小泉防衛大臣が記者会見 台湾有事をめぐる高市総理の国会答弁、与那国島など南西地域の防衛体制強化について回答(11月25日)
- 日本の防衛
2025-11-27 10:30
令和7(2025)年11月25日(火)09時34分~09時51分、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛大臣は、防衛省A棟10階会見室において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項はなく、以下のとおり記者との質疑応答が行われた。
記者との質疑応答
台湾有事をめぐる高市早苗総理の国会答弁、反発する中国との関係について
記者 :
台湾有事をめぐる高市総理の国会答弁に反発する中国との関係について伺います。大臣は先週末、台湾に近い与那国島を訪問し、同島で進むミサイル配備計画について、「地域の緊張を高めるという指摘は当たらない」と発言しました。これに対し、中国外務省の報道官は、「地域の緊張を故意に引き起こし、軍事的な対立を扇動している」と批判しました。中国の見解はですね、大臣と真逆ですが、このような批判に対する大臣の考えを聞かせてください。
大臣 :
中国側の発言の一つ一つについて、コメントすることは差し控えますが、その上で申し上げれば、そもそも、与那国駐屯地への配備を計画している中距離地対空誘導弾部隊は、我が国に侵攻する航空機やミサイルといった様々な経空脅威に対処するための防空任務を担う部隊であり、島の安全を守る、日本を守るための部隊であります。つまり、これは防御を目的とした装備品でありますので、他国を攻撃するものではありません。また、日本全国各地に配備されているものであります。そして、与那国島への地対空誘導弾部隊の配備についてのこうした我が国の考え方は、今回初めて言ったものではなくて、2022年、今から3年前に、部隊配備を公表して以来、継続して御説明をし続けてきました。防衛省としての立場は、当時も今も変わりなく、一貫しています。実際、ウクライナ侵略においては、ロシア軍は、ウクライナ全土に対するミサイル攻撃などを活発に行って、市民の生活にとって重要な電力網をはじめとするインフラに被害を与えています。国民の皆様の命と暮らしを守り抜いていく上で、防空・ミサイル防衛は不可欠の能力であることが、今、改めて立証されていると思います。また、事務的には、この後公表させていただきますが、昨日、推定中国無人機が与那国島と台湾との間を飛行したことを確認しています。中国は、我が国周辺での活動を活発化させていますが、今回のように、無人機の活動も活発化させています。こうしたことから、23日、日曜日の会見で申し上げたとおり、今般の与那国島への部隊配備が地域の緊張を高めるものではないことは明らかですが、その上で、諸外国に対しては、防衛力強化のための取組は専守防衛の考え方を堅持した上で行うことや、平和国家としての歩みを変えるものではない。こういったこと、そして、我が国の安全保障政策の具体的な考えを明確にして、透明性をもって防衛政策を推進してまいります。高市総理が記者会見でも述べているとおり、我が国としては、中国との様々な対話についてオープンであるという立場であって、私とマレーシアではですね、董軍部長ともお会いをさせていただきましたが、その時もですね、お互いの主張と考え方を率直に開陳した上で、そういった違いがあってこそ、対話と交流を重ねていくべきだと、こういったことを確認をし合っていますので、日中防衛当局間においても、率直な議論と意思疎通を粘り強く重ねていきたいと考えております。
与那国駐屯地に配備計画中の中距離地対空誘導弾が中国の言う“攻撃兵器”に当たるか否か
記者 :
追加で質問になります。今、だいぶお答えになっていただいたと思うのですけれども、中国の外務省の報道官の方はですね、与那国島で配備計画が進む地対空ミサイルを攻撃兵器だというような言い方をして、地域の緊張を故意に引き起こしていると言っています。相手国の領域に届かない兵器についてですね、攻撃兵器と称することの方が故意に煽っているとしか受け取れないのですが、防衛省として配備する地対空ミサイルが攻撃兵器に当たるかどうか、このことについて、お願いします。
大臣 :
その点については、先ほども触れさせていただいたとおりですが、そもそもで、もう1回申し上げると、与那国駐屯地への配備を計画している中距離地対空誘導弾は、我が国に侵攻してくる航空機やミサイルといった様々な空を経由する経空脅威に対処するための防空任務を担う部隊であって、島の安全を守る、日本を守るための部隊であります。防御を目的とした装備品であって、他国を攻撃するものではありません。また、日本全国各地に配備をされているものであります。また、こういった攻撃的だということに対するようなことについても、今、常にですね、情報戦、認知戦、そういったことについても行われている状況の中で、しっかりと我々も違うものは違うということは、常に発信をしていかなければならないと思いますし、報道機関などを通じてですね、そういったことを流布をする。こういったことも作戦の一環としてやられるところもありますから、そこをしっかりと国民の皆様に正しい情報を提供するという役割が、今後更に防衛省としても非常に重要なことだと思っています。
