中谷防衛大臣が記者会見 ウクライナ支援や特殊作戦団新編に言及(10月10日)
- 日本の防衛
2025-10-15 13:10
令和7年10月10日(金)10時56分~11時17分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は防衛省A棟10階会見室で閣議後の記者会見を行った。
大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下の通り。
大臣からの発表事項
ウクライナ軍への地雷除去教育支援を発表 陸自教官2名を派遣へ
大臣 :
防衛省・自衛隊は、一昨年の12月、欧州等の有志国が参加をするウクライナ支援のための「地雷除去コアリション」への参加を表明をいたしましたが、今般、コアリション参加国との調整が整いまして、ウクライナ軍に対して、地雷除去能力の向上を目的とした教育支援を行うことを決定をしましたのでお知らせをいたします。
具体的には、11月3日から12月5日にかけて、リトアニアにおいて同国と北欧5か国が共同で実施をいたします、ウクライナ兵に対する教育訓練課程に陸上自衛隊の教官2名、これを派遣をいたします。
ウクライナ軍の地雷除去能力向上につきましては、我が国が教育支援を通じて寄与をすることは、困難に直面をしておりますウクライナの人々の人道状況の改善に貢献をするものでありまして、大変意義ある取組であると考えております。また、今回の教育訓練課程を主催をいたします、リトアニア及び北欧各国との関係強化にも繋がるものであると考えております。
なお、同じく防衛省として参加表明をしております「ITコアリション」におきましても、今後、防衛省・自衛隊のサイバーセキュリティに係る知見をウクライナに共有をするためのワークショップ、これを実施することといたしております。
今後とも国際社会と緊密に連携をしながら、ウクライナを最大限支援をしてまいたいと考えております。
質疑応答
防衛費増額要求に「我が国の主体的判断で対応」
記者 :
トランプ米大統領が国防次官補に指名したジョン・ノ氏は7日、日本、韓国、豪州は大幅な防衛費の増額が必要だと指摘しました。大臣としての受け止めと、こういった指摘にどのように向き合うお考えか、聞かせて下さい。
大臣 :
そのような発言があったということは、承知をいたしております。我が国の防衛力整備につきましては、我が国自身の主体的判断に基づいて行うものであり、また、金額ありきではなくて、大事なのは防衛力の整備の中身であり、この点は何ら変わるものはございません。
国家安全保障戦略等に基づく防衛力の抜本的強化の取組は、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえまして、必要な防衛力の内容を積み上げた上で行っていくものでありますので、引き続き、これを着実に進めてまいりたいと考えております。
フィリピンへの護衛艦移転は「現時点で決まった事実なし」
記者 :
フィリピン政府が調達を検討している海上自衛隊の中古護衛艦について質問します。フィリピン政府は、7日、上院の財政委員会で「あぶくま」型3隻の調達を計画していることを明らかにしました。大臣も、9月9日の日比防衛相会談でも中古護衛艦の移転について議題になったと会見で指摘されていました。中古護衛艦の移転は、同志国連携にも寄与するものと思われますが、こうしたフィリピン側の動きについて、大臣はどのように思っていますでしょうか。
また、中古護衛艦の移転に向けた検討状況と「あぶくま」型の退役時期について見通しも教えてください。
大臣 :
フィリピンの財政委員会におきまして、先ほどの議論があったということの報道、これは承知をいたしております。
フィリピンにつきましては、我が国にとって重要な戦略的パートナーであります。フィリピンとの防衛装備・技術協力、これは日本とフィリピンの防衛協力を強化をしていく上で重要であると認識をしておりまして、このことは、私自身、先だってフィリピンを訪問しまして、現に我が国から移転をした警戒管制レーダー、これを実際に見た時に実感をしたことでございます。
そのため、フィリピンとの間では、防衛相会談を含めて、あらゆるレベルで様々なやり取りを今重ねております。御指摘のように、護衛艦についても話題の一つでありますが、現時点において、中古のものを含め、護衛艦のフィリピンへの移転については何ら決まった事実はございません。
