小泉防衛大臣がマレーシアで臨時記者会見 防衛装備移転の拡大に意欲、中国の軍拡に現実的対応を強調(11月2日)
- 日本の防衛
2025-11-7 09:25
令和7年11月2日(日)9時55分~10時7分(現地時間)、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛大臣は訪問先のマレーシアのインターコンチネンタルホテルで、日豪防衛相会談、日老防衛相会談及び日NZ防衛相会談後の臨時会見を実施した。
発表事項と記者との質疑応答は以下の通り。
発表事項
大臣 :
それでは、本日行いました会談について御説明をいたします。
まずは、オーストラリアのマールズ副首相兼国防大臣と朝食を共にしながら、日豪防衛大臣会合を行いました。この会談では、「もがみ」型護衛艦の能力向上型がオーストラリアの次期汎用フリゲートの優先プラットフォームとして選定されたことは、日豪防衛協力を更なる高みに引き上げる大きな一歩であること。そして、契約の締結に向けて、日本とオーストラリアの両国がお互い作業を進めていくことを確認しました。
また、インド太平洋地域の安全保障環境について意見交換を行い、特に南シナ海における中国の活動について深刻な懸念を共有しました。その上で、日豪のあらゆる分野での防衛協力を拡大し、日豪の共同の抑止力を高めるべく、共にリーダーシップを発揮していくこと。また、共通の同盟国であるアメリカとの協力も強化すべく、連携していくことで一致いたしました。その上で、早い時期に二国間のバイ会談及び日米豪の会談、これを開催することや、両国がスクワッド(日米豪比)などのマルチの枠組みの中核として果たすべき役割について前向きな議論を行いました。
そして、日本ラオス防衛大臣会談については、防衛分野における協力交流に関する覚書の改訂版に署名を行いました。本改定を踏まえ、人道支援災害救援分野での協力を更に拡大をしていきます。
そして、日本ニュージーランド防衛大臣会談においては、ニュージーランドの「もがみ」型護衛艦への関心を踏まえ、協議を進めていく旨をお伝えをしました。また、共同訓練、ACSAといった法的枠組みの整備、さらには太平洋島嶼国との協力の強化といった、様々な分野で両国で連携していく方針を確認しました。その上で、早い時期に日本で日本ニュージーランド防衛大臣会談を開催したいとの意向が示されました。
今回のマレーシア訪問では、ADMMプラス及び日ASEAN防衛担当大臣会合への出席に加え、計9回の防衛大臣会合を行い、ASEAN諸国のみならず、インド太平洋地域の各国の国防大臣に対し、高市内閣の防衛政策の強化に向けた方針をしっかりと説明することができました。
また、装備移転については、海洋安全保障に資する「もがみ」型護衛艦と潜水艦を含む日本の優れた装備品に対する各国の具体的なニーズと期待に触れることができました。その上で、各国の国防大臣と対面で率直な意見交換を行い、信頼関係を築くことができたことは、今回のマレーシア訪問の大きな成果でありました。
こうした信頼関係を基盤として、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を防衛面からしっかりと下支えをして、同盟国・同志国等との協力と連携を発展させるべく、私が先頭に立ってスピード感をもって進めてまいります。
質疑応答
初外遊の総括 防衛費前倒しと政策強化を各国に説明
記者 :
就任後初めてのですね、一連の外遊を終えられての所感とですね、今後各国の防衛協力、関係構築をどのように進めていくか、世界の中で日本のプレゼンスを高めるためにどういうふうに取り組んでいかれるか、またあわせて防衛費増額目標の前倒しなどですね、国内の政策諸課題にどのように向き合うお考えか教えてください。
大臣 :
やはり今回、ASEAN諸国が、インド太平洋地域の平和と安定の要となる役割を果たしていることを実感する機会となりましたし、日本とASEANが共に平和と繁栄への貢献を強化していくとの方向性を確認することができたことは、やはり大きな成果だったと思っています。
そして今後、日本の国内での防衛費増額目標の前倒しなど、高市政権で進めるべく、今、三文書の改定、そして防衛装備品、この5類型の撤廃など、この安全保障政策の強化が今までにないようなスピード感で進めようとしている中で、その日本の立場を各国に直接説明をする機会となったことも、私は非常に意味のあることだったと思っています。
加えて、このASEANに来る前に、アメリカのヘグセス長官と日本で会った時に、ヘグセス長官からも明確にあったように、この日本の防衛費についてはアメリカから要求したことは一切ないし、そしてまた同じ価値観を共有している日米ということで、相手が何をなすべきかを言う必要はないという明確なメッセージがあったこと。こういったことについても、やはり今後国内で、国民の皆さん、そして国会での説明の中で、安全保障政策の強化というのは、日本が主体的に進めていくということが改めて裏打ちされている一つの大きな基盤を、各国とも今、また同盟国とも築いてるのではないかなというふうに思います。
そして防衛装備移転については、様々な議論がありますけれども、やはり今回ASEANで、これはどこの国ということは申し上げませんが、やはりいくつかの国から潜水艦も含む具体的なニーズを改めて直接期待も含めて感じることができたこと。こういったことは、しっかりと国内でもニーズがあるんだということをしっかりと説明をして、この地域全体の平和と、そして安定と繁栄に繋げていくべく日本にはやらなければいけないことがあるし、そしてまた変わらなければいけないことがあること。こういったこともしっかりと丁寧な説明をしたいと思います。