記者 :
今の質疑と関連なのですが、23日にですね、与那国駐屯地を視察された際、大臣は上地常夫町長と面会されておりますけれども、大臣の方からですね、地対空ミサイル部隊の配備等について、理解を求めたということはあるのでしょうか。町長は防衛力強化に慎重な姿勢を示されていますが、町長、地元住民の理解を得ることができるとお考えでしょうか。
大臣 :
今、お話があったとおり、23日に上地与那国町長との面会においては、防衛省・自衛隊の活動に、島の中でですね、様々な思いがある中で、与那国島の皆様に防衛省・自衛隊の活動に御理解・御協力をいただき、自衛隊の部隊、隊員だけでなくて、その御家族一人一人を温かく受け入れていただいていることに感謝を申し上げました。また、町長の方からは様々な御要望もいただきましたので、こちらとしては、その一つ一つをしっかりと取り組んでいくことをお伝えをさせていただきました。また、あわせてですね、自衛隊の防衛力の強化や平素からの訓練、そして日米の共同訓練を含む様々な演習によって、我が国及び日米同盟の抑止力と対処力を向上させることの重要性について説明をさせていただいて、私の責任でしっかりと説明を行っていくこともお伝えをさせていただきました。これ以上の詳細は、お相手もあることですから控えますが、もちろん、この上地町長を含めてですね、島の皆さんの御理解を得られるように、きめ細やかなコミュニケーションを図っていく。これは、防衛省・自衛隊として当然のことであります。
南西地域における防衛体制の強化について
記者 :
ありがとうございます。関連してなのですが、そもそも1,200キロに及ぶ南西地域なのですが、沖縄本島を除いて自衛隊の部隊が少なく、全体として防衛の空白エリアと言われてきたと思います。この10年で陸上自衛隊の駐屯地が相次いで開設されてはいますが、その先に中射程ミサイルの配備は必要不可欠であるとお考えなのか、配備の選択肢はあるのか教えてください。
大臣 :
今、御指摘がありましたとおり、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、南西地域における防衛体制の強化は喫緊の課題ですから、これまで南西地域の陸自部隊の空白地帯であった与那国島、奄美大島、宮古島、そして石垣島へ部隊を配置をしてきました。私も、11月22日、23日と宮古島、石垣島、与那国島を訪問して、部隊の状況を確認するとともに、厳しい勤務環境の中においても、高い士気と緊張感をもって、24時間態勢で日本を守るために働いている一人一人の隊員を激励できたことは大変有意義でしたし、本土から遠く離れた安全保障の最前線で任務に当たる隊員達を誇りに感じました。今後も引き続き、第15旅団の師団への改編、こういったことなど、南西地域の防衛体制強化を着実に進めてまいります。また、御指摘のありました島嶼部を含む我が国に侵攻してくる敵の艦艇や上陸部隊を早期かつ遠方で阻止し、排除することが可能なスタンド・オフ防衛能力をより迅速に構築できるように取り組んでいます。令和9年度までの国産のスタンド・オフ・ミサイルの配備先については、今年8月に公表させていただきましたが、令和10年度以降については現時点で決まっておらず、今後、検討してまいります。なお、最近よく、国会などでは、まるでそのことをミサイル列島だというね、こういったミスリーディングな表現を使いながら、その思いをですね、党としての立場を訴えているところがありますけれども、是非ですね、他の国もね、どのような配備をしているのかも含めて考えていただければ、日本がミサイル列島だというような謂れは全く当たらないということも、あわせて、しっかりと様々な機会でお伝えをしていければと思います。
自衛隊の「階級」「服制」及び「職種」等の国際標準化について
記者 :
維新との連立政権合意書のなかで記されている「階級」、「服制」及び「職種」の国際標準化についてお尋ねします。大臣は先週の防衛省での維新幹部との面会の際に、「隊員の士気と誇りをもって任務に当たる環境整備や自衛官の募集に資することが重要で、固定観念をもたず、検討していく」とおっしゃっていました。まず、この「階級」、「服制」、そして「職種」の3つの国際標準化というのがそもそも何を示すのか、御認識を教えてください。またこの合意書の中では、令和8年度中に実施する旨が記載され、予算措置が必要なものも含むとみられますが、現在の検討状況について教えてください。
大臣 :
今、御指摘がありました「階級」、「服制」及び「職種」等の国際標準化については、その時、維新の藤田共同代表をはじめ、役員の皆さんともお話をしましたが、今後、与党とも御相談をしながら検討していく段階ですので、現時点で具体的な内容等については決まっているものはありません。ただですね、その時にも維新の会の皆様とお話をさせていただきましたが、このことによって隊員の士気が上がることはやらなければいけないと思いますし、日本のためにプラスになることはやらなければいけないと思いますが、隊員の士気が下がるようなことをやるつもりは全くありません。