また、「あぶくま」型護衛艦は就航から概ね40年が経過をいたしておりますが、この除籍の時期につきましては、個別の定期検査の状況などを踏まえながら、今後検討してまいります。現時点において、決まったものはございません。
いずれにせよ、引き続き、両国間の連携を強化するとともに、フィリピンとの防衛装備、そして技術協力、これを進めてまいりたいと考えております。
過去最大規模の統合演習を実施 鹿児島でも弾薬輸送訓練
記者 :
訓練で鹿児島県内の民間空港や港湾が使われている例が増えています。10月20日から開始される統合演習でも、弾薬の輸送や搭載の訓練があって、一部市民からは利用頻度が高まることに不安や懸念の声がありますが、どのように向き合うお考えでしょうか。
また、今回、統合演習が過去最大規模ということですけれども、今後、この規模やそれを上回る規模の訓練が鹿児島や九州で続くのか、大臣のお考えを伺います。
大臣 :
防衛省・自衛隊は、今月の20日から31日にかけて、日本全国において、「令和7年度自衛隊統合演習(実動演習)」、これを実施をいたします。本演習におきましては、陸・海・空自衛隊が統合により演習を行うということで、自衛隊の統合運用能力を維持・向上させるものであります。
この演習は、自衛隊が実施する統合訓練の中で過去最大規模の実動訓練となります。陸・海・空の自衛隊から人員約52,300名、車両約4,180両並びに艦艇約60隻、航空機約310機が参加をするほか、一部の訓練には米軍及びオーストラリア軍が参加をしまして、日米豪、この相互運用性の向上を図ってまいります。また、鹿児島県について申し上げますと、鹿児島空港や鹿児島港での弾薬輸送・搭載訓練、これを行うなど、県内の様々な施設を用いまして各種訓練を実施したいと考えております。
訓練の実施につきましては、様々な御意見があろうかと思いますけれども、地元の皆様方の御理解と御協力を得られますように、地元の皆様に対する丁寧な説明、また適切な情報提供に努めるとともに、安全面に十分に配慮をしまして、住民の皆様への影響が最小限にとどまるように努めながら、各種訓練をしっかりと実施をしていくということが大切であると考えております。
今後の訓練の規模につきましては、現時点におきまして予断をもってお答えすることは困難でありますけれども、今、戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境を踏まえますと、南西地域における抑止力・対処力の向上は喫緊の課題であって、九州・鹿児島県を含めまして、南西地域においてしっかりと訓練を行っておくということは、我が国の平和と安全を守る上で重要なことであると考えております。今後とも、必要な訓練を行っていきたいと考えております。
陸自に「特殊作戦団」を新編へ 特殊作戦群と即応連隊を統合
記者 :
特殊作戦団の新編についてお尋ねします。特殊作戦群と中央即応連隊を一体的に運用する理由、狙い、この新編について教えて下さい。
大臣 :
我が国は、長大な海岸線を有して、多くの島嶼があります。また、高度に都市化・市街化が進んでおります。
一極集中と言われておりますけれども、こうした中でですね、ゲリラや特殊部隊による攻撃に的確に対処するための体制、これを構築することは、引き続き、重要な課題でありまして、現下の我が国が直面する、厳しさと複雑さ、これを増す安全保障環境を踏まえますと、ゲリラ並びに特殊部隊といった、いわゆる非対称な脅威に対処するため、高い専門性をもつ特殊作戦部隊の体制強化、これが必要であります。
このため、令和8年度に対ゲリラや対特殊部隊の専門部隊であります特殊作戦群と、そして緊急展開能力を有して、特殊作戦群を支援する役割ももった中央即応連隊を一体的に運用する組織といたしまして、新たに特殊作戦団、これを新編する予定であります。
これによりまして、言わば少数精鋭であります特殊作戦群と中央即応連隊の要員、この2つを事態の性質や推移に応じて、柔軟かつ効率的に運用するということが可能になってまいります。
また、複数の事態が同時に複合的に発生をする場合、同時複合事態と申しますけれども、その際でもですね、効果的・効率的な事態対処、これが可能になると考えております。
防衛省としましては、この特殊作戦団の新編によりまして、特殊作戦機能が求められる事態への対処能力を向上させて、我が国の抑止力・対処力を更に強化をしていければという考えをもっております。
記者 :
関連でお尋ねします。ゲリラや特殊部隊といった非対象的な脅威に対処するために体制強化が必要だと今おっしゃっていたと思うのですが、具体的にどういった脅威が増しているというふうにお考えでしょうか。