NZ向け装備移転の協議状況 潜水艦含む関心の広がり
記者 :
ニュージーランドとの防衛大臣会談で、「もがみ」型の護衛艦の導入について、具体的にどのようなやり取りがあったのか教えていただければと思います。また、大臣は以前、トップセールスの強化について言及されていましたが、装備移転の促進についてどのように取り組みたいか、またこの2日間の各国とのバイ会談を通じて、実際に装備品を売り込むような場面があったのか教えてください。
大臣 :
ニュージーランドの方からお答えをしますと、今回の会談においても、日本の「もがみ」型護衛艦に関心を寄せられました。ニュージーランド政府は現在、海軍の艦艇更新計画を政府部内で検討中だと承知をしていますが、今後も緊密に意思疎通をしていきたいというふうに思います。
そして、これはニュージーランドに限らず各国とのバイ会談においても、「もがみ」型や潜水艦を含む日本の装備品の取得について関心が示されましたので、今後協議を進めることになりました。詳細なやり取りは相手国との関係もありますから、お答えできないことは御理解いただきたいと思います。
装備移転の方針 5類型撤廃の議論と今後のプロセス
記者 :
今の質問に関連して、装備移転の考え方について伺います。大臣は先日YouTube番組で、装備品の紛争当事国への売却や提供の可能性に関し、今後の議論だと述べられました。現時点での大臣の考え方や検討状況を教えてください。また5類型の撤廃については、進めていかなければならないと述べられていましたが、今後、与党協議をはじめ、どのようなプロセスを想定し、どのようなスケジュール感で進めていくか、これも現時点での大臣のお考えを聞かせてください。
大臣 :
御指摘のありました発言については、あらゆる選択肢を排除せず、真に日本と地域国際社会の平和と安定のために何が必要かという観点から、防衛装備移転を更に推進していくための制度面の施策について、スピード感をもって具体的な具体的な議論を進めることが重要だという趣旨で申し上げたものであります。
そして、これは部内、また省内においても、タブーを廃して議論をするようにという指示を出しているのは、既に申し上げているとおりであります。
またお尋ねの5類型については、自民党と日本維新の会との間で合意されたという重みを踏まえて、防衛省・自衛隊として、関係省庁とともに検討を行っていく考えであります。
プロセスやスケジュールについてもお尋ねがありましたが、現時点では予断をもってお答えすることは差し控えますが、高市総理ともよく相談をして、政府一丸となって、関係省庁と連携しながら進めていきたいと思います。
なお、もう一回言いますけれども、やはり今回、各国の会談を通じて、日本の装備品に対する具体的なニーズ、これは感じていますし、日本が防衛装備品を移転をしなければ、何が起きるのかといえば、やはり他の国が売るわけですからそういった中で、真に平和と安定と繁栄をこの地域につくるという観点から、やはり率直で、そして現実的な戦略環境の変化、安全保障環境の変化を踏まえた上での議論を国内でもする必要を感じています。丁寧に説明したいと思います。
中国の武器輸出拡大にどう向き合うか 現実的な対応
記者 :
インドネシアが中国の戦闘機購入を発表しています。武器輸出を拡大している中国に対して、日本は今後どのように対峙していくかお考えをお聞かせいただければ幸いです。
大臣 :
今、御指摘の件ありましたけども、各国の防衛力整備についてはそれぞれが置かれた安全保障環境を踏まえて行っているものでありますから、一つ一つについてはコメントはいたしません。
ただ、その上で申し上げれば、インド太平洋地域の平和と安定のためには、価値と利益を共有する各国防衛当局の協力と連携を深めていくことが重要であります。今、中国がという話がありましたが、私はこれが現実だと思います。日本が売らなかったら、どこが売るのかと。それが、日本が売りさえしなければ、平和が保たれる。これは、私は現実とはかけ離れていることだと思います。
こういったことも含めて、よく国内でも説明をさせていただいて、この今5類型の撤廃も含めて、日本に資することだというふうに国民の皆さんにも御理解をいただけるような丁寧な説明は不可欠だと思っています。
韓国機への給油支援報道とACSA 現状と見通し
記者 :
テーマ変わりまして、日韓両政府がですね、防衛協力の一環として、自衛隊による韓国空軍機への給油支援を行う予定にしていたが、中止になったことが分かりました。本件に関する事実関係を教えてください。また、実際の支援に当たってはですね、韓国とACSAを結んでいないことがスムーズな防衛協力に結びつかなかった面もあるようですが、今後韓国との防衛協力の進展や、領土問題で懸念を抱える韓国とのACSA締結の可能性について教えてください。
大臣 :
御指摘の韓国空軍機への給油支援については何ら決まっておりません。また、韓国とのACSAの締結については、現時点で決まっていることはありませんが、日韓間においては、現下の厳しい安全保障環境についての認識を共有してきています。
(以上)
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