“防衛力の抜本的強化” 実現へ向け 有識者会議が6つの提言(9月19日)
- 日本の防衛
2025-9-19 13:05
防衛省は令和7(2025)年9月19日(金)12時12分、同日に開催した「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」(第6回総会・第5回部会合同)の報告書を公表し、そのなかで6つの提言を示した。
以下に、報告書による提言の概要と、報告書(PDF)へのリンクを掲載する。
「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」報告書による提言(2025.9.19)の概要
1 有識者会議の概要
○ 国家防衛戦略等において、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案機能を強化するため、有識者から政策的な助言を得る会議体を設置するとされたことを踏まえ、2024年2月、防衛大臣を本部長とする防衛力抜本的強化実現推進本部の下に設置。
○ 委員:榊原定征 座長、北岡伸一 座長代理 他15名(→防衛力の抜本的強化に関する有識者会議)
2 提言の概要
①防衛力抜本的強化の7本柱の推進と戦略装備の導入による抑止力・対処力の一層の強化
○ ロシアによるウクライナ侵略の長期化や新たな戦い方の顕在化、周辺諸国の活動活発化が一層進んでいる中、反撃能力や継戦能力も含め、抑止力・対処力の更なる強化が喫緊の課題。無人アセット、VLS搭載潜水艦や、太平洋側における防衛体制構築に資する防衛装備等、戦略装備の導入に向けて検討すべき。VLS搭載潜水艦については、次世代の動力を活用することの検討を含め、必要な研究・技術開発を行っていくべき。
②社会情勢を正面から捉えた装備品調達の高度化、組織再編と戦力構成の変革
○ 物価上昇や人口減少等の社会情勢の変化に正面から向き合い、予算執行の在り方や自衛隊の体制整備等の面で適切に対応を進める必要。
○ DX、無人アセット、AIや部外力の活用等による無人化、省人化を進め、その上で必要な人員確保は国の責務。
○ 2030年代半ば以降の安全保障環境や人口動態を踏まえた能力、戦力構成についても真剣に検討すべき。
○ 組織構成の見直しに当たっては、統合作戦司令部の発足やAIの導入・無人化の進展を踏まえ、最適な運用を実現できるよう、中間司令部や既存部隊を抜本的に見直す等、組織のありかたを不断に見直すべき。
③我が国主導による戦略的視点に立った日米同盟の実効性向上、同志国との連携強化
○ 我が国がイニシアティブをとって、日米安保体制の強化を進めるべき。また、米国による拡大抑止の提供は重要であり、日米政府間で閣僚レベルを含めたコミュニケーションの深化、拡大抑止に関するガイドラインの具体化を進め、国民への説明の在り方も検討すべき。
○ インド太平洋地域諸国との連携を戦略的に強化することが重要。地域全体を俯瞰し、OCEAN(※One Cooperation Effort Among Nations : Perspective for the Indo-Pacific)の精神に則り防衛当局間の協力を進めていくこと等が必要。※OCEAN:中谷元防衛大臣が2025年のIISSアジア安全保障会議(シャングリラ会談)で提唱した、インド太平洋地域の安全保障コンセプト。
○ NATOは欧州地域の自主防衛に専念する方向へシフトしつつあり、インド太平洋地域への関与が低下する可能性があるが、NATOの戦略面での変化を踏まえ、連携を積極的に進めるべき。
④防衛技術・生産基盤とサプライチェーンの戦略的強化、技術開発、防衛装備移転の拡大推進
○ 中小企業の自主開発には限界があり、企業の集約化の促進や国営工廠の導入を含め、様々な方策を検討する必要。ロシアによるウクライナ侵略の状況も踏まえ、有事において必要な装備品等について国内生産体制の強化等を進めるべき。
○ 弾薬や燃料の備蓄に関して、自国内でサプライチェーンを一定期間確保することを真剣に検討する必要。また、米国以外の諸国とも装備品の共同開発や装備移転を進めることで、サプライチェーンを強化すべき。
○ 産学官の連携は重要であり、スタートアップの参入、技術の取り込みや装備化のための環境整備を進めるべき。また、トップ・サイエンティストを含めた研究者が安心して防衛分野の研究開発に従事できる環境を整備すべき。
○ 防衛装備移転は積極的に進めるべきであり、いわゆる5類型といったルールが設けられているが、現実を勘案し、国民の理解を得て移転の道を広げていくことが必要。その際、我が国と友好関係にあり、自由や民主主義といった価値観を有し、他国から脅威を受けている国への装備の移転については、制限を設けないとする考え方も一案。
⑤防衛力強化と経済成長の好循環創出に資する目標値の設定・進捗管理
○ 防衛と経済は二者択一のものではなく、両者の好循環は作り出していくもの。防衛力の抜本的強化が日本経済の課題解決にもつながり得るとの意識を持つべきであり、防衛費増額に伴う国民の便益をわかりやすく伝える努力が必要。
○ 防衛と産業の連携を促進するため、「防衛公社」や、小口出資により防衛産業を支援するフランス等の事例も参考にし、多様な資金確保のモデルも検討すべき。
○ 防衛力の強化による経済波及効果については定性的・定量的に分析することが望ましく、EBPM(※Evidence Based Policy Making)を推進すべき。
⑥防衛力の更なる抜本的強化に向けた検討
○ 抑止力・対処力の更なる強化は待ったなしの課題。現在の施策を着実に実施し、更なる強化のための取組を不断に検討すべき。
○ 「GDPの2%」の指標は国家意思を示すものとして重要。更なる防衛力の強化のために必要な対応についても、より効率的な運用やコスト削減の努力も行った上で、明確な根拠を示しながら説明していくべき。その際、将来にわたり継続的な財政支出を行う場合には、それを裏付ける安定した財源の確保も必要。
(以上)
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