救難飛行艇「US-2」、88式地対艦誘導弾等、参加アセット及び規模が大きく拡大いたしました。
2025年度の緊急発進回数の減少と分析について
記者 :
冒頭にあった緊急発進回数の関係でお尋ねします。件数が昨年度と比べると減少していて、西空、南西空のところがちょっと減っているとありますが、この辺りは統幕としてはどのように分析されているか教えて下さい。
統幕長 :
まず、冒頭申し上げましたとおり、2025年度におけます航空自衛隊による緊急発進回数は595回でありました。年度全体の緊急発進回数についてでありますが、前年度実績と比較して減少した背景については様々な要因を勘案する必要があると考えております。確たることを申し上げることは困難であることをご理解ください。また、方面隊ごとの西、南西についてのお尋ねもありました。ここについても、今後しっかりと分析し、引き続き厳正な対領空侵犯措置に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
RAAを踏まえた日米比連携の意義について
記者 :
先ほどの「バリカタン」について詳しくお聞きしたいと思います。先ほど目的と意義をお話しくださいましたが、特に今回RAAの発効後、米比の訓練に参加することになるかと思います。アメリカとの訓練は非常に多いと思いますが、フィリピンを含めた米比との訓練に対する意義について、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
統幕長 :
東南アジア各国は、我が国のシーレーンの要衝を占めるなど、戦略的に重要な地域に位置しており、とりわけフィリピンは、我が国と基本的な価値や原則を共有する戦略的パートナーであり、これまでも様々な機会を通じて防衛協力・交流を進めてまいりました。これまでハイレベル交流、防衛協議等を積み重ねてきたところでありまして、今次、RAAの発効も踏まえ、今後ともフィリピンとの防衛協力・交流を様々なレベルで、そして様々な機能において着実に深化させていきたいと考えております。
そして、アメリカとの関係でありますが、日米比3か国のみならず、日米豪比4か国といった枠組みも含めまして、関係各国との防衛協力・交流を様々なレベルで強化してまいりたいと思います。その背景は、この複雑で厳しい安全保障環境下、どの国も単独で自国の安全を担保できないことから、一層2か国、3か国の連携が必要になっていくと思われます。加えまして、日本や米国とフィリピンが持っている装備品の種類や数等には少し差がありますので、こういったところをお互いに補完し合いながら、そして理解を深めながら進めていければと考えております。
記者 :
今、補完し合いながらというお話がありました。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境ということを度々言われているかと思いますが、そういった日米比の連携の向上、相互運用性の向上が、安全保障環境の改善にどのように役立つとお考えでしょうか。
統幕長 :
まず、日米という文脈で申し上げますと、日米同盟による抑止力・対処力を向上させるという意義があります。そして、フィリピンということで申しますと、シーレーンの要衝に位置するフィリピン国と、これまで主に海上自衛隊を中心とした、海における活動を通じて連携・協力を深めてまいりましたが、数年前に、フィリピンへ日本のレーダーが移転されることになりました。それ以降、航空自衛隊を中心に、「エア・ドメイン・アウェアネス(ADA)」と申しますが、空における状況認識を共有しようということで、ドメインを増やしたアプローチが始まっております。船、飛行機、そういったものは、ある時、唐突にそこに登場しませんので、点ではなく面で捉える、線で捉えるという観点で、フィリピン国とそれぞれの領域や機能で連携していくことについては、この地域の平和と安定に寄与するものと考えております。
記者 :
最後に、現場フィリピンで実施されるわけですが、米軍等の発表によると、台湾に近いルソン島北部で実施するという情報も出ております。初めて日本がこれだけのアセットをもって、台湾に近い地域で実践的な訓練を行うことの意義について、どのようにお考えでしょうか。
統幕長 :
特定の地域等との地理的な近接性についてのお尋ねがありましたが、本訓練においては、どこの地域も念頭に置いていないということをまず冒頭で述べたいと思います。その上で申し上げますと、繰り返しになりますが、これまで長らく培ってまいりました日米における抑止力・対処力に加えまして、フィリピンとの連携もあらゆるドメインで積み上げてまいりたいと思います。
また、地理という一般的な観点で申しますと、日本に近いというところがあります。そして、シーレーンという要衝に位置している大事な国であります。私は一昨年に航空幕僚長という立場でフィリピンに行ってまいりました。また、その同じ夏に、パラオという国に行ってまいりましたが、その往復において、フィリピンを上空から見る機会がありました。その時に、やはり日本と近いということと、大変重要な場所に位置しているということを実感した次第であります。
こういったことから、陸・海・空、そしてサイバーといったあらゆるドメインで、着実に連携を深めてまいります。それが、繰り返しになりますが、インド太平洋地域の安定に資すると考えております。
ウクライナ侵略継続下でのロシア機の動向と緊急発進回数の推移について
記者 :
緊急発進の実施状況の話題に戻って恐縮ですが、このうちロシアの動向について伺います。いただいた資料の国・地域別の発進回数の過去5年分の推移を見ますと、ロシアは2021年度の時点では266回でしたが、ウクライナ侵略が始まった2022年度は150回に減り、2023年度も174回に減っていました。ただ、2024年度は237回に増え、2025年度も214回となっております。これは、ウクライナ侵略が続く中で、ある程度落ち着いてきて、従来の日本へ飛来する頻度に戻りつつあると評価できるのでしょうか。
統幕長 :
ウクライナへの侵略が始まって5年目になりました。緊急発進回数の推移については、お尋ねのとおりであります。