大臣 :
9.11の同時多発テロ事件がありました。いわゆる国際紛争と言いますと、国と国とのですね、紛争や戦いが戦争の概念でありましたが、いわゆる新たな脅威ということで、国ではなくてですね、テロ集団、ゲリラなどが国家の脅威に該当するような事例等もありますので、こういった事態にもですね、対応し得るようにですね、我が国も考えているわけでございます。
この特殊作戦団の新編をしようというのも、非常にこの我が国の地形とか、最近の特性、またゲリラ、特殊部隊による攻撃に的確に対応するための体制の構築は、引き続き、重要な課題でありまして、非対称な脅威に対処するための高い専門性を有した特殊作戦部隊の体制強化が必要であるという考えに基づくものでございます。
この新編後の特殊作戦団が担う任務につきましては、ゲリラや特殊部隊など、非対称な脅威に対処が可能な状況を想定しております。
今ウクライナで戦闘が行われておりますけれども、この状況においてもですね、該当でないポーランドとかですね、北欧3国とかですね、そういった国に対してもですね、ドローンなどが飛んできたという場合にNATO諸国もですね、対応と考えておりますが、我が国におきましても、このゲリラ、また特殊部隊など非対称な脅威に対してどのような対応をしていくかということで、今回特殊作戦団の新編をしていこうということで、統合した組織を作ろうという考え方で対処したいということを考えております。
台風22号で八丈島に災害派遣 海自艦艇が給水車を輸送
記者 :
台風22号の関係で、昨日夜に東京都から災害派遣要請があったと思うのですが、今後の支援の予定などを教えてください。
大臣 :
今般の台風によりまして、被災された方々に対して心からお見舞いを申し上げます。
昨夜、東京都の知事から、東京都八丈島において、停電が発生をしておりまして、そして浄水所の給水ポンプが停止をしたということによりまして、町内病院における透析患者の治療に必要な水不足が発生をするおそれがあるということから、給水車両輸送の支援の災害派遣要請がありました。本日午後、海上自衛隊の艦艇によりまして、自治体の給水車数両を輸送する予定であります。
防衛省・自衛隊におきましては、自治体と連携をいたしまして、今回の台風で被災された方々に寄り添った支援を適切に実施をしてまいりたいと考えております。このような内容で、災害派遣の実施をするということです。
記者 :
関連で、通信状況の悪化等も起きていると思うのですが、その点の支援は何かあるのでしょうか。
大臣 :
現在ですね、八丈島と青ヶ島におきまして、NTT東日本の固定電話・通信の一部と携帯電話事業者4社の携帯電話サービスに支障が生じているという状況であると承知をいたしております。このため、総務省から防衛省に官庁間協力の依頼がありました。
本日午後、航空自衛隊のC-130輸送機及び陸上自衛隊のUH-60ヘリコプターによりまして、入間基地から八丈島空港を経由して青ヶ島まで、通信事業者各社の作業員、また衛星通信機材等を輸送する予定でございます。
防衛省・自衛隊としましては、今回の台風により、御不便を来たしている方々が、元の生活に一刻も早く戻れるように対応してまいりたいと思います。
特殊作戦団は約1,200名体制 本部は習志野駐屯地に設置へ
記者 :
質問前後するのですけれども、先ほど朝日さんが聞いていた特殊作戦団について、念のため確認だったのですけれども、団の部隊の規模とか、特戦群は習志野ですけれど、師団の配置場所とか、指揮官は陸将補でよかったのかとか、そのあたり概要を教えてください。
大臣 :
目的につきましては、各種の事態に対応し得るようにですね、現在少数精鋭であります特殊作戦群、それと柔軟にですね、支援ができるという中央即応連隊、この要員をですね、一つの組織に合わせるということで、非常に事態の性質や推移に応じて柔軟かつ合理的に運用することができる部隊を作っていくということでございます。
規模につきましては、約400名の特殊作戦群、そして800名の中央即応連隊、これの運営に当たる本部要員を加えた合計1,200名、これで新編する予定であります。
また、部隊の規模、また重要性、任務などに鑑みまして、この特殊作戦団の長、これは陸将補とする予定です。場所につきましては、現在、宇都宮に中央即応連隊がありますが、この度できます特殊作戦団の本部につきましては、現時点で習志野駐屯地に置く方向で準備をしておるということであります。
(以上)
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