記者 :
関連してお尋ねします。リハックに出演なさった際には、「憲法改正をして、自衛隊の明記が必要だが、少数与党で難しい中で、できることから始めようということの1つが自衛隊の階級の世界標準化という思いだろう」というふうにおっしゃっていました。このあたりは、実際に何かお話されているのか、維新側とどういうやり取りをされて、今、どういう御認識でいらっしゃるのか、改めて教えて下さい。また、同時に「駆逐艦」のことを「護衛艦」と呼んでいるという指摘もなさっていました。こういった言葉の使い方の変更についても、今後、取り組んでいくお考えなのか、その場合、いつ頃をめどに進めたいのか、お尋ねします。
大臣 :
これは、維新の皆様とは、常にコミュニケーションを取るのは当然だと思っていますので、そういった中で先ほど申し上げたような、「階級」、「服制」、そして様々な国際標準化、こういったことについては、維新の皆さんも柔軟なお考えをお持ちだと思っています。一律に国際的にはこうだからこう、という考え方ではなくて、例えば、米軍とイギリス軍、これを比べても全く同じではありませんので、その何が国際標準化に当たるのか、そして何を優先すべきなのか、こういったことについても、よくコミュニケーションを取った上で優先順位をつけてやっていく話なのだろうというふうに思います。いずれにしても、大臣としては、その国際標準化を進めていくに当たって、それが日本の国防に資すること、そして、かつ、その最前線、現場を担う当事者である自衛官が、そのことによって士気が上がること、そういったことについて、やはり、進めていく上では確認しながらやっていくことが大事なのだろうと思っています。
16日に発生した東京・赤坂女性刺傷事件で自衛官が逮捕されたことについて
記者 :
東京赤坂で女性を殺害しようとして、朝霞駐屯地に勤務している自衛官が先週逮捕されました。防衛省・自衛隊として把握されている事実関係と大臣の受け止めをお聞かせください。
大臣 :
今月16日に、東京都港区赤坂で女性が刺された事件について、陸上自衛隊朝霞駐屯地所属の2等陸曹、大津陽一郎43歳が、殺人未遂の容疑で逮捕されたものとの報告を受けています。現在、捜査機関による捜査が行われていると承知しており、これ以上の詳細についてはお答えを差し控えます。いずれにせよ、国民の生命と財産を守るべき自衛官が、殺人未遂の容疑で逮捕されたことは誠に遺憾であります。防衛省としては、事実関係について情報提供するなど、捜査機関の捜査に協力をしてまいります。
航空自衛隊におけるブルーインパルスの存在意義について
記者 :
別件で話題変わります。ブルーインパルスについて、大臣の考えを伺わせてください。先日、デフリンピックの開幕にあわせて、ブルーインパルスが飛行し、今月末には築城航空祭での展示飛行も予定されています。大臣は航空自衛隊におけるブルーインパルスの存在意義をどのように考えていらっしゃるのか。また、ブルーインパルスの任務にどのような成果を望むか、今後の活動に期待することなどもあれば、あわせて教えてください。
大臣 :
まず、基本的なことから御紹介させていただくと、航空自衛隊ブルーインパルスは1960年に設立され、これまで約1,250回、展示飛行を行ってまいりました。正に、航空自衛隊の広報、そして広聴活動の中核を担う部隊であって、航空祭や国家的行事における展示飛行を通じて、自衛隊の技量や規律、そして平素の訓練成果を目に見える形で示すことで、多くの皆様に防衛省・自衛隊に対する認識と、そして理解を深めていただく上で極めて重要な役割を果たしていると考えています。今、御質問の中で、11月30日の築城基地で開催をされる航空祭でも展示飛行の予定だと御紹介がありましたが、年内は12月7日の百里基地での航空祭、そして12月14日の沖縄の那覇基地での航空祭・エアフェスタにおいても、ブルーインパルスの展示飛行が予定されているというふうに承知をしています。是非、多くの方にブルーインパルスの勇姿を見ていただいて、それを通じて日頃の訓練、厳しい任務があってこそ、このような素晴らしい飛行が可能となる。私はそういったことに思いをはせていただきたいし、それを考えると、ブルーインパルスというのは、航空自衛隊の顔に留まらない。自衛隊の日頃の厳しい任務を粛々と24時間365日こなしている自衛官のその姿を体現している、そういうものだと思っています。個人的には、その姿と儀じょう隊の一糸乱れぬ、あの素晴らしい姿と、そしてまた、ドリル部隊の演奏も含めてですね、自衛隊のあのような姿というのは、全ていかに日頃の任務に緊張感高く、士気高くやっているかというのが伝わる素晴らしい機会だと思いますので、是非、様々な機会で直接見ていただいて、隊員や御家族に対する温かい言葉をかけていただければ幸いです。
(以上)
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