まず、ロシア軍の動向と自衛隊による緊急発進の回数の関連について、一概に申し上げることは困難であることをお伝えしたいと思います。また、ウクライナ侵略が我が国周辺でのロシア機の活動に与える影響について、確定的に申し上げることも併せて困難であることをご理解いただきたいと思います。
その上で申し上げますと、昨年度は12月に中露両国の爆撃機による我が国周辺における長距離にわたる共同飛行を確認したほか、1月にTu-95爆撃機及び戦闘機による日本海における飛行を確認するなど、ウクライナ侵略後もロシア機は我が国周辺での活発な活動を継続しております。かかる観点から、防衛省・自衛隊としましては、我が国周辺空域におけるロシアの軍事動向について引き続き注視し、対領空侵犯措置に万全を期していく所存であります。
中国無人機の飛行に関する2025年度の状況と傾向について
記者 :
緊急発進に関してですが、前年の発表では中国軍の無人機に対する緊急発進がその前年の3倍に増えたということが大きなトピックになったかと思いますが、2025年度の件数や傾向がどうなっているかお聞かせ下さい。
統幕長 :
中国の無人機の飛行に関しまして、2025年度は16回の公表を実施いたしました。2013年に初めて無人機の飛行を公表して以降、無人機の飛行に関する公表は増加傾向にありましたが、2025年度は前年度に比べて7回減少しました。一方で、中国の無人機の飛行に関する公表は近年増加傾向にありまして、2022年7月以降、無人機単独での沖縄本島と宮古島との間の通過を確認しているほか、2023年4月以降、与那国島と台湾との間の通過を確認し、2024年度には西太平洋に進出後、奄美大島沖までの飛行を3回確認しております。このような点を踏まえますと、中国が無人機の更なる活用を企図している可能性については考えられるところです。防衛省としましては、このような中国の軍事動向等に対しまして、引き続き強い関心を持って注視してまいります。
記者 :
中国機に対する緊急発進回数が今年度全体で366回ということで、前年度に比べると100回近く減少しているわけですが、考えられる要因として、例えば中国側の活動の変化なのか、あるいは自衛隊の運用面の変化なのか、その辺りの要因分析を伺えればと思います。
統幕長 :
先ほどのロシアに対するご質問と同じになりますが、中国軍の活動と自衛隊の緊急発進回数の関連について、確定的に申し上げることは困難です。自衛隊の運用に関しましては、我々の対応の手の内を明らかにすることとなりますので、お答えは差し控えたいと思います。
緊急発進回数の減少と安全保障環境の変化の評価について
記者 :
基本的な確認で恐縮ですが、今回、昨年度の緊急発進回数が有意に減っていると言えるかと思いますが、これをもって安全保障環境に変化があるとは言えないということでよろしいでしょうか。つまり厳しさが和らいだというような評価はできないということでよろしいでしょうか。その辺りを確認させて下さい。
統幕長 :
まず全般を申し上げますと、緊急発進回数について、2025年度は前年度と比べて減少はしたものの、高い水準で推移しているものと認識しております。また、お尋ねのあった我が国を取り巻く安全保障環境についての考え方については、緊急発進回数のみをもって説明しているものではありませんので、様々な要素を総合的に分析・評価した結果として、戦後最も厳しく複雑なものとなっており、国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しているという認識については変わりません。
水陸両用戦機雷戦群と水陸機動団の「バリカタン26」参加について
記者 :
「バリカタン26」についてお尋ねします。海自の水陸両用戦機雷戦群と陸自の水陸機動団の訓練について言及されましたが、この点について細部をお聞かせ下さい。
統幕長 :
本年3月に新編されました、水陸両用戦機雷戦群に所属する護衛艦「いせ」、輸送艦「しもきた」、水陸両用戦機雷戦群司令部等が参加しまして、水陸機動団と共に自衛隊の領域横断作戦に関わる統合運用能力を一層強化するという目的で実施いたします。この訓練では、フィリピンにおける良好な訓練環境、すなわち十分な幅と奥行きのある海岸線を活用しながら、国内では実施が困難な水陸両用作戦の一連の流れに沿った実戦的な訓練を行うことに大変な意義を感じております。
記者 :
お答えできる範囲で構わないのですが、一連の流れを確認するというのは、どこまで確認されるのでしょうか。
統幕長 :
具体的には、海上から陸上に至る一連の作戦を想定しまして、海上自衛隊の艦艇等による海上での部隊機動から、エアクッション艇(LCAC)、水陸両用車両(AAV7)、小型ボート等を用いた着上陸を経て、陸上作戦の遂行に至るまでの一連の過程ということになります。ここを演練し、作戦遂行能力及び戦術技量の向上を図っていきたいと思います。
また、参加各国と連携する中で運用要領等について演練し、参加各国との連携の強化及び理解の促進を図ります。少し専門的に申しますと、空においても海におきましても、戦術、戦技、つまり戦闘の技術、それと手順、これを英語で「Tactics, Technics and Procedures」と言いますが、この頭文字を取ってTTPと略します。このTTPを共有し、相互理解し、それを演練して相互運用性や連携要領を高めていくということがポイントになります。そして、自衛隊の統合運用・水陸両用作戦での陸・海において、特に緊密に連携して実施してまいりたいと考えております。
記者 :
そのような海自と陸自での共同訓練は、これまでも行われてきたと思いますが、質的に何か変化したとか、画期的であるというような評価はできますでしょうか。
統幕長 :
お尋ねのとおり、累次にわたり行ってまいりました。そしてその練度というものも、部隊創設当初に比べれば格段に上がっていると思いますが、訓練環境の問題から、先ほど申し上げた一連の訓練が十分であったかというと、そこは改善・向上の余地は十分にあると思います。そういった観点から、今回のフィリピンの訓練場は、まさにそれに適した場所となりますので、この訓練機会を最大限に活用して、お尋ねのあったとおりの能力を高めてまいりたいと考えております。
(以上)
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